ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

リレー企画 137

ハウスとスネオ  ぴかろん

「はあああん、いよいよ今日が断食最後の日、はああん」

どこかのバカが浮かれている
心なしかやつれたみたいだ…
一日一回限定の襟巻き&キスは、営業中もカウントすることにしてある
そういうトコに融通のきかないギョンジンは、お客様のリクエストに真剣な顔で謝罪する

「申し訳ございません、一身上の理由で、本日、『ラブに襟巻き&キス』のリクエストは受付ける事ができず…その代わりと申しましては何ですが
私からお客様への愛情たっぷりの濃厚なキッス…」

ここまで口上を述べたところで、俺からヤツの首に巻きつく
そしてこう…

「俺以外の人とぉ~キスしちゃや~だ」

甘える
すると溶ける
俺の方を向き、切ない八の字眉毛と半開きの唇を震わせているから、そこに吸い付く!
ふりをして、何度かフェイントをかます
そしていよいよ!って時にイナさんに声をかけてもらうのだひひひー

「ラブー、たしゅけてぇぇ~」
「あっイナさん、今行くっ」

そして取り残された『悶え苦しむ』ギョンジンは、お客様の前ではぁぁんとかおおんとか唸り、涙目ですっくと立ち上がり、両腕を天に捧げながらこう言う

「愛の試練…私はそれに耐えてみせる…神よ、貴方の与えたもうこの断食生活…私は揺るぐことなく守り、耐え、そしてあしたこそ…この愛の全てを彼に捧げようああ…」

俯いて額に手を当てる
お客様はぽーっとなってギョンジンをみつめる…
満足して頂ける…

そういう段取りを、イナさんと俺で考えた
ただし、ギョンジンのセリフは…あれは本人の本心らしい…
どういう人なんだろう、俺の恋人は…

ギョンビンがギョンジンを見て凍り付いている


今日はmayoさんと時計の話をした…
なんだか思わぬ方向に流れていきそうな気配、それも…かなり面白そうで…
でも俺にできるのかな…俺なんかがそういうファッショナブルな仕事できるのかなぁ…

けど…mayoさん、随分乗り気だったし、何か色々ケアしてくれるっていうし、ギンちゃんと一緒ってのが…なんだかワクワクする…
今夜ギンちゃんも来るから、ちょっと具体的に話してみようかな…


そうして営業が終り、ギンちゃんとイナさんと俺の三人は、俺の家に帰った
『足』が送ってくれた

ギンちゃんとイナさんに鍵を渡して先に部屋に行って貰う事にして、俺は、忍耐強い『足』に、本日の『襟巻き&キッス』の時間を与えた

ギョンジンは…おもちゃの手錠を出してきた…
ああ…こういうとこが…ばか?

「らって昨日手錠ちうできなかったもんっ!」
「こんなとこでやんなくてもいいじゃん!明日でもあさってでも…」
「らめ!手錠ちうは『耐えて偲んで苦しんで』る間じゃなきゃ臨場感でない!」

変なやつ!
俺はギョンジンに手錠をかけた
かけた途端、ギョンジンの目がギラついた…
こわいよ…

「…ねね…そんでぇ僕にぃ…『俺のこと好き?』って切ない顔で聞いてよ」
「…なんで!」
「ああん…お願いだよう…『襟巻き』我慢するから手錠ちうだけ完璧にさせてよぅ…」

泣きそうなので言うとおりにしてやった…
地下とはいえ駐車場…他の住人に見られたらすっごく…ヤバい…
さっさと終わらせよう…

「俺のこと…好き?」

俺は思いっきり切ない顔をして言ってやった
するとギョンジンは、俺より10倍も切ない顔をして…ちょっとキュンときちゃった…躊躇いながら俺の顎を…手錠したままの手で掴み、
唇を寄せ、そしてまた躊躇い、なかなか『ちう』をしない

イライライライラ!まだかよ!五分ぐらい躊躇い続けてる!その『手錠ちう』の映画ではこんなに『躊躇って』たの?そのじじむさいっていう主役は!

ちょっとキレそうになった時、ようやく切ない顔と唇が、俺の唇を捉えた
軽く触れ、離れ、離れがたくてまた触れ、徐々にくちづけが深くなる…
いつもよりは濃くないけど…

薄目を開けて観察すると…入り込んでいるのがわかる…ほんっと変なや…あん…

強く舌を吸われた
いつもなら体を抱きしめてくれるのに…手錠があるからできない…
そして唐突に唇を離し、

「もう行って」

と顔を背ける…
すっごく哀しそうで切なそう…

俺は暫く余韻に浸ってたけど…けど…
客観的に見るとなんて笑えるシチュエーション?

俺はギョンジンを残してエレベーターに乗り込んだ
戸が閉まる寸前に

「おやすみ、好きだよ」

と言っておいた
箱が動き出してから気がついた
誰がヤツの手錠を外すのだろうと…

ま、おもちゃだから何とかなるよな…ひひひっ



部屋に帰ると、ギンちゃんとイナさんが既にくつろいでいた
やっぱりギンちゃんも椅子と時計に驚いていた

「ねぇ、ヌナからちらっと話聞いたけどさ、やる?」

ギンちゃんが窺うように俺を覗き込む

「ギンちゃん、一緒にやってくれる?」
「うんっ!」
「じゃ…やろう!」

俺たちはがっつりと握手した
その光景をぼんやり見ていたイナさんが…やっぱり拗ねた…

トコトコと窓辺のリラックスチェアに横たわり、俺達に背を向けて、クッションを抱きしめている
解りやすいなぁ…

俺達は、そおっとイナさんの側に近寄り、イナさんをくすぐり倒してやった

「やめりょっ!らぶのうらぎりものっ」
「な…なにさ…」
「きのうホ○トをがんばりょうっていったのにっ!おまえまでしごとはじめりゅなんてっ!」
「…だって…面白そうなんだもん、一度やってみようかってだけだもん…うまくいくかどうか解んないし…それに、あくまでも俺の本業はホ○トだからさぁ…、拗ねないでよイナさん…」
「…どーしぇ俺にはなんの取り柄もありましぇんっ!」
「…そんな事ないよぉ…」
「じゃあ俺に何ができると思う?!言ってよ!教えてよ!俺だってみんなみたいに仕事…したいよ…」
「したいの?」
「らって…みんなが…副業してるから…」
「やだな、焦らなくてもいいじゃん…ホ○トで頑張るんでしょ?」
「…みんなかっくいー仕事しようとしてるもん…俺…できないもんギャンブラーしか…」

あーあ…どうしよう…

「イナさん、やりたいって思うこと、ないんですか?」
「…てじゅといちゃいちゃしたい…」
「じゃなくて…仕事ですよ」
「…。…。わかんない…」
「ホ○トの仕事は楽しくない?」
「…。楽しい」
「でしょ?イナさん、お客さんを笑わせたり驚かせたりじーんとさせたり、No,1のテプンさんをも追い落とすぐらいの勢いついてきてますよ、ね?ラブちゃん」
「そうだよ、イナさん、一杯『芸も技も』持ってるしさ…。それが楽しいんだったら、それを一生懸命やればいいじゃん…ね?」
「…」
「ね?」
「…解ってる…」

ただちょっと寂しくなっただけだと小さな声で呟いて、イナさんは背中を丸めた
俺とギンちゃんは顔を見合わせてふっと笑い、その場から離れた
ほっとけばきっと寂しくなってこっちに来るよ…
そう言って俺達は酒の用意をした

イナさんに電話がかかってきた
テジュンからだろう…
俺達に背中を向けたまま、電話してた…

イナさんに一声かけてからギンちゃんと先に飲んでいると、いつの間にかイナさんがそばに来てた…
寂しそうな瞳だけど、もう拗ねてはいなかった

「大丈夫?」
「ん…。俺は俺、ひとはひと…テジュンは…テジュンらもんな…」

テジュンの声を聞いたから元気になったのかな?
明日帰って来るんだしな…

「好きとか言ってた?」
「そりが中々言ってくれないんら…」
「ふふ…でも…言ってくれた?」
「…ん…」
「よかったね」
「…ん…」

この中で一番年上のはずのイナさんの頭を、俺とギンちゃんはヨシヨシしてあげた…

三人で寝た
川の字だ

嫌がるギンちゃんを真ん中にしたフフフ

おやすみなさい…フフフ


闇夜のドン_2 妄想省家政婦mayoさん

「ぁぁ…こういう物は着たくないが…しゃぁないな…はるみぃ~…」
「みゃん#^_^…」

テス達が店に行った後
俺がオルシン邸に行くためパジ・チョゴリに着替えをしていると闇夜から電話があった…

「ん…何だ…」
「あのさ…たしか従兄弟だよね…...ちぇみより顔デカのちぇみ顔の社長…」
「たはは…シン・リュルか?」
「ぉん#そうそう…連絡取れる?」
「コスタリカにいると連絡が来たが…」
「コスタリカぁ?何でまた…」
「ぉぉ…女に振られてな…傷心の旅だそうだ…」
「たはは^^;;…ちぇみ顔は…コロサレルか…フラレルか…だねぇ…」
「ぅ…あのなっ#…ったぐ…リュルがどうした#」
「ぁ…ごめんごめん…リュル社長…最近雑誌創刊したよね…」
「ん…確かそうだ…で?」
「リュル社長…帰ってきたら教えてくれる?…」

「…駄目だっ#…」

「何でよぉ…」
「ん?…俺と同じ顔だから…」
「全然違うよぉ…(小声で…)ちぇみの方がいいよ…」
「ぉ…そ…そぉだよな#…だはは…ん…」
「『パボ…』…いつ戻るかな…」
「ん…近々戻るはずだ…おい…何かまた企んでるのか?」
「繋ぎつけておきたいんだ…」
「ん…わかった…ぁ…闇夜…」
「何…」
「じじぃ…何か言ってたか…」
「…ん~~読まれたかな…」
「…そっか…」
「ぅん…じゃ…いってらっしゃい…」
「ん…」

ちょいと憂鬱な気分ではるみを連れてオルシン邸に向かった…
俺が挨拶をするとはるみもべたっ#っと前足をのばしてじじぃに挨拶をした…せ
みゃん#っとはるみがじじぃの膝に乗る…
閉じた扇子を持った手で座卓の前へ俺を呼んだ…
じじぃは.はるみの背をナデナデして機嫌がよさそうだ…
座ったまま…つつと前へ進むと…

「こんのっ…たわけっ!…パシン#…」

俺の頭に扇子が落ちた…

「いきなりですか…オルシン…」
「ぇぇ~~ぃ#…あやつが呉(オ)の娘といつ解った…祭とやらの最中か…」
「はぁ…元はと言えば…廃人にコマされ…てぁしたことの…こしたことの…で…」
「何をしどろもどろにっ…パシン#…」
「はひひん…余り興奮すると躰にさわるのでは?」
「ふんっ#…わしはまだまだ元気じゃ#…」
「はぁ…それはなにより…」
「まったく…あやつも…お前も#パシパシン#」
「あつぅ…2人分ですかぁ…」
「当たり前じゃっ…あやつは打てんわい#…」
「はひ…」

「みゃぉん…みゃぉん…〃>o<〃…」

はるみがじじぃの手を止めに入った…

「ぅむむ…はるみに免じてこのくらいにしておくわい…」
「はひ…(くっそじっじぃ~~)」

身を乗り出していたじじぃが座り直した…
扇子で座卓を軽く叩く…俺は足を崩した…

「ところで…テックヒョン」
「はぃ…」
「今回の入札は勝算ありと思うか…」
「自信がおありでは?」
「ぅぅ~~む…元(ウォン)ファミリーが手強いようじゃ…
 配下のパク・ペク・カンも相変わらず阿漕な真似をしよる…」
「しかし…カンは近頃別ビジネス始めたようですが…」
「ホ○ト倶楽部とやらじゃろ…」
「ご存じで…」
「ぅむ…何やらワンフロア全部改装するのに随分金をつぎ込んだようじゃ…
 それで元(ウォン)の上納金を作るのに奔走しとるらしいの…」
「ぷっ…そうですか…一番手強いのは…元(ウォン)と対する金(キム)会長だと思いますが…」
「ぅむ…ぉ…あやつとお前のこれ(じじぃ…小指を立てる)がいる店…」
「^^;…BHCですか…」
「ぉ…そうじゃ…最近そこに金の息子が入ったのか?…あの若いのは舎弟か?」
「はい…繋がりは誰も知らない筈です…」
「あやつが睨みをきかせてるのじゃろ…」
「ぷっ#…」
「長年業界で横行している”賄賂漬け”をここいらでなんとかせんといかんのじゃ…
 これからはまともな企業に仕事をさせんと…」
「ごもっとも…」

「しかし…お前がパンを焼くとはな…」
「4人でやるから楽しいんです…」
「んまぁ…お前がホ○トをしたら…また…事件が起こる…のぉ?…ンカッカッカ#…」
「オルシン~~^^;;…(じじぃめ…古傷に触れやがって…)」

「入札は何時…」
「5日後じゃ…連絡を入れる…」
「はぃ…」


屋敷を出て車に乗るとはるみは頭をナデナデしてくれた…


ハウス・ウォーズ  ぴかろん

~エピソード1~

手錠をかけられたままだったと気づいたのは、ラブが
「好きだよ、おやすみ」
と告げてあの扉の向こうへ消えたあとだった…
どうしよう…鍵は胸のポケットの中に落としたんだ…
そうそれをあの華奢で繊細で色っぽくて僕の上でそれはもうとてつもなくスパークリングなダンスを踊るしなやかで美しいラブの指で…
ぐふふん…
つまみ出してもらうつもりだった…
たっぷりと…ねっとりと…
つまみ出してもらうつぼり゛だっだどでぃ…ぐすぐす…

やはりこんな邪な事を考えていると、神はバチを当てるんだな
いや、言いなおそう

神は罰をお与えになるのだな…

襟巻きの代わりのオプションと思ってたのにな…

どうしよう…呼び出したらきっと怒る…来てくれたところでせっかくのさっきの『手錠ちう』の余韻をぶち壊しては何にもならない!
明日への架け橋が爆破されかねないっ!

「ばかなんじゃない?かっこ悪い!明日もハウスね!」

ああん冷たいラブ様の顔が、声がっバーチャルリアリティで僕をいたぶるっはああん…

いかん…こんな所でぐだぐだしていては、じきに夜が明けてしまう…
いや…そんなことはないけど…

はっ…そういえば…
僕は元諜報部員だ…
手錠ごときでオロオロするなんて…

ふっ…弟に馬鹿にされる…
それに…僕を慕ってくれている(ギョンビン…すまない…無意識にお前のモノを盗ってしまった様だ…。僕に血迷わないよう、お前の留守中きちんと彼を監視するからな…
でも…でももし彼がふうっと貧血など起こしたり、呼吸困難に陥ったときは、その時は人命第一だから『人工呼吸』という処置を取るかもしれない…
それは許してくれよ…ギョンビン)ミンチョルさんにまで、衝撃を与えてしまう
それどころか…もしかしたら『坂上田村麻呂』になって僕を『見下す』かもしれない…
避けなくては…
そんな『幻滅イメージ』断固として避けなくては!
弟たちの前では『常にかっこよく、クール』でいなくては!うむむ…
ではどうしよう…

本物の手錠なら簡単に抜けるのにな…おもちゃだと抜きにくいのはなぜだ!
サイズが子供用だからか?!くうっ…

しかし…ふむ
これだけの幅があれば…
運転できそう…ちっと危ないけど…

運転して帰って、トンプソンさんに鍵を外してもらおう!それがいい!よしっ!

僕は、幸い挿したままにしておいた車のキーをオンにして、ハンドルの上部を…手錠の腕で握り、ああっ!ギアはどうするんだよっ!
オートマチックだから何とか…うう…うううっあわあわあわわ…はあふう…何とかバックして前進にギアを入れられたぞ…ここから脱出だ…

安全運転しなくては…

僕はゆっくり走った
そして無事にRRHの駐車場まで…あああ…そんな繊細なハンドル捌きが手錠の僕にできるのか!うう

だが人間の可能性とは凄いものだな…僕は何とか窮地を脱した
そしてエントランスに行き、トンプソンさんにお願いして…手錠を外して貰った

「何かトラブルにでも?」
「あ…いえ…、ちょっとしたゲームをしていて…でそのまま…ははは。ははははは。は」
「明日…ラブ様がここを走り抜けられるのでしたかな?」
「…まだラブが走り抜けるか僕が走り抜けるかはっきりとは…」
「解りました、夜も更けてまいりました。どうぞごゆっくりおやすみくださいませ…」
「有難うございますトンプソンさん」

僕は丁寧に礼を言い、エレベーターに乗り、弟たちの邪魔をしないよう(だって明日弟は…出張するもん!そしたら…やっぱり…いくら僕を慕っているからといってもやはり…ナニがアレで…げほっ…)、こっそりまっすぐ部屋に帰った

~エピソード・2~

この状況…ちょっと…ナントカして欲しい
ギョンジンさんだったらきっとウハウハ喜ぶだろうけど、僕はちょっと…困るぞ…

同じ顔に挟まれて寝てみろよ
しかも二人とも僕の方に顔を向けて
しかも必要以上にくっついて眠っている

最初は適度な距離を保ってたんだ
それが何度か寝返りを打つうちに僕は二人にサンドイッチされているハムのような状態になってしまった…
動けない~助けて~

そしてしかもラブちゃんは…上半身裸だし…
時々
「ぁん…」
とか
「ぅう…あ」
とか色っぽい声を出すしっ!口半開きだしっ!鼻が悪いのかよ!

イナさんを見てみると…子供みたいな寝顔…なんだけど時々眉根を寄せてやっぱり

「んぁあっ…あ…」
とか
「はぁはぁ…」
とか言うしっ!口半開きだしっ!アンタも鼻が悪いのかよ!

ったく二人の唇ぎゅううって摘まみたくなるよっ!もう…
眠いのに…寝返りも打てない状態…

それでも僕は無理矢理目を瞑って眠ろうとした

うとうとしかけた時、左隣のイナさんが

「てじゅっ!」

と叫んでがばあっと僕に抱きついてきた

ひえええ…

僕は声を出さないで叫んだ
眠ってる…寝ぼけてるんだ…
でも…涙の筋がついてる…
かわいそう…

僕はヨシヨシと頭を撫でてあげた…
すーすーと寝息を立てたのでイナさんに抱きつかれたまま、僕はまた目を閉じた

「誰と抱き合ってんの、ああ?」

右隣から怖い声がした

「誰ってイナさんが抱きついてきて…」
「イナさんだってぇ?アンタやっぱり俺に隠れてイナさんとそんな事してたんだっ!だいっきらいっばかっ」ばちいいいん☆

ひいいん痛いようラブちゃああん…

「ごめんなさいっもうしません…」
「よしっ」

寝ぼけてるんだきっと!
ラブちゃんを見ると…寝てる…
え?寝言?夢でも見てた?

すっげぇはっきりした寝言だ…
それに確実に頬を捉えて…

ギョンジンさんはこんなラブちゃんと毎日…過ごしているのだな…
なのにあんなに蕩けてて…

…えむ…

その後も僕は、うとうとしたかと思うとイナさんの寝ぼけ泣きに起こされ、ラブちゃんの寝ぼけ叩きに涙し、結局しっかり眠れなかった
やっと眠れたのは、二人が寝返りを打ってそれぞれ僕にそっぽを向いた朝方だった…
僕は睡眠を貪った
だから朝寝坊した

「いつまで寝てるんだよ!寝ぼすけ!」
「そうだよ!真ん中なんていい場所でさぁ…俺達寝返り打てなくてほんと、辛かったよねぇイナさん」
「ほんと!俺なんかベッドの端から落っこちそうになったんだからな。お前寝相悪いよな!」
「真横になってたもん!俺の腰のあたりに頭があったから、俺、思わずぱ○つ穿いてるか確かめたんだからねっ」

…何をおっしゃってるんで?え?僕が悪いの?何が悪いの?

「早く起きなよ、ご飯食べよう!」
「そうだじょ!今日は俺達に…へへ…えへへ…」
「なんだよイナさん」
「あのしゃ…『俺たちに夜はない』…きへへへっ」
「やっだぁイナさんったらっ何ヤらしい事考えてんのさぁっテジュンが帰って来るからってもうっ」
「らってお前らってギョンジンがきっと…」
「…」

…何をおっしゃってるんで?え?何をシュミレーションなさってるんで?!

「僕…もう…真ん中で寝ない…」
「ふーん、じゃ、今度お泊り会するときは、俺が真ん中ね」
「…どうぞ…僕…できれば違う部屋で寝たい」
「だーめ」
「ええ…ん…だめってぇぇ…」

睡眠不足のまま、僕はギラギラしたギョンジンさんに大学まで送ってもらったのだった…はぁん…


天使の一歩  足バンさん

朝早く電話の音で目を覚ます
シン監督から打ち合わせ時間の確認だった
映画の話が進みそうなので直通の連絡を認めた

ベッドでしばしぼぉっとした後
パソを開けメールのチェックをしてみる
が、あいつからの着信なし

まったく…
結局ド・ゴールからの深夜の電話もなかった

ベッドに入っても頭のどこかで連絡を待っていたらしく
寝たような寝ないようなすっきりしない朝を迎えてしまった

いつでも掛けられるように海外用携帯をレンタルしてやるって言ったのに
旅先で携帯に縛られたくないとか言って
本当にあいつは遊びに行ったつもりじゃないだろうか

こんなことじゃ本格的に向こうに行ったらどうなるか想像がつく
きっと1週間くらいは平気で「連絡忘れちゃった」とか言うんだろう

昨日の営業は何と調子が出なかったことか
店の連中は僕とミンチョル(僕たちは目が合う度になぜか力なくふっと微笑み合ってしまう)に
いつになく優しくしてくれて…
ギョンジンなんて思いきり同情の目で2度も珈琲を持って来てくれた

忠実なスヒョクは僕たちが閉店後事務所で仕事を終えるまで待って
僕が車に乗り走り出すまでニコニコしながらも監視の手を緩めない
いろいろな意味でソクさんのご苦労が忍ばれる

ソファに寝転んでもう一度台本と契約に関する書類に目を通す

休日にこの眼鏡をかけて本を読んでいると
決まってドンジュンが近寄って来てさっと外してしまう
「返しなさいって」
「僕が側にいる時に他のことに夢中になるな」
そしていきなり抱き付いて僕がもう読まないと言うまでキスを続ける
降参するとさっさと退いて好きなことを始める

でも今日はそんな気まぐれネコみたいなやつはいない
僕は好きなだけ没頭する
…つもりが
つい窓の外の娑羅の樹が落とす陰などを眺めて…ため息をついた

午前中、市内のホテルで シン監督と チョプロデューサーに会った
背の低い快活なチュニルさんという感じの監督は握手を求め歓迎ぶりをアピールしてくれた
プロデューサーは、MUSAのチンさんを少し若くして口髭を付けたような風貌だ

監督は自分で書き下ろすつもりの脚本に合う人間を求めて
イメージにぴったりの男を捜して回ったこと
PDと意気投合し各界へ捜索の手を広げ、例の祭の紹介で僕に目をつけたこと
書きかけだった脚本を僕のイメージで描き直したこと
僕が断れば制作を断念しようとしたことなどを力説した

「なぜそこまで惚れ込んでいただいたんですか?」
「勘です、勘!」
「素人ですよ、使い物にならないかもしれませんよ」
「いえ、大丈夫、勘です!」

監督は人なつこい笑顔でとにかくよく喋る人だ。感じはいい
PDはしたたかそうだが嫌な印象はない。頭はキレそうだ

「契約書はお読みいただけましたか?」
「ええ、で、ふたつ。すべての交渉は今まで通り店を通していただくことと
 あと僕のプライベートに一切干渉しないことを追記していただきたい」
「しかし万一作品のマイナスになることを…」
「法的に罪を犯した場合は別です。それ以外の今の仕事や個人的な関わりについては
 それら全てをひっくるめて僕という男を買っていただくということでなければ請けられません」
「わかりました、いいですねシンさん」
「いいでしょう!思った通りの人だ」

「他のキャスティングはあなたが決定してからと思っていました」
「どなたか考えていらっしゃるんですか?」
「スジョン役はシム・ウナさんを考えています」
「出ていただけるんですか?」
「事務所サイドでは最後の作品を捜しているようです」

「男性の方は?」
「これから詰めます、いろいろ考えてまして」
「スヒョンさん…確認させていただきますが男性とのラブシーンは了承していただいてますね?」
「ええ、演出上必要なら」
「台本をお読みいただいていかがですか?」
「まぁ自然でしょう」
「海外ロケもありますがよろしいですね」
「そのつもりです」
「スヒョンさん、みっつの質問をしていいですか?」
「はい」
「強い想いを断念した経験はありますか?」

僕は唐突にミンチョルの伏せた睫毛を思い出した

「あります」
「では…心から人を愛したとことはありますか?」

僕は手を振って出発ゲートに走って行くドンジュンの笑顔を思い出した

「あります」
「なぜ…急に承諾していただけたんですか?」

僕はキッチンで泣いているドンジュンを思い出した

「そこに大切なものがあるような気がして」
「そうですか」

ふたりは何か満足そうな顔で立ち上がって握手を求めた
そして次回の打ち合わせ日程を確認して解散となった
未知の世界に踏み込んだが、ふたりに会ってどこか安心した

ホテルの外はまだ夏の名残の陽射しが注いでいて街路樹の影も濃い

これから夜明けを迎える遠い西の空の下を想い
白いテラスのあるレストランで昼食をとる

眼鏡を掛け本を読みながら
気まぐれネコの手が伸びて来ないちょっとした寂しさを楽しみながら


La mia casa_20 妄想省家政婦mayoさん


==ちぇみはアタシのちまちょごりをぬがせてくれて(はひん…)きれいにおたたみしみゃした…
  ぴんくのりぼんをくびとあたまにむしゅんでくれました…
  しょしてじぶんのきがえをして…いすにだらけてすわりみゃした…

 「はるみ…さっきは助かったぞ…」
 「みゃ…*^_^*…」
 「今度からじじぃ邸に行くときは一緒に行こうな…ん?…」
 「んみゃんみゃ#…^o^…」

  アタシはまよのかわりにちぇみのあたまをいっぱいいっぱいなでてあげました…T_T…

 「サンキュ…お嬢…/_\…」
 「ぅんみゃ#…*^_^…」

  ちぇみはいすのそでにひじをついて…ちょっとめをふせました… 
  あごにてをあてて…おくちがんー#っとなってて…かんがえるひと…になってましゅ…
 たまにみけんにきゅ#っとしわよせたり…ふっ…とためいきちゅいたり…
  くすっ…っとわらったり…かおみてるとあきましぇん… ==byはるみ

~~~~~
帰り際に好々爺の顔で笑うじじぃが顔を前に出した…
来やがった…おねだりの顔だ…

「のぅ…テックヒョンや…」
「何でしょう…」
「…調べてくれんかのぉ…」
「…できるとこまで…」
「ぉ…そうかそうか…すまんのぉ…ムホホ…」

じじぃは梅干し顔で笑う…
ったぐ…いつもこれだ…

「そのかわり…」
「わかっておる…わしに落ちれば割増しじゃ…あやつにも言うておけ…」
「ぷっ…さすが..太っ腹…ダテに腹ぽっこりではない…」
「ぇぇ~ぃ…うるさいわ…」
「…^^;;…」
「ンケケケケケ(>▽<)//」→はるみ

~~~~
中国系koreanの元総帥率いる元(ウォン)ファミリーは韓国でも最大の”ヤ”と言ってもいいだろう…
非合法で仕事の手口は荒っぽい…
金(キム)会長は”ヤ”ではないが…かなり強引にM&Aを行い…のしあがってきた…
じじぃがなかなか掴めない\の流れは実に巧妙で隙がない…

やっぱあいつにも頼むか…ちょっと迷ったが電話をかけた…
受話器の向こうでちょいと衣擦れの音がしたが…気のせいか…

「俺だ…」
「ぁ…先輩?…」
「ん…”お取り込み中”か?」
「はい…」
「ぉ…すまん…かけ直す…」
「冗談ですよっ…」
「あのなぁ…」
「まだ時間早いですからっ…」
「ぁ…そっ#…靴下はまだはいてるんだな…」
「はひひ…^^;;…」

「実は…お前にはあまりさせたくないんだが…」
「先輩…仕事ですね…」
「ん…」
「それも急ぎ…」
「察しがいいな…」
「僕と先輩の仲じゃないですかぁぁんっ」
「ぷっ…馬鹿野郎…」
「詳細…すぐ送って下さい…」
「ん…頼む…」
「OK…」
「ヨンジュン…」
「はい?」
「邪魔したな…ゆっくり励め…ぷっ#」
「はい…ぷっ#.」

電話を切ってふっ#っと笑った…
ヨンジュンはやっぱホ○ト向きだな…と思う…

実はその昔…これはかなりマイナーな情報だ…ん…
俺はホ○トをしていた時期がある…相棒はピルドゥ&ギョヨプ酷似の奴…
ちといろいろ…揉めて…俺はオンナに硫酸をかけられた…
それから二度とホストはやらん#…っと決めた…(1990:男市場←ダサイけど笑えるタイトル…)

俺はブルンブルンと頭を振ってメールを受信した…

『…?…ぷっ…何とタイミングのいいことよ…』

コスタリカにいるはずのリュルからメールが入っていた…

『携帯もPCは持っていってないはずだが…帰ってきてるのか?…』

挨拶の後の相変わらずのザキで…うっっぷ#っとくる文面に
俺はぐぐっっと首筋を伸ばし…指でカリカリ掻いた…

@_@?…

はるみが不思議そうーに俺の顔を覗いた…
リュルには返事書かずに…★☆メールを打って送信しPCを閉じた…
帰ってきたテスがいつもの様に懐に飛び込んで来た…

「ちぇぇみぃ~^o^…」
「ん~~…^_^…」


屋上に上がって☆を眺めていると胸に抱いたはるみが頭をぱこぱこ叩く…

「はるみぃ^^;;…」
「ふこうへいだみょん#いっぱいたたいてやりゅ…」
「はいはい…」

はるみがまた頭をぱこぱこぱこぱこ叩く…
テソンがナツメ茶を持って屋上に上がってきた…
はるみを抱き上げ胴体をふるふる揺らした…

「こぉら…はるみ…そんなに叩いちゃ駄目だ…」
「みゃぉん>_<…」

テソンはくすくす笑いながら私の頭とはるみの頭を交互に撫でた…


ハウス・ウォーズ 2 ぴかろん

~エピソード3・ハウスの解禁~

鼻血を出して起きた…
なぜなら…濃厚な夢を見たから…
内容はとても語れたものではない、ああ…
ふと頭を上げて枕を見ると枕にべっとりと血がついているっ!

いけないっ!早く洗濯しなくてはっ!出発前の弟に叱られるっ!

僕は慌てて飛び起き、枕カバーを部屋の洗面所で洗った
なんとか血は取れた…

着替えを済ませてリビングに行くと、丁度ミンチョルさんと弟が出かけようとしていたところだった

「なんだ、もう行くの?」
「あ…起こしちゃった?」
「起こしてくれればいいのに!僕に挨拶もなしで行くつもりだったの?」
「…あ…ごめん…」

僕は旅立つ弟の肩を掴んで言った

「ギョンビン」
「何?」
「もし困った事があったら、こいつに連絡しろ」
「この名刺、誰の?」
「MI6にいる僕の知り合いだ。僕の弟だと言えば力になってくれるだろう」

ふふん…ちょっと尊敬した?へへん…
ロンドンは物騒だからな…心配だ
無事に帰ってきてくれよ…でないと…僕にはスウィート・ハートがいるんだから、ミンチョルさんの面倒までは見切れない…ねっ

そういう「兄としての想い」を込めて、僕は弟とミンチョルさんを部屋の中で見送った

エレベーターに乗り込むとき、ミンチョルさんがふっと微笑んで僕に会釈した…ああ、なんて妖艶!
だめだめっ!だめだめよっ!

だって僕にはラブ様が…ああラブ様っ!今夜僕のベッドの上で…三日間耐え抜いた愛で包み込み、溺れさせ、ああああああっあああ!鼻血がっ!いかん、床を汚してしまった!

僕は慌ててタオルで床を拭いた
よかった絨毯の上じゃなくて…

それから僕は、ゆっくりと洗濯機を動かして洗濯した

ラブ様のマンションに寄り、ミンギ君を大学に送り届けた
ミンギ君の頬が赤い

「どうしたの?ほっぺた」
「ラブちゃんにぶたれた…」
「なにっ?君、ぶたれるような事をしでかしたのか?!」
「前前!前みて運転してよっもぉぉっ…。違うよ、夜、三人で一緒に寝たんだけどさ」
「何て事を!…」
「…。ギョンジンさんの夢見てたみたいでさ」
「はぁぁん、やはり僕とスウィート・ハートの心は一つ…お互い同じ夢を…同じ夢…あああっ」

ききいいっ

「うわっ何!どうしたの?!」
「…鼻血が…」
「…」

つい、ラブ様が僕と同じ「濃厚な夢」を見たのかと考えてしまい…ああ…スーツがちっと汚れてしまった…

「大丈夫ですか?」
「心配ない、出血は少量だ…」

鼻にティッシュで応急処置をして、僕は運転を続けた

「で?やはりラブは…その…悶えてたり…した?」

ああいかん…頬が緩む…

「いや別に…時々色っぽいカンジで息してたけど、ただの寝息だったし…」
「…ほんとに?」
「そんなの嘘ついてどうすんだよ!…でね、ギョンジンさんの夢見てたらしくてさ、突然怖い声で怒鳴られて」
「…怒鳴る?誰を?」
「…。でね、『あんたなんかだいっきらい』ってばっちーんってほっぺた叩かれた、寝てるのに正確にほっぺに命中させた…」
「さすがは僕のスウィート・ハートだ!…で?誰が『大嫌い』なんだろう…」
「…。とにかくそれの繰り返しで、何発叩かれた…」
「…気の毒になぁ…ふふふ…はぁん…」

誰の事を大嫌いと?
はっ…
まさかラブ
…ミンチョルさんの気持ちに気づいて?…それで夢の中で僕を争って?…
ばかだなぁラブ…僕の心はラブ様オンリーだよっくふっ

それから僕は店に出た
一人佇むミンチョルさんがとても寂しそうに見えた
思わず肩を抱きしめて慰めてあげたくなる…

「おはよーございま…す」

おおマイ・スウィート・ハート
僕は極上の微笑みを浮べ、両腕を広げて、宝石のようなラブ様を迎えた

「…何やってんの…」
「ああんもう、シャイボーイっくくっ」
「…」
「ねね、どうするどうする?」
「何が」
「今夜、うち?それともラブ様んち?」
「…」
「ああでもうちだとミンチョルさんが気の毒かな…」
「…なんで?」
「なんでって…弟が旅立ったんだよっ一人寂しく寝んねしなきゃなんないその同じフロアーで僕達のラブ・カーニバルを夜通し繰り広げるなんて…かわいそうでできないっ」
「…カーニバル?」
「はふん…あああ…昨日僕の夢を見たそうだね?」
「…あ…ああ…ちらっと…」
「はふふふーん、僕もお前の夢を夢を夢を見たんだっあああっ鼻血がっ」
「…」
「…これでよし」

鼻血が出るという感覚がわかってきたので、素早く対処できるようになった
また応急処置をしてラブと打ち合わせを続ける

「だから…スパークリングでエキサイティングでスプラッシュでスパシーバな夢だったんだろ?それを現実で実現する僕達はサンバ・ダンサーさっ」
「意味わかんない…」
「だから…今夜はお前のうちがリオ・デジャネイロ」
「…」
「ねね?ね」
「…。うちに…来るの?」
「そそ」
「…」

ラブは、複雑な表情で何も言わずに僕から離れた

「ああんラブ!行っていい?行っていい?ねね」
「…うるさいなぁ…」
「だぁってぇっこんなに耐え忍んで悶え苦しんだのにぃぃ」

つれないぞっふふ…本心は解ってるんだからっラブぅぅ

「とにかく…帰りは送って」
「あったりまえでしょぉぉぉんふふくふひひんふん」
「…」

奥ゆかしいんだからっ…
くふふ…
部屋に入った途端解き放たれる欲望に身を任せ、僕達は一晩中サンバを踊り続けるんだっぐふふっ
ミンチョルさん、すまない…
だがたまには貴方も『一人寂しくハウスする』と言う状況を味わうべきだ…

ああ、そうだ…一人寝の友として『オトコの香り』のビデオを貸して差し上げよう…くふんくふん…

僕はミンチョルさんに今夜帰らないことと、『オトコの香り』のビデオを是非見るように、リビングのテーブルに置いてあるから…と言って控え室にいるラブの襟巻きになりに行ったのだった…はふふふーん…


小さな嘘  れいんさん

「誰よりも愛している」
彼がそう言ったのだから、僕はただ信じていればいい
頭の中では解っているのに…
彼にキスされた唇にそっと触れてみる

彼の古い友人だというあの女性…
彼が顔を曇らせ彼女と話し込んでいたのはつい先程の事

女性と話す事などお店では珍しくもない光景なのに
僕の心にかかった霧はまだ晴れない
テプンさん達の話にもどこか上の空の僕がいる

そんな時ウシクさんが僕に声をかけてきた
「先程帰られた女性から、君に渡してくれって…これ預かったよ」
そう言って一枚の名刺を差し出した

エジュ…さん?…あの女性…?
名刺の裏には走り書きがしてあった

ぜひ僕と会って話がしたい
彼と一緒でも一向に構わない
来るも来ないも僕の自由だから負担に思う事はない
そんな内容のものだった
そして日時と場所がメモしてあり
最後に非礼を詫びる文面が添えられていた

読み終わりふうっと溜息が出た
彼に…相談した方がいいのだろうか…
でも、きっと彼は
「行く必要なない」
と言うだろう

強引に彼を付き合わせる…?
それも何か野暮な気がする

彼女はきっと僕という人間に興味があるのだろう
僕も彼女がどんな人なのか知りたい
彼との間にどんな過去が、僕にどんな話があるのか…
文面を読んだ限りでは、さほど悪い印象は受けなかった
思った事ははっきりと口にする…そんな女性だろうか

彼には内緒で会ってみようか…
明日の午後か…
僕は名刺をポケットにしまい込み、何事もなかった様にテプンさん達の話に相槌をうった

翌日の午後、いつもより早めに身支度を整える
鏡を覗き込んで頬をニ・三度軽く叩いてみる
普段通りに振舞わないと彼に怪しまれる
僕は何気ない振りを装い、階下に下りる

彼はまだくつろいだ格好のまま髪には少し寝癖の跡
僕は努めてさりげなく言った

「テジンさん、僕ちょっと寄りたい所があるので早めに出かけます」

いつもは車で一緒に出勤する僕達
僕がそんな事を言ったのは多分初めて
彼は怪訝な表情を浮かべた

「何か約束でもあるの?」
「いえ、そんなんじゃ…図書館で調べたいものがあるんです」
「ふぅん…これから?急ぎなのか?」
「はい。今日中に調べておきたくて。だから一足先に出ます。…後でお店で…」

嘘が下手な僕はボロを出さないうちに彼に軽くキスをして家を出た

僕にしては上出来だったかな…
嘘をついた事に少し後ろめたさを感じる


それからさほど待つ事もなくバスに乗り込み、約束の場所へと向かう
彼女が指定した場所へは30分もあれば着くだろう

バスに揺られながら窓の外に目をやる
ゆっくりと流れていく景色をぼんやりと眺めた

何か落ち着かない
妙な気分だ
話した事もない女性と二人きりで待ち合わせ…
浮かれたデートなどではない
僕と彼女の接点といえば彼の存在…ただそれだけ

時間が迫るにつれ僕の憂鬱は増して来る
だけどそんな事などお構いなしにバスは目的地に着いた


Lonesome boy   オリーさん

ミンが行った
イギリスに一週間
別れ際にすばやく唇にキスされた
それから土産を買ってくると言って離れて行った
けれど僕はしっかりと顔を上げる事ができないでいた
ずっと地面を見つめていた
しばらくして思い切って顔を上げ、ロビーの中を眺めた
ミンの姿はもうどこにも見えなかった
行ってしまった

その後ミューズで仕事をした
新しい企画を早急にまとめる、これが課題だ
だが企画対象がふたりともいない
別の企画を考えておくようにと
キチャンとキュソクに指示してオフィスを出た

店に入った
スヒョンが鳩のフンをくっつけていた
せっかく親切に教えてやったのに…可愛くない…
ドンジュンも今日発った
パリだそうだ
ミンとロンドンで会うらしい
仕事で行ってるのに、ふたりは観光気分じゃないのか
何となく面白くない

店でリクエストを間違えた、らしい
イナに指摘された
あいつは今夜テジュンさんが帰ってくると言って
ここ何日とは打って変わったハイテンション
勝手にしろ…ぶぁか…

店がはねた後、まっすぐ家へ帰った
着替えてパソコンに向かった
メールが来てる…はずはない
まだ飛行機の中だ
出張中電話はやめよう、気が散る
連絡できるときにパソコンの方にメールをと言った
ミンは一言、わかったと答えた
本当は、顔が見えないのに声を聞くのが嫌だった

ミンのお兄さんは出かけている
ハウス解禁日とかいうわけのわからないお祝いの日だそうだ
正直ほっとした
あの土産を貰って以来、何となく顔を合わせづらい
土産が悪いわけではない
見ようによっては魅力的な土産だ
いかにもあの国の人が好みそうな…
ただ、僕には合わない
テーブルの上にビデオを置いておくと言われた
『男の香り』
ひとりで見てもつまらない…
パス

今夜はこのマンションの広さが目につく
ベランダに出てみた
秋の夜風が思いのほか冷たい
夜空を見上げた
昼間ミンが飛んでいった空を
星がいくつか瞬いているだけ
そうなんだ、行ってしまった
ほんの少しの間、ちょっと離れるだけ
わかっている

もう寝よう
寝室へ行った
ベッドに寝そべる
ここも広い
ミンの枕に顔をうずめた
ミンの香りがかすかに鼻をくすぐった
最後に触れたミンの唇の感触が少しだけよみがえった
そのまま目を閉じた

ねえ、ミン
僕はもうミンに会いたくなったみたいだ


待つわ   ぴかろん

今夜だっ!
いよいよテジュンが帰ってくりゅ!
ああ…長い二日間だった…テジュンっしゃびしかった…

ラブんちで二日間世話になったので、ちゃんとお掃除して洗濯して、茶碗を洗ったよ
じっとしててもソワソワしちゃうので、俺は早めに出勤することにした

店の鍵は何人かが持っている
俺もそのうちの一人なんだへへっ

店に着いて、掃除なんかする
体を動かしていると何も考えずに済むからにゃ
電話が鳴る
テジュンからだ

『イナ?今夜帰るからね。お前の家に直行する』
「でへ…わかった…何時頃になる?」
『研修終わるのが5時だから…そっから片付けて7時頃出ると…そっちに9時か10時ってとこかな?』
「ちょうどいい頃だな。気をつけて帰ってきてくれよ」
『ん、安全運転でいくからもう少し遅くなるかも。途中で電話入れるよ』
「うん…待ってるね」

くふふん…うれしいな
にやにやしながらテーブルを拭いたり、床を磨いたり、控え室の掃除までしてしまった
汗かいちゃったよ…、ちょっとシャワールームでシャワーあびよ…

そんな事をしているうちに夕方になった
ミンチョルやスヒョンたちがやってきた
その後、物凄くハイテンションのギョンジンが、物凄く力の入った様子でやってきた

「イナ!今夜はマイラクジュアリースペシャルスウィートハートを返してもらうよ!」
「あーはいはい」
「くふん…僕に抱かれないでラブは眠れたのかなぁ…くふん」
「よく眠ってたぞ」
「…そんなはずないさ、お前が見たときだけ寝たふりしてたのさ…僕には解ってるくふふふふん…」
「俺、一緒のベッドで寝た」
「…。ああ…あの、ゲストルームのベッドだね?クイーンサイズのベッドがあった…僕も寝たやつ…あの時はお預けだったから一人だったけど…そこに三人で?さっきミンギくんから、ラブが僕の夢を見てたみたいだって聞いたくふくふん…」
「ううん、ラブがいつも寝てるベッドで…。キングサイズのベッドだったから三人でもゆったり眠れた」
「なにっ?キングサイズ?!」
「ん、広くてさ、気持ちよかったぜ」
「…」
「ギョンジンには使わせないって言ってた」
「…ふ…。ふん…。そんな…そんな事ないさ…」
「ほんとだよ。ラブんちのリビングとラブのベッドルームではえっち禁止なんだってよ」
「ええっ?!なんでぇぇっ?」
「何驚いてるのさ…」
「今日僕ラブ様のお宅にお泊りさせていただくんだけど…じゃあまさか…えっちなし?!」
「…」
「あ…それともあのゲストルームが祝典広場と化すわけかな…どっちでもいいけど…でも…キングサイズ(ごくり)」
「…ま、頑張ってね」
「…」

ギョンジンは黙りこくっていろいろとシュミレーションしているようだ
放っておこう…



営業中は電話をロッカーに置いている
客の引いた合間に、トイレに行く振りをして何度も携帯を確かめた
何回かテジュンからの着信があったので、その都度かけ直したんだけど出ない。繋がらない…。
そろそろ8時だからな…、道走っている頃だな…
そんな事を考えていたら携帯が鳴った

「もしもし」
『イナ?今途中だよ。後2時間ぐらいかな。待ってろよ、今夜は眠らせないからな』
「ばーか…運転気をつけてね。無事に帰ってきてくれりゃそれで俺は満足だからさ」
『可愛い事言うなぁ…じゃ、また電話するね』
「着いてからでいいよテジュン」
『ん…わかったよ…じゃな』

ああ待ち遠しい…
俺は携帯をロッカーに仕舞い、また店に出た


営業が終わった
10時だ
そろそろ帰って来る頃かな?でも安全運転だったらもう少し後か…

俺は携帯のフリップを開けて見た
いくつもの着信が残っている…
テジュンからだ…

なんだろう…もう着いたのかな?

電話してみる
でも出ない
ドライブモードになってるみたい…

些細な事は気にせず、俺は外に出た
ギョンジンのジャガーの中で、耐えがたきを耐えていたギョンジンが野獣のようにラブにキスしている…
ラブ…お前も今夜は眠れないんだな…フフ

マンションに着いた
でもテジュンの車は見当たらない…
まだなのかな?

部屋に入った
なんだかソワソワする…
嬉しくて…じゃない…
なんだろう…
胸騒ぎというほどでもない…
堪らないぐらい寂しくなる…

早く帰ってきてくれよ…死んじゃいそうだよ…

風呂に入ろうかどうしようか迷った
もうすぐテジュンが着くだろうし、それから…ふふっ一緒に入ろ!
すぐに入れるように準備しよう
風呂上りにビールでも飲むかな?
お疲れ様っちってへへへ、なんか奥さんみたいじゃん?ひひ…

んで、いっぱい話して…
そうだよ、今夜は話するだけでいいよ…
んで…寂しかったって甘えてさへへへ…

ふっと時計をみた

びっくりした…
もうすぐ日付が変わる…
遅すぎないか?

携帯を確かめる
あれから着信はない…
なんかあったのか?
事故?
まさか…

渋滞に巻き込まれたとか?どっかのキモカワみたいに…

いやな予感は…しない…
ただ物凄く寂しいだけだ…

どうしたんだろう…どうしたんだろう…テジュン…


日付が変わっても電話は鳴らなかった
最後の着信は9時過ぎだ…

何かあった?
何があった?

もしも事故なら…ヨンナムさんちに連絡が行ってるはずだし、そうだとしたらBHCに連絡してくれるよな…
ただ単に遅れてるだけ?

1時近くになってようやく電話が鳴った
『てじゅ』と示された画面に飛びつき、俺は慌てて電話に出た

『イナ…遅くなってごめん…』
「よかった…無事だったんだ…何かあったんじゃないかって俺…俺…」

涙が出そうだった

「今どこ?」
『ごめん…帰れなくなった…』
「…」
『講師の一人が盲腸で病院に担ぎ込まれて、呼び戻された…』
「…。なんだ…。メールしてくれればよかったのに…」
『ん…戻ってから明日の打ち合わせで今までかかってさ…メールも電話も…できなくて…ごめん…』
「いいんだよテジュン、無事だったんなら…よかった…安心した。じゃ、明日も研修なんだ」
『…ん…。あと…五日ある…』
「え…」
『無理言って僕だけ二日にしてもらったんだけどさ…本とは一週間の研修だったんだ…』
「…なん…だ…最初からそう言えばいいのに…」
『だって…戻ったばかりなのにさ…。お前に寂しい思いさせたくなかったんだ…』
「…ばかだなぁテジュン、最初から言ってくれればちゃんと覚悟してたのにさ。もう…。大丈夫だよ、ラブもいるしギョンジンもいる。みんないるから大丈夫。こんなことなら一週間ずっとラブんちに泊めてもらうんだったなぁ、居心地いいんだぜ。あ、また帰ってきてから話してやる。
だから…俺のことは心配すんなよ。それより仕事はどう?…たのしい?」
『…』
「…てじゅ?…たのしいか?」

声が震えそうになった…
黙り込むなよテジュン

『…イナ…』
「正直に言ってみろよ、楽しい仕事なのか?」
『うん…楽しいよ…やりたいと思ってた事だ…』
「そう…そりゃよかったじゃん…。なんかさぁ、BHCのみんなも知らないうちに副業持っちゃってさぁ…。ラブもなんかやろうかなって言ってるしさぁ、俺、焦っちゃうよ。俺もアメリカに出稼ぎにいこうかなぁ、ギャンブラーしに…」
『イナ…』
「ん?」
『今からまた打ち合わせがある。また明日かけるよ…ごめんな…』
「あ…うん…じゃな。がんばって…」
『愛してる』
「なんだよ。罪滅ぼしのつもりかよ」
『愛してる…イナ。ありがとう…』
「ばか…照れるじゃん…」
『お前から切れ』
「…テジュンから切ってよ…」
『…じゃあ…切るよ…おやすみ』
「…」

電話が切れた後、俺はおやすみを言った
それから溢れてくる涙と、こみ上げる嗚咽を我慢しきれず、ずっと泣いた…

無事でよかったと思う反面、たまらなく寂しくて、気が狂いそうなぐらい泣いた
ちゃんと…ちゃんと取り繕えただろうか…
テジュンに心配かけてないだろうか…
俺は…頑張ったつもりだ…

しごとがたのしいと言ったテジュンの、俺は負担になりたくない…
やりたい事の足枷になりたくない…

でも…でも堪らない…
寂しくて堪らない

どうして俺はこんなに弱虫なんだろう…
どうしてミンチョルやスヒョンのように、毅然とできないんだろう…

俺は朝までずっと…泣いていた











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