双の手につかむもの


レベル30になる頃には、そろそろ決めておきたいことがある。

攻撃力を求めて、プロテクタースタッフを使うか。
片手杖にして、防御値の上がる盾を使いつづけるか。
それぞれにそれぞれのメリット、デメリットがある。
例えば、こんな風に……。

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また一体沈むナイトクロウラを見て、彼は狼のような笑いを見せた。
「ふん、ざまぁないな」
彼の両手杖と、雷の魔法に抗しきれる敵は少ない。
雷撃耐性の敵には、風で切り裂くことも出来る。

(盾なんか使ってる奴の気が知れないぜ)
流石に失礼だから言わないものの、視界の隅に居る同業者を見て思う。
対魔、対人、いずれにせよ彼は自分の少し上のレベルと互角に戦える。
背後に転移して魔法を放てば、相手の方向転換の時間、こちらが有利。
防御なんていつかは削られる。だったら自分は攻撃したほうがいい。

囲まれたので、彼は風の魔法を使い始めた。
ここの敵は巨大さはあるものの、一度に五体程度がせいぜいだ。
気をつけていればあとはうろうろするばかり。
まだ見知らぬ土地には巨人のような敵がいるとも聞いたが、いずれは
そうした化け物とも互角に渡り合ってやる。

そう思った瞬間、急激に身体から力が抜けた。
(しまった?!)
ナイトクロウラの間から、デススラーフが入り込んでいたのだ。
転移を唱えたものの、そこは安全地帯とは遠く。
薬も、紫の光を相手では赤字レベルまで激減するだろう。
やむを得ず、彼は撤退を決意した。


「……囲まれたな」
対職業のオーラがうようよする大部屋で、パラディンが溜息をつく。
「薬が尽きる、町に戻るぞ」
「……待ってくれ、相棒」
盾を構えたマジシャンは、すぐ近くの段差を指差した。
「どうにか、ホーリーアーマーを頼めるか?」
「それは出来るが、回復ができないぞ」
頷き、マジシャンは自分の薬瓶の残りを確かめた。
「先に町に戻って、補充してくれ」
「お前、まさか……」
絶句したパラディンに、笑みを浮かべる。
「なるべく早くに戻ってこいよ、待ってる」

光の鎧が全身を覆ったのを確認して、彼は部屋の真っ只中へ飛び出した。
たちまち全ての魔物が騒ぎ出し、押し寄せてくる。
アストラル・ストームを放ち、そのうち何体かを足止めした。
マジシャンに対する紫のオーラも、恐れることはない。

(この盾があるからな)
シールドの加護がある盾は、パラディンの魔法と共に、今の彼を鉄壁の
守りで包んでくれている。
仲間が戻ってくるまで、数十秒。
その間持ちこたえれば、勝利は彼らのものになるのだ。

「……待たせたな!」
大急ぎで帰ってきたパラディンが、周囲を一体ずつ相手どる。
この相手とは初めて組むが、別に他の職業でも問題はない。
彼が囮となっている間に、撃破してもらえばよいだけのことだ。

残る敵が少なくなったので、彼は氷の魔法に切り替えた。
後は足止めしつつ、ゆっくり潰してゆこう。


(……ちっ)
戻ってきた両手マジシャンは、急に広々としたフロアに舌打ちした。
修理とポーション補充の間に、獲物を取られてしまったようだ。
(一対一なら、あんな臆病者に負けないぜ!)
いつか第四世界で会った時の為に、彼は相手の名前をしっかりと脳裏に
刻み付けたのだった。

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因みに、私は盾を使っている。
シールドマスタリの技能は、大分後になってから取得した。
それまでスタッフマスタリを上げていたので、両手になろうと思えば
なれたのかも知れない。
要はそこまでに、ディバインが手に入らなかっただけなのだ。
試せないものは、選びようがなかった。

両手魔術師の攻撃力は片手魔術師のそれに格段に勝る。
片手魔術師の防御力は両手魔術師のそれを凌駕する。

あなたが危険をものともせず死を恐れないなら両手を。
堅実に戦い仲間を助けうることを考えるならば片手を。

迷う場合は、取りあえずスタッフマスタリーを上げておこう。
低レベルの魔法を底上げし、ある程度までは補強してくれる。
マナリチャージはどちらも必須だろう。
回復が多ければ撤退は少なくなるからだ。

さて、今の私はプロテクタースタッフも盾も持っている。
果たしてこの両手杖を使うときは来るのかどうか、いささか悩むところだ。

そこで今、対戦相手が待っているので、そろそろ決めなくてはなるまい。
あなたなら、どちらを取るだろうか?


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