普通ってすばらしい!!

普通ってすばらしい!!

Triangle  前編



すべてが落ち着いてアルディ家でこれまでの疲れと
辛さを癒していたあたしのところに、和矢が来た。




『シャルルを選ぶならもうお別れだ』
そう言って日本に戻った和矢。
もちろんあたしはシャルルを助け、アルディ家の
当主として復権させたら和矢の元に戻ろうと誓っていた。

でもそれは、今回の事件が自分の中でちゃんと整理され、
笑顔で会えるようになってから、と思っていた。

今はまだそのときじゃない。



シャルルは傷も癒え、立派に復権したけれど、なんとなく、
本当に気のせいと思うぐらいかすかにおかしい。以前の
シャルルと違う。

だからなかなか日本に戻れなかった。
戻りたくなかった。



「シャルルが俺を呼んでくれたんだぜ」
「え?」

あたしは和矢の言葉が信じられなかった。

だって。
シャルルが言っていたもの。あたしがシャルルにキスしたとき、
『マリナちゃんはオレに恋し始めている』って。そう言って
嬉しそうに笑っていたもの。

なぜ和矢を呼ぶの?
あたしまだまだシャルルにしてあげないといけないことが
たくさんあるのよ。


「和矢、ちょっと外に出ましょう」



夕暮れのアルディの庭を歩く。丁寧に手入れをされ、隙のない庭。
どこかでシャルルが聞いていてくれることを祈っていた。

「和矢、ごめん。あたしまだ帰れない。シャルルがおかしいの。
どこが、といわれると困るけど、とにかくおかしいの。心配なの。
見守りたいの」
あたしは和矢に言った。

でも和矢は
「シャルルがマリナを迎えに来いと言ったんだ。あいつが
そう言ったんなら決定だろ?だから従った。俺だってマリナを
迎えに来たかった」

恐ろしく冷静に言う。
まるでシャルルの冷酷さが乗り移っているようだ。

「でも・・・あたしをもう少しココにいさせて?あんたも
シャルルが心配でしょう?お願い」
あたしは和矢の強引な申し出に情で訴えた。







「ゲームオーバー・・・だな」
突然シャルルがやってきた。というよりは今の話を聞いていた
ようだ。
「な、なに??」
あたしは驚いて二人を交互に見る。

「まさか!」
あたしは叫ぶ。


「カズヤが君を迎えに来るって言った。オレは返すつもりなんて
なかったけれど、選ぶ権利はマリナちゃん、君にある。
『それならマリナに選ばせよう』ということになったんだ。そして
君は答えなかった。どういう意味だかわかるかい?」
シャルルは意地悪く言う。

和矢を見ると悔しそうに唇をかんでいる。


あたしはだんだん悔しくなってきた。

「なに賭けてんのよ!このばかシャルル。あたしの気持ちを
弄ぶのはやめて。これでもいたいけな乙女なの。乙女心を
砕くなんてひどいわよ!」
あたしはシャルルに向かって叫んでいた。

「じゃぁ、君は日本に帰るんだね」
シャルルは感情を見せない鉄仮面の表情で言った。
「明日答えるわ」
あたしはムカムカしながら言った。
「シャルル、今日の夕食は普段より豪勢にして頂戴。お夜食もね。
夜通し考えるためにはこれでもたりないくらいよ!」


あたしはフン!と鼻息を荒くしてアルディ家に用意してもらっている
自分の部屋に戻った。






「カズヤ。今日はココに泊まるか?」
シャルルが聞いた。
「いや、ホテルを予約してる。あの時・・・お前と
マリナを得るための決闘をしたときを思い出したよ。
あの時もお前が勝ったんだよな。それでもここに来ちまう。
俺・・・かっこ悪いよな。でもやっぱりマリナが好きなんだ。
あきらめきれない・・・。明日また来るよ」

和矢は寂しげな瞳を残し、シャルルに背を向けた。

「待て、カズヤ。それは俺に有利になるぞ。会えるかどうかは
別だが、オレとマリナは一つ屋根の下だ。同じ条件でなければ
意味がない。ここに泊まれ」

「・・・ああ」



あたしはこのやり取りのことは知らなかったけれど、
自分なりに一生懸命考えた。

自分がどうしたいのか。誰と一緒にいたいのかを。

あたしは誰が好きなの?
あたしは誰と過ごしたいの?

・・・誰とキスしたい?
・・・誰にだきしめられたい?

一生懸命考えた。漫画のプロットを作るときにもここまで
考えたことのないぐらい一生懸命考えたのよ。



「シャルル」

口に出して呼んでみた。鼓動が早くなる。
嵐のような感情が切なく,強く心を締め付けていく。

「和矢」

同じように・・・呼んでみる。
時間が戻る。楽しかった中学生のあたし。じゃれて遊んで、
甘酸っぱい思い出。


あたしはどっちに恋してる?


あたしはソファにもたれ、クッションを抱きこみ
考え込んだ。


そしていつの間にか眠ってしまった。



小半時がたち、目が覚めた。
ゆっくりとまぶたを持ち上げ、まどろみの中で
夢に語りかけるように
「・・・そうだったんだ」
あたしは呟いた。
そう。和矢との恋は、もう思い出になっているんだわ・・・
そう思いながら、時計を見た。


「あ、夜食の時間!!」
あたしは飛び起きてアルディのダイニングに向かった。










********************************

えっと・・・
時間軸は「トルソ」直後ぐらいです。
原作上シャルマリが一番幸せな頃ですよね☆

またまた和矢に泣いてもらっちゃいました。
やっぱり、シャルマリ派にとって、切っても切れない
お方なんだよね・・・。

鑑定医シリーズを・・・と思ったのですが、
即興で書いてしまったので、こっちを先にUP。
期待はずれでしたら、スミマセン・・・。


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