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彼女は去年の暮れに亡くなったお母さんの遺産相続のことについて、実の姉さんとやりあっているのである。彼女たちはふたりともアメリカの国籍を持っている。お母さんは日本人で、数年前に亡くなったお父さんが沖縄人からアメリカ人になった人であった。彼はハワイに住んでいて、息子、つまり幸子さんの弟が今もそちらで結果としてそのまま父方の財産を全てひとりで相続した形になっている。幸子さんがハワイまで行って遺体の始末までひとりですませたということである。だから、今回の相続に彼は遠慮するらしい。
お母さんの財産と言っても、下宿屋さんだったので、その家賃が入ってくる他には、さして大金はないようなのだが、貸し金庫があって、そこにいくらあるのかわからない。ただ、そのコードは幸子さんだけが知っている。姉さんはそのことは、幸子さんが相続を一切放棄したら、あとでこっそりわけよう、なんて、まともには考えられないことを言ってきているのである。幸子さんにしてみれば、お金がどうこうというのでも無いらしいが、お母さんの物が全て捨てられるのがたまらなくつらいらしい。それに気の全然合わない、日本から出てこない姉が勝手なことを言ってきているのが気にくわない。。である。
そこで、オニオンとしては、全部あきらめるか、最後までいくかのふたつしかない。どちらか選ぶしかない、と言った。彼女の性格からあきらめるのは不可能のような気がしたので、やるのなら徹底的にやれ、と応援したのである。まず、彼女はアメリカ人、権利の国アメリカ、自由の国アメリカ人である。それを思い起こさせて、ハワイにまだ元気な親戚(おじさんやおばさんたち)のことも頼れるのだと言った。それにハワイは暖かい、太陽がさんさんである。人々だって、ボルドーに比べりゃ笑うし、明るい。なんだって、ハワイではないか。。と。
彼女の旦那さんは、フランスとアメリカの二重国籍を持っているが、もともとフランス人なのでじめじめしている。特にもう65歳で年金も減ったし、体も動かないし、彼のフランスの父が残したという家と財産を待っているようなのだが、義理の母が91歳で健在だから当分は無理、というか旦那の方が先に逝ってしまいそう。。つまり、幸子さんに関係なく、旦那さんは旦那さんでどうにもならない立場にはまりこんでいるのである。それに彼女が付き合うことすらすでに辛いらしい。なら、きっぱりと「別れなはれ」とは言わなかったが、国に帰れば!とアドバイス。今が大事な時なのだよ、決断しなけりゃならないよ。と。。彼女もだんだんとハワイのことを考えると嬉しくなってきたようだ。言葉の通じる親戚がいるのだ。それに、自分の国なのだ。フランスの田舎で惨めな思いをしているより、ずっとそのほうが良いにきまっている。
オニオンの実家はさほどの問題も起こらなかったが、財産自体もなかったからだ。オニオンにとっては、本当の父の財産は自由の精神であると思っている。誰にも従わなくてよい、つまり自分が主であるのだ。そして、自由であるという事は、まずなにが、自分には出来る事か出来ない事かの区別がついて、出来る事をやる自由、出来ない事を出来るようにする自由、そして、やりたくなければやらない、ということだと思う。出来もしないことを出来ないから不自由だと言うのは容易い。ややこしくなってきたようなので、ここで止める。
なぜか、他にもひとり日本人でオニオンに電話をかけてくる女性がいる。手紙を出しても返事は来た事が無いのである。ところが、思わぬときに留守電に伝言が残っている。声が聞きたかったということで。。彼女はオニオンの声を聞いてほっとするらしい。元気が出るのかもしれない。幸子さんにもいくらか元気が伝わったと願っている。それもオニオンがお世辞を言わないからだろう。思ったことをずばっと言うからだろう。もちろんしょっちゅうずばっと言われたら堪らないだろう。でもそうやってビッグオペレーションが必要な時もあるのである。ビタミン剤みたいなものである。(そんなええもんか~。~)