映像四郎の百人斬り

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「用賀事件」





 「右翼バンドマン」。

 彼は、伝説のインディペンデント・ロッカーなのです。

 ロッカーというのは、100円で、荷物を預けたりする保管箱ではなく、

 ギターなどを、じゃかじゃか、かきならし、音楽する人のことです。

 いわば、独立系音楽家。

 そして、この話は、どこから、どこまでが、本当か、わからないので、

 全て、フィクションなのです。

 それは、去年の10月のこと。

 われわれが、渋谷で、行った「句読点ライブ」(私は、撮影で参加)が、

 惨敗に終わり、「右翼バンドマン」の心と表現の歯車が、

 狂いだしたことから、始まりました。

 ビジネスホテルに、「右翼バンドマン」が、こもりだしたのです。

 しかも、二人の「怪人?」を伴って。

 二人とも、ギタリストです。

 ひとりは、謎の弾き語り男、「流しマン」。

 もうひとりは、謎の分裂病患者、「電線マン」です。

 今、想えば、それは、「原始宗教」の始まりだったのではないでしょうか。

 「うずまき君」と称し、

 携帯電話の中に棲む「謎の異次元生命体」と交信しはじめたところから、

 何かが傾きはじめていたのかもしれません。

 教義は、ウィリアム・バロウズの小説群。

 三人の「音楽家?」が、一室にこもり、

 独自な「精神世界」の探求を行っていたようです。

 私にくるメールや電話も「意味不明?」な世界観が、あふれだしていました。

 どうやら、それが、彼らなりの「芸術性?」の追求らしいのです。

 そして「電線マン」が、常備薬の「神経遮断剤」を、

 「右翼バンドマン」と「流しマン」に飲ませてしまったことで、

 事態は、急変します。

 二人とも前後不覚の睡眠状態に陥ってしまったのです。

 すとんと落ちるような強烈な効き具合だったそうです。

 しかも、その晩は、元「ピンクレディ」の片割れが、同じ宿にいて、

 彼女の姿を垣間見るのを、彼らは、心待ちにしていたのです。

 しかし、意識が戻ったときは、すでに、日付が変更された後でした。

 そこで、争いが起こり、「流しマン」と「右翼バンドマン」は、

 「電線マン」を椅子で、ボコり、部屋から、追い出しました。

 私にも、何度か「こい、こい」とお誘いのメールを受け取っていたのですが、

 不穏な空気から辞退していました。

 「右翼バンドマン」は、

 いわば「ゆきゆきて神軍」の「奥崎謙三」タイプなのです。

 カメラを向けられることによって、深層心理が現実化し、

 行動がエスカレートし、常軌を逸しかねない男。

 ここで、彼の行動に拍車をかけるのは危ない。

 そんな空気を、そのころは、感じていました

 そして、友人の「ウサギマン」が、視察に訪れたときは、

 「右翼バンドマン」は、

 実家からもってきた合法的な日本刀の素振りを裸で延々と行いつつ、

 ホテルのボーイさんに頼んだタバコの代金をお財布がわりに、

 仮性包茎のちんちんの皮に入れた硬貨で支払い、

 「流しマン」は、裸で、座禅を組みつつ瞑想にふけり、

 異次元に棲む「うずまき君」に、想いを馳せているのでした。

 当時、規制前だった「アロマテラピー」系の合法ドラッグの中で、

 ぱくぱくかましながら、きめきめ会も行っていたようで、

 室内は、荒れ放題、乱れ放題。

 その状況は、ジョニー・デップ主演、テリー・ギリアム監督のドラッグ映画

 「ラスベガスをやっつけろ」の惨状を呈していたとのことです。

 「ウサギマン」は、途中で帰り、

 そのあと、私が電話で「右翼バンドマン」に、

 「そろそろ、撤収したほうが、よいのでは」と話したあと、

 彼らの消息は、ぷつりと、途絶えてしまったのです。

 あとから聞いた話では、

 フルボリュームの「爆裂ライブ」を、室内でカマしてしまったのです。

 そして、パトカーに、火炎瓶を投げつけ、お縄になっていたとのことでした。

 空き瓶にジッポのオイルを入れて、紙をくちゃくちゃに棒状にして差し込み、

 即座に、火炎瓶をつくったという話なので、右翼な男の本能は、驚きです。


 「事件」は発生してしまいました。


 おそらく、それは、「うずまき君」と交感するための、 

 彼らなりの儀式であり、祭りだったのでしょう。

 今、現在は、平穏無事に「ふつー?」に生きてるようです。






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