お空のあいちゃん

お空のあいちゃん

あいちゃんのオルゴール



説明会の会場になっている部屋には、産まれたばかりの赤ちゃんを抱いた、おかあさんとおとうさんがたくさん集まっていました。 私達夫婦と、1人のお母さんだけが、子供を抱いていませんでした。 みんな幸せそうに見えました。

説明会が終わって退院手続きを終わらせると、看護師さんにみおくられて、私達は病院を出ました。 そしてそのまま、となりの病院に行きました。もちろん、あいちゃんに会いに行くためです。

面会時間は、とくにありませんでした。 朝6時半から7時半、夜6時半から7時半、この時間帯は、看護師さんたちの交代の時間だったので、面会禁止になっていました。 でも、それ以外の時間だったら、夜中でも会いに行く事ができました。

あいちゃんは昨日よりも、起きている時間が長くなっている、と先生が教えてくれました。左手で、チューブを握ったまま伸びをしてたので、管がぬけてしまうんじゃないかと、ひやひやしました。

2、3回目を開ける事もありました。 目を開けると、私は必死に話し掛けました。“あいちゃん、ママだよ。わかる?ママだよ。”そう、話し掛けないと、<この子は私がママだと言う事を忘れてしまうんではないか> そう思っていました。 私があいちゃんの側にいる時間より、看護師さんたちが側にいる時間の方が多かったからです。 完全看護で、常に2人の看護師さんたちが、あいちゃんのそばにいました。そばにいて話かけたり、体にふれたり、おむつを変えたりしていました。私は母親らしいことを、なにもしてあげられないでいました。

2時間ほど面会して、私達は買い物に行きました。まず、 病院でもらった靴下がちょっと大きかったので、もっともっとちいさい靴下を3つ、買いました。それから、オルゴールのついたうさぎのぬいぐるみを買いました。

買い物をして、また病院にもどりました。まず靴下をとりかえてあげました。ピンクの靴下をはかせてあげました。 1番小さいはずの靴下が、あいちゃんにはぶかぶかでした。 オルゴールもかけてあげました。私はこのオルゴールを帰りにならして、その音をききながらNICUから出て行くのが、日課になりました。

今でも、そのオルゴールはあいちゃんの側にあります。ときどき、だれもさわっていないのに、ポロンと音が流れる事があります。そんな時私は、あいちゃんが遊びにきたんだなあ、と思います。



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