全14件 (14件中 1-14件目)
1

最近つくづく感じること。 俳優とか音楽家とか、大きくひっくるめて芸術家と呼ばれる人は、一流と言われる人ほど話が上手い。凛々しくもウィットやユーモアに富んでる知的な語りぶり。 一昔前までの芸術家って、専門分野以外のことには不器用、寡黙かつ口下手な人こそが人気だったような気もするのだけど、今や全然違う。黙々と作品そのものだけで勝負するというよりは、それの突出性を裏付ける巧みな話術をも持ち合わせてないと絶対に不利。世の中の速度も変わってるのだし。 と言うのも、ネット上の動画やDVDの普及により、当人のインタビュー映像など、舞台裏の素顔も気軽に見られる時代になっているわけで。彼らにカメラを向けたドキュメンタリーものも頻繁に作られてる。フィラデルフィア管弦楽団員のとか。 世界を舞台に活躍する彼らに共通しているのは、最低二ヶ国語を操り(母国語及び英語)、自身の芸術論などをしっかりと言葉で表現できること。文才のある人もいて、天は二物も三物も与える。 以前にヨーヨーマ氏が来日したとき、某テレビ局が独占インタビューをしてた。 僕は興味深々でテレビを観てたけど、インタビューした美人バイリンガル女子アナが、なんとも的を得ない質問ばかりしててイライラした記憶がある。「チェロの音色って素敵ですね」だの「あなたみたいな天才に会えて嬉しいですわぁ」だのと褒め殺しているうちに収録終了。せっかくの大物をつかまえといてもったいない……。 一方、そのときのマ氏の受け答えは機転が利いててサスガだなーと感心した。話すことを職業としているアナウンサーよりもずっと知性を感じさせる言葉遣い。***** アカデミー賞などの授賞式でもそう。ビックリするほど立派な受賞スピーチをする人がいる。冷静に、短時間で言いたいこと(と気の利いたこと)をきちっと言えるのも一流の条件。もちろん奥ゆかしく謙虚に、しかし「謙遜しすぎない」というのも新しい国際基準になってるような気がする。そして内容だけでなく、人を惹きつける説得力のある話し方も伴わないと。 個人的な意見としては、今年のオスカーだと「Once ダブリンの街角で」主演女優/歌手のマルケタ・イルグローバ。 スピーチやり直しというオスカー異例の待遇に値する名場面として後世に語り継がれるかもしれない。(あるいは、単なる一発屋で終わるかもしれないけど……。) 彼女はまだ19歳。英語は外国語なはず……
May 31, 2008
コメント(2)

日本に出張してきた友だち(米国人)が、ニッポンのタクシーは自分でドアを開閉しなくてもいいことに驚いてた。運転手が白手袋をしてることとも含めて、どーやら異様に感動したらしく。 僕が初めてニューヨークでタクシー(イエローキャブ)に乗ったときは、別の意味で驚いた。まず初乗り料金が安い(今でも250円)。あと、運転手が移民ばかりで英語が通じないので、目的地にほんとに連れてってもらえるのかわからずスリリング。しかも運転が乱暴で怖い(が、速いので良しとする)。 てなわけで、今日のお題はタクシー。***** まずはテレビ番組。 こちらアメリカでは、「タクシーキャブコンフェッションズ」という深夜番組が話題になった。NYやラスベガスの夜の繁華街を走るタクシーに小型カメラを仕掛けておき、運転手(サクラ)と客との会話を撮影してしまうというもの。 どの乗客も、利害関係のないタクシー運転手相手だと気が緩むのか、撮影されてるとは知らずやたらとしゃべりまくるのだけど、その内容に仰天。良い子のみんなにはとても見せられない番組。眠らない街の片隅で、人はあんなことやこんなことにお忙しいらしい。おミズ系の人はもちろん、「今から彼氏を殺しに行くの」と鼻息を荒くしてる拳銃乙女とか、家族や祖国を捨て夢の国アメリカにやってきたのに孤独に暮らしている移民の告白とか、「人生いろいろ」が映像に収められてる。すごく見ごたえがある。 僕も深夜にNYでタクシーに乗るときは思わず意識するようになった。撮られてたらどうしようって勝手に緊張しているおバカなワタクシ。***** つづいてイギリスねた。 ロンドン市内を走り抜けるタクシーは黒塗り。運転手さんがコックニー訛りだったりして焦るのもまたロンドン滞在の醍醐味。 最近、移動中のタクシー内の後部座席を舞台代わりにギターだのの弾き語りをするという音楽ビデオ「ブラックキャブセッションズ」がかなり流行ってるらしい。 正直、なにが面白いんだか個人的には意味不明。イギリスっぽいと言えばそうかも。 で、この企画についにクラシック演奏家が登場してしまったのだとか。あんな狭い空間でパガニーニなんか弾いちゃって、ご苦労さま。僕なんて、見てるだけで車酔いしてしまう。 動画 現実的には、このバイオリニストみたいに積極的にメディアに露出して話題づくりに励むこともまた、この世界で生き延びてくうえで大事なことなのかも。 ちなみに彼(チャーリー・シエム氏)、どっかで見たことがあると思ったら、以前にケンブリッジ大学での学内演奏会で聴いたよーな。 あの時はピアノの人と全然テンポの合ってない演奏で、聴いてて絶句したけど、今は無伴奏を専門に弾いてるらしく、それはそれでアリ?***** タクシーと言えば、先月NYでタクシー内に高価な楽器を置き忘れてしまったバイオリニストがいた。もちろん、我々庶民はこのテの話題が大好き。 で、このバイオリン弾きフィリップ・クィント氏は、楽器が発見されたときは歓喜のあまり号泣。しかし、転んでもタダでは起きない。 彼は後日、多くのタクシー運転手さん相手に無料演奏会をしてあげて、しかも、コトの発端からの一部始終を天下のニューヨークタイムズ紙とかが何度も記事に採り上げた。 www.nytimes.com 結果、この人ってば、今ではやたらと脚光を浴びて一気に知名度上がりまくり。 (なんだかなー……。)
May 28, 2008
コメント(0)

突然ですが、ずっと気になってることなので……。 たまに目に留まるのであります。本の表紙だったり、演奏会のビラだったり、ウェブだったりCDのジャケットだったり。 気がつかない人は一生気づかないと思いますが、写真を裏返して載せてしまうという間違い(鏡像反転)。 楽器を構えてる向きとか弦の並び方(太さ)をよぉ~く見れば、左右が逆になってしまってるのがわかります。単なるイメージ写真だとはいえ。 右下のが正しい。(こんなことに目くじら立ててるのってオレだけ?) まんざら間違いじゃないこともあるからややこしいのです。特にギターやベースだと、ほんとに左右逆に構える奏者もいて。ポール・マッカートニー卿や松崎しげる氏が一例。 先週、テレビ番組「アメリカンアイドル2008」(スター誕生もの)決勝を観てたら、優勝者がやはり逆にギターを構える人でした。 ←横笛だって、必ずしも右に構えなくてよいらしい。 前にも書きましたが、左手に棒を持つ指揮者もいるようです。 ↓竹中直人氏は映画「スウィングガールズ」では左で指揮してます。「のだめ」では右でした。 もしかして弦楽器奏者のなかにも、冒頭の写真のように逆に構える人がいるのかもしれません。なら、共演してみたい。鏡を見ながら弾いてるようで楽しそうですし。***** 左利き用ピアノは実在します。ラヴェルらの「左手」協奏曲というわけではなく、ピアノの鍵盤が左右逆。右に行けば行くほど低音になるやつ。 ドイツのブリュートナー社などが特注仕様で作ってるそうですが、それを実際に弾きこなしちゃう左利きピアニストが何人もいるってのも驚き。 http://lefthandpiano.com/en/ http://www.lefthandedpiano.co.uk/index.html 譜面はどうなってるかというと、↓この曲はもしかして……。 http://lefthandpiano.com/en/
May 25, 2008
コメント(12)

ソ連の歴史とかについて熱く語れるわけでもないし、楽曲を隅々まで隈なく知り尽くしてるわけでもないので、タコヲタを自称するつもりなど毛頭ありません。でも、ショスタコの音楽って妙に気になるのであります。プロコフィエフの冷たいヌメり気とも違う。 期待を心地よく裏切る多面的な楽曲の数々。聴いてるとなんだかストレスが溜まってきて、でも同時にストレス発散もしてるような不思議な精神状態に陥ります。 自分自身で実際にバイオリンで弾いたことのある曲もいくつかあります。独特の音のぶつかりとかはさすがに泪モノ。 近年では、交響曲5番「革命」や12番「1917年」、ピアノ三重奏曲2番などを弾く機会がありました。一生の思ひ出。また弾ければいいのですが。 ショスタコの譜面はシコルスキ Sikorski 社とかの高価なものが多く、なかなか個人では買いにくいので、我々愛好家のあいだではなおさら神聖化されています。 いつか、カルテット8番とショピ5(ピアノ五重奏曲)を弾いてみたいというのが僕の密かな野望。 ちなみに、周りのガイジンさんたちは Shost や Shosti、あるいは DSCH とかの愛称で彼のことをしたためるようですが、実はちゃんと綴る自信がないというだけの話のようです。英語綴りだと Shostakovich? ドイツ語だと Schostakowitsch。 以前、カナダの「ケベック州最大の楽譜屋」とやらで物色してたら、ショスタコが全く置いてないのに失望してしまいました。で、店員さんに激しく苦情を垂れたら、「Cの棚にございます」とおっしゃる。フランス語だと Chostakovitch なんだそうで。***** さて、彼はクラシックだけじゃなく、ジャズや映画音楽などもたくさん書いてます。肩の力が抜けたようなその音楽は、同一人物が書いたとは思えません。 ジャズ組曲よりワルツ2番 ←この人、どうやら韓流カリスマビオラ弾きらしい 映画音楽「馬あぶ」ほか ←ジュリアン・ラクリンとジャニーヌ・ヤンセン(破局前の映像?) この「馬あぶ」ほかの小品、どれもスゴいです。最近譜面を入手できたのですが、バイオリン二人が、ずーっと三度や六度とかで、ひたすらべったり寄り添ったまま旋律を奏でてます。 ここだけの話、僕ってば、いつの日かジャニーヌ嬢と共演することを勝手に夢見て、独り夜な夜なこの曲を練習してたりします(笑)。
May 23, 2008
コメント(5)

「オケメンパラダイス」 フィラデルフィア管の今回の日本公演を記念して、今、この映画が東京で劇場公開されているそうで。 こちらアメリカでは数年前に地味に公開され、今も一部の愛好家のあいだで語り継がれている(幻の)ドキュメンタリー映画(原題 Music From the Inside Out)。 僕は当時、たまたまご当地フィラデルフィアで観ることができ、しかも終映後は出演者の舞台挨拶やナマ演奏まであって、強く記憶に残っている。 オケの内側、裏側を描いていて、もちろん音楽も満載。オケの曲だけじゃなく、シューベルトの弦楽五重奏曲などの室内楽曲もいい感じに使われている。 印象深かった場面はいくつもあるけど、バイオリンのオカ・ヒロノ氏が久しぶりに日本のご実家を訪ねるとことか、コンマスのデービッド・キム氏がオケマンになるにいたった苦悩を語るとことか(「ほんとはソロで食べていきたかったのにぃ……」)。 タキシード着てクラシックを演奏してる団員らも、終演後に私服に着替えたあとは、ネオン輝く夜の街に繰り出しては、クラブで激しく踊ってたりもし。 ほかにも、スピード狂のオートバイ暴走男、画伯、マラソンおたくなど、ひとクセもふたクセもあるオケ団員たちが、楽団や音楽への思いをカメラの前で熱く語りまくる。 このフィラデルフィアという街、大都市のくせしてパッとしないのも事実で、中途ハンパにニューヨークに近いのも「なんだかなぁ」的な街。でも、近年ではラン・ランやヒラリー・ハーンを輩出してるし、音楽家や聴衆を育む独特の土壌がこの地にはあると思う。
May 17, 2008
コメント(2)

「シラミの歌」 ナンシー vn、スティーブ vn/va、ジェーン va、ケーティー vc の四人は毎週のようにカルテットで遊んでいらっしゃるらしい。その情熱および「人間関係維持力」には脱帽。 で、今週は僕が特別客として招かれ、モーツァルトのビオラ五重奏ト短調の第1バイオリンを弾かせていただいた。シャーマン先生(クラリネット奏者)のご指導つきという贅沢。おもに1楽章を練習し、余った時間で2楽章をサクッと通した。 この曲、世に数ある弦楽五重奏曲のなかでおそらく一番有名。「モーツァルトのト短調」というブランド性もあるし。 1楽章の第1ビオラの立ち回りかたがお見事。ブラームスの弦楽六重奏曲1番の第1ビオラのキャラともかぶるか。 一方の2楽章はあっさりめだけれども、ベートーベンばりの突然のフォルテの和音をビシッと決めたいところ。その和音進行がすごく粋。 このメヌエット内に出没するフレーズはどれもが鼻唄にもってこい。そのひとつが「シラミの歌」。楽器を変えたり調を変えたりしながら何度か出てくる。 「シラミの歌」って、確か、芥川也寸志版、團伊久磨版、さだまさし版とか何通りかあったはず。歌詞が音の階名そのもの。 シラミ、シラミ、それシラミ どれどれ、それそれ? そら見~れ 見られそう? 知られそう? 見られしシラミ、シラミ騒動!……みたいな曲だったような。 なにがスゴいって、ちゃんと「ド」で完結してるとこ!
May 15, 2008
コメント(0)
CNNテレビで、去る二月に行なわれたニューヨークフィル北朝鮮公演についての番組をやってました。(「北朝鮮からの手記/音符 Notes from North Korea」) 当時はニューヨークタイムズ紙などで何度も取り上げられて市民の間では話題になってたし、実際、知人が公演に同行してたこともあり自分としても興味を持っておりました。で、なんとなく忘れかけていた今、こうやって映像で見てみると、やっぱり歴史的にスンゴイ出来事だったことを再認識したわけで。 ロリン・マーゼル率いる280名もの音楽家や職員の愛と感動のウルルン滞在記、なはずはなく、こてこての政治ドキュメンタリー。 番組では、オケ団員のリサ・キムさん(韓国系アメリカ人)が複雑な心境を告白するとことか(「拉致されたらどうしよう」)、平壌空港の入国管理所で携帯電話を没収されるとことか、普通の演奏旅行では考えられない場面が織り込まれてます。 演奏会とは別に、レポーターが地方の核施設を訪問するとことかも見応えがありました。 でも、この番組を観たあとでも、僕らにとって北朝鮮はやっぱり未知の国、ますます不思議な国。 公演当日の平壌市内は、「NYフィルが街にやってくる」とばかり、通りには電灯がともり、歓迎体制が演出されたようですが、公演が終わりガイジンが街から消えた途端、外灯は再び消され、もとの暗い街に戻ってしまったらしい。 「もしかして、アメリカってそんなに悪い国じゃないのかも」。演奏会直後に現地の少女が語ってましたが、彼女は今でも「国に認められた音楽」しか聴くことができない。そして、国民は今日もまた「彼」に忠誠を誓い、「彼」のために歌うこと踊ることこそが文化/芸術であると信じており。 人間は環境が創るのであります。 自分がもし北朝鮮に生まれていたとして、ある日突然NYフィルがやってきて、「新世界」とか「パリのアメリカ人」とか演奏するのを見て、果たしてどう思うのか想像もできません。でも、アンコールで朝鮮民謡「アリラン」を弾かれた日にゃぁ、やっぱり感動するに違いなく。 なんかこのブログの趣旨から逸脱してしまいましたが(←趣旨なんてあったの?)、いつのまにかこんな大変な仕事やってのけてたとは、我らがNYフィル、お疲れさま。 ↑勝手に身内のつもり。最近は全然演奏会を聴きに行ってないので、プチ自戒の意味も込めつつ。
May 10, 2008
コメント(2)

「O say, can you see!」 ピアノ三重奏の練習を久しぶりに再開。前回(とはいえ半年以上も前)に引き続き Paul Schoenfield 作曲の Cafe Music を練習した。 何ヶ月も準備期間があったので、今回はちゃんとCDを入手、動画も視聴し、一応は自分なりに予習して臨むことができた。ほかの二人(セス pf とルース vc)に負けてらんないし。 で、結論、すごく楽しく弾ける曲。「正統派」クラシックではないし、難曲ではあるけれど、コツをつかんでしまえば弾けないこともない。こういうのもたまにはいい。いつかこの曲を人前で弾いてみたいというのが僕らの密かな野望。 この作曲家、世界的に知られてるのかはわからないけど、少なくともこちら地元のアメリカでは「クラシック音楽おたくを自称するなら押さえておいたほうがいい」作曲家。 全三楽章からなるカフェの音楽、決して長くはない。 ジャズっぽい「決め」や「締め」の和音が超かっこよい。自分にソロが廻ってきたら、いやらしいほどにグリッサンドとかポルタメントかけまくるのもまた一興。 どの楽章がお気に入りかという点で我々三人のあいだでは意見が分かれたが、自分としては2楽章を好む↓。 あと、譜面に書かれている楽想指示語も興味深い。 swing 八分音符を跳ねる(タッカタッカ) even 八分音符を均等に(タカタカ) niente フェードアウトして完全に音を消す scoop ヒョイッとすくい上げる感じ ……ぐらいまではなんとか理解できるものの、 ragtime ラグタイム風に dixie ディキシー風に ……あたりから具体的にどう弾けばいいのか不安になり、 Hollywood ハリウッド風に ……って言われても。 いずれにせよ、アメリカ万歳!って感じに弾けばいいらしい。←開き直ってるし。***** ちなみに、この曲のCDはエロイカ三重奏団のがたぶん定番かつ定盤。僕も所有しており。 ←動画 このおねーさんたち、前に我が家の近くの会場にどっかのオケと一緒にやってきて、ベートーベンのトリプル協奏曲を弾いては聴衆を悩殺なさってたのを思い出した。 露出系美女軍団という点ではイギリスの四重奏団 Bond とキャラがちょっぴりかぶってるかも。スカートの短さでボンドガールズに負けてるけど。
May 9, 2008
コメント(0)

「Roll Over Beethoven ベートーベンをぶっ飛ばせ」 ラズモフスキー三曲のなかで一番アンサンブルが難しい。それはある程度は予想してたけれども、一緒に弾いた三人に励まされながら楽しく練習することができた。Vn 1 自分、Vn 2 マリリー、Va エレン、Vc マルディ。 速くもなく遅くもない超ビミョーなテンポ、しかも八分の六拍子という背水の陣な1楽章。 細かい音符がモルト・アダージョのなかに散りばめられていて、精密なリズム感覚が問われる2楽章。 全曲のなかで一番まともそうに見えて、実はトリオを何度も繰り返さなくちゃならず、クドすぎる3楽章。 もう胃が痛くなってしまって、ベートーベンなんてうんざりと思いかけるのに、4楽章プレストで救われる。すごく楽しい楽章。 不思議なことに、弾けても弾けなくても最終的には爽快感/達成感が残る。ラズモ・シリーズの特長。 ドボルザークの「アメリカ」カルテット同様、馬が駈けてるような躍動感がある。なんとも垢抜けてないとこもドボさん的。弓づかいも難しいし、一歩間違うとすぐに落馬してしまう恐怖感はあるけど、そこもまたまたギャロップの醍醐味。 最大のヤマ場はここ。何度か出てくる。 スコアを見てるとそんな難しそうには見えないけれど、猛烈な速さの二拍子で弾かなきゃならない。一瞬の数え間違いも命取り。誰から受け継いで誰に受け渡すかなんて規則性など(たぶん)ないから、理屈ぬきでひたすら目の前のパート譜を信じる。焦らずにちゃんと数えて、自分の番が廻ってきたらピアニッシモでタリラ♪と弾く。ナニゲを装うことが大切。 さらにスリリングなことに、このわずかな休みの間に譜めくりしなきゃいけなかったり! ベートーベン様の崇高な哲学観だとか、あるいは音程だとか音量だとかリズムだとかの音楽的なことはこの際どーでもよくなってきて、僕たちってば、この部分だけ倍速にして自虐的に練習したり、しかも、「落ちたら(あるいは飛び出したら)罰金5ドル」とか賭けたりして、勝手に盛り上がってしまった。 あまりに笑いすぎて、チェロのマルディさん、窒息してるし。
May 6, 2008
コメント(2)

「Ray, a drop of golden sun(レはレモンのレ)」 今日は弦楽四重奏ごっこ。バイオリンは僕とマリリー、ビオラはエレン、チェロはマルディ。今後、月に一回集まって練習することにしてるけど、果たして今回こそ継続なるか。僕が一応ファースト固定で弾くことになってて、ちょっぴり緊張。 ボロディンの2番は超有名な曲なのに、自分にとっては初挑戦。大慌てでさらって今日を迎えた。コ難しいとこも多いものの、ファースト(やチェロ)はおいしい旋律が多く、独りで黙々と練習してても寂しくはない。 特に1楽章や3楽章「夜想曲」の民族系萌えメロは、むしろ我々日本人向きと言えるかも。 こぶしを利かせたり、ふわっと揺らしたりして、いろいろ味付けもできそうだし、素朴に乾いた弾き方もできそう。 逆に、今日一緒に練習したアメリカンな奏者さんたちは、この曲の旋律美にそれほど萌えてないように見えた。 全体的には親しみやすい音楽なのに、終楽章がクセモノ。ベートーベン後期のような「もったいぶったような」気難しさが漂う。一歩間違うと、ぼろぼろボロディン。って言うか、どうもほかの楽章との釣り合いがとれてないような気がする。 なにはともあれ、弾いててすごく楽しめた。 ファーストとチェロだけが目立ちまくる不公平な曲という先入観を持ってたのだけど、実際に弾いてみたら杞憂。意外や意外、この曲はビオラが大活躍。主旋律以外のとこで実に渋い動きをしてる。裏メロとか合いの手ご担当。 セカンドは一番地味ではあるけれど、最後の最後でやっと下剋上。強引に主旋律をかっさらう。 ここ、ファーストは超音波ハイDでヒーヒー言ってる。スメタナのカルテット1番最後の耳鳴り音を彷彿とさせる。 余談だけど、サウンドオブミュージックのドレミの歌。パブロフの犬同様、日本人はドの音を聞くとドーナツが食べたくなり、レの音が鳴るとレモンが食べたくなるとの研究結果が出ているけど(?)、英語の歌詞はちょっと違くて、ド (Doe) は a deer, a female deer、レ (Ray) は a drop of golden sun。 ここの超高音レの音って、まさに天から降り注ぐ黄金の太陽光線が一応の目標。そんなひと筋の光が、最終的には六オクターブに渡るレ音の束になって鳴り響く。
May 6, 2008
コメント(3)

「気くばりのすすめ」 今日のピアノ五重奏の練習ではブラームスにも挑戦。僕がこの曲に取り組むのは二年ぶり。今日は1楽章を中心に合わせてみた。 パム pf、自分 vn1、ピーター vn2、セス va、ポール vc。 ヘ短調(フラット四つ)と聞いてまずこの曲を思い浮かべる人は多いかも。強烈な印象が残る。 さて、本日のピアノ弾きパムさんは、自分の弾きたいテンポで容赦なく突進するタイプ。彼女は普段はブロードウェイとかで活躍なさってるとか。ちょっと指ならし、とのたまって、のだめみたいにショパンの練習曲Op10-4とか弾いちゃうようなご婦人。 ピアノ五重奏って、ファーストが主導するよりもピアノに任せたほうが上手くいくような気はしてたけど、今日の練習では完全に彼女のペースにはまってしまった。良くも悪くも。 この曲の1楽章、五人のバランスを保つのがほんとに激しい。大ユニゾンがあったかと思うと、細かい音符の応酬があったり。 3楽章や4楽章にもそうゆう箇所があるけど、16分音符が隙間なく詰められているところが面白い。誰かが常に16分を弾いてて、機関銃攻撃もあったりして、切迫感が演出されている。 1楽章最後、ファーストが最後の16分音符を免除される部分がある。ほんとはビオラ同様「ソ」の音を弾かせたいに違いないのに、次の高音準備のために音を省いてくれている。 細かいとこだけど、ヨハネスの優しさに心打たれる瞬間。 こーゆう気くばりできる作曲家、あんまりいないし。←お前、何様?
May 4, 2008
コメント(0)

「ゴドを待ちながら。」 名実ともにピアノ五重奏曲の原点であり頂点。シューマンのそれを練習した。パム(ピアノ)、ピーター(バイオリン1)、僕(バイオリン2)、セス(ビオラ)、ポール(チェロ)というクセモノ五人衆。 過去の日記を読み返してみると、僕は二年前に別の団体でこの曲に挑戦していて、で、結局その団体は崩壊。今回の挑戦は吉と出るか凶と出るか。 世にゴマンとある変ホ長調の室内楽曲のなかでも、華やかな曲想という意味ではこの曲の右に出るものはない。実際、冒頭にはブリリアンテって明記されてるし。 難曲ではあるけど、健康的かつ高貴な作品。とても楽しく弾けた。 さて、今日はほかの曲にも取り組む予定があるし、中間の楽章は軽く通して終わりにするはずだったのに、2楽章のテンポをめぐって奏者間で言い争いが勃発。 二拍子かつ In modo d'una marcia ってことは行進曲風? でも Un poco largamente って書いてるし、基本的には遅い曲なはず。そもそもこの五重奏曲は緩徐楽章らしいものがないし、わざと遅めに弾いたほうがバランスがとれるのでは。 途中の Agitato を生かすためにも、全体的に牛歩系行進曲にすることに一応は五人とも合意。葬送行進曲なのかもしれないし。 それにしても、この楽章、ほんとに合わせにくい。ピアノの左手かチェロあたりが常に拍を打ってくれてれば助かるのだけど、必ずしもベース音があるとは限らず、歩きの音楽と呼ぶにはつまづいてばかり。 最大の難所は意外にも最後、セカンドとビオラに五度の和音が出てくる。僕の大嫌いな五度の重音。しかもピアニッシモ。天上のハ長和音、音程を外したら一巻の終わり。緊張の一瞬。 ちなみに、ここ、セカンドとビオラで一部の音を入れ替えるとだいぶ弾きやすくなる。←裏ワザ!
May 4, 2008
コメント(7)

「そして僕らは途方に暮れる。」 NYトライベッカ映画祭最終日、渋くて地味なイスラエル映画を鑑賞した。 イスラエル男性とパレスチナ女性。サッカーのワールドカップ真っ只中、決勝戦の行なわれるベルリンで二人が出会うところから映画は始まる。のちに舞台はパリに移るけど、愛だの恋だの甘い話に発展することはなく、移民問題とか中東紛争という現実が彼らに重くのしかかる。 http://www.strangers.co.il/ 自分の力ではどうにもできない困難に次々と直面し、途方に暮れる二人。W杯という束の間の熱狂の日とはなにもかもが対照的……。 よくできた映画だと思う。今まで観たイスラエル映画のなかで一、二を争うほど素晴らしかった! ←二本しか観たことないけど。 終映後は主演男優らが会場に現れ、舞台挨拶と質疑応答。映画祭ならでは。 中東紛争のおカタいネタから、大爆笑の撮影秘話まで、いろいろと盛り上がった。 この映画、ハッピーエンディングなはずもなく、非常にわかりにくい結末だったのだけれど、会場からは「で、結局何が言いたいの?」というイジワルな質問が飛び出した。でも主演の彼いわく、「えっ、わかんなかった? 伝えたかったメッセージは愛と平和だよ」。きっぱりと言ってのけて、会場の空気がグッと締まるのを感じた。アメリカのアの字も出てこない映画だし、我々には全くの非日常な題材の映画かと思ってたけど、当然ながらそれを日常として生きている市民らが海の向こうにいるわけで。Love and Peace と断言する役者の険しい表情に、彼らの複雑な思いを垣間見た瞬間だった。 この映画、やっと本国イスラエルやアラブ諸国でも上映が決まったとのこと。製作者側としても長い道のりだったに違いない。 ←赤じゅうたんを歩く主演のリロン・レボ Liron Levo。 イスラエル映画界を代表する有名な役者(らしい)。新作ではジュリエット・ビノシュと共演。 映画祭には来なかったけれど、主演女優ルーブナ・アザバル Lubna Azabal もいい味出してた。アルジェリア人を親に持つフランスの役者さん。
May 4, 2008
コメント(0)

先週は摂氏20度を超える日もあったというのに、今週は肌寒い日が続きました。霜が降りた朝もあり、週末になってもなかなか暖かくなる気配はなし。 今日のニューヨーク市内も、花が咲きまくってたり散りまくってたり、一応は春らしい風景が展開されているのですが、手がかじかんだりもして。 厚手のコート、帽子にマフラーに手袋のいでたちの人もいれば、Tシャツに短パンにサンダルの人もいて、自然の移ろひだけぢゃなく、人間観察してるだけでも充分楽しめるこの季節。***** さて、現在こちらではトライベッカ映画祭なるものが開催中。いよいよ佳境です。数年前に俳優ロバート・デニーロらによって立ち上げられ、今やサンダンス映画祭のニューヨーク版とさえ言われるほどまでに定着してきてる映画祭です。今年もますます好調らしく、どの映画も既に売り切れ。当日券で観るためには開場何時間も前から並んだりしなきゃいけないとか。 僕も観たい映画がニ、三本あったのですが。 「息子の部屋」でカンヌ映画祭パルムドール受賞という快挙が記憶に新しいナンニ・モレッティ監督・主演の新作イタリア映画も来ているようです。題名しか確認してないけれど、Quiet Chaos (Caos Calmo)。静かなる混沌? なんか最近の自分の心境と合致してるようで、ちょっと気になってます。
May 3, 2008
コメント(0)
全14件 (14件中 1-14件目)
1


