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この20-30年でクラシック音楽は広まり、
演奏する人も聴く人も増えました。
ひと昔前はオーケストラの経営難で、
存続の危機と呼ばれた時代もありました。
聴衆はちょうどワイン好きと似ています。
お酒を飲むには何が好きかと訊いて、
ワインという人も随分増えましたが、
国、品種、銘柄、収穫年にこだわる人は、
どれだけいるかという気がします。
残念に思うのはN響のコンサートでも、
聴衆は居酒屋でワインを飲んでる感じです。
オーケストラ側から客席を映した時や、
曲に対する拍手などのリアクションで、
違和感を感じることがよくあります。
12音技法はは言葉の印象から、
不思議で魅惑的な語感を持っていますが、
その作曲法を詳しく知っている人や、
知って聴いている人は少ないでしょう。
演奏者も分析はしていないはずです。
それまでのクラシック音楽とは、
作曲法そのものが全く異なりますから、
現代音楽のジャンルを12音技法由来か、
クラシック音楽由来かに分けるべきです。
聴衆は聴いた感想をSNSに投稿しますが、
原理から言えば的外れの投稿が多いです。
呑んで酔えればいいんだと考える聴衆も、
12音技法の曲では酔えない筈なのです。
前にも書きましたが、
純粋な12音技法の曲が演奏されるのは、
課題曲で課された時、学術的に研究する時、
講演内での演奏が課された時くらいです。
自分から好んで演奏する演奏者がごく稀で、
お客を満足させることも難しいため、
自主公演ではほぼ取り上げられません。
(A.ベルクは調性を感じさせる12音技法で、
派生させていたために演奏されます。)
12音技法の創始者、
A.シェーンベルクの作品は、
12音技法を確立する前までの作品が演奏され、
今はそれすら演奏される頻度が減りました。
そんな中、NHK交響楽団の定期公演として、
ヴァイオリニストのイザベル・ファウストが、
シェーンベルクのヴァイオリン協奏曲を演奏し、
NHKのクラシック音楽館で放送されました。
指揮者は鈴木優人氏でした。
前半はこのヴァイオリン協奏曲を中心とした、
新ウイーン楽派のプログラミングで、
後半に得意なシューベルトの交響曲第6番で、
古典的な枠組みで作曲されたことが共通の、
前半と後半で好みが分かれる選曲でしたが、
全体に鈴木氏のアプローチは古典的でした。
イザベル・ファウストは自身の録音もあるほど、
この協奏曲に力を入れ楽曲の魅力を伝えますが、
過去に他者によってとりあげられた時以上の、
新たな発見や良さを感じるには至りませんでした。
それでも日本の聴衆は「美味しかったです」と、
何を食べさせられているかわからないにしても、
一流のシェフが星付きレストランで出すものに、
向学心と感謝を伝え拍手を惜しみません。
彼女はなぜ日本でこの曲を演奏したのか?
極めて上品な日本のお客なら安心かもしれません。
いかなる味であっても高級ワインに難癖はつけず、
例え好みに合わなくても佳い思い出にしますから。
こう書くと悪口に思われるかもしれませんが、
これまでのさまざまな経験から実感しています。
音楽文化を育てるのは評論家ではなく聴衆です。
惜しみない拍手もいいですがブーイングもいい、
我慢して聴かなくていいし、気持ちに率直でいい。
例えば演奏がズレて酷い音になってしまったのに、
普通に拍手喝采だと演奏者も嬉しくありません。
作曲者はそれが自分の曲だとは思われたくないし、
結果と関係なく常にルーティーンで終わるのは、
結局本当の気持ちが伝わらず虚しさが残ります。
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