普通ってすばらしい!!

普通ってすばらしい!!

遠い記憶の彼方に 第1話


第1話「それは流れ星のように」




「シャルル!大変です、急いでテレビを見てください」

研究室のホットラインがなった。
この番号を知っているのはアルディでも唯一、従妹で第一秘書のジルだけ。
重要でも緊急を要しない電話は彼女が対応し、判断する。
この回線に連絡が入るというのはよほどのことだ。

シャルルは緊張してテレビをつけた。


『飛行機オーバーラン!死傷者が出ている模様です。
各大使館では自国の旅行者などの確認対応に追われています。
飛行機はナリタ発、そのため死傷者は日本人が多いとのことです。
乗客名簿は次の通りです・・・』

そしてその名簿を見たシャルルは、固まった。発作ではない。
自力で自分の体を動かせなくなった。

その瞬間だった。
テレビに映る飛行機が・・・爆発した。それと共に大きな炎が
主翼付近を包む。

『あ、今爆発が起こったようです。ご覧ください・・・』

「マリナ!」
シャルルはテレビに向かって叫んだ。
「シャルル?大丈夫ですか?」
「ジル、オレはこれから空港に行く。大使館から出る情報は簡単に
まとめて随時オレのパソコンに送信してくれ。それと・・・
アルディのICUを使えるようにしておいてくれ」
「承知・・・」
シャルルはジルの返事を聞くことなく電話を切り、疾風の如く
空港に向かった。


アルディか・・・。
まさかあの館に戻ることになるとは・・・な。

シャルルが屋敷を出たのが4年前。だが、かなり。
かなり遠い過去のように感じる。

そんなことを思いながら車を駆った。



シャルルは空港滑走路脇に仮設された救護テントに入る。
ここには傷を負った乗客が次々と運ばれてくる。
背中まで伸ばしたウェーブの白金の髪に、涼しげな青灰色の瞳。
背も高く、モデルも顔を隠して逃げていくほどの美貌のルックス。
およそけが人でもなければこんな所にいることもないだろう。
彼に気がついた人が息を飲む。ざわついていたテント内が一瞬で
静まり返った。
「シャルル ドゥ アルディだ・・・」
誰かが密やかに彼の名前を呟いた。

現在は鑑定医を主にしている。臨床は精神疾患論文のためのサンプリング
患者のみのシャルルだが、かつては何例もの難手術を成功させ、
「外科の神」と呼ばれるほどの名医である。
その彼がこの野戦病院さながらのテントに顔を出したことで、処置に
あたる医師たちの士気も上がった。

「私が赤タッグを引き受ける」
シャルルはトリアージタッグの赤、つまり重篤な状況の乗客の処置を
しながらマリナを探す。彼により、けが人はどんどん的確な手当てをされ、
しかるべき場所に移されていく。重症者対応にもかかわらず、他の医師
よりも5倍以上のスピードで手当てを行っていた。

「お願いします!」
ストレッチャーに乗った乗客が運び込まれる。ちょうど処置を終えた
シャルルが声のほうに視線を送る。
「!」
マリナ・・・
心臓が爆発しそうだった。

これがマリナか?
小菅で別れたときよりほっそりしている。もともとぽっちゃりタイプ
だったが、そんな面影は全く見られない。
背も伸びている。日本人女性の平均に限りなく近い。別れた時は彼女が
18歳。一般的な女性の体ならすでに成熟され、ダイエットなどでやせる
ことはあっても、10センチ以上も身長が伸びることはほとんどない。
が。意識を失い蒼白になっている彼女はどうみてもマリナだった。

記憶の中の深いところにおいたパンドラの箱。そこにつめた
輝かしき10代の思い出。鍵はマリナだった。
溢れる懐かしさと愛しさに眩暈を覚えながらそのストレッチャーの
元に寄る。


トリアージタッグは赤。意識はない。
これまで感じたことのないほど強く鼓動する自分の心臓を抑えながら
触診をする。左腕・左ひざと大腿の骨折と頭部の打撲。この場でできる
限りの処置を行いアルディ家のICUに搬送を命じた。







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うーん、なんだか専門知識の必要な話を書いてしまったぞ・・・
この話、完結できるかなぁ(悩)
でもやっぱりマリナとシャルルをどうしてもくっつけたいの。
和矢、ゴメンネ。あたし、やっぱりシャルル派。和矢、あんたは
徹底的にただのイイヒトなんだよね。あたしの中では・・・


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