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時折暑くなったりしますがとても過ごしやすい日々が続いていますね。ひところ肌寒かったり雨が続いたりと不安定な天候でしたが、ここしばらくは快適です。こうなると何だか無性に動きたくなりますよね。 私事ですが誕生日前後には必ずコンサートに行くことにしています。まあ自分へのご褒美ですね、今まで無事に過ごせたことへの感謝、これからも穏やかに生きて行こうという決心、そんな感じでしょうか。 今年はオペラに行きました。藝大でオペラを観るようになってからオペラへの抵抗感がだいぶ薄らいだように思います。若いときの毛嫌い、食わず嫌いも時が経てば平気になるようなものです。今回は昔もっとも嫌いだったイタリアオペラのひとつ、プッチーニの「トゥーランドット」です。 今回のお目当ては最近人気の指揮者アンドレア・バッティストーニ。一度生で聞きたかったのです。けれどオケは東京フィル、トゥーランドットとカラフ以外は日本人キャスト、果たしてこのグランドオペラの華がうまく咲くのでしょうか。 プッチーニ オペラ『トゥーランドット』<演奏会形式>(2015年5月18日(月))指揮:アンドレア・バッティストーニトゥーランドット(ソプラノ):ティツィアーナ・カルーソーカラフ(テノール):カルロ・ヴェントレリュー(ソプラノ):浜田 理恵ティムール(バス):斉木 健詞アルトゥム皇帝(テノール):伊達 英二ピン(バリトン):萩原 潤パン(テノール):大川 信之ポン(テノール):児玉 和弘官使(バリトン):久保 和範合唱:新国立劇場合唱団児童合唱:東京少年少女合唱隊 ほか コンサート形式は音楽をじっくり聞くのに向いています。豪華絢爛たる舞台装置も素敵ですが、オケの音と歌声に聞き惚れるのもまた一興かと。 舞台は照明をうまく使って場面の雰囲気をうまく伝えてましたし、少ない動きながら演技もありで長丁場を全く飽きることなく最後まで聴き、観ることができました。 トゥーランドットを全曲通して聞くのは実は初めてでしたが、冒頭の響きからごつごつした筋肉質の塊が噴出してきて、まるでオルフのカルミナブラーナみたい。続くオケの絶叫、不協和音などこれは完全に「20世紀の音楽」(1920年代の作品なので確かにそうなのですが)です。時折叙情的な甘く切ないメロディー、柔らかな響きなども聞かれますが、私にはオルフ、シェーンベルク(グレの歌)、リヒャルト・シュトラウス、ハリウッド映画音楽が聞こえてきました。プッチーニというとラ・ボエームの印象が強くて泣かせるメロディーを延々と聞かせる、ちょっと感情過多な作曲家だったのですが、こんな現代音楽すれすれなところまで来ていたことに今更ながら驚きました。 さてお目当てバッティストーニはというと、確かに凄い指揮者です。とにかく音がでかい(笑)。サントリーホールはよく響くホールなので音が飽和状態でした。その叩き付けるようなフォルテは豊かで明晰な響きであり、時に驚怖を、時に熱狂を客席から自在に引き出していました。それだけでなく弱音でも決して痩せることがないのには正直驚きました。これが日本のオーケストラとはちょっと信じられませんでした。それでいながらベースラインもきちんと聞こえるし、弦楽からビロードのような響きを引き出す、やはりただ者ではありません。 音楽の運びはダイナミックでストレート、カンタービレにもう少し自在さが欲しいところもありましたが、若干27歳ですよ。この衝撃はラトルが初来日したとき以来です。周囲がうまく育てあげれば将来大物になれるでしょう。 歌手について、カラフのヴェントレさんは不調、声が出てませんでした。それでも有名なアリア「誰も寝てはならない」では見事な歌唱、拍手喝采でした。トゥーランドットはいまいち存在感不足、それに比べてリューの浜田さんは可憐でいながら芯の強さも持つこの役を見事に歌い演じきりました。リューが死ぬ場面では思わず涙がこぼれました。 彼女に限らず、日本人キャストの素晴らしさには感動を覚えました。歌声だけでなく声で演じると言いますか、見ていて聞いていてほんとに楽しかった。あと合唱の威圧的な響きも凄かった。 終幕のエンディングはプッチーニの死により弟子のアルフォンソが書いたものですが、ちょっとせっかちな印象があるものの(特にトゥーランドットの改心が早い)、最後に「誰も寝てはならない」のメロディーで皇帝の栄光を讃える大合唱+オケの熱演にはカラダが震え、脳天に何かが突き刺さるような痺れるような感覚で、息ができないほどでした(大げさではなく、あの場にいた人ならわかってもらえると思います)。その圧倒的な演奏の前では筋書きが不自然だの、弟子の書いた部分が不出来だのといったことはどうでもいいことのように感じました。 最後の音が鳴り終わった途端に大ブラボーの連続、いつまでも鳴り止まない大拍手が今回の公演の成功を何よりも物語っていたのではないでしょうか。 バッティストーニ、楽しみな指揮者です。またオペラ行きたいなあ。[CD] アンドレア・バッティストーニ(cond)/レスピーギ:交響詩≪ローマの祭≫≪ローマの噴水≫≪ローマの松≫(ハイブリッドCD)バッティストーニの名を日本に根付かせた、レスピーギ。日本のオケとは思えませんよ。[CD] アンドレア・バッティストーニ(cond)/マーラー:交響曲第1番≪巨人≫(ハイブリッドCD)東フィルとの第二弾はマーラー。未聴ですがこれも凄そうだなあ。【送料無料】 Verdi ベルディ / 『ファルスタッフ』全曲 メドカルフ演出、バッティストーニ&パルマ・レッジョ劇場、マエストリ、ヴァシレヴァ、他(2011 ステレオ)(日本語字幕付) 【DVD】プッチーニはないですが、ヴェルディのDVDは何点か出ています。(参考)小澤さんがパリで振ったトゥーランドット。画質は悪いですが、これも大変な名演です。DVD出ないかなあ。
2015年05月23日
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ずっと雨続きでしたがしばらくぶりの梅雨の晴れ間でほっとします。鬱陶しい雨天続きは気持ちも沈めてしまいます。やはり日差しがあると気持ちも明るくなりますね。 昨夜は芸大フィルの定期演奏会でした。指揮は尾高忠明さん。ラフマニノフの第2交響曲やブリテンの戦争レクイエムなど、このコンビでの名演奏に接し今回も期待していました。 プログラムは渋すぎる内容です ヴォーン・ウィリアムズ タリスの主題による幻想曲 ディーリアス 「村のロミオとジュリエット」〜楽園への道 ウォルトン 交響曲第1番 いくらイギリス音楽に造詣が深い尾高さんのコンサートでもこれは渋すぎでは?と思いましたが、案の定、お客の入りがよくありませんでした。6割程度かな? ディーリアスかVWの協奏曲にしていれば、あるいはエルガーの「コケイン」か「南国にて」だったら、などという勝手な想像もしたくなってしまいます。それもまた楽しいのですが。 タリスは凝った弦楽オケの曲で、通常の弦楽オケに各楽器二人ずつの小アンサンブルとカルテットの3つの編成が時に同時に時に別々に時に往還しながら、曲が進んで行きます。これは録音を聴いてるだけではわからなくて、聴きながら見るに限ります。曲自体は主題をそれぞれのアンサンブルで交わしながら紡いでいく感じですが、全体としては美しい響きと寄せては返す波のようなダイナミクスを味わう曲ではないでしょうか。日本の弦楽は美しいけど細身な響きですが、昨夜の芸大フィルは分厚い響きを聴かせてくれました。 ロミオのほうは割と有名な曲ですが、楽園という宿屋に放浪中の二人が向かう場面の音楽で、日本的に言えば「道行き」です。たいへん繊細で美しい音楽ですが、これから二人が向かうのは死(楽園という宿屋名もまた皮肉ですねえ)ですからなんともせつない音楽でもあります。 ウォルトンの交響曲第1番をライブで聴けるとは思ってなかったので楽しみにしてましたが、結果は想像以上の出来映えで、これはちょっと事件ではないでしょうか。 第1楽章のリズム動機のかっこよさ、続く主題も勇ましく、しびれっぱなしです。第3楽章までの何だか晴れない鬱屈した気分はこのメランコリックな楽章で頂点に達し、聞き手を苦悶の底に陥れます。 ところが最終楽章ではそんな気分とは正反対の、エネルギッシュな音楽が延々と続く。それは何かを必死で追い求めるような、勝利を確信した正義のヒーローが敵をばったばったとなぎ倒しているような、ひたすら活力ある音楽です。そろそろ終わるのかと思えばまだ続く、このしつこさ。初めて聴いた人はもう早く終われと思ったかもしれない。 この曲の印象を一言でいうと「やたらうるさいシベリウスの5番」、シベリウスファンなら聴けると思います(たぶん)。 尾高さんも「疲れる曲です」と言ってたように、オケにとっては体育会系な曲です。めったに聴けない曲を最高の演奏で聴かせていただき、昨夜はほんとに幸せでした。芸大フィルの皆様、尾高さん、ありがとうございました。 最後に、もっとイギリス音楽を聴きましょう!【楽天ブックスならいつでも送料無料】【CDポイント3倍対象商品】Andre Previn RCA Years::ウォルトン:交響曲第1番 ヴィオラ協奏曲 [ プレヴィン/ロンドン響 ]若き日のプレヴィンによる録音。代表作ヴィオラ協奏曲もついてお得かも。【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤】交響曲第1番、ベルシャザルの饗宴、ヴァイオリン協奏曲、ヴィオラ協奏曲、他 ウォルトン&フィルハーモニア管、メニューイン、他(2C [ ウォルトン、ウィリアム(1902-1983) ]やはり作曲者自演盤も聴いておきたい。メニューインのソロも見事!
2014年06月14日
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関東はもう梅雨明けじゃないかってぐらい、暑い日が続いています。それでもまだじっとりした湿気もあり、余計に体力を消耗させますね。 先月ですがコンサートに行ってますので、備忘の意味で記述しておきます。どちらも素晴しい演奏で、大変満足しました。1.芸大フィル定期・特別演奏会(オール・ラフマニノフ)(上野奏楽堂、6/21) ピアノ:江口玲 指揮:尾高忠明 パガニーニの主題による変奏曲 交響曲第2番 どちらも大好きな曲だけに聞き逃せなかったのですが、仕事先から駆けつけたときにはすでにパガニーニが始まっており、中に入れず。ロビーの大型テレビで鑑賞しました。 輝くようなピアノの音に加え、尾高さんの表情付けも大げさにならず演奏の品格を見せます。第18変奏のとろけるようなメローディも甘さの中に大人のほろ苦さを感じさせ、芸大の学生オケであることを忘れさせた瞬間でした。 さて、演奏が終わってアンコールの前に我々「遅刻隊(笑)」はホールの階段まで誘導され、そこでアンコール(ロンドンデリー)を聞いたけど、素晴しいピアノの音にしばし陶然とする。このホールでステージが遠い階段隅でピアニッシモでもはっきり聞こえるなんて驚異的だし、ブリリアントでしかもゴージャスな響きに圧倒されました。 休憩時間後「遅刻隊」は最前列に行けと言われましたが、たいていの隊員は休憩のどさくさに紛れて後ろの席に移動していきました(笑)。私は芸大の若い女の子を間近で見るのもいいなと、そのままで。 件のピアノを見ると「STEINWAY」とだけ。普通は「STEINWAY&SONS」なのでもしやと思いプログラムを見返すと、なんとホロビッツ愛奏の「CD75」ではないですか!100年前にニューヨークで生まれた伝説のピアノ。ホロビッツが愛用し、来日の折わざわざ運び込んだ伝説のピアノだったのです。これはパガニーニを生で聞きたかったなあ。 後半の交響曲は出だしからただならぬ雰囲気、これは前半の手応えにオケがノリにのっている証拠です。いきなりまとめちゃいますが、これは今まで生で聞いた中で最高のラフマニノフでした。尾高さんの音楽にオケ全員がそれぞれに思いを乗せている、とでも言えばいいでしょうか。第3楽章での甘いだけじゃなくどこかせつない思いに目頭が熱くなったし、フィナーレの堂々たる開放感に胸躍らせる、まるで歴史大河ドラマをぶっ通しで見たような重量感を伴う名演でした。(もしCDが出たら絶対買いたい) 尾高さんもしっかりまとめあげるよりある程度自由を与えたやり方のように見受けられました。この長い曲が短く感じられた集中力もいい。なにより下から見上げた尾高さんが終始笑顔で満足そうに振っておられたのが、何よりもこの演奏の出来を物語っていたと言えましょう。2.ジャパン・グスタフ・マーラーオーケストラ 第9回演奏会(文京シビックホール、6/24) 指揮:井上喜惟 交響曲第9番(マーラー) 井上さんは同年生まれためか、気になる指揮者です。彼の音楽は独特の癖があるのですが、はまったときは至高のひとときを味わえます。彼はマーラーを熱心に演奏していてこのオーケストラもマーラー演奏のためのアマオケですが、結構優秀です。 今回のマラ9も期待に違わぬよい演奏でした。第1楽章冒頭からただならぬ感じで名演の予感をさせます。第1主題が全オケ提示される直前の盛り上がり方、タメの深さに圧倒されました。最近はなかなかこういう風にやってくれないんですよね。 第2、第3楽章は練りこみがイマイチで第1楽章の圧倒的パワーの後で疲れたか、と危惧しましたが、最終楽章冒頭の主題の歌い方の濃さに続き弦楽の分厚さに「やはりマーラーはこうでないとなあ」と妙に納得。 現れては消える主要主題の交代に過去を思い出しては前に進もうとするマーラーの積極的な生への燃焼を聞き、コーダ直前の爆発と徐々に音が薄くなって消え入るようなラストに精一杯生きたこの偉大な指揮者・作曲家の背中を見た思いがしました。これは決して死の音楽などではなく、生を生ききった人だけが持つ、ある感慨の感情だと思います。 「感無量」という言葉がぴったりくるでしょうか。開かれた、明るい明日さえ感じさせました。 素晴しかったのはお客さんもで、ラストの静寂を十分感じ取ってからの拍手の沸き方は滅多にあるものではありません。 アマオケゆえの傷はもちろんありましたが、たいへんな熱意と情熱で演奏しており、じゅうぶん満足いく演奏会でした。【送料無料】ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 パガニーニの主題による狂詩曲大人気ランランのラフマニノフ。何しろめちゃウマ。【送料無料】ベルティーニ/マーラー:交響曲第9番&第10番井上さんの師匠ベルティーニの東京都交響楽団とのマラ9。この透明感、希望へとつながるラストは弟子の井上さんにもちゃんと受け継がれているようです。都響もうまい。
2012年07月16日
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私事ですが、先月に祖母が他界しましたので新年のご挨拶は控えさせていただきます。皆様にとって、今年一年が良い年でありますように祈念いたします。 さて、恒例ウィーンフィルのニューイヤーコンサート。今年はマリス・ヤンソンスさんでしたが、珍しい曲が満載な上にチャイコフスキーの「眠りの森の美女」まで出てきて、多彩なプログラムで大いに楽しめました。 カルメンの名旋律を巧みに織り込んだ「カドリーユ」や「コペンハーゲン蒸気機関車のギャロップ」での機関車の走る様の描写などが印象に残る一方、「うわごと」のうっとりとした歌わせ方や「雷鳴と電光」でのたたみかける迫力も十分で、昨年の何となくウィーン情緒な演奏より、余程おもしろかった。 「悪魔的ダンス」(ヨーゼフ・ヘルメスベルガー)は小澤さんがニューイヤーで振ったなかで一番の出来でしたが、ヤンソンスはメリハリで畳み掛ける小澤流とは違った、ウネる感じで演奏していて、なるほどなかなかやるわいと一人ニヤついてました。 さて、来年の指揮者はまだ発表されていませんが、できればもう一度小澤さんにやってほしいですね。 今年もよろしくお願いいたします。
2012年01月01日
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10月からの激務からようやく解放されたものの、体調をすっかり崩してしまいました。11月初めより咳が止まらず苦しみましたが、今は薬が効いてきて収まってます。あともう少しって感じでしょうか。 先週11日に芸大学生オケの公演に行って来ました。指揮は高関健さんです。昨年以来ずっと追っかけしてます。 プログラムは、ポピュラーなもの。 ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より第1幕への前奏曲 モーツァルト:オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314(285d) ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 Op.68「田園」 田園を楽しみして行きましたが、モーツァルトのソロもなかなか楽しめました。この曲をこれほど楽しめたのは初めてかもしれない。ほとんど冗談のような語り口が面白く、「ああこれはおしゃべり、しかもノリツッコミなんだな」とカデンツァ部分を聞きながら気付いた次第。ソリストの青山聖樹さんに感謝とブラボーを。 田園は流行りの古楽演奏を横目で見ながらもオーソドックスな演奏で、久々にゆったりと聞けました。高関さんは相変わらず自分を出すことなく、作品世界の忠実な再現に心掛けた真摯な演奏で好感が持てました。なるべくテンポを動かさず、曲の古典性を意識した演奏だったと思います。(18日のミサ・ソレムニス行きたかった!) そんな演奏態度が評価され、この度「齋藤秀雄メモリアル基金賞」を受賞されました。これからのますますのご活躍に期待します!【送料無料】Beethoven ベートーヴェン / Sym.2, 5: 高関健 / 大阪centuryso 【CD】もう10年前の録音ですが、高関さんはベートヴェン全集を大阪センチュリー交響楽団と作成しています。最新のベーレンライター版です。【送料無料】Mahler マーラー / 交響曲第7番『夜の歌』 高関健&群馬交響楽団 【CD】高関さんと言えばマーラー。未出版の最新研究を独自に取り入れた「高関版」による演奏。
2011年11月20日
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今年のニューイヤーはオーストリア出身の指揮者フランツ・ウェルザー=メストでした。放送ではやたらにオーストリア出身ということにこだわっていて、終いには「貴族的な優雅さが・・・」なんて発言まで。オーストリア出身と言ったってリンツ生まれ、しかも貴族のパトロンが付いてる(どういう意味かわかるよね)だけで、本人は貴族でも何でもないし。 それにしても何とも盛り上がりに欠けるコンサートでしたね。最後のラデツキー行進曲ぐらいでしょうか。何がいけないというわけではないのですが、そもそもこの人の音楽は先鋭的でスマートな感じが特徴なのですが、今日のコンサートはオケに任せて極めてマイルドな音楽になってました。それだけ年を取ったということならいいのですが、どうもこの人ならではの味わいみたいなものがなかったんじゃないか。 まあ根が真面目なのでしょう、小澤さんみたいな「お祭り男」じゃなさそうなので、こういうの苦手なのかな。がんばれ、音楽監督! さて、ウィーンフィルのHPにはさっそく来年のニューイヤーコンサートの指揮者が発表されてました。マリス・ヤンソンスです。熊男です。【21%OFF】[CD] フランツ・ウェルザー=メスト(cond)/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団/EMI CLASSICS決定盤 1300 403 ブルックナー: 交響曲第5番挑戦的で新鮮な感覚のブル5。ダイナミックできびきびしたテンポが特徴です。やはりメストはこうでないと。(笑)
2011年01月01日
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更新の手がなかなか進まず、いつの間にやら大晦日です。 高関さんのコンサートをはしごしてきましたが、こんなまとめて報告という形になり、ご本人に対して申し訳ない気持ちです。まあここをご覧になることもないでしょうが。1.日本フィル625回定期演奏会(11/13)@サントリーホール 交響曲第8番ハ短調(ハース版)(ブルックナー) 言わずと知れた「ブル8」です。高関さんが指揮者を志すキッカケとなった1曲。例によって版の問題に言及したプログラムは読み応えあり。ハース版によるライブはおそらく初めてでした。 さて、さすがにプロのオーケストラは違います。濃厚で充実した響き、高関さんの意図を忠実に再現しつつアンサンブルをがっちり守りきるプロの技は流石です。演奏は作品への誠実なアプローチ、こけおどしなぞぶりは微塵もない、まっとうで仰ぎ見るようなブルックナーでした。 第1楽章冒頭でクラリネットがふらりと現れるところがファゴットになっていたので、ハース版ってそうなのかなぐらいに思ってましたが、後で高関さんのツィッターを見たら、ブルックナーが校正時に誤ってファゴットに書くべき音型をクラリネットの欄に書いてしまったのではないか、との見解から修正してみたとのこと。かつてチェリビダッケがそうしていたのをラジオで聴いてはたと膝を叩き、楽譜研究の要を感じ入ったらしい。ちなみにそのとき高校生、並みの人ではありません。(笑) 他にも埋もれていた音型や聞き慣れないフレーズが飛び出してきて、ずっと集中して聞いていました。この曲をこんなにも集中して聴いたことはなかったかもしれません。 そのせいか、初めてこの曲がしっかりとした構成でできあがっていることが実感できました。確かに凄い曲です。こんな凄い曲だと感じたのも初めてかもしれません。(チェリビダッケのリスボンライブも素晴らしかったけど) よく演奏は山登りに喩えられますが、これはエベレスト級の峰に挑戦するようなものなんだなあ。高関さん、お疲れ様でした。【送料無料】 CD/オトマール・スウィトナー/ブルックナー:交響曲 第8番 (ハース版) (廉価盤)/KICC-3536なぜかスィートナー(笑)。いやいやなかなかいいんですよ、これが。【送料無料】輸入盤CD スペシャルプライスブルックナー / 交響曲第8番 チェリビダッケ&ミュンヘン・フィル(1990 ステレオ)(2CD) 輸入盤 【CD】泣く子も眠る(?)遅~いテンポのチェリ。未聴ですが冒頭はファゴットでしょうか。2.343回芸大フィル合唱定期演奏会(11/19)@上野奏楽堂 オラトリオ「楽園とペリ」(シューマン) 全く聴いたことのない曲を聴くというのは楽しみなものです。この楽園とペリはめったに演奏される機会がなく、CDもあまり出ていない(アーノンクールとガーディナーぐらいか)、けど世評は高いとなれば期待も高まるというもの。 こぶりな編成のオケに9人の独唱、混声合唱が加わり、楽園から追放された妖精ペリが許されて楽園に戻るまでを美しく描いた「朗らかな人々のための」オラトリオです。 初めて聴くので大雑把な感想しか述べられませんが、メンデルスゾーン(真夏の夜の夢)とベルリオーズ(ロメジュリ)とウェーバーとわずかにベートーヴェン(ミサソレ)が混じったような曲です。特に最後のペリが祝福される音楽の高揚感、圧倒的な合唱の威力、ハデではないけど色彩豊かなオケの響き、聴いてて胸が熱くなりました。じわじわとこみあげて来ました。 これだけの大作(2部の終わりに休憩を挟む)を熱演してくれた学生諸君、コンクール歴のある実力派の若い歌手たちにブラボー!そして清らかで優しい音楽に愛情を持って再現してくれた高関さんにブラボー!!輸入盤CD スペシャルプライスシューマン / 『楽園とペリ』 シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデン(2CD) 輸入盤 【CD】シノーポリの廉価盤。とにかく安いし、録音はいいし、これはお勧め!(笑)
2010年12月31日
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11月7日(日)14時~16時足立区立千寿桜堤中学校体育館高関健=桐朋学園オケ交響詩「英雄の生涯」(R.シュトラウス)すっかり寒くなってしまいましたね。報告が遅くなりました、高関さんの追っかけ第1弾(笑)。桐朋学園は言わずと知れた小澤さんの母校であり、高関さんも出身校です。著名な演奏家を輩出している音楽学校として私立ではおそらく日本一の実力校ではないでしょうか。今回のメンバの中にも将来の巨匠がいるかもしれません。今回の柳原音楽祭、毎日通勤で通っていた北千住駅から徒歩10分ぐらいのところで、初めて行きました。当日券ぐらいすぐ買えるだろうとタカをくくって遅れて行ったら何と最後の1枚!盛況だったんですね。場所は体育館で音響は全く期待できません。入ると向こう壁に大編成のオケがズラリ。編成に全く手抜きがありません。客層はおじいちゃんおばあちゃんお父さんお母さん子供たちと全くばらばら。演奏中何をしでかすかわかったものではありません。遅れて入るも主催者側の挨拶だったので演奏はまだでした。今回は1曲だけなので最初の30分ぐらいを高関さんが楽曲解説しました。高関さんは生まれも育ちも千住だったんですね、「足立の誇り」とまで持ちあげられてましたが。さてこの解説、英雄の主題が5つの部分(性格、イケメン、統率力、優しさ、夢)から成立していること、英雄の彼女や敵の存在、戦闘シーン、功績、引退と死と曲の全体像を実際にオケを使い、知らない人にも何とか理解してもらおうと悪戦苦闘しておられました。最後の方はしどろもどろでしたが(笑)、私には面白い内容でした。でも次回からは司会者を立てたほうがいいでしょう。さて10分ほど休憩のあと、本番です。最初の嬰ホ長調(英雄の調)のハーモニーが充実したずっしりと実の詰まった響きに、今回の演奏の成功を予感させました。後で高関さんツイッターで知ったのだけど、コンミスでありヴァイオリン・ソロ担当は南紫音さん(プロフはこちら)。休憩時間に見に行けばよかった。(笑)確かに美人ちゃんだが腕前もなかなか。ヴァイオリニストになりたかったR.シュトラウスのソロパートは難技巧の連続で最高域から最低域まで幅広く使用、重音で猛スピードで駆け下りたり、2つの旋律を同時に弾いたり。それらを破綻なく弾ききりしかもニュアンスを失わず、音量もたっぷり。もう少し色気や凄みみたいなものが音に込められるといいんだけど、最初から完璧を求めるのも酷というもの。長い目で見守りましょう。戦闘シーンの迫力、引退の苦い味わいを経て彼女(というか妻)に看取られながら静かにあの世に旅立つまで、充実した良い演奏だったと思います。何より学生オケながら実に集中力のある演奏で感動しました。次は日本フィルとのブルックナー交響曲第8番です。がんばります。【送料無料】R.シュトラウス:交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき...価格:1,600円(税込、送料込)小澤さんの「英雄の生涯」。マニアからは全く見向きもされてませんが(笑)、肉厚な音なのに透明な響きなのは小澤さんのソルフェージュ能力の高さの証明。リズム感の良さが躍動感溢れる英雄像を作り上げている。ただラスト近くでトランペットが音を外しているのは編集ミスか?
2010年11月18日
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2010年10月22日(金) 上野 東京藝術大学奏楽堂 高関健 指揮 芸大フィルハーモニア 交響曲第9番(マーラー) 最近、指揮者の高関健さんのツイッターを読んでいます。指揮者という職業の人は普段どんなことをしているのか、どんな勉強をしているのか知ることができて、なかなか面白いです。 高関さんと言えば、カラヤン指揮者コンクールジャパンで優勝、カラヤンの弟子としてベルリンで研鑽、帰国後は群馬交響楽団や札幌交響楽団などの音楽監督を務める傍ら、芸大や桐朋学園などで後進の指導にもあたっている、といった程度の知識しかありませんでした。 彼の指揮を初めて見た(聴いた)のは、何年か前のラフォルジュルネ東京で桐朋大オケと「春の祭典」を演奏したときでした。きびきびした指揮ぶり、響きはスマートでありながら迫力十分、たいへん感銘を受けました。いや、衝撃的で二日同じ演奏を聞きに行きました。 マーラーには事のほか熱心なようで、それは現在国際マーラー協会が進めている新エディションの刊行前に、記譜の誤りやディナーミクの変更など独自版を作成、逆に協会に送りつける、という大胆な行動にも表れています。 彼の録音は少ないのが残念ですが、その成果は第7番や「復活」のCDで聞くことができます。 彼はマラ9とブルックナーの第8番により指揮者を志したそうで、マラ9の演奏前にも独自にスコアの研究成果を協会に送付、「まあいいんじゃない?」との回答を受け(笑)、今回の演奏会に臨んだのでした。 ここまではツィーターで逐一発信されていたので演奏会が大変楽しみでした。しかしながら実際の演奏は期待以上の出来で、これまた衝撃的でした。 まず第1に、これほど真摯で衒いの無い誠実な演奏を芸大の学生諸君が成し遂げたということに感動です。プロでさえこれほどの手ごたえを持った演奏は滅多に聴けるものではありません。 そして高関さんは単なる学究の徒にあらず、しなやかな歌に満ちながらも時に凶暴なまでのフォルティッシモ、繊細なピニッシモと変幻自在なスコアを通してマーラーが伝えたかったことに迫ろうとする気迫、集中力は最後の最後まで途切れることはありませんでした。 譜面の違いははっきりとわかりませんでしたが、所々あれっという響き、特定声部の強調(特にバスの動き)などに現れていたのではないでしょうか。 聴衆にはいつも不安を覚えていました。マラ9は最後静かに終わるので、フライング拍手やブラボーが起きるのではないかと。でも今回は音が無くなってしばらく静寂があり、指揮者がそっと指揮棒を置いてから自然と湧き上がるような拍手でした。おかげで素晴らしい瞬間を味わうことができました。高関さんも大きな事をひとつ成し遂げた満足感が終演後の表情に出ていました。 高関さんは最終楽章のコーダ(弦楽だけでppで奏される)を「死に絶えるように」ではなく何か希望の光が遠くからぼおっと差しているような、あるいは希望の門にゆっくりと近づいているような、決して絶望ではない終わり方をしてくださいました。私はマーラーをもう30年以上聞いてきましたが、自分はこういうマーラーを聞きたかったんだ、と初めて気付かされました。 実は演奏が始まる前に奏楽堂の地下にある自販機で飲み物を買っていたら、横の自販機でやはり飲み物を買っていた高関さんを見かけました。割と普通のおじさんでした。横顔がギターの大師匠に似ていたので一気に親近感が湧きました。 これからしばらくは高関さんの追っかけをするつもりです。【送料無料】マーラー / 交響曲第7番『夜の歌』 高...価格:2,646円(税込、送料込)【送料無料】マーラー / 交響曲第2番『復活』(国際マーラー協会...価格:2,835円(税込、送料込)
2010年10月23日
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春の陽気ですねぇ。澄んだ空気と鳥たちの囀りがうれしい朝が続いております。 昨日、ジャパン・シフォニアの第12回定期演奏会に行ってきました。---------------------------------------------------------2009年4月29日(水)開演14:30 晴海トリトンスクエア・第一生命ホール指揮:井上喜惟ソプラノ:蔵野蘭子ラヴェル:組曲「クープランの墓」ショーソン:歌曲集「愛と海の詩」、OP.19フランク:交響曲ニ短調--------------------------------------------------------- いつものドイツ物ではなく、今回はオールフランス物という趣向。特にショーソンはあまり演目に乗らない曲なのでちょっと楽しみで。また、このオケの暖かで豊かな響きでフランクの交響曲を聞いてみたらどうなるのか。 さて、今回よりコンミスが変わりました。以前の女傑・三戸さんからドイツで活躍中の植村さん。また、チェロのトップを務めていた小澤さんも退団された模様。何度か演奏会に来ていますが、この二人あってのジャパン・シンフォニアという感じがしていたので、これからどうなっていくのか。 1曲目のラヴェル。うーん、全体に高音がキンキンしたささくれ立った響きがします。低音楽器はちゃんと鳴っていますが、うまくかみ合ってない感じと言いますか。オーボエのトップは音量があって指回りも達者なのですが、表情が一本調子で今ひとつ、面白くない。 弦楽のあの豊かな響きもありません。ちょっと心配。 2曲目のショーソン。蔵野さんは容姿も声も素敵です!ちょっとワーグナー風なオーケストレーションで厚い響きの中でも声が通るのは素晴らしい。爛熟退廃した世紀末の音楽ですが時に夢見るような、時に陰鬱にいろいろ表情を変えてショーソンの倦怠みたいなものを紡いでいました。 ただここでも弦楽の響きは薄っぺらで独特な薫りも立ちません。よく見ると第1ヴァイオリン後ろの奏者の運指がずーっとローポジションで響きの統一がなされてないのかな。 3曲目のフランク。もともとこじんまりしたオケにこれだけの金管が必要なのかってぐらいの大音量。特にトランペットの音量が飛び出ていて(音自体は豊かでいい音)フォルテッシモは他の楽器を圧倒していました。響きがぐわーんと割れてしまってちょっと抑えたほうが綺麗に響くのにと残念。これは指揮者のせいですね。 第2楽章のコーランングレのソロは見事。弦楽だけになって一瞬以前の響きが戻ったかと思ったがすぐにピッチがズレてくる。ひょっとしたら新しいコンミスがまだこのオケの響きに溶け込んでいないのかもしれない。良く見るとこのコンミスは弾くのでいっぱいで仕事してない感じがしました(以前の三戸さんならばからだ全身でオケ全体をリードしてましたね)。 このあたりは舞台上での話しなので観客にはわからないこともあるのだろうけど、結果出てきた響きはこのオケの特徴から大きくずれていたのだから、やはりコンミスとしての責任はあると思います。ただのうまいオケにはなって欲しくないです。 フィナーレの金管コラールは充実した響きでこの交響曲の威容を感じさせました。この交響曲はフランス楽壇が誇る素晴らしい作品です。いろいろ書きましたが(オケへの愛ゆえですよ)、全体としてはいい内容の演奏でした。 今回のお客さんは曲が終わった後のわーんという残響が静まってから拍手するという、とっても音楽がわかった人たちだったようで、十分響きを堪能できました。(ひょっとしたら曲が終わったのかどうか知らなかったのかもしれませんが(笑)) それにしてもお客さんが相変わらず少ない!客席の3分の1は空いてました。 そうそう、前回のシューマンの2番はいい演奏だったのに、CD出てないんですね。 次回はブラームスの4番がメイン。また行きますよ。期待してます。>ジャパン・シンフォニアユニバーサルクラシック ジュリーニ/フランク:交響曲晩年のウィーンフィル盤よりこっちが好きかも。【CD】サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン」/フランク:交響曲<2005/6/22>ポール・パレー盤は骨太でどこかあっけらかんとした演奏。こういうのもいい。
2009年04月30日
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(前半から続き) プログラムはリシッツァ本人の解説。ここにはありきたりな曲目解説ではなく、自分のイメージやら思考、果ては政治的な発言まで書かれていて、並みのピアニストではない。こういうのが日本でも広まれば面白いのにと思う。 後半は、シューマンの「子供の情景」。実際シューマンはあまり好きではない。なんだかもそもそしている感じで、ショパンのような煌きもないしブラームスのような構築感もない。ドイツの森のような幻想というなら言いえて妙だな、と意地悪く言ってみる。 子供の情景はトロイメライが有名だが、すーっと流す中に拡大されたダイナミズムで意外なドラマが見えた気がした。 さてこれからが凄い。タールベルクは名前しか知らなかったが、聴いてみると一時代前のピアニストが即興で弾いた感じの曲。とにかくノリがいいし、これでもかってぐらい技のオンパレード。聴く人を飽きさせない本物のヴィルティオーゾ、エンターティメント。いやあ面白かった。弾き終えたとき、この感じは何かに似ていると思った。 「白い妖精」ナディア・コマネチがモントリオール・オリンピックで史上初の10点満点を出したときだ。14歳の、目が大きくてかわいくてピッタリしたレオタード姿が妙にいやらしくてでも完璧な演技でテレビで見ていた我々すらそんなものが出るとは思ってもみなかった。電光掲示板も満点を想定してなくて「1.00」と表示していた。頭の中で「10点、10点、10点。。。10点満点!」というアナウンスが1曲終わる度に浮かんでくる。 そして最後のリスト。冒頭の響きは現代音楽のクラスタ音塊ような不協和音。それが地響きをあげて屹立する。それからはまるで台風のような響きの連続。オーケストラとの協奏版のイメージを覆すような斬新な響き。ピアノってこんなに鳴るんだ、ピアニストってこんなに弾けるんだ。ホールにいた全ての聴衆が完全になぎ倒され、口アングリ状態だったと思う。ぽろんぽろん弾いて終わる日本のピアニストは今すぐピアノを売り払ったほうがいい。 呆気に取られているうちにディエスイレのテーマがどんどん峻厳されものすごいフォルティッシモで全曲が閉じられたとき、舞台上の魔女は我々の心臓を鷲掴みにし地獄の底へ持ち去ってしまった。(天国かもしれないけど) その後の熱狂的な拍手は当夜の成功を物語っている。後ろのおばさん達は「すごい」「もうピアノ弾けない」「あれぐらい弾けるなら何でも弾けるのね」とこれまた絶賛とやっかみ。とにかくピアノソロ版で「死の舞踏」を生演奏で聞くことができただけでも凄いことなのに、完璧で圧倒的な演奏だったのだから、これは一期一会の演奏会だったかもしれない。アンコールは以下のとおり。リスト: 「愛の夢」 「ラ・カンパネラ」ベートーヴェン: 「エリーゼのために」ショパン: 「子犬のワルツ」 愛の夢をあれだけ感情の振幅をもってドラマティックに弾くのも凄いが、死の舞踏であれだけ弾いてまだアンコールを弾くのも凄い。が、さすがに疲れたか最後はにこっと笑って「これが最後」と手で仕草して「子犬のワルツ」を弾いた頃にはすっかりリラックスモードで魔女的な雰囲気は消えていた。 演奏終了後に見たがピアノはスタインウエイ。彼女はベーゼンドルファーと契約しまた愛用しているはずだから、ホール備え付けのピアノだろう。もし愛用のピアノで弾けたなら、あの少しキンキンした高音も柔らかい感じになったかもしれない。 おそらく、ヒラリー・ハーンの伴奏者として来日したためリサイタルとしては準備不足だったのかもしれない(もちろん十分だったけど)。もう少し練れたプログラムで彼女らしさが出ればなお良かった。だって、ロビーでサイン会をしている彼女はむしろ小柄な印象でひとりひとりに丁寧にサインし握手しかわいらしい声で何やら話している普通に綺麗で魅力的な女性だったから。 胡散臭い○○省の外交官が遠目に見ていようと、業界関係者が興行の成功を祝って挨拶していようと、我々音楽愛好家には関係ない。 今一度、彼女の個性的な音楽を圧倒的なピアニズムを聴きたい。ただそれだけだ。(完)
2009年02月20日
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1月19日(月)19時、場所はトッパンホールにて、念願のヴァレンティーナ・リシッツァのピアノ・リサイタルに行ってきました。まるで恋人に会いに行くような、アイドルのコンサートに行くようなわくわくした気分で飯田橋駅に降り立ちました。プログラムは以下のとおりです。1.ラフマニノフ: 練習曲「音の絵」イ長調 作品39の6 前奏曲ト長調 作品32の5 前奏曲嬰ト短調 作品32の12 前奏曲ロ短調 作品32の10 前奏曲ト短調 作品23の52.ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 作品57「熱情」 -休憩ー3.シューマン: 「子供の情景」 作品154.タールベルク: ロッシーニの「セビリアの理髪師」の主題による大幻想曲 作品635.リスト: 死の舞踏(オリジナル ピアノ・ソロ版) まず驚いたのが、予想以上の観客の多さ。このピアニストを聞きたいと思ってる人がこんなにいたことに(まあ自分もそのひとりなんですが)喜びを感じました。 後ろのおばさん達(失礼!)は会話からどうやらプロの人たちのよう。ロビーでもそこかしこから「先生」という言葉が飛び交っている。業界関係者が多いことが知れた。もちろん私のようなYOUTUBEからのファンもいるはずなのだが。。。 さて、憧れの生リシッツァの登場。。。でかい、仰ぎ見るような大きさだ。まあ座席が舞台に近いせいもあったろうが。そして白い(笑)。目も鼻も口も大きく緊張のせいか表情が固く、ちょっと魔法使いみたい(言いすぎだろ)。腕は長く手もさすがに大きい。衣装は黒のドレス。後ろに長く伸ばした紐は意味があるのだろうか(苦笑)。これで帽子を被ったらほんとに魔女だ。後ろのおばさん達は「白人って黒いドレス着たがるのよねぇ」なんて話してた。まあどうでもいいことなんだけど。 第1曲はYOUTUBEで度肝抜いたあのラフマニノフのエチュード作品39-6。ものすごいスピード、畳み掛けるような音量。これを最初にもってくるのはネットファンへのご挨拶なのか。が、若干テンポにブレがあり、左手は弾ききれていなかった。やはり緊張しているのか。でも、人前でこれだけ弾ければ十分だろう。続くプレリュードは時に夢見るように、時に激情を迸るように見事な音のコントロール、圧倒的な音圧で一気に弾き終えた。 圧巻だった。もうお腹いっぱいな感じ。客席から漏れるため息。続く大拍手。あれ? この感じ、25年前にクラシックギターの山下和仁のリサイタルのときと同じだった。パリの国際コンクールで日本人として8年ぶり、しかも史上最年少(16歳)で優勝したこの天才がソルの「魔笛の主題による変奏曲」を聴いたことも無いスピードで弾ききったときも会場がこんなふうにため息をついたっけ。 ベートーヴェンの「熱情」。この人の古典は聞いたことがなかったが、速いところはより早く、強いところはより強くダイナミックで積極果敢なまさに「熱情」、というより「熱病」。きっと「古典」からは外れた弾き方だろうが、当時の聴衆が聴いたらきっとこんな感じに聞こえたのではないか、と思わせる斬新さだ。 ところで演奏中、何やらいい匂いが漂ってきた。香水だろう、後ろのおばさん達かなと思っていた。が、どうもそれはリシッツァから発せられているようだった。というのも、演奏が激してくるとその匂いはどんどん強くなってきたから。カラダが熱してくるため匂いが発散していったのだろう。 演奏中の表情は残念ながら上手の座席だったので窺い知ることはできなかった。背を伸ばし腕を肘から振り下ろす感じでピアノが壊れるほどの音量を引き出している。背中の筋肉は十分発達していてオシリも大きい(笑)。後ろのおばさんが言っていたように「恵まれたからだ」の持ち主だ。ピアノやピアニッシモになると前のめりになってフェザータッチのように軽やかに鍵盤を撫でる。 こうしてリサイタルの前半は終了。後ろのおばさん達は「すごいね」「いやになっちゃう」と連発。ひょっとしたら凄い面々かも知れないけど、もう少しマナー良くしようね。 珍しく後半へ続く。。。
2009年02月15日
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かな~り、ご無沙汰しております。 年末年始の本番稼動を控え、毎日マジメに仕事をしておりました。ブログどころかネット自体もゆっくり見てませんでした。 ほんとはその間にもコンサートに行ってて感想も書き込みたいのですが、文章を書くという行為はエネルギーを使うので、なかなか思うように更新できませんでした。 ようやく先週で何とか目処が立ったのではないかと思われ、ちょっとひと安心。ブログ更新するゆとりもできました。 さて、いろいろネタはあるものの最近一番ビックリしたのは、「ヴァレンティーナ・リシッツァ ピアノ・リサイタル」のお知らせ。 彼女については2007年6月17日のブログ「ロシアののだめ?」と題して紹介していました。ものすごいヴィルトージティで圧倒的な印象を残す彼女はウクライナ生まれ。目立ったコンクール歴はないけれど、YOUTUBEで彼女の演奏が紹介されていて、これに衝撃を受けた方もいらっしゃるはず。私もあるHPの紹介で見て、興奮のあまり前述記事を書いた次第。「いつかは日本でリサイタルを」という願いが本当に実現してしまったのです。 今回はあの人気若手女流ヴァイオリニストのヒラリー・ハーンの伴奏者として初来日、当初はリサイタルの予定は無かっけど、ネットでの注目度を無視できず、急遽リサイタル決定となったそうです。ネットが発見し興行にまで漕ぎ着けたというのはすごい成果ですよね。 私は彼女のショパンの練習曲全曲DVDを中古屋でゲット。容姿ともども堪能させていただいておりますが、やはりライブで聴きたいですよね。早速チケットの申し込みをしました。 これを期に彼女が日本でもブレイクすることを願わずにはいられません。ちなみに韓国では2000年くらいから定期的にリサイタルを開いていたようです。日本の音楽メディアは大物やスター奏者ばかり扱ってますが、こういった新しい才能の発掘・紹介にこそ力を尽くすべきではないでしょうか。その意味で今回はネットの威力を見せ付けた形になりましたね。 ヴァレンティーナ・リシッツァHP
2008年12月21日
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さて、前日は重いオペラを見て、疲労でそのまま寝てしまいました。頭にまだ衝撃と感動が残ったまま、果たして清冽な小川のようなシューベルトの音楽に入っていくことができるだろうか。そんな気分で会場へ。この日は1日、シューベルト三昧。昼12:15から22:15まで。○小泉和裕指揮東京都交響楽団 ベートーヴェン 「フィデリオ」序曲 シューベルト 交響曲第3番 このプログラムは有難かった。最初のフィデリオで目が(耳が)覚め、前期ロマン派への準備が整いました。第3番は全体として後期モーツァルト風な響きと疾走感が気持ちいい。第2楽章の木管の扱いは後の作品を思わせた。○クリスティアン・ツァハリアス指揮ローザンヌ室内管弦楽団 シューベルト ドイツ舞曲(ウェーベルン編) 同 交響曲第2番 ピアニストのツァハリアスが指揮を務めてたなんて知らなかった。ドイツ舞曲は皆さん知らないせいか、終わっても拍手が鳴らず、間が抜けてしまった。 交響曲は変わって目の覚めるような力の入った演奏。堂々とした序奏に続き、ティンパニーが鳴り渡り弦楽が激しい動きを聞かせ、第1番よりオーケストラの扱いが多層的になった第1楽章。第2楽章の古典的な変奏曲、ドイツ舞曲風な第3楽章を経て、ベートーヴェン風な力感と大胆な転調の最終楽章。これにはやんやの大拍手で奏者たちも顔がほころんでいた。○クワメ・ライアン指揮フランス国立ボルドー・アキテーヌ管弦楽団 シューベルト 交響曲第8番「グレート」 トリニダード・トバゴ出身の黒人指揮者(ほんとに黒い)によるシューベルトの大曲を聴く。今回のラ・フォル~で一番関心が高かった。 全体としてはマッシブな響きでちょいマーラー風(?)だが、変なことをしない、案外普通な演奏だった。ところどころぱっと音量を落としたり、妙な<>をつけたり不可解な部分もあった。リズム感はさすがによく、音楽がすいすい流れていくが、オケの腰がちょい重い感じがした。○ミシェル・コルボ指揮シンフォニア・ヴァルソヴィア他 シューベルト ミサ曲第6番 大御所コルボによる最晩年のミサ曲を聞く。このとき21:15開始、、1日でこれだけ聞きとおすとさすがにもう頭がフラフラ、加えて演奏前にかっこつけて赤ワインなんぞ飲んだせいもあり、途中何度もこっくりこっくり。。。。 が、この清らでありながら厳しい孤独感はしっかりと胸に届いた。コルボさんがよたよた歩きながらカーテンコールに応えていたのを見て、ちょっと胸が痛みました。 というわけで、駆け足でしたが体力気力の限界に挑戦したかのような、今年のGW。くたびれたけど、結構充実していました。来年も別な意味で充実していたらと思います。 ちなみに来年のラ・フォル・ジュルネはバッハ一族がテーマのようですね。マタイ受難曲は聴きたいなぁ。【送料無料選択可!】シューベルト: 交響曲第8 (9)番 『ザ・グレート』 D.944 / ハインツ・レーグナー (指揮)/ベルリン放送交響楽団読売日響でおなじみだったレーグナーによる「グレート」。あっさり風味だが丁寧な仕事と旧東ドイツのオケの響きをご堪能ください。【送料無料選択可!】シューベルト: ミサ曲第6番変ホ長調 D.950 / カルロ・マリア・ジュリーニシューベルトが死の年に書いた最後のミサ曲をジュリーニの歌心ある重厚な指揮で。バイエルン放送響の響きがまた美しい。
2008年05月10日
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遂にこのオペラを日本で見ることができました。ショスタコヴィチの問題作にして20世紀オペラの傑作のひとつ、「ムツェンスク郡のマクベス夫人」(以下長いので「ムツェンスク」)。 3日にこの公演を知り、慌てて主催に電話してチケット予約をしました。何しろ初めて聞くオペラ、しかもいわく付きの曲なので、前夜から興奮してました。(笑) ショスタコヴィチは生涯にオペラを2つ残しました。「鼻」(1928)とこれ。この初演(1934)は大成功、2年間で177回も公演されたにも関わらず、1936年1月26日スターリンが観劇して激怒、その2日後のソ連機関紙「プラウダ」が「音楽ではなく支離滅裂」と批判。以降27年間、実質的に上演禁止となりました。この頃から当局による芸術活動への介入が始まったのでした。 この後第4交響曲を書いたのですが、初演ゲネプロ後に自ら演奏を封印します。内容があまりに過激で、当局から「人民の敵」とレッテルを貼られれば、それはもう死を意味したからです(なぜ死を恐れたかというと、この前後で結婚、娘の誕生があったから。彼は何より家族が大事だったのです)。そして名誉回復のために書き上げたのが有名な第5交響曲です。 今回は東京国際芸術協会がオール日本人キャストによる原典版原語上演という日本初の試みに挑戦しました。公演が5月4日、5日の二日だけというのがもったいないぐらい、素晴らしい上演でした。 場所はサンパール荒川(旧荒川区公会堂)、はっきり言ってホールは狭いし、雰囲気いいところではありません(笑)。が、それがどうした!この意欲溢れる上演に場所など気にしないし、気になりません。 お客の入りは、、、まあ正直馴染みのない演目でしたが、よく入ったんじゃないですか。ほとんどが友人、知人などの関係者だったみたいですが。 詳細なストーリーは上記リンクを見ていただくとして、一言で言えば「テレビのサスペンスドラマのオペラ版」(チラシ解説による)。退屈な女主人公カテリーナが情欲に溺れて舅と旦那を殺し、最後はばれてシベリア流刑になります。 音楽は2管編成のオーケストラに金管のバンダ(別働隊)付きでブンブン鳴りまくるんですが、これがまたカッコイイ。特に第1幕でカテリーナが新しい召使セルゲイにレイプされちゃうシーン(大変節度のある演出でした)の情欲が燃え立つような大音響! 第2幕で舅ボリスが「おいらが若かったらなぁ」といやらしさむき出しになったときのワルツにJ.シュトラウスのワルツ(「春の歌」だったかな?)が一瞬顔出したり、第3幕で酔っ払いの下僕が「おいらの運が悪くて・・・」と滑稽な歌の伴奏でベートーヴェンの「運命」が鳴ったり、もっといろいろ知ってれば引用の当てっコも面白いだろう。 その酔っ払いが主人の死体を発見して警察署に駆け込むシーンの音楽もかっこよかったなぁ。第2幕の第1場から2場へ移るときのうねるような音楽も壮絶だった。 兎に角、ショスタコが最高に尖がってた時代の(作曲当時26歳!)音楽はカッコイイ。大音量ファンの方、オーディオマニアの方にはお勧めです。 オケは東京歌劇団管弦楽団(多分アマオケ)、指揮は珠川秀夫氏。チェロの音程がひどくて弦楽合奏時は美しさを堪能できなかったが、大きな破綻なく最後まで弾き通しただけでも満点をあげたい。バンダが入った時の迫力は凄まじかった。 歌手は2日でそれぞれキャストが違ったようだが、初日のカテリーナ役の菊池美奈さんは楚々とした容姿(ここ大事。原作は主人公を24歳以下としている)ながら最後まで声量を落とさず歌いきり、見事でした。彼女の声が一番通ってました。 酔っ払い役の加茂下稔さんは芸達者な上に歌もよかった。ロシア語がどこまで正しかったかは私にはわからないので、言及しません。 過激な内容の舞台だが、演出は節度ある程度に留めていて好感が持てました。舞台装置も衣装も簡潔で、まあお金がないんでしょうが、それなりに工夫をしたのでしょう。 何よりもこの公演に賭けているんだという出演者、スタッフ全員の執念というか情熱というか、そんな熱いものを感じた舞台でした。3時間があっという間でした。ブラボー!
2008年05月06日
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5月2日、年に1度の音楽の祭典、ラ・フォル・ジュルネ「熱狂の日」音楽祭2008に行ってきました。(有楽町、東京国際フォーラム)今年のテーマは「シューベルトとウィーン」。シューベルト作品を中心に影響を受けた作曲家・作品が演奏されます。昨日行ったのは、ヤツェク・カスプシク指揮のシンフォニア・ヴァルソヴィアの演奏。 モーツァルト「フィガロの結婚」序曲 シューベルト交響曲第1番D82ラ・フォル・ジュルネは短いプログラムで安価に聞けるのがいい。今日のお目当てはもちろん第1番。めったに演奏されない、16歳のときの作品。簡単な解説を。1813年シューベルトが帝室王室寄宿神学校(コンヴィクト)在学中の頃に作曲したもので、同校にて初演されたものと思われる。全体は4楽章構成で、モーツァルト、ベートーヴェンあたりの影響が見受けられる。実際聞いてみると、それなりに立派な作品で驚き。第1楽章の堂々たる序奏、続く溢れるような旋律のアレグロ。第2楽章はちと長い(くどい?)感じがしたけど、時折聞かれる響きは「グレート」の第2楽章を彷彿とさせました。第3楽章はメヌエットだがむしろスケルツォに近い感じ。中間のトリオの鄙びた木管の扱いも「グレート」の響き。16歳にして自分の響きをつかんでいたことがわかります。第4楽章は一転きびきびとしたアレグロ楽章。ここだけならベートヴェンより愉しいかも。全体としてベートーヴェンの第1番やモーツァルトの中期あたりの交響曲のエコーが聞かれますが、16歳にして瑞々しく自分の歌と響きを書き上げた天才にあらためて脱帽しました。お客さんも慣れない曲のせいか、あちこちでうとうとしてましたが、終わってみれば拍手喝さい。演奏者たちも天才少年の作品の再現に全力を尽くしていたと思います。次は5月5日。この日は朝から晩まで丸1日、ラ・フォル・ジュルネ!なつかCDキャンペーン リッカルド・ムーティ(cond)/EMI CLASSICS 決定盤 1300 103 シューベルト: 交響曲第8番 未完成 &交響曲第1番(CD) ◆10%OFF!ムーティ=ウィーンフィルの全集から。必要以上に力が入るムーティ(笑)をウィーンフィルが柔らかく受け止めてます。
2008年05月03日
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4月12日(土)にジャパン・シンフォニアの定期演奏会に行ってきました。前回のブラームスがあまりにすばらしかったので、楽しみにしていました。第10回定期演奏会 ブラームス:悲劇的序曲、Op.81 ワーグナー:ヴェーゼンドンクの5つの詩(ヴェーゼンドンク歌曲集) ドヴォルジャーク:交響曲第7番ニ短調、Op.70 ソプラノ:蔵野蘭子 指揮 :井上喜惟会場の晴海トリトンスクエアではオーガニック祭(?)でチョコやら酒やら売っていて賑わっていました。第一生命ホールは4階ですが、ちょっと寄り道(笑)。さて、ホールのロビーでは前回のブラームスの交響曲第1番のCDが先行発売されていました。これは即GET。1曲目。悲劇的序曲は結構好きな曲です。ソナタ形式の単一楽章で、かっちりした構成とロマン的情感の発露が素晴らしい。最初の一撃から落ち着いた感じで開始、透明な響きの弦楽、次第にうねりだす木管、威容を現す金管とティンパニー。劇的に熱してきて響きが多層を成しているときも常にコントロールが効いている。こけおどしにならず、じっくりと音楽を進めている。しかし何だかすわりが悪い。ホルンが不調で肝心なところを外す。そのせいか、どうも集中に欠いている感じがした。まあ、1曲目だし。。。2曲目。ワーグナーのオケ伴奏歌曲。珍しい演目だ。「トリスタンとイゾルデ」と平行して作曲されただけあって、にょろにょろにゅるにゅるした感じが似ている。初めて聞いたけど、ワーグナー好き以外は苦痛かもしれない(苦笑)。でもソプラノの蔵野さんは堂々と見事に歌いきった(ついでに彼女はかなりシェイプされていた。ソプラノ歌手って太ってるイメージがあったけど変わりつつあるんだね)。彼女の歌唱にブラボー。ちなみに最後のPPが終わって余韻を楽しむ間もなく、客席のひとりが盛大な拍手(>
2008年04月13日
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井上喜惟=ジャパン・シンフォニア 第9回定期演奏会「ロマン主義の情熱と憂愁」 エルガー : 弦楽のためのエレジー ブラームス: ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲イ短調、Op.102 交響曲第1番ハ短調、Op.68 11月10日(土) 15:00開演晴海トリトン・スクエア・第一生命ホール指揮:井上喜惟ヴァイオリン:三戸素子チェロ:小澤洋介******************************************************************************** 音楽評論家の許光俊氏が絶賛している井上さん指揮するジャパン・シンフォニアの演奏会に行ってきました。 井上さんは噂では「アマオケを一夜ウィーンフィルに変える」とか。井上さんは中卒後、渡欧。名匠たちにピアノ、指揮を習いながら1992年、チェコ国立ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会で正式デビューという経歴のお方。所謂、音大卒でもなけりゃコンクール歴もありません。地道に実力をつけながら認められてきた、叩き上げの本物の実力者というべきでしょう。 2000年アルメニア・フィルでの「日本ウィーク」で指揮、そのときのライブCDを以前入手しました。そこには、たいへん手の込んだ織物を見ているかのような仕事ぶり、音のひとつひとつを大事にしながらも熱いパッションを感じさせる演奏でした。(昔のラトルもこんな感じでした) これは実演を聞かなければならない。 ホールも初めてだったので早めに到着。狭い舞台にオケの座席が並んでいます。第1ヴァイオリンは4プルト、チェロは3プルト、ベースは3丁って室内オケ?ちょっとがっかり。ついでに席は3列目のはずが、舞台がせり出した関係で最前列でした。最前列って音が頭の上を飛んでいくし、フォルテのときにヴァイオリンのキーンという高音が耳を直撃するのでは、とこれまたがっかり。 さて1曲目のエルガー。井上さんはからだが細くてカリスマ性をあまり感じさせません(失礼!)。けれども最初の音が出たとき、これは只者ではないぞと思いました。ハーモニーの美しさ、まるで触れるんじゃないかと思えるような芯のある音、そして何とも温かみのある優しい響き。この編成のどこからこんな厚い音が出るんでしょう。曲が終盤ぐっと深く沈んでいくとき、胸が締め付けられるようでした。 ヴァイオリンが目の前でもキーンという嫌な音がしなくて、これもびっくり。音がハーモニーのなかにしっかり埋もれているといった感じ。 2曲目はこれまた渋いドッペルコンチェルト。正直、積極的には聴かない曲です。ソリストはオケのコンサートミストレスと主席チェリスト。オケの仲間ということもあり、温かい雰囲気のなか、曲が開始。フルオケのイントロに続き、チェロが何やらもにょもにょと語りだす。それにヴァイオリンが応える。これは「語り合い」の曲なんだと気付く。ソリストどうしだけでなく、オケ仲間たちとの親密で濃密な語り合いをじっくり聞かせてもらいました。最終楽章のちょっとおどけたようなテーマもノリのいい感じ。最後まで飽きさせない名演でした。ただソリストには舞台が窮屈そう。チェロの弾く弓がヴァイオリニストの脚に当たったり、ヴァイオリニストの大きなお尻(失礼)が1stヴァイオリンの譜面台に当たったり。最前列ってそうした事故現場を見るには最高ですね(ナンノコッチャ)。 ラストはブラ1です。先ほどのソリストたちはトップに座っています。コンミスの方は体がでかくて、背中の大きさに頼もしささえ漂っています。誰が見ても「この人なくしてこのオケなし」という感じ。この方にひょろっとした井上さんが練習のときどう対峙してきたのかなと、ひょっとしたら押し切られて何も言えなかったりしてとあらぬ想像をするうちに曲が始まりました。 冒頭のCmの和音が鳴ったとき、この編成から考えられない分厚くて熱い塊のような音が耳を襲いました。口あんぐり。コンミスはpでは背を丸め、fでは伸び上がってまさに獅子奮迅のごとき。チェロの主席の方はこれまた音楽するのが楽しくてしょうがないという弾き方。こちらも楽しくなってしまいます。 けれどどんな小さなモチーフも決して弾き飛ばしたり誤魔化すことはしません。丁寧に表情付けをしていきます。響きは厚いがもっさりした感じではなく、むしろ精悍で敏捷。歌いこんだりリズムを刻んだりが瞬時に変化していきます。それとヴァイオリンの左手を見てましたが、ひとつのフレーズは必ず同じ弦で弾いてます。フレーズの中で弦を変えると音色が変わってしまうからです(当たり前のことですが意外とプロでも適当だったりします)。 最終楽章まであっという間でした。アルペンホルンの主題が実に雄大に確信をもって豊かに鳴り渡り、続くベト9のメロディーに似ていると言われる有名なメロディーは濃密な歌い口だけれど演歌にならず品格がありました。 畳み掛けるような展開部でも楽器間の語り合いが聞かれ、成る程これがブラームスの醍醐味なんだ。 例のメロディーが再現され、もうすぐ演奏が終わるんだと惜しいような悲しいような気持ちになりました。コンミスの広い背中が激しく揺れる向こうに、井上さんは背中を丸めながら淡々と棒を動かしていました。派手な身振り手振りは全くなし。指揮者がいることさえ忘れるくらい地味です。でもこの人が冷静にオケを導いてるんだという安心感がありました。このオケにはスタープレーヤーもスター指揮者もいません。でもこれだけ豊かな響きで素晴らしい演奏ができるのです。 最後の金管のコラールは速度を落とし、これ以上ないくらい雄大で深々と鳴り渡り、そしてまっすぐラストに向かっていきました。涙が溢れました。偉大な曲です。そして偉大な演奏家たちです。 終演後帰るのを惜しみながらホールを出ると、CD販売コーナーで指揮者のサイン会でした。井上さんは元気に知人たちと言葉を交わしていました。ひょろっとしたからだなのに声がでかいなと感心しつつ、大きな仕事をひとつ演り終えた充実したいい顔を遠巻きに眺めてました。 残念なのは、700人収容のホールなのに空席が目立ったこと。500人くらいしか入っていなかったのはないでしょうか。もしこれを読んで興味を持たれた方は次回是非行ってみてください。ブラームス:ピアノ協奏曲第1番/大学祝典序曲@舘野泉(p)井上喜惟指揮 チェコ・ナショナルso.井上さんの若い頃の録音です。楽天にはこれしかないようです。
2007年11月11日
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