ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Jul 8, 2023
XML
カテゴリ: 映画、テレビ
「私がおばさんになったら貴方はおじさんよ」(評価 ★★★★☆ 四つ星)

 「前世」という題の作品を銀幕で鑑賞。今日の映画館、客の入りは思ったよりも多め。
 公式サイト(英語)は https://a24films.com/films/past-lives
 日本公開はたぶん未定。

 韓国人男女が主人公。女は12歳のときに家族で北米に移住することになり、仲良くしていた同級生男子と離ればなれになる。歳月がたち、女はニューヨーク在住で既婚(夫は白人)、男は今も独身で韓国で生活している。
 フェイスブック上で久しぶりにつながり、やがて男の訪米を機に二人は約四半世紀ぶりに再会する。

 主な登場人物は上記のアラフォー三人のみ(=男と女と、女の白人旦那)。三角関係とかいうわかりやすい物語ではなく、三人の心情が静かに描かれる。

 ぼくの感想としては、とにかく惜しい。詰めが甘い。もったいない。
 こうゆう感傷的な話はいつの時代もどこの場所でも、中高年からはそれなりに支持されるはず。実際、今日の劇場内もおじさんおばさんばかりだった。
 幼少時代の韓国での場面でいろいろと特徴的なネタを仕込んでおいて(口癖とか仕草とか想い出の品とか)、それらの伏線を後半で回収するとか当然のようにやるもんだと思ってたけど、そうゆうベタな展開は時代遅れなんだろか。

 客観的には、女はちゃんと前を向いて新天地アメリカに根付いて暮らしているのに対し、男のほうはいい年こいて幼少時のほのかな恋心を引きずってるという印象。てか、思い出のなかで彼女のことを美化しすぎちゃってる。彼女がもし引っ越していなくてその後も韓国でずっと近くにいたのなら別に一緒になってなかったと思う。人生ってそんなもん。いきなり旅立っていったからこそひたすら甘く美しい存在に思えてくる。←幼少期の別れあるある

 そもそも女のほうは、移民としてただでさえ忙しくて波瀾万丈な半生だったし、しかも意識高い系。幼馴染みのことなんてとっくに忘れていたっぽい。

 が、この作品のおそらく一番の見どころは後半、深夜のニューヨークの酒場で三人が横並びで会話する場面。韓国人男子は英語ができないし、女の夫(アメリカ人)は韓国語ができない。間に女が座り、最初はせっせと通訳しながら三人全員で会話していくのだけど、やがて男女が韓国語のみで会話し始めて、アメリカ人の旦那が蚊帳の外になる。

 男が20年前の恋心を引きずってるのは明らか。が、女の心情がなかなか明確には描写されない。そして夫の立場が見もの。妻が神妙な顔つきで旧友と韓国語で会話しているのを隣で黙って見ているだけで、その嫉妬の程度もまた読み取りづらい。
 ぼくらは観ててイライラさせられる。なんともじれったい。良夫がいながら女が不倫に走ることになるのか、男と旦那が取っ組み合いの喧嘩を始めるのか、いろいろ発展できそうなのに、なかなか何も起こらない。

 最終的には三人のなかのある一人が涙を流す。この人がここで泣くとは意外だなと一瞬驚いたのだけれど、確かに一理ある涙で唸ってしまった。

 ぼくの評価は甘めに四つ星。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  Feb 4, 2024 12:29:29 AM
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

カレンダー

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

ピカルディの三度TH

ピカルディの三度TH


© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: