水彩画紀行  スペイン巡礼路 ポルトガル 上海、蘇州   カスピ海沿岸からアンデスの国々まで

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不思議な少女との出会い



代わりにと聞いたところに電話。話がどこか食い違っていたけど、

とにかく来てくれた。少女のような22才。

ロシア語を習いながらいろいろ聞くとやっぱり人違いだった。

本当は、彼女と同居している別の女性だったのだ。

彼女の英語の片言がなせるわざ。

でも、間違っていてよかった。

語学勉強が済んだら、もう夕暮れ。そういえば昼飯も食べていない。

90分の出張授業がわずか6ドル。キャラバンサラのような

高級なとこには行ったことがないという。

じゃあとそこで食事をおごってあげることにした。

意外と彼女は博識だった。

トルストイ、ツルゲーネフ、チェーホフ、チモール、ジンギスカン、ヒットラー・・・。

ロシアとコーカサスにまつわるいろんな人物のことで話が弾んだ。

そしてワインをふたりで一本飲んで頃、その不思議な事が起こった。

彼女が僕の手相を見始めた。

「たくさんの人といろんな出会いをしている。」

「すごくたくさんの収入があったけど、お金を少し損したことがある。」

「ひとつの事にしばらく熱中し、次に別のことに熱中するくせいがある。」

「子供はふたりいる。」

「もう一人生まれるはずだったよう。」

「18才の頃、一生を左右するような影響を与えた女性と会っている。」

他にもいろいろ言ったけど、たんたんと述べる少女の言葉がすべて当たっていた。

気になることをひとつ言った。

「これからどうなる?」

「大きな病気をするかもしれない。」

そうかもしれない。

いつも遅くまで起きていたり無理することがあるから。

自重しようと思った。

ロシア語の先生の風邪での休み、代理の先生の登場、人違い。

偶然の重なりで出会った少女。

初めていろんなことを本音で話す女性と出会えて楽しかった。

これも誰かの配慮した貴重な出会いのような気がした。

聞いてみたら数年の間に若い両親をなくし、異母兄弟とは別居し、

友達の女性と一緒に住んでいると言った。

彼女は、あまり幸せそうには見えなかった。

お礼に、CDショップに寄って、彼女が好きなボンジョビのCDを買った。

通りがかったショーウインドウに赤いサッカーボールがあった。

彼女が欲しそうに見えたのでそれもプレゼントした。

「どこで蹴るの?」

「部屋の中で。」

「そんなに広い部屋?」

「ううん。狭いけど時々蹴ってみたいの。」

赤いボールは、日々の生活の満たされぬ鬱憤を

蹴飛ばしていきるために要るのかな。

ほんとうに嬉しそうだった。

ロシア語の先生は来週はこれると言っていたから、

もう会わないかもしれないけど。

食堂で働く女性の給与が1日でたったの6ドルの国。

ほとんどの企業がソ連から独立して13年たったのに、

まだ開店休業に近く、大学を卒業しても仕事があまりない国。

頼みの石油の販売量も国全体で7000億円ほどと

微々たるもので国家予算への貢献もまだまだ。

みんな苦労して生きている。

でも、なんとか幸せになれ!


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