自己融解

自己融解

逆さまラプンツェル



部屋には天井に一つ、天窓があるだけで、他には何も無い。

扉も無ければ、ベッドも無い

しろい、箱だった。

見上げるといつも、青い光が降っていた。

音は無かった。
声も無かった。

見上げた光に対してわく、感情の名前も知らなかった。

抜け落ちた髪を束ねた人形を、両手で抱きしめた。

部屋の隅でうずくまると、ほんの少し、体から力が抜けるのを感じた。

部屋の隅にばかり、いた。

けして広いとはいえぬこの部屋は、私のものではなかった。

部屋の中央も部屋の右側も部屋の左側も天井も壁も窓も

私を受け入れてはくれなかった。

隅だけが、私の存在を許してくれた。

私はこういうものなのだ、と、思った。

どこから来て、何故ここにいるのか、知らなかった。

自分が今、生きているのかさえ、不明瞭だった。

握った髪の束が、解けそうになる。

もう全部終わらせてしまいたかった。

半端に言葉を知ってしまったのがいけなかった。

後悔、していた。

何も知らないまま、ぼんやり、していればよかった。

「しったわたしがわるかった」

外、が知りたくなってしまった。



失敗だ
失敗だ

間違っていた!

窓の外を、知りたくなってしまった。
感情の名前を、知りたいと思った。

でも、部屋には何も無かった。


箱には、何も無かった。

髪の毛の束を、ぎゅっと、握る。


短い髪の毛は、外に連れ出して、くれはしない。


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