「のり2・クラシカ」鑑賞日記

「のり2・クラシカ」鑑賞日記

2005年 特選コンサート一覧 その1


テノール・リサイタル

1・シューベルト
   連作歌曲集「冬の旅」D.911,op89
     ペーター・シュライヤー(テノール)
        カミロ・ラディケ(ピアノ)



2005.1.23 所沢ミューズ・アークホール 15時開演 1-11-26

休憩無しで一気に聴かせました。
シュライヤーさん、往年の声の張りこそ失いましたが
実に鬼気迫る熱唱でした。
凍った涙、鬼火、孤独、最後のライアー廻しまで感動の連続。
ピアノのカミロ、ラディケさんも好サポート。
字幕付でしたが不要に感じた。
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グルダを楽しく想い出す会

マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
パウル・グルダ(ピア)
リコ・グルダ(ピアノ)
ルノー・カプソン(ヴァイオリン)
ゴーチェ・カプソン(チェロ)

クリスティアン・アルミンク指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団

1・モーツァルト
   2台のピアノのための協奏曲変ホ長調

2・モーツァルト
   アダージョ・ホ長調K.261
   ロンド・ハ長調K.373

3・グルダ
   チェロ協奏曲

4・モーツァルト
   交響曲第32番ト長調K・318

5・モーツァルト
   ピアノ協奏曲第20番ニ短調K・466


2005.1.25 サントリーホール 19時開演 2-C5-9

当初予定されていたベートーヴェン「皇帝」がモーツァルト20番に変更。
それぞれのソリストが見事な演奏を披露。
グルダのチェロ協奏曲が実に楽しい作品で面白い、カプソン兄弟も
達者な腕前、グルダ兄弟のピアノはそれほどでもない。

アルゲリッチの20番、独特の世界を構築、アンコールに奏された
ベートーヴェンの三重奏曲の終楽章が圧巻もの。

アルミンク指揮新日フィルも素晴らしいサポートで
今夜の賑やかな演奏会に華を添えた。
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大友直人指揮
東京交響楽団


1・ペルト
   ベンジャミン・ブリテンの追悼のためのカントゥス


2・ラロ
   スペイン交響曲ニ短調作品21
(ヴァイオリン協奏曲第2番)
     (ヴァイオリン)大谷康子


3・リムスキー=コルサコフ
   交響組曲「シェエラザード」作品35
     (ヴァイオリン:グレブ・ニキティン)


2005.2.4 サントリー・ホール 19時開演 1-18-28

 1曲目のペルトの作品は02年2月にネーメ・ヤルヴィ/日フィル
以来の2回目、弦楽と鐘だけで演奏され最初に静かな鐘の音から
始まり弦のユニゾンのクレッシェンドに従い鐘の音も高揚してゆき
そして又静寂に戻る、実に清冽で胸にぐっと来る音楽です。
今夜の大友/東響も見事に各声部が響き合い鐘の奏者も
バランス良く響かせて良かったです。
惜しむらくは私の一人置いた席からまだ鐘の音色の
余韻があるのに拍手してくれたことです、
この曲は静寂も音楽の中に含まれていると思うのですが。

スペイン交響曲は大谷さんの確かな技巧と彼女の音楽を愛する
喜びとがしっかり伝わって素晴らしいスペインの夜を満喫しました。
これ以上言葉は要らないでしょう。

シェエラザード さすがにいつもの東響の重たい音ではなくて
大友さん、各楽器の音を明確に示していたと感じましたし
オケもきらびやかな響きを奏でて描写的、
特にクラの十亀さんのソロが表情豊かに感じました。
ニキティンさん、チェロのボーマンさん、ラッパのマルティさん
も名人芸。アンコールにチャイコフスキー”花のワルツ”
★★★★★ 最近の東響のコンサートはどれも見事の一言。
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ダニエル・バレンボイム指揮
ベルリン・シュターツカペレ


1・ベートーヴェン
   ピアノ協奏曲第3番ハ短調
     (ピアノ/指揮)ダニエル・バレンボイム



2・シューマン
   交響曲第2番ハ長調




2005.2.17 サントリーホール 19時開演 2-LA3-15

 聴衆の暖かい拍手に迎えられて楽員達の登場、そして指揮者の
バレンボイム氏が盛大な拍手のなか中央に置かれたピアノに向かう。
ベートーヴェン3番、精力的な指揮とは反対にピアノの方は
流れるようなタッチで軽やかなリズムの運び、1楽章の導入部で
バレンボイムさん勢い余ってコンマス席のスコアを
叩き落としてしまうハプニングも。
 12型2管編成、オケとピアノの双方のバランスも良く
自然なテンポ感に支えられ極上の演奏。
アンコールにシューマンの幻想小曲集から”夕映えに”

休憩後のシューマン2番は14型編成で今日のSKベルリンは対向配置。
やや早めのテンポで進みます、特に3楽章のアダージョから
終楽章にかけての弦楽と木管あるいは金管とのハーモニーが
絶妙の響きで素晴らしい。
バレンボイムさん、渾身の指揮振りで聴衆から大声援、
主催者側から大きな花を贈られこのオケの唯一の日本人奏者、
女性チェロ奏者のマルモ・ササキ(原文表記のママ)さんにも
バレンボイムさんから一輪が手渡されました。

アンコールに応えて曲はワーグナー「トリスタンとイゾルデ」から
前奏曲と愛の死が奏されました。
これがまた素晴らしいプレゼントになりました。
前奏曲の弦の透きとおった弱音の上に管楽器が何とも
絶妙な響きを奏で、さらに愛の死では目くるめく情念の迸りで
曲が終わって、ため息が出ました。

シュターツ・カペレ・ベルリン、同じ都市にあるベルリン・フィル
ほどの飛びぬけた巧さはないですが響きの同一性
(ハイティンクさんがよく言っていますが)はなかなか優秀と
感じます。古くはスウィトナーさんからの伝統なのでしょうか、
ただ今のメンバーはかなり若い方が多く見られます。
★★★★★
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ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
ライプツィヒ・ゲバントハウス管弦楽団

1・バルトーク
   ヴァイオリン協奏曲第2番Sz.112
     (ヴァイオリン)フランク・ペーター・ツィンマーマン



2・ベートーヴェン
   交響曲第3番変ホ長調op55「英雄」




2005.2.21 サントリー・ホール 19時開演 2-C5-8

 まずはゲバントハウス管の上手さに舌をまきました。
バルトークでは機能性に富んだ音色と自在なコントロールを見せて
これがあのゲバントハウス管かと目を瞠りました。
特にホルン3人の抜群のハーモニーと控えめながらも
トランペット2人の整った音色がバルトークの民族色豊かな曲想を
見事に奏しました。

ヴァイオリンのF・P・ツィンマーマン氏の演奏はすでに
彼もあの若さで円熟の域であり私の拙い感想も必要ないでしょう、
完璧の演奏だったのではないでしょうか、ブロムさんも
ゲバントハウス管も彼の自発性に良く合わせ見事なサポートでした。
過去の経験でもバルトーク2番協奏曲、今夜の演奏は最高のもの。

休憩後のベートーヴェンの英雄がまた活き活きとしたリズム感と
従来のこのオケの持つしっとりとした音色で前半の曲とは
がらっとオケの音色が変化してびっくりです。
構成力のある堂々たる英雄でした。
14型の弦もレスポンスの効いた響きを奏でお見事。

アンコールに同じくベートーヴェンの序曲エグモント 
これも先の英雄同様非常に構成感、推進力に満ちた迫力で
オケのエネルギー全開でした。
熱狂的とも言える聴衆の拍手と歓声で幕。
ブロムシュテットさん楽員が去ったあと鳴り止まぬ拍手に
応えて再びステージに登場、実に中身の濃い今夜の
サントリー・ホールでした。

オケの弦楽器は対向配置で先のS・Kベルリンも同じでしたが
旧東ドイツのオケの伝統的配置です、
★★★★★
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ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
ライピツィヒ・ゲバントハウス管弦楽団


1・メンデルスゾーン
   交響曲第4番イ長調
     「イタリア」




2・ブルックナー
   交響曲第7番ホ長調(ハース版)




2005.2.27 サントリー・ホール 14時開演 2-C2-37

メンデルスゾーン「イタリア」演奏は明るさにも少し
ベールがかかったようなイタリアの陽光です。
しかしオケの対向配置のせいもあるのでしょう、
1Vnと2Vnが相対する形になった為、弦の旋律の対比が
見事に浮き彫りにされメンデルスゾーンの時代
(このゲバントハウスとも所縁があります)には恐らく
今日のこのオケと同じ対向配置と思われ、成る程こう言う響きを
意図して作曲したのかなと感じ入りました。
この曲の模範となるような演奏。

尤もこのオケの楽器配置の必然性は次のブルックナーで
更に素晴らしい効果となって現れました。
ブロムシュテットさん、悠然としたテンポで進むのですが
特に2楽章の例の中間部第2主題あたりでは神に捧げる祈りの如く
美しくも静謐さを湛えた演奏で秀逸、
例えば同じトレモロを刻む1Vnと2Vnが上手(舞台向右側)
に座る2Vnがやや強調されたとこへ中央へ位置するVcと
下手(舞台向左側)に位置するDbがさりげなく支える。
その上で1Vnのトレモロがやさしく囁くといった具合。

管楽器ではワーグナー・チューバが5人、ホルンが4人、
反対側上手にトランペット、トロンボーン、チューバが並ぶ、
チューバ奏者、2楽章のみバスチューバを持ち下手側
(ワグチューの横)に移動する場面も。

金管は渋めだが輝かしいサウンド、木管は反対にやや明るめの響き。
しかしこのオケのティンパニ奏者はなかなかパフォーマーで
微妙なバチ裁きで締まった響きでブロムシュテットさんの合図よろしく
ピタリと決めてくれます、終楽章のフィナーレでもスケールに
満ち満ちた雄大なテンポでコーダを閉じた。
今夜のこのコンビ混ぜ物もない”何も足さない、何も引かない”
正攻法での立派な熱演。
ゲバントハウス管は素晴らしいオーケストラに蘇りました。
(この第7番はゲバントハウス管が1884年に初演しています)
★★★★★
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大友直人指揮
東京交響楽団

マーク・ワイルド:テノール(ゲロンティアス)
手嶋眞佐子:メゾ・ソプラノ(天使)
三原 剛:バリトン(僧侶、苦悩の天使)
東響コーラス:辻 裕久(合唱指揮)



1・エルガー
   オラトリオ「ゲロンティアスの夢」作品38




2005.3.5 東京芸術劇場大ホール 18時開演 2-C-35

大友/東響のコンビによるエルガーの大作、「神の国」「使徒たち」
に続く今回の作品、過去の演奏同様に素晴らしい演奏でした。

 曲はワーグナーを想起させるかのいくつかの旋律が現れ
1部はテノール、バリトンのソロと合唱の問答で始まる、
休憩後の2部に入って天使役のメゾ・ソプラノが加わり
黄泉の世界へ赴いたゲロンティアスの魂の救済が行われ
曲が終わるのだが何やらワーグナーの「パルジファル」と
似てなくも無い感じ。

 独唱の男声二人は見事な歌いっぷりでメゾの手嶋さん
序盤は声が聞き取れにくい面もあったが安定した歌唱です。
今回も東響コーラス 暗譜で表情豊かに歌い上げました。

 大友直人指揮する東京交響楽団はまさしくエルガーを
演奏させたら日本では他の追随を許さぬ堂々の演奏をする団体です。
エルガー作品は低域の音があまりに立派な演奏だと
品が悪くなり飽きてしまうのですが東響の演奏だと程よい
中低音域の響きで非常に自然なエルガーの音楽が飛び込んできます。

本国イギリスではこの曲は演奏頻度が高いらしいですが
オケだけで比較すれば現段階でロンドン響以外のイギリスに
あるオケよりは数段上を行く評価を得られるでしょう。

5月には同じコンビでエルガーの「フロワッサール」と
「エニグマ」変奏曲の芸劇定期もあり非常に楽しみです。
★★★★★ 
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広上淳一指揮
日本フィルハーモニー交響楽団


1・ショスタコーヴィチ
   交響詩「10月」


2・ショスタコーヴィチ
   ヴァイオリン協奏曲第1番
     堀米ゆず子(ヴァイオリン)


3・エルガー
   エニグマ変奏曲
     (創作主題による変奏曲)





2005.3.18 サントリーホール 19時開演 1-20-27

広上さん、一昨年のトリフォニーでの新日フィル定期以来です。
この時もメインのプロはエルガーの作品でSym2番でした。
予想以上に素晴らしい演奏でしたので今回も広上さんに期待して
”エニグマ”「なぞ」を聴くためにチケットを購入。

期待に違わずの超名演だったと思います。
広上さん実に明快な解釈で日フィルも小気味良い
レスポンスで立派に応えました。
弦楽器はあくまでも整った、しかも指揮者のしなやかな
テンポ指示に柔軟に従い清冽な響き、
今回ヴィオラ群が特に存在感を示した。
日フィルの金管は相変わらずブリリアントでゴージャスな響きを
奏で打楽器群とともにこの曲の成功に見事な役割を果たした。

広上さん、実に丁寧な解釈と仕上がりを見せ、14の変奏
からなるこの曲の次への移行へのインターバルもしっかり
時間を計りながらの曲の運び。
もちろん時には例えば第8変奏から第9のNimrodへは
続けて奏されたりはするのですが。
広上さんのエルガー、今回も非常にバランスの良い響きと
細かいニュアンスまでくっきり聴かせた素晴らしいエニグマの
ライブを聴けて幸せでした。ブラボーですね。

前半のショスタコーヴチも勿論上出来の演奏でしたが
特に堀米さんをソロに迎えたヴァイオリン協奏曲は緊迫感あふれる
素晴らしい演奏で特に3楽章のパッサカリアの後の長大な
カデンツァが見事でこんな楽々と楽器を奏でるヴァイオリン奏者は
女性では渡辺玲子さんしか浮かびません。過去のライブでは。
もちろん聴衆から盛大な拍手を受けていました。

今夜は最後まで長い拍手が続いていましたけれどアンコールはなし、
しかし十分満足しました。
残念ながら今夜のサントリーホールの入りは5,6割しか入らず
もったいない。
★★★★★
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大植英次指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団



1・マーラー
   交響曲第6番イ短調
     「悲劇的」





2005.3.20 サントリー・ホール 19時開演 2-RB4-7

 ほぼ満員の聴衆を迎えてのサントリーホール、
大阪フィルの楽員たちは開演前から舞台で音合わせのまま
コンマスのR・ダヴィドヴィッチ氏の登場、続いて音楽監督の
大植さんが会場の割れんばかりの拍手に迎えられて普段より
やや高めの指揮台に登壇。在京のオケのように静々と楽団員が
登場するのとは違い、まるでアメリカのオケのようでこれは
最近までアメリカのミネソタ管弦楽団のシェフを勤められた
大植さんの影響でしょうか。

さて本日のマーラーの6番シンフォニー、素晴らしいの一言でした。
もともとライブでの感動した演奏に恵まれなかった所為か
(前回はアバドの弟子のJ・ブラウン指揮東フィルの03年定期以来)
好きな曲ではありませんでしたがいや本当に感動しました。

大阪フィル、私のイメージが変わりました。
安定した管楽器が特筆ものですね。
16型編成の(16-14-12-10-8)弦も表情豊かなしかも
情感たっぷりの演奏で、3楽章(Andante Moderato)の
例のメロディも過度にならない程度の響きなのですが実に美しい。

大植さん、去年のハノーファのオケでも感じましたが
オーバーな見かけほどの指揮振りとは違い丁寧な音楽の造りで
約80分にもなる長大な曲を最後まで惹きつけてくれました。
実に説得力があるんですね、何回でもブラボーを叫びたいと思います。

彼の音楽監督就任2年になりますが確実に大フィルの音楽、
音色は進歩しているのではないでしょうか、
決して前監督の朝比奈さんがとはではなくて、このオケは
ブルックナーやベートーヴェンだけが得意なオーケストラを
確実に脱皮して輝かしい未来に突き進んでいる様に感じました。
東京公演の前に本拠地大阪定期で今夜の曲を演奏してから
東京に乗り込んできたわけですが十分に彼らの意気込みが伝わりました。

終楽章のハンマーは2回打ち据えられました。
ハンマー奏者も絶妙のタイミングでした。
それとコンマス席のサイドには首席客演コンマスの長原幸太さんが
座り熱演でした。
曲が終わり大植さんの指揮棒が静止、15から20秒ほどの静謐な
時間がまた、素晴らしい音楽の延長でした。
今夜の演奏者そして聴衆の見事なコラボレーションの調和、
忘れがたい演奏会になりました。
★★★★★
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アンナ・ネトレプコ
   ソプラノ・リサイタル
     (ピアノ)マルコム・マルティノー

1・モーツァルト
   歌劇「イドメネオ」
    レチタティーヴォとアリア
    ”いつ果てるのでしょう・・お父様、お兄様、さようなら!”


2・R・シュトラウス
   8つの歌作品10-1「献呈」
   6つの歌作品17-2「セレナード」
   5つの歌作品41-1「子守歌」
   8つの歌作品10-3「夜」
   4つの歌作品27-4「朝」
   4つの歌作品27-2「ツィツィーリエ」

3・グノー
   歌劇「ファウスト」より
    宝石の歌

4・ドヴォルザーク
   歌劇「ルサルカ」
    月に寄せる歌


5・ラフマニノフ
   15の歌作品26-10「私の窓辺に」
   12の歌作品21-4 「彼女たちは答えた」
   6つの歌作品8-4  「私は悲しみのために恋をした」
   6つの歌作品8-5  「夢」
   6つの歌作品4-4  「乙女よ、私のために歌わないで」
   12の歌作品21-5 「リラの花」
   12の歌作品21-7 「ここはすばらしい場所」
   6つの歌作品38-5 「夢」
   14の歌作品34-13「不協和音」

アンコール
1・「ラ・ボエーム」ムゼッタのワルツ
2・「ジャンニ・スキッキ」私のお父さん
3・「ランモルメールのルチア」あたりは沈黙に閉ざされて


 2005.4.28 サントリーホール 19時開演 2-RD3-10

ネトレプコさん、オリエンタル風の白っぽいドレスで登場、
最初のイドメネオからのアリアは声の質がやや異質に感じたが
次のR・シュトラウス作品では徐々に調子を上げて特に「献呈」
「夜」「ツィツィーリエ」は伸びやかな声量で圧倒しました。
しかし、期待の「子守歌」は何かちぐはぐな印象。

休憩後は衣装を替えての登場、当初予定のリュドミラの
カヴァティーナから「月に寄せる歌」へ変更されたが
これまた素晴らしい熱唱。
さてラフマニノフ作品、いずれの曲も叙情的な旋律や陰影を
見事に歌い上げました。プログラムの最後に置かれた「不協和音」
の劇的表現が圧巻。

アンコールの3曲とも申し分のない自信に溢れた歌唱で
素晴らしいです。
持ち前の美貌とともにドラマティツク・ソプラノとして、
これからも快進撃は間違いないでしょう。
ピアノのM・マルティノーさんも表現が多彩で豊か、
そして確かな技術で息の合った伴奏を勤めて素晴らしい。
★★★★☆
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ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル

     (ピアノ)ナタリー・シュウ


1・モーツァルト
   ヴァイオリン・ソナタへ長調k.376



2・J・S・バッハ
   無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調BMW.1005



3・モーツァルト
   ヴァイオリン・ソナタホ短調k.304


4・フォーレ
   ヴァイオリン・ソナタ第1番イ長調op.13


 2005.5.10 東京オペラシティ・コンサートホール 19時開演 1-24


殆ど満員の聴衆を迎えての今夜のコンサート。
ヒラリー・ハーンさんヴァイオリン・リサイタルとしては
初の日本での演奏会。期待に違わず素晴らしいコンサートでした。
前半に置かれたモーツァルトのソナタ、バッハの無伴奏ソナタ
とも自然に音楽が流れて好ましい印象。

実はハーンさん、もっとぐいぐいと技巧を前面に押し立ての
演奏かなとの聴く前に先入観を持っていたのですが良い意味で
期待を見事に裏切られました。

非常にオーソドックスな奏者です。モーツァルトもバッハ
そしてフォーレもまるで作曲者の望みどおりの様式、
曲想が彼女の演奏によって奏でられたのではと感じました。
本当に意外性も含めて何故彼女が10代の若さでメジャーの
オケやマゼールを始めとしてヤンソンスなどの一流の指揮者に
引く手あまたなのかがよく理解できたような気がします。

そうです、往年のA・グリュミオーやI・スターン達の大先輩の
演奏のように何でもないひと弓(ひと弾き)が自然の流れを
作りながら作曲者の曲の想いをそれぞれ見事に紡いで行くのです。
モーツァルトの後のフォーレのいかにもフランス風の軽やかな
愛への幸福感の表現など。

今、書きながら想ったのですが女流と言う意味で、
今は亡きジャネット・ヌヴォーの再来のような感じを持ちました。

もちろんヌヴォーは記録されたものでは決して多くはない
音源でしか彼女の演奏は知り得ませんが持ってる技巧さを
前面に押し出すわけでもなく然しながら思わず引き込まれる
その演奏に今夜のハーンさんがだぶってしまいました。

今夜は後半のモーツァルト、フォーレのソナタが深く心に残りました。
どこがどうのと言う事が憚れるほどの、或いは管理人の
ボキャブラリーの貧しさもあるでしょうが言葉に言い尽くせない
感動だけが残りました。

ヒラリー・ハーンさんの今の年齢(25歳前後)ですと
将来も第一線で長く活躍できるのかは現段階ではわかりませんが
順調に大成していって欲しいと強く願います。
ピアノのナタリー・シュウさんも概ね好演でした。
★★★★★+
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サントリーホール プッチーニ・フェスタ2005
 ホール・オペラ
プッチーニ
   「ラ・ボエーム」

ミミ:エヴァ・メイ→トモコ・ヴィヴィアーニにキャスト変更
ロドルフォ:ジュゼッペ・サッパティーニ
ムゼッタ:森 麻季
マルチェッロ:ガブリエーレ・ヴィヴィアーニ
ショナール:成田博之
コルリーネ:ディヤン・ヴァチコフ
ベノア/アルチンドーロ:ニコラ・ムニャイーニ
パルピニヨール:渡邊公威
税関役人:清水良一
巡査部長:小田川哲也

ニコラ・ルイゾッティ指揮
東京交響楽団

合唱:藤原歌劇団合唱部
合唱指揮:小崎雅弘
児童合唱:東京少年少女合唱隊
合唱指揮:長谷川久恵

演出:飯塚励生
舞台装置:朝倉 摂
照明:吉井澄雄
衣裳:原 まさみ

2005.5.21 サントリーホール 16時開演 2-C4

ミミ役のエヴァ・メイからトモコ・ヴィヴィアーニに突然の
変更がありましたが全体として完成度の高い好演だったと思います。

舞台構成はオーケストラの手前のスペースと両側に設定された
階段、2階奥のオルガン前を有効に利用、驚いたことに2幕目の
カフェの場面ではバックステージ席(写真の白い幕が張られている部分)
から突如として群集たちが(合唱団と少年少女合唱団)白い幕を
突き抜けて現れる。
おもちゃ売りのパルピニヨールは1階通路奥から登場と
制約の多いコンサートホールに於いて見事な演出と感じました。

トモコさん、ウィーンで勉強されている方だそうですが
小柄な体型ながら無難に代役を果たしました。
森麻季さんのムゼッタも演技、歌とも適役でした。
やはり最大級の賛辞を受けたのはロドルフォ役のサッバティーニでした。
ミミ役のトモコさんを演技できっちり支えて流石の活躍でした。

衣裳もカラフルなデザインで現代風、ムゼッタは超ミニ・スカート
で現れ刺激的でした。(第2幕)

このオペラは大好きなオペラの一つなのですが今回、
舞台装置は簡素ながら最後まで惹きつけられました。
★★★★★
ホール・オペラ
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パーヴォ・ヤルヴィ指揮
NHK交響楽団


1・シューマン
   チェロ協奏曲イ短調作品129
   (チェロ)トルルス・モルク



2・ラフマニノフ
   交響曲第2番ホ短調作品27



2005.6.4 NHKホール 15時開演 1階L12

東響定期の客演でお馴染みのパーヴォ・ヤルヴィ指揮のN響定期、
3年ぶりの登場です。

トルルス・モルクさんを迎えてのシューマン/チェロ協奏曲、
何かとり止めの無い楽想でどうも昔から好きになれない曲
なのですがモルクさん、大柄な体に似合わず繊細で情感豊かな
チェリストです。
彼の誠実な演奏で最後まで飽きずに聴けたような感じです。

休憩を挟んでのラフマニノフの2番、ややもすると甘美な
旋律だけを強調しがちな曲なのですがヤルヴィさん、
N響から真の実力を余すところ無く引き出した素晴らしい
ものとなりました。

楽章が進むごとに緊迫感を増してきて2楽章の中間部
の弦楽器の叙情性、3楽章の磯部首席の哀愁を帯びた
クラリネットのソロ、終楽章の弦、管、打楽器の一体となった
集中力に満ちたクライマックス、感動ものでした。

ヤルヴィさんの指揮は感傷的な或いは過度な情緒性は排除して
N響の響きのコントロールを整えながら見事にフィナーレに向けて
60分に及ぶ長大なこの曲を盛大な拍手に導きました。

N響のメンバーも熱い演奏で応えていたように思います。
2Vnの大林さん、めったにステージでは表情を崩すことは
ない女性なんですが満足げな表情でした。少し意外でしたね。。。
彼女は笑顔が凄く似合いますね。
個人的にファンなもので少し脱線してしまいました。
コンマスの堀さんのソロも相変わらず美しいし、
2楽章での植松さんの小太鼓の捌きも絶妙でした。
★★★★☆
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ユベール・スダーン指揮
東京交響楽団

1・プッチーニ
   オペラ「トゥーランドット」ベリオ補作版
      (全3幕、演奏会形式、字幕付き)


トゥーランドット:ルチア・マッツァリア(S)
カラフ:レンツォ・トゥリアン(T)
リュー:砂川涼子(S)
ティムール:久保田真澄(Bs)
アルトゥム皇帝:持木 弘(T)
ピン:上江法明(Br)
パン:松浦 健(T)
ポン:市川和彦(T)
官吏:黒木 純(Bs)
合唱:東響コーラス
合唱指揮:及川 貢
児童合唱:東京少年少女合唱隊
児童合唱指揮:長谷川冴子
コンミス:大谷康子
演出/字幕:平尾力哉
  2005.6.12 サントリーホール 17時開演 1階18列




「偉大なるベリオ、調和的作風」の副題が付された
今晩のコンサートオペラ プッチーニの最後のそして
未完で終わった大作オペラです。

ステージの一番奥に2階のP席とほぼ同じ高さの舞台が
設けられた為、東響のメンバーは平台(珍しく山台なし)の
ステージでぎゅうぎゅう詰めで少し窮屈そう、
P席は東響コーラスで埋められ上手の一角に
東京少年少女合唱隊が座っています。

歌手たちはそのほぼ2階に相当する階段を設けられた舞台で
出入りしながらの演奏。

2階奥のオルガンを隠すように八角形の装置(スクリーン)
が吊るされて三分の二が照明で彩られその下三分の一が
字幕のスペースに割り当てられ実に視覚が一点に集中できる
巧みな舞台設定です。シーンによってスクリーンには色んな
抽象的な映像が映し出されます、たとえば王子の首はねの
場面では赤い火花のような映像など。

主役の外国からの二人のゲストは当然ながらの歌唱を
示しましたがリウ役の砂川涼子さんがリリコ・ソプラノを
発揮して第一幕、第三幕のアリアとも素晴らしい歌唱で
拍手喝采ものでした。
又、ほかの男声陣では持木さん久保田さん、
最初に登場した役人役の黒木さんが安定した歌唱を示しました。
東響コーラスも熱演です。

スダーン指揮東響も実にドラマティクで陰影に富んだ音楽を繰り広げ
通常のオケ・ピットでは得られないオーケストレーションの妙味も
味合わせてくれました。
特に第三幕のリウの死後のベリオの補完の部分からの旋律は
まさしく舞台上からの演奏ならではの弱音を主体に聞かせる
オケに絡むシロフォンなどの打楽器が効果的で当時20世紀音楽に
目が向いていたプッチーニが納得したであろう
前半1,2幕とは又違ったまさしくルチアーノ・ベリオの
旋律が流れて静かに幕が(照明が)下りました。
ベリオ補完版のフィナーレは静かで透明な和音を奏でながら
「愛とは何か」を突きつけながら終止していきます。

ブラヴォー!でした、プッチーニにもベリオにも、
そして今夜の演奏者たちにも。。。
★★★★★
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1・ラヴェル
   オペラ「スペインの時」


指揮:松尾葉子
コンセプション:佐藤ひさら
  トルケマダ:吉田伸昭
 ゴンサルヴェ:小林彰英
 ドン・イニゴ:小野和彦
    ラミロ:今尾 滋




2・ラヴェル
   オペラ「子供と呪文」


指揮:佐藤功太郎
坊や:永井和子
ママ:伊原直子

   安楽椅子:石原妙子        コノハズク:石原妙子
 ティーカップ:長谷川忍           リス:金見美佳
      火:臼木あい       羊飼いの少女:高橋幸江
    お姫様:松井亜希          羊飼い:竹ノ内淳子
     雌猫:江田雅子       肘掛け椅子/木:宮原浩暢
    トンボ:飯島由利江   柱時計/雄猫:石塚幹信
ナイチンゲール:栗原未和     ティーポット/雨蛙:藤井雄介
コウモリ:稲垣真須美   老人(数学の先生):新津耕平



    合唱:東京藝術大学音楽学部声楽科学生及び大学院声楽専攻生
   管弦楽:東京藝術大学学生オーケストラ
  音楽監督:三林輝夫
    演出:直井研二
    美術:伊藤隆道
照明デザイン:海藤春樹
  舞台監督:賀川祐之
  演出助手:小野寺東子
    協力:東京藝術大学美術学部デザイン科

2005.6.28 東京芸術大学 奏楽堂 1階18列30番

 満員の聴衆を迎えての第6回ラヴェル・プロジェクト
完璧な演奏とは言い難いですが両作品とも水準以上の出来映えです。
「スペインの時」の佐藤ひさらさんが安定感のある演技と歌唱、
ゴンサルヴェの小林さん、前半は不安定でしたが次第に美声を聴かせ、
圧巻はラミロの今尾さん、大きな柱時計を担ぎ上げ、
振り回しながら迫力の歌唱を披露。

「子供と呪文」ではやはり坊やの永井和子さん、
現役ばりばりならではの見事な演技と歌唱です。
ママン役の伊原さん、出番が少なくチョット残念。
学生では臼木あい(院修士課程3年)さんの超絶ソプラノが
素晴らしく特に印象的でした。

芸大学生オケは前後半ともメンバー入れ替えでピットに乗りました、
金管に多少の瑕がありましたがこれだけの演奏を披露すれば
充分でしょう。
松尾さんの指揮は相変わらずテキパキとしていてよろしいです。

美術学部が手がけた舞台セットも雰囲気いっぱいの傑作でした。

本日は全席自由席で1,800円也、☆x10個上げたいくらいのCP度でした。
★★★★☆
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6月30日下野竜也/東フィルの定期演奏会が今年前半(1月~6月)の通算42回目のコンサートでした。


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