おはなし  その4 




 その4 ー啓介×恭子ー


赤城山。
エンジン音が響き渡る。

頂上。
車から、恭子が降りて来た。

 啓介「ここに来るなって、言ってあるだろう」

啓介が、怒って言った。

 恭子「うん。わかってる。だけど、電話じゃ話にくいことだもん」

 啓介「どうした?」

 恭子「うん・・・・・・・・・」

恭子は、言いにくそうだった。

 啓介「話があるから、俺んとこ来たんだろう?」

 恭子「うん。そうだけど・・・・・・」

 啓介「俺、忙しいんだ」

 恭子「ここじゃなくて・・・・・」

 啓介「ここじゃ、話せないって言うのか?」

啓介の口調が、だんだんきつくなってきた。

 恭子「・・・・・・・・・ないのよ」

恭子が、やっと言い出す気になった。

 啓介「何が?」

 恭子「だから、アレ」

 啓介「アレじゃ、わからない」

 恭子「・・・・・・・・来ないのよ」

 啓介「誰が?」

 恭子「人じゃなくて、アレが」

 啓介「アレじゃ、わかんないってさっきから、言ってるだろう」

恭子は、また下を向いてしまった。
鈍感な啓介には、はっきり言った方がいいかもしれない。

 啓介「はっきり、言えよ」

 恭子「・・・・・・・・・できちゃったみたいなの」

 啓介「できた? 何が?」

鈍感な啓介は、まだわからない。
普通の男なら、このへんでわかると思うのだが・・・・

 啓介「何ができたか、わからないけど、できたってことは、いいことなんじゃ
    ないのかよ?」

 恭子「ちがうのよ」

 啓介「何かがなくて、誰かが来なくて、何かができた?
    はあー? 俺は、おまえとなぞなぞをやってる暇なんか、ないぞ」

 恭子「だから、できちゃったみたいなの」

恭子が、おなかをおさえた。

 啓介「どうした? 腹でも痛いのか?」

全く、啓介の鈍感!

 恭子「・・・・・・・赤ちゃん」

 啓介「赤ちゃん? 赤ちゃんが、どうした?」

 恭子「赤ちゃんが・・・できたみたい」

 啓介「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ここで、やっと啓介が、恭子の言ってることを理解した。

 啓介「嘘だろ?」

 恭子「本当みたい」

 啓介「何で?・・・・・・・・・・」

啓介は、伊豆の事を思い出した。
ケンタに邪魔されてばかりで、やっとできると思ったから。
酔って、野獣のように恭子を・・・・

 啓介「病院には?」

 恭子「まだ行ってない」

 啓介「本当に俺の子なんだろうな?」

啓介が、心にも無いことを言った。

 恭子「当たり前じゃない」

恭子の目から、涙が出てきた。

 啓介「ごめん。 だけど、俺・・・・・」

 恭子「どうしよう」

 啓介「どうしようって言ったって、俺、そんなことまで考えて
    いなかったから」

この様子を、兄・涼介が見ていた。

 涼介「どうした?」

 啓介「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 恭子「・・・・・・・・・・・・・・・・」

恭子の目からは、たくさんの涙。

 啓介「・・・・・恭子、できちゃったらしい」

 涼介「・・・本当か? 伊豆で、俺がちゃんと忠告したのに」

 啓介「どうしよう。アニキ」

涼介は、少し考えると、

 涼介「俺の後についてこい」

と、車に乗った。
啓介は、恭子を自分の車に乗せ、涼介のあとについて行った。
どこへ行くのだろうか?
まさか、病院?
だけど、こんな夜遅くに当番医以外は、やっていない。

 ********************************

ついたところは、あるマンション。

 啓介「どこ行くんだ?」

 涼介「未来の産婦人科医のところ」

4階。
ピンポン~。

 秀香「はい~」

ドアが、開いた。

 涼介「夜遅くに、悪いな」

涼介は、啓介と恭子のことを話した。

 秀香「どうぞ」

秀香は、3人を部屋の中に入れた。

 啓介「入りますー」

 恭子「お邪魔します」

 秀香「啓介の彼女ね。伊豆の写真見たわよ」

 涼介「女どおしの方がいいだろう。啓介、俺たちはこっちの部屋」

涼介と啓介は、隣の部屋へ行った。

 啓介「なあ~アニキ~」

 涼介「何だ?」

 啓介「何で、アニキのジャケットが、かかっているんだ?」

啓介は、ハンガーにかかったジャケットを見た。

 涼介「そんなことは、どうでもいいだろう。
    もし、恭子にできていたら、どうするんだ?」

 啓介「・・・・・・・・・・・・・」

啓介は、答えることができなかった。
どうしていいか、わからない。

恭子と秀香は・・・

 秀香「何か飲む?」

 恭子「いいえ、いりません」

 秀香「グレープフルーツもないし。ウーロン茶でいいかな?」

秀香は、冷蔵庫を見ていた。

 啓介「灰皿ある?」

啓介が、隣の部屋から来た。

 啓介「あっ。アニキ吸わないから、灰皿ないのか?」

 秀香「あるよ。私のアニキが、時々くるからね。 はい」

秀香が、啓介に灰皿を渡した。
啓介が、恭子の顔を見た。

 恭子「何?」

 啓介「別に」

 秀香「はい。啓介は、向こうに行きなさい」

啓介は、隣の部屋に戻った。
恭子は、ウーロン茶を飲んだ。

 秀香「いつから、ないの?」

 恭子「?」

 秀香「どのくらい、遅れているの?」

秀香が、言い方を変えた。

 恭子「1週間くらいだと思うけど」

 秀香「1週間か。微妙なところね」

 恭子「やっぱり、赤ちゃん、できているんですか?」

 秀香「さあ、それは調べてみないとわからないけど。
    とりあえず、検査薬で調べてみたら?」

秀香が、妊娠検査薬を、恭子の前に出した。
どうして、秀香が持っているんでしょうね~。
いくら、未来の産婦人科医としても、不自然のような。

伊豆で涼介が「「ちゃんとやれよ」と言ったのに、酔った啓介は理解できず。
恭子も、すべてを啓介に任せていたので「ちゃんと」の意味が把握できず。
お互い未熟な点が、あったかもしれない。

恭子が、トイレから出てきた。

 秀香「すぐには、反応が出ないから」

 恭子「はい」

恭子は、ドキドキしていた。
もし、妊娠反応が出たら、どうしよう。
赤ちゃんができていたら、どうしよう。
まだ20歳の恭子には、考えられないことだった。

同じく、啓介もドキドキしていた。
もし、できていたら、どうしよう。
まだ父親には、なりたくない。
そんな自信ない。 まだ大学生だし。

 涼介「もし、もしも・・・・できていたら、どうする?」

 啓介「アニキだったら、どうする?」

 涼介「俺のことは、いい。 今はおまえのことだろう?」

いつもアニキは言わない。ずるい。
彼女とのことだって。
いつもパソコンとにらめっこしてるのに、いつのまにか彼女がいたなんて。
多忙なアニキに、よく彼女がいたもんだ。
未来の産婦人科医ってことは、アニキと同じ医学生?

反応は、出なかった。

 恭子「できてないってことですか?」

 秀香「これだけじゃ、はっきりわからないわ。できたら、病院へ行くことを
    すすめるけど」

恭子が、首を振った。
でも少し安心した。
できてないかもしれない・・・・

 恭子「帰ります」

 秀香「大丈夫?」

 恭子「はい。ありがとうございました。少しほっとしました」

恭子は、深くお礼をして席を立った。

 恭子「啓介さん。私、帰るから」

 啓介「え?」

 恭子「もしかしたら、できてないかもしれない」

そして、今度は、涼介に

 恭子「涼介さん。ありがとうございました。ご迷惑をかけました」

と、言った。

 涼介「大丈夫か?」

 恭子「はい」

恭子は、啓介の車に乗って赤城山に戻った。
涼介は、そのまま、秀香の部屋に残った。

 秀香「恭子ちゃん、大丈夫だといいね」

 涼介「ああ、ありがとうな」

 秀香「もう、こんな時間。今夜は泊まっていくでしょ?」

 涼介「いや。帰るよ。啓介の事が心配だ」

 秀香「まあ、弟思いだこと」

 涼介「帰るよ。おやすみ」

涼介は、秀香におやすみのキスをした。

 ********************************

赤城に戻った啓介と恭子。

 恭子「ごめんなさい。でももしも・・・・できていたらどうしよう」

 啓介「大丈夫だよ」

啓介が、恭子を抱きしめた。
啓介も、半分半分の気持ちだった。
大丈夫かも・・・・でもできていたら、どうしよう。

 恭子「おやすみなさい」

 啓介「おやすみ」

恭子は、自分の車に戻って、埼玉へ帰って行った。

 *********************************

次の朝。
啓介の携帯が、なった。
気になって、なかなか眠れなかった啓介。
朝方になって、ようやく眠りにつけたのだ。
起きない・・・・

今度は、涼介の携帯がなった。

 涼介「もしもし」

 恭子「おはようございます。昨日は、どうもありがとうございました。
    啓介さん、寝てるみたいで、携帯にでないんです。
    ・・・・・今朝、きました」

 涼介「それは、よかった」

涼介も、ほっとした。

 恭子「あの、秀香さんにありがとうって、伝えてください」

 涼介「わかった」

涼介は、携帯を切って啓介の部屋に行った。
そして、寝てる啓介を、たたき起こした。

 啓介「まだ眠いよ」

 涼介「起きろ」

 啓介「もう少し寝かしてくれよ~」

 涼介「しかたがないやつだ」

涼介が、近くにあった煙草を吸い始めた。

 啓介「珍しい。煙草を吸わないアニキが・・・」

 涼介「いいことが、あったからな」

 啓介「いいこと?」

 涼介「ああ」

啓介が、また眠りについた。

いいこと・・・
いつ、啓介に教えてやろうか。
俺の忠告を聞かなかった、ばちが当たったんだ。
これで、啓介はこれから、ちゃんとするだろう。

しかし、幸せそうな顔をして寝てる。
夢の中で、恭子と一緒にいるのかな。


 おはなし その4完

 7月21日 

HOME




© Rakuten Group, Inc.

Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: