映像四郎の百人斬り

映像四郎の百人斬り

「440」





 「右翼バンドマン」は、

 現在、音信普通だ。

 南米にいく前に、東京に出てくるらしいが、

 その噂が、流れてから、約一ヶ月、

 彼は、どこかに、潜伏してしまったらしい。

 それが、場所をともなっているのか、

 精神的海底なのかは、

 未だ、判別しない。

 去年、知り合った「ヒカル氏」という、

 性転換を図ったストリップアーティストが、

 いるのだが、

 彼女に、「右翼バンドマン」の

 CDジャケット写真を、

 見せていて、ふと感じたのが、

 「似ている」ってことだ。

 「文化的越境度=テロ度」の高さが、

 「右翼氏」と「ヒカル氏」は、共通している。

 今となっては、もしかして、

 「形見?」かとも思われる、

 「右翼氏」からもらった「ナイフ」を、

 押入れから出して「ヒカル氏」に見せると、

 「あらぁ、いいナイフじゃない。

  440って、いいステンレスなのよ。

  でかいわねぇ。

  あたしも、昔、大好きだったのよ。

  いっぱい、買ったわ。

  災害が、起こったとき、

  ひとつだけモノを、持ってくとしたら、

  答えは、二つに分かれるんだって」

 「え、なんすか?」

 「金か、ナイフ」

  すごすぎ!

 そんな思考が、この世に存在するなんて。

 「右翼氏」以外に、そんな話がでるとは、

 思わなかった。

 だからって、

 私は、そんな危ない選択しません(念のため)。

 「ヒカル氏」も、女だし、

 そんなヴァイオレンスな選択は、

 きっと、しないんだろうけど、

 彼女から、感じていた「自律性」と「強さ」は、

 そんな「都市生活者の自警意識」から、

 出ているのかもしれない。

 「かわいい女」ではなく、

 「かっこいい女」を目指しているという、

 「ヒカルさん」は、確かに、かっこいい。

 「バイク」の後ろに、乗せてもらったり、

 命がけの「性転換」の話を聞かせてもらったり、

 「ナイフ」の話題を振っても、造詣を示してくれる。

 「ヒカル氏」と話していると、

 もしかして、「仮面ライダー」ってな気分になってくる。

 つまり、ヒーローなのだ。

 それだけ、突き抜けている。

 たとえ、ヤクザが、小指を詰めれても、

 「ちんちん」詰めれる人は、

 なかなかいないはずだ。

 それだけの「落とし前」をつけて、

 「女」になっている。

 彼女から、漂う「存在」の「ソリッド感」は、

 自分の肉体への「刃物」の介在を許したところから、

 生まれているのかしれない。




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