型をこよなく重んじるも、嵌ることをめっぽう嫌がる作曲家の日記

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2024.06.06
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カテゴリ: 芸術
小澤征爾が逝去し、1984年に刊行された、
武満徹との対談『音楽』を読み返しました。
裏表紙にはこの本の紹介文が載っています。

”外国人音楽家の来日ラッシュ、
ピアノ教室の繁盛、演奏技術の向上、
オーディオ装置の発達など、
現在の日本の音楽環境は異様な繁栄を見せている。
だがそこには、自ら音楽に関わっていく喜びと、
興奮が欠けていないだろうか?
あまりに容易に〈音楽〉が手に入るために、
感動が稀薄になってはいないだろうか?”

小澤と武満の真意を考えたならば現代は、
自らの音楽に関わっていく喜びと興奮は、
当時よりも確実にあると言えますが、
感動はより稀薄になったと言えます。

音楽を取り巻く社会や教育、音楽家の批判、
師や外国人音楽家へのリスペクトが、
全編で語られているのは当時ならでは。
全体に海外至上主義が貫かれています。

皆が海外を追っているのは今も変わらず、
日本を卑下するのも根強いと思われます。
年月を経るにつれそれらの考えを検証し、
どうなったのかを見るのは興味深いです。


目次から見ても辛辣な各章が並びます。
受け身の音楽は音楽ではない
日本人の耳、西洋人の耳
愛がたりない
甘ったれた日本の音楽社会

日本への愛から批判的なのだとわかります。
理解もできますがその侃侃諤諤の様子が、
この本を読んでもわからないのは、
内心の吐露で終わったのかもしれません。


学生の頃、武満の見解は分かれていました。
ただ、コンクールで武満そっくりの作品で、
入賞している人がいたのは確かで、
作曲法や楽器用法では多くの作曲家が、
武満から影響を受けたのも事実です。

武満は押しも押されぬ大作曲家ですから、
海外の演奏家との関わりが多いのも然りで、
その素晴らしさを疑う余地はありません。
なので日本の音楽社会をリードしていました。

小澤も海外での仕事に専念した結果、
日本の音楽社会への影は薄いように思います。
ただ小澤や武満は日本の音楽社会を、
変えることができる立場にはありました。


十二音技法が確立された1920年頃から、
音楽は細かな言葉の説明が必要になりました。
音楽史として語られる音楽の多くは、
その語法として称賛されていますが、
聴衆が感覚的に共感するものではありません。

メシアンは詳細に自分の語法を著しました。
3歳年上のジョリヴェは同じフランス人ですが、
自らの音楽語法をまったく著しませんでした。
結果的にメシアンは現代音楽史上、
もっとも重要な作曲家と位置されていますが、
感覚的に受け入れられているのはジョリヴェで、
その名と演奏頻度は一線を画しています。

武満は『音楽』というタイトルの著書でも、
自らの語法や音楽はまったく語っていません。
しかし、周知されているのは名声であって、
音楽に共感している人は一部のマニアです。
武満がどんなにリスペクトされていようと、
何度か聴いたフランスでのコンサート演奏に、
武満のイメージがあるとは思えませんでした。


武満の真価はオーケストラにありましたが、
今や名声はあっても代表作に挙げられるのは、
別のジャンルに変わりつつあるかもしれません。
名声が独り歩きしているのです。

作曲家は自分の独自性やユニークさを、
言葉によって説明する必要があります。
そして音楽社会を正しく導く使命があります。
武満を始めとする芸術を追求した作曲家は、
狡猾な世の中にゴールをすり替えられてしまい、
嘗ての崇高な音楽芸術が忘れられつつあります。

小澤や武満が自らの音楽をより貪欲に説明し、
同じスタイルの後継者を育てていれば、
今の音楽社会や自らの地位を、
もっと揺るぎないものにできたはずです。

小澤が絶賛している「未完成」の旋律美や、
武満の「弦楽のためのレクイエム」が、
当時よりも認識されないのは説明不足であり、
音楽学者や批評家の発信力のなさにもあります。



経年劣化もありますが、
この本を何度も読み返した結果、
壊れてしまいました。
この本から得るものはなくなりました。






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最終更新日  2024.06.06 07:00:13
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