映像四郎の百人斬り

映像四郎の百人斬り

「夜中のウサギ男」





 「ウサギ男」は、電話をかけると、

 たいてい仕事か、飲んでるか、どっちかで、

 今夜は、飲んでいた。

 行きつけの「酒場」に駆けつけると、

 「ウサギ男」は、常連客と、でれでれに酔っている。

 「ウサギ男」は、酒が、極度に一線を越えると、

 「ヴァイオレンス=ウサギ」に変貌する。

 しかし、それは、たまにしかない。

 孫悟空の頭にはめられた「わっか」みたいなものの反動が、

 一斉に噴出するのかもしれない。

 しかし、明るい「ヴァイオレンス」だ。

 風俗の看板を破壊するのが、好きらしい。

 それが意味することは、よくわからないが、

 どうしても「昭和の男」になってしまうのかもしれない。

 迷惑な正義感を振り回す「旧制高校生」になっている。

 私の得意な前衛芸術に近い「音痴歌」を披露すると、

 店内では、割れんばかりの「ブーイング」が起こり、

 すぐに消されてしまうこともあるのだが、

 アンコールされて、3曲も歌った。

 歌を拒否するための方策なのだ。

 しかし、私の「音痴歌」はあまりにも、

 芸術的に計算されつくしているため、

 人は、拒絶反応を起こしても、

 どうしてもまた、聞きたくなってしまうらしい。

 久々に、「ウサギ男」の「わっか」に対しての「お話」を聞けた。

 その「わっか」は、

 「ウサギ男」の過去に関してのジレンマと、落とし前の話で、

 きっと、ウサギ男は、このまま、ずっと、

 その「ワッカ」を持ちつづけるのだろうが、

 それもまた、それでよいのではないか、と感じた。




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