映像四郎の百人斬り

映像四郎の百人斬り

「爆撃」





 「かっぽちゃん」出現情報を入手。

 私は、急遽、ゲイタウンにとんだ。

 時刻は、午前3時03分。

 せつな系ダイアリアン「かっぽちゃん」こと「江戸川華歩」は、

 積年の「せつなさ」を発散するため、

 丑三つ時に、新宿2丁目はゲイタウンで、

 ウイスキーをラッパのみしながら、

 ゲイに向かって、号泣しつつ、ゲロしているらしいのだ。



 先日、入手した「かぼちゃパンツ」片手に、

 私は、深夜のゲイタウンに、立ち尽くしていた。

 人通りは、ちらほら。

 しかし、終電も終わり、人の流れには、

 怒涛感が、失われている。

 一体、どこにいるんだ。

 唯一の手がかりは、「かぼちゃパンツ」。

 私は、それを、顔に、押し付け、

 ゆっくりと匂いをかんでみた。

 いい匂いだ。

 シャンプーに混じって、ミルクの香りがする。

 ミルク?

 私は、直感した。

 「かぼちゃパンツ」を、ズボンのポケットに、

 押し込み、走り出した。




 「牛」。

 ゲイタウンの片隅に、存在する、

 知る人ぞ知る「ミルクバー」。

 ここでは、全ての酒が、ミルク割りだ。

 扉を開けて、中に入ると、

 ミルクと酒の匂いが、充満し、

 10畳ほどの狭いスペースに、

 人が、すし詰め状態。

 空気自体のアルコール度数が、

 90%を超えているようで、

 ゲイも、女も、入り乱れての、

 ボトルあけ合戦が、繰り広げられていた。

 どこだ、どこにいるんだ!?

 見ると、カウンターの片隅で、

 アイスペールに入れた、

 白い液体を飲み干す女が、

 一瞬、目に入る。

 「かっぽちゃん!?」

 う。

 私の唇が、何か、やわらかいもので、ふさがれ、

 視界も、ふさがれた。

 口中には、ミルクで、割られたアルコールが、

 どくどくと、広がっていく。

 しまった!

 ここは、ゲイタウン、

 私は、ゲイに、口移しされていたのだ。

 「かっぽちゃん!」

 進もうとするが、ゲイがアリのように、

 吸いついてきて、身動きがとれない。

 視界が、ふさがれてゆく。

 だ、だれだ、おれのちんこシャブってるやつは!?

 やめろ、やめてくれ、

 しかし、声にならない。

 口には、ボトルを、突っ込まれ、

 いやおうなく、アルコールが、

 五臓六腑に、流し込まれていく。

 視界が、歪んでいく。

 人垣の隙間から、

 「かっぽちゃん」が、

 眼がねスタイルで、

 白くきらきらした、ゲロを、

 泪とともに、吐き散らしている姿が、

 一瞬、網膜を掠めた。



 きづくと、私は、2丁目のゴミ捨て場に、捨てられていた。

 身体中が、アルコールと、ミルクの、ゲロまみれだ。

 ふしぶしが痛い。

 動けない。

 尻に手をやるが、どうやら、

 アナルは無事だったようだ。

 視界が霞んでいる。

 眼がねが、

 眼がねがない。

 身体をおこして、あたりを見渡した。

 太ももの下に、異物を感じる。

 見ると、眼がねが、ひしゃげている。

 だが、おれのじゃない。

 「!」

 これは、かっぽレンズ。

 歪んだフレーム、合わない度数の、

 「かっぽ眼がね」を、装着し、

 2丁目、朝の曇り空を見あげた。

 (http://plaza.rakuten.co.jp/tutomutti/)




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