おはなし  別離




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 啓介「アニキ、貸してくれよ」

 涼介「ダメだ」

 啓介「頼むから、貸してくれよ」

 涼介「ダメだ」

 啓介「今日は、FCを使わない日だろ。貸してくれよ」

 涼介「ダメだって言ったら、ダメだ」

朝から、ずっと啓介は、兄・涼介に「FCを貸してくれ」と
頼み込んでる。

 啓介「乗らないなら、貸してくれてもいいじゃないか」

 涼介「おまえも、あきらめが悪いな。貸さないって言ったら、貸さない」

 啓介「どうしても、車が必要なんだよ。
    頼むから・・・けちなこと言わずに、貸してくれよ」

 涼介「ダメだ。おまえのことだから、荒く乗り回して帰って来るに
    違いない。
    大切なFCを、傷物にされたくない!」

 啓介「頼むよ・・・アニキ」

啓介は、手を合わせて、頼み込んでる。

 涼介「・・・・どこ行くんだ?」

 啓介「どこだっていいじゃないか。
    なっ。貸してくれよ。時間がないんだ」

啓介は、時計を見た。

 涼介「・・・・女か?」

 啓介「・・・・・・・・・」

 涼介「恭子のところか・・・ふっ」

涼介は、素直にFCのキーを、啓介に渡した。

 啓介「ア、アニキ。ありがとう・・・」

啓介は、急いでFCに乗り込んだ。


恭子に、こないだのお礼でもするんだろうな・・・
笑って帰って来るか、泣いて帰って来るか・・・
啓介は、恋愛向きじゃないからなあ。
振られて、帰って来ないだろうが、振って帰って来るかもしれない。
どうも、胸騒ぎがする。


FCで、埼玉に向かう啓介・・・

恭子のおかげで、勝ったからなあ。

恭子と会った啓介。
(28巻参照)


 啓介「ただいま」

喜か哀か、わからないような顔をしている啓介。

 啓介「アニキ、サンキュー」

 涼介「ああ・・」

 啓介「傷1つなく、帰って来たから、安心しなよ。アニキ」

 涼介「恭子とは、もう・・・」

 啓介「会わない」

啓介は、きっぱりと答えた。

啓介は、涼介にFCのキーを返して、自分の部屋に戻った。


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夏が、来た。

母親に頼まれて、ホームセンターに行った恭子は、偶然にも自分と同じ
黒のFDを見つけた。

わあ、私と同じだ。

恭子は、外見ばかりではなく、車の中も覗いて見ていた。

 「あのーー何か?」

はっ!

振り向くと、恭子と同じくらいの年齢の男が、荷物を持って立っていた。

 恭子「あっ。すいません」

恭子は、横にずれた。

 「何やってたの?」

恭子を、不審者とでも、思ったのだろうか。

 恭子「ええとーー 隣の隣のFDが、私の車で同じFDだから、つい・・
    すいません」

恭子は、恥ずかしそうに、ペコペコ頭を下げた。

 「あ~ そうなんだ」

 恭子「はい」

 「ドライバーが、女の子だなんてすごいなあ」

 恭子「あ、そうですか」

男は、恭子のFDを、まじまじと見ていた。

しばらく2人は、FDの話をしていた。
・・・だんだん暗くなってきた。

 恭子「あっ。もうこんな時間。買い物して帰らなきゃ」

 「もうすぐお店しまちゃうよ」

 恭子「うん」

 「また・・・会えるかな?」

 恭子「え?」

 「まだまだ、いろいろ話したい事があるんだけど・・・
  携帯の番号、教えてもらえるかな?
  それとも、メールがいい?」

恭子は、バッグから、携帯を出した。

着歴には、啓介の番号がまだ残っている。
あの、啓介と最後に会った日。
啓介から「こないだのお礼がしたいから、会いたい」と携帯にかかって
きた。

啓介の優しい声が、まだ耳に残っている。
啓介とのあの思い出が、心に残っている。

 恭子「ごめんなさい。 初めて会った人には、教えられない」

恭子は、深く頭を下げた。

 「そうだろうな・・・ごめん。
  また、どこかで会ったら、話をしよう」

男は、自分のFDに乗って行ってしまった。


まだ、啓介さんのことが好き・・・
同じFD乗りでも、啓介さんに勝つ人はいない。
今頃、啓介さん。何してるのかな。

忘れたくても、忘れられない・・・


  おはなし「別離」完


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 あとがき

4月8日・9日・22日に、下書きをした。
今回ほど、出来の悪いおはなしはない。
こんなのを、公開してもいいのだろうか・・(謎)

2月に、R様からリクエストがあった。
しかし、次女の卒園・入学があり、忙しかった。
4月に入り、何とか落ち着いたので、書いた。

啓介が涼介のFDを、どうやって借りたのかな・・・と細かい部分なのに
気になった(爆)

後半の同じFD乗りとの恋を、書こうと思ったけど、恭子はやっぱし
啓介一筋でしょう~

啓介と恭子は、このまま終わらないでしょう~
きっと再会するでしょう。
(そう願ってる♪)


ここまで読んで下さって、どうもありがとうございました。


    2004年4月22日


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