普通ってすばらしい!!

普通ってすばらしい!!

遠い記憶の彼方に 第7話(完結)


第7話「永遠の約束」







「シャルル・・・」
「マリナ」

優しく抱きあった二人は互いに目の前の愛しい人の名を呼ぶ。

「マリナ。結婚式はランスの教会だ。新婚旅行は世界中を回って
月まで行こう」
シャルルは再び、言った。
「ええ、シャルル。そして『何もかも、君にやる。この世界でオレが
手にできる全部を、君に』でしょ?」
マリナはそう言って微笑んだ。
「そのとおりだ」
シャルルは飛び切り優しい光を瞳に映しマリナを見つめた。
「そんなものよりシャルルの永遠の愛がいいわ」
マリナは真剣な顔で言う。
「誓うよ。マリナ、君に永遠の愛を」
「あたしもよ。シャルル。ずっと、ずうっと変わらない愛を誓うわ」

ほとんど距離のないお互いの視線を絡ませ、二人は見つめあう。
シャルルは両手をマリナ頬にあて、その唇に自分のそれを軽く重ねた。
「マリナ・・・」
そして熱い吐息とともに彼女の名を囁き、深く重ねあわせていった。





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「シャルルっ」
アルディの屋敷の庭でマリナがシャルルを呼ぶ。
骨折はもう完全によくなって走ることもできるようになった。

「少し傷が残ったな」
マリナの腕を取りシャルルはそこに口付けた。
「やっ、もう!恥ずかしいじゃない! 」
マリナはシャルルから離れようとしたが、腕をつかまれていて逃げられない。
「形成の手術をしようか?」
シャルルは言う。
「ううん、あたしはこのままでいいわ。だってこの傷があんたとの再会を
作ってくれたのよ。大切な思い出だわ」
マリナは屈託なく笑う。



「シャルル様、お客様です」
執事が中庭にやってきた。
「ああ、ここに通してくれ」
薫だった。
「薫!」
「おー、おまえさん、記憶が戻ったって?記憶喪失じゃなくて、物忘れで
ずっとそのままかと思ったよ」
「ちょっと、久しぶりに会ったのにそれはないんじゃない?
まぁでも、思い出すきっかけはあんたのバイオリンだったからさ。
・・・ありがと」
マリナは素直にお礼を言った。
「実はね、思い出したきっかけの曲がベートーベンの『春』だったの。
夢だったんだけど、薫とシャルルが息ぴったりで弾いていたの。それで
思い出したのよ」

薫とシャルルは顔を見合わせた。
お互いにそんなことあるはずがない、という表情で。

「ねぇ、正夢にしてくれない?一度でいいから。あたしあんたたちの
ソナタ聴いてみたいわ。シャルル、薫、お願い!」
マリナはありえないことを夢見るように言った。

「ヒビキヤ、一度やるか?」
シャルルもらしからぬことを言う。
薫は驚いてシャルルを見る。
「・・・オッケ。マリナの全快祝いだ。最初で最後だからな。
天才センセ、あたしの足を引っ張るなよ。マリナも寝るんじゃないぜ」
「誰にモノを言っている。ヒビキヤこそ逃げ出すんじゃないぜ。プロの
腕を見せ付けてみろ」
二人の視線がビームのように重なりメラメラと燃え上がっているのが見える。
「もう、二人とも!そんな風に挑むように弾く曲じゃないでしょ!!」

口げんかをしながら3人はアルディ家のピアノの間に移った。

「ぶっつけでいいのか?」
「ああ、問題ないね」
「もう!二人ともロマンチックにお願いよ!」

楽器を構えても言い合いをしている二人を怒鳴りつけ、マリナは
音の響が一番いいところに椅子を用意し、拍手を贈る。
二人は一瞬のアイコンタクトで演奏を始めた。


春の到来を告げる伸びやかな旋律、暖かな陽の光を思わせる優しい音。
季節が変わり、甘い風の香りやそれまでより増した景色の輝きが
音になって伝わってきた。
重なり合う二つの楽器がマリナの元に春の風を運んでくる。

薫はプロだから当たり前かもしれないけど、シャルルもこんなに上手
だったんだ。だって薫の表情見ているととても気持ちよさそう。
・・・この二人、本当に仲が悪いのかしら。
目を閉じ、薫のバイオリンに刺激されるようにピアノを弾くシャルルは
それは色っぽくて、目のやり場に困るし、シャルルのピアノに刺激を受けて
奏でる薫が本当に嬉しそうで、無理やりでも頼んでよかった・・・

マリナはそう思いながら二人の演奏に聞きほれていた。



「ブラボー!!最高よ!二人とも!!!」
曲が終わった瞬間にマリナは惜しみなく拍手を贈った。
演奏をした二人は何の迷いなく握手を交わす。
とたんにはっと気が付いて怪訝な顔になったが、それほど
会心の演奏だった。

マリナは180センチある二人を一度にギュッと抱きしめた。
「「マ、マリナっ」」
シャルルも薫もたじろいで離れようとしたが、マリナの目じりに
光るものを見て、大人しくなった。
シャルルが抱きしめられたままマリナの頭に手を乗せ、ポンポン、
と優しく叩く。
「ありがとう、二人とも」

「じゃ、あたしゃ帰るよ。これからイギリスに演奏に行ってくる。
空港に行くついでに寄っただけだ」
「薫、がんばって!今回はいけないけど、またいつか聴きに行くわ」
「ああ、その天才センセと来てくれ」
薫は魅惑的な視線に悪戯色をのせ、口角を少し上げてウインクをした。






「行っちゃったね」
マリナは嵐が去ったような安堵と、少し寂しげな微妙な表情で微笑む。
「寂しいか?」
「ううん。今までも薫とはこんな付き合いだもの。離れていてもお互いが
必要なときは何かに導かれるように連絡を取り合うの。素敵な親友同士でしょ?」
「そう・・・だな」
シャルルはこの二人の結びつきに軽く嫉妬したが、それよりも気になっていた
唯一の親友の顔を思い浮かべる。幼い日に「親友」と言ってくれたただ一人の顔を。
「いつか・・・時が来たらカズヤに会いに行こう」
「そう・・・ね」
無表情のシャルルの顔からはどんなことを考えているのかマリナにはわからない。
が、マリナはシャルルもきっと自分と同じことを考えているだろう、と思う。
「もう絶対シャルルのこと忘れない!大好きよ、シャルル」
マリナは触れるほど近くにあったのに、お互いに触れられずにいたシャルルの手を
ぎゅっと握った。
「マリナ・・・」
シャルルはその手を自らの方に引き、マリナを抱き寄せ、髪に唇を落とす。
「忘れない・・・だけじゃない。離れない、も、だよ。マリナちゃん」
シャルルとマリナはお互いの鼓動を感じながら二人の永遠を誓った。

「愛してる。いつまでも一緒だ・・・」
「愛してる。いつまでも一緒よ・・・」

二人、同時に囁いた。


                                                                 Fin 
















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ついに完結です。
7話という中途半端な感じですが、二人が幸せになれてよかったわぁ(^^)
やっぱりシャルマリ最高♪

今回シャルルは鑑定医になっていて、性格も冷酷な感じを出したかったのに、
思い入れの強さから(笑)甘甘シャルルになっちゃいました。
あ、一番の原因は文章力のなさ、なのですが・・・

次回鑑定医設定のを描くときはもっと厭世家で冷徹な感じを
貫きたいと思います。

読んでいただきまして、ありがとうございました。


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