夜の商売では「携帯電話」が必需品となる。
主婦も一応持っていた。
お客さんの番号を聞きだすのが狙い。
そうすればお店が暇なときにお誘いをかけられるからだそうだ。
主婦は、それが苦手だった。
ウソで作られた夜の自分に自信があるわけない。
携帯番号を聞いても教えてもらえなかったらショックだし、
番号をゲットして、お店が暇なときにお誘いしたとしても断られてしまったらショックだから。
主婦は、お客さんから番号を聞かれたときには素直に教えてやり、ついでにお客さんの番号もゲットするようにした。
もちろんプライベートとはグループを区別しといて、日中かかってきても完全に無視できるようにするためだ。
お店がヒマなとき、他の女の子たちが一生懸命に携帯から自分のお客さんへお誘いコールをしてる中、主婦はお客さんに電話してる振りして友達としゃべっていた。
ある夜、いつものようにお客さんのお相手をしていると、お店のママに、
「Hさんのテーブルお願いね」と言われた。
Hさん・・・どっかで聞いたことある名前だ・・・
そのテーブルを見てみると・・・あ!あの怖い男だ・・・!
・・・どーして自分がお相手をしなけりゃならないんだ?
あの男はアツコちゃんのお客さんのはず・・・。
そう、アツコちゃんはお店の№1なので、あっちこっちのテーブルから引っ張りだこなのだ。
つまり主婦は、アツコちゃんがテーブルに来るまでの「つなぎ」なのである。
でも、よりによってあの怖い男の席だ・・・。
どんな会話すればいいんだ?
話題がない・・・!
・・・仕方なく怖い男の隣に座り、まずは挨拶から・・・
「いらっしゃいませ~、はじめまして!」
・・・でも、その後が続かない・・・!
するとその男、いきなり何を言い出すかと思ったら
「俺よ~、半年前に離婚したばっかなんだよ~」
・・・り・離婚話って、そんなに自慢げに言うことか~?
怖い顔のわりに茨城弁たっぷりの話し方と、話題豊富な人間性、こーゆー業界に慣れてるせいか逆に主婦が接客されてしまった。
・・・このお客さん、見た目は怖いけど話してみると楽しくて、とっても楽チン!
慣れた話術で携帯番号を聞かれる。
もちろん教えてやり、彼の番号もゲット!
「お客さん」のグループに登録する。
しばらくすると№1のアツコちゃんがテーブルについた。
「あ~ん、Hさあん!こないだお店の外で見かけたから声かけたのに、ムシしたでしょおおお?アツコ悲しいいい~!」
・・・主婦にはまねのできない会話だった・・・
それ以来、Hさんは週に1回のペースでお店に来てくれるようになる。
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