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ぴかろんの日常
リレー企画 150
mi gattino 妄想省家政婦mayoさん
「出来たのか?」
「ぅん..見て..ちぇみ..」
「どれどれ..」
テスと闇夜はここ2,3日..昼間の空いた時間にPCの前でああでもないこうでもないと
ベーカリーでの「記念日のケーキ」のパンフレットらしき物を作っていた..
釜山から帰った闇夜とまたチェックをして..どうやらそれが完成したようだ..
テスと風呂から上がると印刷が終わっていた..
何枚かのA6版の光沢のある厚手の紙には..それぞれ違うケーキの写真が印刷され..
ケーキに合わせてひと事コメントがついている..
「どぉ?」
「ん..いいじゃないか..」
「ほんと?」
「ん..レイアウトもすっきりしてるし..コメントもなかなかいいぞ..」
「6枚組みにして..ウィンドゥの写真を印刷したこの封筒に入れるんだ..安っぽくないよね?」
「ん..」
「ただの一枚の紙切れじゃさぁ..何ぁんかつまんない気がしたんだ..で..mayoシと考えたんだ..」
「そっか..良く出来てるぞ..」
「へへ..よかった..」
濡れているテスの頭をごしごしを拭いているとテスがするりとかわした..
「おい#..乾かさないと..風邪ひくぞ#..」
テスはちゃっちゃとバスローブを脱いでベットに潜り込んだ..
「ったく..」
イッヒッヒッヒ...>▽<...椅子の上にちょこんと座っているはるみが俺を見上げた..
ンギャミャン#...>o<...はるみの上にパサリとタオルを落とした..
俺もベットに入ると..頭から毛布にくるまっていたテスがひょい#と首を出した..
「ねぇ..ちぇみぃ..」
「ん..何だ..」
「...」
「どうした..ん?..言ってみろ..」
「...僕の..僕の躰に飽きない??」
「...ぁ..ぉぃ...何言い出すのかと思ったら..」
「...」
「何故そんなことを聞くんだ..」
「ぅん?...なんとなく..言ってみただけ..」
「...埒もないことを..」
大きな手のひらが僕の頭にぺたんと落ちて..乾き切ってない僕の髪をぐしゃぐしゃにした..
唆す様に僕の耳を舌でくすぐり..僕の名前を吐息混じり低音で囁く..
僕を引き寄せた浅黒い肌は弾力があって..気持ちがいい...
唇と舌の甘噛みが僕の身体にあちこちばらばらに落とされる..
鎖骨に沿ってツツー..と舌が滑り..僕の胸を彷徨う手のひらが胸の粒を掠める..
僕のそこが疼きと快感を呼びこむのをもう知っている..
親指の腹がそこを擦り..指で摘み..執拗に弄る..そしてぷつりと硬く尖っていく..
僕の下肢にじわじわと熱が集まり..ずきりと鈍く響き..
僕も”僕”も..どんどん発熱していく..
僕の双丘が両手で鷲づかみされ..撫でられ...僕の肌が一瞬粟立つ..
僕の背はあやす様に撫でられる..
僕はゆっくりと息を吐き..力を抜く..じりじりと僕の中へ分け入る..
「------っ..」
僕は耳元で呻くような溜息を聴く..
僕が掴む筋肉質の肩は僕の手の中でしっとりと汗ばんでる..
僕が落ち着くとゆっくり..律動が始まる..
喘ぎの中で名前を呼ぶと..僕の中で蠢いて..応えてくれる..
それが嬉しくて..僕は何度も何度も名前を呼ぶ..
小さな稲妻が大きく撓る僕の背筋を走る...
僕は首を頭を振り僕の身体に籠もる熱を冷まそうとするけど...熱いよ..
片手で”僕”を擦り..弄び..一方の片手は撓った僕の背を支える..
来そうで来ない..最奥にもうすぐ来る...
「ふ....ぁ、...っ..」
僕の熱い吐息のトーン.....
「...!!.」
いつもと違う??...僕の吐息..それを聞き逃さない...
「また..見つけたみたいだな..」
僕を覗き..眉を上げ..低音で囁き..くくっ..っと笑う..
僕も知らない..僕の秘境..また..探し当てた..
お宝を捜しあてたみたいに..嬉しそうに..また..僕の中で蠢く..
低く響く短い呻きが僕の鼓膜を幾度も揺らす..
僕の虚ろな目には喘ぎで溜まった唾液を飲み込む動作で上下する喉仏が映る..
僕の身体にいつもと違う..覚えているリズムとは違う..ピリリとした刺激が走る..
ぞわぞわとした震えが背筋を走り.....脳天を直撃する快感..
僕は恍惚の笑みを浮かべ..淫らに狂う..
僕の脳裏に白い稲妻の光が見え始める..
「..も..ぅ....だっ......め..ぇ....」
僕の背は大きく撓り僕は矯声をあげる..
「まだ..だ..」
耳朶を噛みながら微かに掠れた低声..
今までよりも何倍も何倍も増幅した快感が..
朦朧とした僕をそれまで感じたことのない高みへ尚も押し上げていく..
「ぁぁ....ぅん...っ....」
僕の腰は無意識に..誘われる僕の中の動きに連動する..
上擦った声でねだる僕の声が聞こえる..
も....っと....も...っと..もっと....
僕たちはまた陶酔の深みに嵌り快楽のきざはしを駆け上がりっていく.....
★☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆★
いつになく頬を上気させ..枕に埋まるタレ目仔猫の髪をそっと撫でつけた..
仔猫は虚ろにとろりと目を開けた..
テス..
何..
二度とぁぁぃぅことを..言うなよ..
ぅん..ごめん..
ごめん?
...なさい...*^_^*..
仔猫の甘える顔に俺の眉が20度下がり..口元が綻ぶ..
ちぇみ..
何だ..
腰..大丈夫ぅ?..
鍛え方が違う..
俺の仔猫は「へへ...」タレてる目をまた下げ..俺の懐に入った..
ピンクのリボンの白猫は..椅子の背に前足と顔を乗せている..
俺と目が合うと..〃(★o★)〃..前足で目を隠した...
みてましぇん..とは言わせん..耳は最高潮に立っているぞ..怪猫め..
また俺と目が合った白猫は俺が頭で呼ぶとタッタッタ..タンッっとベットに乗り..
俺の仔猫の後ろで枕に頭を並べた..
俺は毛布ごと可愛い仔猫と怪猫白猫を包んだ..
始動 オリーさん
ここ数年の音楽業界は移り変わりは激しい
新しい時代に突入したと言っていいだろう
もし何十年か後に今を振り返れば
ここ数年、今後数年はたぶん歴史に残る大変動期にあたるに違いない
大きな原因はネット上に無料の音楽があふれかえったこと
数年前あるサイトが立ち上がり、
リリースされる音源のほとんどをストリーミングで聴けるようになった
しかも無料で
これを皮切りに続々と音楽ストリーミングサイトが立ち上がり
若者の間では音楽はネットで聴くものというスタイルが定着してしまった
そして音源に対する嗜好がより明確に細分化された
わかりやすく言えば
好きな歌手をすべて聞くというスタイルから
好きな歌手の好きな曲を選んで聴くというスタイルへ移行したのだ
お気に入りの歌手でも気に入った曲だけしか聴かない
若者の価値観そのものが大きく変化している
おかげでCD市場は目を覆うばかりの状況だ
ここ4年間でCD市場は4分の1にまで縮小してしまった
当然アーティストの姿勢にも変化が見られる
リスナーの要望に答えコンサートやライブに力を入れるたり
オンラインで楽曲を売りその利用料を得たりと様々な工夫をしている
付加価値のある広告に使用されることで収入を増やすようなやり方もあるが
これはすでに人気のあるアイドルやアーティストが有利だ
このような状況に置かれて音楽業界も自然と変化を迫られている
ネットやデジタル化に対応できないアルバム企画会社はまず生き残れない
今残っている会社はほとんどがその対策を講じ
オンライン専門の会社を作ってデジタル時代に対応している
ミューズに企画室を立ち上げてから、
暇をみては同業者へ挨拶回りをしながらそれを肌で感じ取った
昔から馴染みの業界人の姿がかなり消えていた
代わりに一日中パソコンの前で仕事をするような
若い担当者がそのデスクに前に座っていたりした
乗り遅れるわけにはいかない
公園での別れ際、スヒョンとの会話を思い出した
「映画の話は進んでるのか?」
「そこそこね」
「もう企画はすべて決まってる?」
「お前、何が聞きたいの?」
スヒョンは涼しい顔をして僕の顔を覗き込む
やはりすべてお見通しか
「その・・音楽はどうするのかな、と思って」
「もしかして興味あり?初仕事にしたいわけ?」
「ケホッ。その・・できれば」
「誰にやらせるつもり?」
「コホッ」
「ふふ、わかりやすい奴」
「何が?」
「いいよ。今度監督に聞いてみてやるよ」
「頼めるか?」
「ああ、でも高くつくなあ。」
「いくら?」
「濃い目のキス」
「ば、ばかっ!」
「くくっ、冗談だよ。とにかく聞いといてやるよ、た・だ・で・」
「た・・頼む」
「で、今日はこれからどうする?」
「ミューズでもう少し資料を作ってから店に出るよ」
「わかった。後で店で」
「スヒョン・・」
「何?」
「今日は、その・・ありがとう」
「どういたしまして。何かあったらいつでもどうぞ。店に遅れるなよ。
噂では新しいチーフは厳しいらしいからね」
スヒョンは茶目っ気たぷりに笑うとひらひらと手を振って街の雑踏の中へ消えていった
僕はその後姿を見えなくなるまで見送っていた
映画のOST・・
正直に言えば喉から手が出るほど欲しい仕事だった
これを受けることができたら大きな飛躍のきっかけになる
現在のミューズは大きく遅れを取っている
ネットにもデジタル化にも対応できていない
売れる歌手もいない
ないないづくしだ
だがそれで落ちこんでしまうわけにはいかない
ピンチはチャンスの裏返し
何にでも挑戦できる可能性が残されている
やらなくては・・
もう一度パソコンの画面を見つめて頭を整理した
いい方法があることに気づいた
ミンやドンジュンが店に出たり仕事をやりながらできる方法だ
BHCのメンバーを何らかの形で参加させたらどうだろう
うまくいって歌が売れれば
店の宣伝にもなり売り上げも伸びるだろう
一石二鳥、三鳥にもなりえる
成功のカギはどう作るかだ
ノウハウと言えばはやはり彼女・・
いいヒントをもらえるかもしれない
腕時計を見る
4時か・・
約束はしていないが、早めに店に出ることにした
ほぉっとため息をついてパソコンを閉じた
外に出ると、外気が思いのほか冷たい
夕暮れ前のオレンジ色の西の空を見上げた
ミン、僕もやってる
仕事のめどが少しづつたってきたよ
・・そう、よかった・・
ミンが空の上から答えたような気がした
店に着くとまっすぐ厨房に向かった
「ちょっといいかな・・」
手招きをして彼女を呼んだ
※情報・資料提供 妄想省情報局 mayoさん
変な奴… ぴかろん
ギョンジンが変だった…
変な奴だけどさ…シリアスに変だった…
祭の頃みたいな雰囲気があった…
俺に抱きついて震えてた
泣きたかったら泣けばいいのにあいつ、泣かなかった
ふんだ…俺の胸じゃもう泣けなくなったっつーことかよ…
でも…ラブにも内緒にしててって言ってたな…
内緒…秘密…
あっまさかあいつ、俺の可愛らしさにクラクラッと…ケヒッ
はぁ…
ギョンジンの真似してたら馬鹿になる…やめよう…
夕方近く、俺はギョンジンと一緒に店に出た
ラブはもう出勤してて、ミンギとなんかの雑誌を並べてあれこれ言い合ってた
ちらちらとmayoさんがその様子を盗み見ていて、何か言いかけては止めていた
ふんっ…なんだよ…ラブのばか…
やっぱ俺だけか?ふらふらしてんのは…
じっとラブを見つめていると、俺の視線を遮ってふらふらした男が控え室の方に向かっていった
あれ?いつもならケヒンとかくふふんとか言いながらラブに巻きつくのに…珍しいな…
俺の視線に気づいたラブが顔をあげて俺たちの方にニコリとしたのに、そのふらふら男は気づいてない…変だ…
ラブはフラフラ男を凝視しているがまったくシカトされている
あ…ラブ様の怒りに火がついたぞ…
馬鹿だな…どうする気だよ…
タンっ!
机に手をついてすっくと立ち上がるラブ
そしてタッタッタッと控え室の方に行こうとしている
「ラブ」
思わず声をかけた…
「なに?!」
ああちっとご機嫌が悪いみたい…
「その…あの…今夜お前、ミンチョルのうちに来ない?」
「…」
「俺さ…、俺、あそこのマンションの空き部屋一つ貰っちゃった」
「え?」
「だから…あのマンションに居候…」
「…。イナさんが?」
ちっと…ちっとだけ顔を顰めるラブ…
え?なんでよ…いけないの?
「…。昨日…ギョンジンとなんかした?」
「あ…いや…飲んだんだ、スヒョンも来て…みんなで…」
「…。それだけ?!」
ツカツカと俺の方に歩み寄るラブ
マジな顔が怖いぜ…
「それだけって…何が…」
「あの人、まさかイナさんの部屋に夜這いとかしなかった?」
「しっ…してな…」
…い…と言いかけて、あのハグと訳の解らない呟きは『夜這い』とは言わないよな…と自分に確認し
「なんもしてねぇよ!何怖い顔してんのさ…」
と言っておいた
「だって…アイツ変じゃん!いつもなら『ああん』とか『くううん』とか言って俺に巻きつくのに、今日は何よ!無視かよ!」
プリプリ怒ってる
やっぱ纏わりつかれたいんだな?
「なに笑ってんのイナさん!」
「だって…いつもお前が冷たいから…」
「ふんっ!あいつは俺に冷たくしちゃいけないんだもん!」
「…」
「わかった、今晩行く!」
「…お…おう…」
ラブは俺をギラリと睨んで、またミンギのいるところに戻っていった
こわいなぁ…ラブったら(^^;;)
それにしても、ほんとにギョンジンどうしちゃったんだろう…
まぁいい…これでラブもミソチョルと仲良くなれるだろうな…
営業中はお客のリクエストに答えて、指で二枚のチップをクルクル回す方法を伝授したりハンバーガーを頬張ったままのとび蹴りをしたりした
ギョンジンはなんかずーっと変だし、そんなギョンジンをやきもきした顔で見つめているラブは…かわいかった…
湖の休日4 足バンさん
ソクさんはその後ひとこともしゃべることなく雨の中を走った
俺はたったひとこと「寮に行って」と言った
寮に着く頃には自分の泣いていた理由もわからなくなって
ぷつりと涙は止まっていた
ソクさんは黙って車を降り雨の中俺の荷物をエントランスまで運び
管理人室の横に置いてある傘を手に戻ると
俺側のドアを開けて無言で降りるよう促す
俺は傘を受け取りその場に立つ
ソクさんは濡れたまま車の屋根に手を置き暫く足元を見ていた
ヘッドライトの光に切りとられた空間の中だけに
白い細い雨が切り傷のように浮かび上がる
俺はソクさんの言葉を待っているふりをしたけれど
何の言葉も期待していなかった
ソクさんは踵を返して車に乗り込み
発車した車はためらうことなく道の向こうに消えて行った
俺はどれくらいそこにぼんやりしていただろう
重い足をやっとのことで動かして部屋に帰り
鍵を開けて
力なく荷物を放り投げた
暗い部屋の中から窓の向こうの濡れた街の灯りが見える
ぼやけたその灯りの中に暖かいものが見えた気がした
そして目を閉じるとそれははっきりした声に変わる
スヒョク
スヒョク…
なぁスヒョク
俺は目を開けて深呼吸をすると
傘を掴んで部屋を飛び出した
スヒョクを車から降ろして
僕は雨の中何度も口を開こうとした
おまえの言う通りだ
おまえに何がわかるって言うんだ
ごめんこれが僕なんだ
おまえに重荷を負わせたくないんだ
これ以上近づくな
もっと近くにいてくれないか
スヒョク…
僕の胸に次々と現れる言葉のどれを
どう伝えたらいいのかわからない
結局僕は何も言えないまま車に乗った
バックミラーの中で遠くなって行く傘を持つスヒョクを見ながら
僕はハンドルを思いきり叩き付けた
自分に腹が立った
いったい何をやってるんだ僕は…
下宿の前に車を停めそのまま入っていくと
ヨンナムさんが呆気にとられた顔で廊下に立っていた
「どうしたんです…ずぶ濡れで…スヒョク君は?」
「帰りました」
「…ちょっと待ってて…」
ヨンナムさんが急いでどこからか大きなタオルを持って戻る
ふわりと頭から掛けられたタオルに包まれていきなり涙がこみ上げそうになった
ヨンナムさんは何か言いかけて
そのタオルの端で僕の顔をごしごしと拭いて
「お風呂すぐに入れますよ」
と言ったきりそのまま奥に入ってしまった
僕はその心遣いをありがたく思いながら2階に上がった
部屋に入り
物入れの奥に仕舞ってある茶色の小さな古いトランクを出す
ホコリを袖でぬぐい
少し錆び付いて動きにくくなったダイヤルを合わせ開ける
古い紙の匂いと懐かしい香りが鼻に入る
1冊の表紙のはげかかった本と
何枚かの絵
数枚の写真
そして黒い血の跡が残る小さなシャツ
僕はそのシャツをそっと取り出すと
抱きしめて泣いた
長い間封印してきたあの子の香りに包まれて大声で泣いた
俺が下宿に辿り着くと
ソクさんの部屋に弱い灯りがともっているのが見えた
傘をさしたまま玄関の前に立って
そこで俺の思考は止まってしまった
俺はソクさんに会って何を言うつもりなんだ
さっきの暴言を謝る?
答えを求める?
答え?答えって?
俺が役に立ってないってことの?
違う
違うでしょう
言わなくちゃいけないことはそんなことじゃない
突然目の前の扉が開いた
猫を抱いたホンピョが立っていた
「スヒョク…さん…どうしたんすか」
「あ…いや」
「ブルーのやつが玄関に行きたがると思ったら…入んないんすか?」
「いや…いい…今日は寮に帰るから」
「うぇ?そうなんすか?ソクさんはさっき…」
「おいホンピョ君」
廊下の向こうの部屋からヨンナムさんが顔を出している
「ちょっと頼みたいことがあるから手伝ってくれ」
「うぃす…でもスヒョクさんが…」
「すぐに来ないと3日間出入り禁止だよ」
「あうっはいはい」
ホンピョは猫を抱いたまま引き返そうとして振り向き
自分の肩に掛けていた手ぬぐいを俺に押しつけた
「そんな濡れて…傘さすの下手っすね」
ホンピョが奥に入ってしまってから
俺はゆっくりと傘を閉じ玄関に入って静かに戸を閉めた
ソクさんの部屋をノックする
返事がない
ずいぶんためらってから開けてみる
座卓の上の小さなライトに照らされ振り向いたソクさんは
肩からタオルを掛け部屋の隅に座っていた
ちらっと見えたその手には紙のようなものが握られている
そしてソクさんの横にはライターが見えた
俺は咄嗟に走りよって
「何するんですかっ!」と怒鳴りながら
その手の中のものをソクさんから取り上げた
それはソクさんと女性と小さな男の子の写真だった
ジュン君にそっくりの男の子
寄り添って笑っている優しい家族の肖像
ソクさんの前には子供が描いた何枚かの絵と
黒ずんだ小さなシャツが置かれていた
俺は手の中のものを床に置き
下を向いたままのソクさんの肩を乱暴に掴んだ
「ソクさん!消しちゃえばいいんですかっ!そうじゃないでしょっ」
「スヒョク…」
「ソクさんが俺に教えてくれたのはそんなことじゃないでしょっ」
「…」
「本当はわかってるでしょっそんなことしたって何にもならないって!」
俺はソクさんの背中を思いきり抱きしめた
タオルに沁みた冷たい雨が俺のシャツに伝わる
また涙がわけもなく流れてきた
「歩いてきた記憶は消せないからって…だからそれを歪めないで向き合えって…
そう俺に教えてくれたのはソクさんじゃないですか…」
「燃やそうなんて…思ってないよ…」
肩から手をはずすと
ソクさんは俺の顔を見て小さく微笑んだ
「スヒョクにねじ伏せてるって言われて…鍵を開けてみようと思った…」
「ソクさん…」
俺はソクさんの横に回り
ホンピョの手ぬぐいで涙を拭いて散らばっている品を見た
釣りをしている家族の絵
本を読んでいる父子の絵
そして
「おとうさんだいすき」と横に書いてある
笑っている男の人の顔
涙が止まらなかった
こんな痛みをあなたは抱えて生きてきたんですか
俺はソクさんをもう一度横から抱きしめた
「ごめんな…」という小さな声も一緒に
俺は長い間その肩を抱きしめつづけた
その夜
ソクさんは冷えた身体を風呂で暖めて床に入った
俺はそのどれをも共にすることなく
ただ布団の中のソクさんの肩を小さくさすっていた
ソクさんが眠るまでそうしていた
一度だけ廊下に出て電話をいれた
部屋に戻って小さな灯りの中で
もう一度ソクさんの想いの品を手にとってみる
古ぼけた絵本…”もっとはやいものは”
俺は初めて手にしたその絵本を泣きながら読み終え
そしてはっきり思った
このひとと生きていきたいと
恋愛中毒8 れいんさん
夢を見た
これは多分夢なのだろう
深い森の木立の中、どこからか美しい音色が聞こえてくる
月桂樹の木によりかかり竪琴をならす美しい一人の青年
音楽をもつかさどる神アポロンの息子オルフェウス
オルフェウスは心から愛する者の死によって嘆き悲しむ日々を送っていた
父より贈られた竪琴で愛する者を想い、美しく哀しい音色を奏でる
しかしそんな事をしていても愛する者は戻ってこない
オルフェウスは愛する者を探しに死者の国へと旅立つ
死者の国で再会した二人は、手を取り合い、地上に戻る途中
悲劇に見舞われ離れ離れになってしまう
地上では結ばれる事のなかった二人
愛し合っていても想いが叶う事はなかった二人
愛する者を想い悲嘆にくれながら竪琴をならし続けたオルフェウス
夢の中のオルフェウスの顔がスハの顔になった
スハ・・スハ・・
僕はここだ。ここにいるよ。
迎えに来てくれたのか?
こんな僕を許してくれるのか?
もう一度僕に笑顔を見せて
会いたいよ・・早く・・おまえに・・
夢の中のスハは手を伸ばせば届きそうだった
僕は懸命に手を伸ばした
もう少しで届きそうなのに・・
待ってくれ・・行くな・・スハ・・
スハに触れる瞬間に目が覚めた
見慣れない部屋・・いつもと違う香り
ここは・・どこ・・
僕は・・何を・・
「テジン・・テジン・・」
「エジュ・・」
「気がついたのね・・よかった。助けを呼ぼうと思って・・」
彼女は持っていた電話を静かに置いた
「随分うなされていたわ・・大丈夫?」
夢を見ていたんだ。
スハと引き裂かれる哀しい夢
早く行かなきゃ・・あいつの所に・・
僕は慌てて身を起こした
つうっ・・
脇腹のあたりに鈍い痛みを感じた
「無理しないで・・傷が開くわ。・・ごめんなさい、私のせいで・・」
「エジュ」
「貴方が気を失ってる間に手当てをしたの。思ったより傷が浅くてよかった・・」
見ると、僕の腹部には包帯が巻かれてあった
「ありがとう」
「ううん・・私のせいだもの。私が取り乱したばっかりに・・。応急処置はしたけど、すぐに病院に行きましょう」
「病院はダメだ」
「どうして?」
「面倒な事になる」
「そんなのいいの。私が悪いんだもの。当然の事よ」
「こんなの平気だ。かすり傷だと言っただろう?」
「テジン・・私の事・・許してくれるの?」
「許してもらうのは僕の方だ。君の気持ちに応えてあげられなかった」
「ごめん・・ごめんね、テジン。貴方の気持ちは最初から解ってたのに。それなのに・・そんな貴方が好きだったから」
何も言わずそっとエジュを抱擁した
すまなかった・・
今の僕にできるのは君を抱きしめる事くらいだ
「スハ君に連絡するわ。迎えに来てもらいましょう」
「いや、いい」
「まさかそのまま帰るつもりじゃ・・」
「早くあいつを迎えに行かなきゃ。約束したんだ」
「だって・・その身体じゃ無理よ」
「僕の昔の職業覚えてる?」
「・・ええ」
「レーサーにちょっとした事故やケガはつきものだったろ?この程度のケガは何でもない」
「テジン・・」
「随分あいつを待たせてる。あいつ、拗ねると結構大変なんだ」
エジュは僕に回した手で軽く背中を叩いた
「・・わかった。言い出したら聞かないところは昔と変わってないのね。」
「エジュ・・」
「待ってるんでしょ?スハ君」
「・・」
「さ、早く行って」
「・・」
「何してるの。無駄口叩いてる間に朝になってしまうわ」
僕は身支度を整えて今度こそこの部屋の扉を開けた
「・・ありがとう・・エジュ・・」
そして静かに扉を閉じた
車を飛ばした
右足は思い切りアクセルを踏んでいた
信号で止まるのがひどくもどかしかった
脇腹の痛みなどどうでもよかった
朝になる前に、陽が昇る前に、あいつの所に行きたかった
早く・・早く・・この腕に抱きしめたい
真っ暗な場所を手探りで歩いていた
暗くて寒くて凍えそうだった
寂しくて寂しくて泣きたかった
このまま永遠に独りぼっちになりそうな気がした
叫びたくても声が出ず、逃げ出したくても身体が言う事を聞かない
これが夢なのか現実なのかわからなかった
浅いまどろみの中、僕の頬に何かが触れた
孤独に押し潰されそうな僕は光の中に引き戻された
温かい誰かの手・・
その手は僕の頬を、僕の髪を愛しげに撫で続ける
誰・・?
はっとして目が覚めた
テーブルに突っ伏したまま、いつの間にか眠ってしまったんだ・・
その人の足先が目に入った
ゆっくりと顔を上げた
僕の愛しい人がそこにいた
僕が待ってた人がいた
ずっとずっと待っていた人
会いたくて、会いたくて・・
その人はとびきりの優しい笑顔で僕を見ていた
慈しむ様な深い瞳の色をして
「テジンさん・・」
「遅くなって・・悪かった」
「いいえ、ほんの少し待っただけです」
「・・泣いてたのか?」
「え・・」
「ほら・・涙の跡が」
彼の指が僕の頬をなぞった
恥ずかしくて俯いた
その時彼のシャツに赤い血が滲んでいるのに気づいた
「テジンさん・・!それ・・どうしたんですか?」
「何でもない」
「だって・・血が・・」
「平気だ」
「病院に行かなきゃ・・」
「たいしたケガじゃない。心配するな。・・そんな事より・・」
彼は僕の顎にそっと手を添え顔を向かせた
「待っててくれてありがとう・・昨夜、僕は」
「テジンさん」
「え・・?」
「ありがとう。約束守ってくれたんですね。ちゃんと迎えに来てくれたんですね。待っててよかった」
「スハ・・」
彼が僕を抱きしめた
息ができないくらい、強く強く抱きしめられた
彼の厚い胸の中は僕の一番好きな場所
「テジンさん・・」
「ん?」
「ほんの少し・・迷子になっただけですよね?」
「・・そう、迷子になりかけた。でも・・ちゃんと戻って来た。お前の声が聞こえたから」
「テジンさんの胸・・あったかい・・」
彼の香りが嬉しくて、僕も彼をぎゅっと抱きしめた
長い長い夜が明けて朝日が僕らに降り注いだ
怒りのラブ様 ぴかろん
店に来た時からアイツ変!
なんか俺のこと避けてる!
絶対イナさんになんかしたんだ!
イナさんに聞いてみた時、最初歯切れが悪かった…
ギンちゃんと時計の話をしてたんだけど、アイツが控え室に消えてから気になって気になって
「ラブちゃん…」
「…ん?なにっ?」
「…行ってきたら?」
「どこへ?!」
「控え室かトイレ」
「なんでっ!」
「びんぼーゆすり、激しくない?」
「…」
「それはトイレを我慢してるのか、それとも襟巻きが欲しいのか…どっちかな?」
「どっちでもないっ!イヤなギンちゃんっ!」
俺はものすごい膨れっ面になった…
貧乏ゆすりをやめた…
いらいらする…
「だからラブちゃん…」
「なにさっ!びんぼーゆすりやめたでしょっ?!」
「その、指でテーブルトトトやるの…やめてよ」
「なんだよっギンちゃんのケチっ!」
「あ…フグ…」
「フグってのはドンジュンさんの特許!」
「じゃ…フグで釣り目…」
「…」
タンッ!
俺は思いっきりテーブルを叩いて立ち上がった
ギンちゃんは驚いて俺を見上げた
「わーったよ!行ってくる!」
「…控え室?」
「といれっ!」
足を踏み鳴らして控え室に向かった
そう言えばイナさんの姿が…見えないぞっ!
まさか…まさか…
俺は控え室を開ける前にドアに耳をくっつけて中の様子を探った
「…こうしていて…」
「いいのか俺で…」
「言ったろ…お前しか…」
「…やきもちやかれる…」
「…いい…」
「…あ…ちょっと…あ…ん…」
「…イナ…」
&%`@65&$@@;;%’
何…
なによ…どういう事よ…
「あ」とか「ん」とかどういう事よっ(@_@;)
俺は逆上してドアを開けた
アイツがイナさんのからだから、自分の頭をすうっと離した瞬間だった…
ちくしょう!現場を押さえられなかった!
「あ…ラブ…どした?目つきの悪いフグになってる…」
「…なにしてたの…」
「何って…別に…」
「イナさんはいいの!俺はこの人に聞いてるの!…イナさんちょっと席外してよ!」
「…こえぇなぁ…」
「行ってよ!」
「…解ったよ…」
イナさんを追い出した
俺は悪びれも取り繕いもしないアイツにますます腹が立った
「何してたの?!」
「…」
「聞こえてたよ、イナさんに『お前しか』とかやきもちやかれても『いい』とか言ってたの」
「…」
「んでイナさんが『あ…ん…』って色っぽい声出してたの!」
「…」
「イナさんがいいんだ…」
「は?」
ギョンジンは素っ頓狂な声を出した
「イナさんが好きなんだ!」
「はあ?何言ってるのラブ」
「…誤魔化す気?」
「…あのね…ちょっと…抱きしめて貰ってたの…」
「…」
「それだけだよ」
「…。なんで?!なんでイナさん?!」
「…」
「俺じゃダメなの?!」
「…ラブ…」
「…。何があったの?!教えてよ、俺には言えないの?!」
「…イナにだって言ってない…」
「…」
「…。ラブ…ごめん…。変な意味じゃなくて…その…僕にとってイナって人は…特別な人なんだよ…」
「…」
「…」
「…もういい…」
「ラブ」
「…もういいよ…一緒に住めるようになってよかったじゃん!」
「ラブ…なによそれ…」
「俺なんかもう必要ないんじゃん!」
「…ばっかだなぁ…」
俺には何も言ってくれないなんて酷いじゃん!俺、まだイナさんには負けるの?!
悔しくなって控え室から出ようとした
「ら~ぶ」
アイツの甘えた声が引き止める
「らぶぅ…」
俺はつい…振り向いてしまう
アイツは唇を尖らせて、上目で俺を見ている
もうっ!
我慢できなくなってアイツのところに駆け寄る
その頭を抱きしめる
「ああんかわいいっかわいいよぉギョンジ~ン」
「…ラブ?」
「もうっもうっ…そんな顔、イナさんに見せてないだろうね?ん?」
「…ラ…ラブ…」
「はぁぁん…。そんな唇半開きで首傾げちゃだめぇぇぇっ」
「…あの…ラ…」
俺は椅子に座っているアイツの太腿に跨った
「ラっ!」
「かわいいっ!かわいいいっ」
「ラっ!」
「ここでしよう!」
「げっ…」
俺はアイツの頬を両手で挟んで切なげに唇を寄せた
アイツはビックリ顔で固まっている
唇に触れるところで寸止め…
「今なら大丈夫…ヤっちゃおう…」
「ひっ…」
「なぁんて言うとでも思った?!ああ?!」
「…ラ…ラブしゃま…」
「浮気は許さねぇ!」
「浮気なんて…してましぇん…」
可愛らしく呟くアイツに、俺はキスする
戸惑って応えるアイツが…新鮮…
「…ラブ…。イナは…」
「…。解ってる…。イナさんがアンタにとってどう特別なのか…知ってる…」
ただの…ジェラシーだもん…
「…ただ…アンタが何か悩んでるんだったら…俺に…俺に一番に言ってほしかった…」
「ラブ、イナにも言ってないよ…」
「え?」
「…。悩みっていうより…ただの不安だ…。どうなってるのか解んないし手出しできないし…どうしようもない不安なんだ…」
「…」
「イナは…何も聞かないだろ?それで…頼っただけ…」
「…」
「お前には状況が解ったらちゃんと説明するつもりだった…ごめん…。僕、変か?」
「思いっきり変!」
「…じゃ…営業中は頑張るよ…」
「…ギョンビンのこと?」
「…」
アイツは黙り込んだ
何かあった?
解んなくて不安?
遠く離れててもギョンビンの事、感じ取れるんだ…
「ラブは僕の心に敏感でしょ?だから余計な心配かけたくなかった…。その点イナはさ…」
「イナさんは…そうだね…あの人コドモのくせに、妙に大きいところあるもんね…。イナさんに抱きしめてもらうと…気持ちが安らぐもん…」
イナさんにキスしても気持ちが安らぐけど、それは言わなかった…
「解った…アンタが話してくれるの待ってるね」
「ラブ」
「んふ…そういうアンタってかわいいっ♪」
いつもならああんくぅんはぁぁんって言ってキスしてくるのにな…
そうじゃないギョンジンは…くふ…渋くてかっこいい…
たまにはこういうギョンジンも…くふ…いいな…
「ね、する?」
「え?」
「ここで…する?」
「えええっ?!」
「エロミンなんでしょ?しよう!」
「ラ!」
目を白黒させてるギョンジンの唇に思いっきり吸い付いた
中々応えてくれないその舌を辛抱強く転がした
長い長いキスをした
でもいつもの調子は出てなかった…
唇を離して俺はギョンジンを見つめた
「そんな顔は、イナさんと俺しか知らないって事だね?」
「…ん…」
「ギョンビンのことなら、ミンチョルさんに悟られないようにしなきゃいけないね」
「…ん…」
「アンタできる?」
「…」
ギョンジンは顎をひいて上目で俺を見て、ニヤリと笑った
「つまり…プロだからって意味?」
「くふ…」
「…辛くなったら…言ってね…フォローする…イナさんと一緒に…」
「ラブ…」
「でもなぁ…イナさん…気まぐれだからなぁ…」
「いいよイナは…。あいつにはムリだよ、そういう裏工作…」
「…そか…」
「ありがと…お前がいてくれるだけで十分勇気が湧くよ…」
「くふん…」
「くふん?!」
「あぁんかわいいっかわいいいっ!」
「ラ!」
俺はもう一度、いつもと違うギョンジンの頭を抱きしめた
ああん…大好き…くふぅぅぅん…
Silver fox 妄想省家政婦mayoさん
カッツ..ペタンコ..カツン..カッツンコ..カツカツカツ..
通路から聞こえる靴音..
僕と闇夜は調理台の前で俯いたまま..互いに肘を突つき..ひそひそと囁き合う..
「どっち??...」
「んっとねぇ~~~ミンチョル..さん..」
「ソヌじゃなくて??..」
「ぅん..音が違う..」
僕は喉奥でくっ#っと笑った..
カッ..ツン#
靴音が止まった..
僕は顔を上げ..厨房の入り口に立つ人物を確認し..闇夜の耳元で囁いた..
「当たりだ..mayo..」
闇夜は俯いたままニヤリとした後..顔を上げた..
「ちょっといいかな..」
ふわ~ん....に誘われ闇夜は厨房の入り口に立った..
「何か..」
「ぅん..効果的な戦略はないかと思ってね..いろいろ聞きたい..」
「ぁの..素人の私に聞いても..」
「ぷっ..君の情報は下手な玄人に聞くよりいいヒントが得られる..」
「はひ..^^;;..」
僕が2つのカップコーヒーを淹れ..作業台に置くと2人は椅子を持ってきて座った..
闇夜に茶色の小さな箱を渡すと..くすっ#っと笑った..
箱を開けて闇夜は差し出した..
「ぁ...」
「一個くらいなら大丈夫ですよ..ミンチョルさん..」
「〃@_@〃...」
きょろきょろ周りを見て..←こりは...癖になってるのだろうか..
箱の中のチョコレートを口に入れた後..目に掛かるメッシュの前髪を指で祓った..
で..闇夜に銘柄を聞いてきた..
「..何処の?」
「デュポウーブ・ギャレ..です..」
「そ..さすが..美味しい..^_^..」
「ミンチョルさん..最近の音楽事情..」
「わかっている..前とはかなり違う..ネット..デジタル化を目の当たりにしている..」
「そうですか..ギョンビンさん達だけじゃなく..いずれは若手のJSAの方も..考えてるんですね??」
「ん..そのつもり..」
「2人の..CD制作の方は..」
「徐々に進めている..収録曲も考えないとね..」
「活動の基本は..サイクル活動方式..ですか?」
「まだはっきりしないが..その方がいいかなと考えてる..店もあるしね..」
「そうですか..では..曲に合わせたMV..その他の映像も制作しないと..」
「MVか..」
「BHCは監督も..助手..ミンギもいます..色々なバージョンで作れますよ..」
「そうか..それをCDに付けて売る..か..2パターンにしたほうがいいね..」
「はい..近頃の売れている歌手はCDとCD&DVDの販売戦略ですし..」
「BHCは役者揃いだし..他に外注して有名俳優使う必要ない.か..」
「経費も節約...無駄な¥は使うことないです..」
「ぷっ..そうだね..」
「ギョンビンさん達が帰ったら..レコーディング風景や普段の姿とかも入れ込んで..」
「ぁ..コホッ..ぅん..そうだね...」
「祭のシーンを抜粋したりもできますし...」
「わかった..いずれ曲のコンセプトを監督に伝えよう..」
「それと..今すぐHP..作りましょう..」
「HP...情報がまだ整理されてないと思って手を付けないでいたんだが..すぐ?..」
「足りなくても構いませんよ..かえってそのほうが効果的かと...」
「...??」
「いっぺんに引き込まず..じわじわ..ネチズンを捉えて行くんです..」
「そぅぃぅ手もあるか..」
「初めはフラッシュでチラチラ2人の画像..マイク持つ映像見られるが音は出ず..
で...メンバーの画像もちらつかせ...思わせぶりの....coming soon..」
「ぉ...」
「曲♪が徐々に出来て..ちょっとだけ小出しに視聴させて..待っててねぇ#...状態..」
「ふっ..で?..」
「MV撮影場面チラチラ小出し..わくわく#..」
「ぷふっ..で?」
「CDジャケット決まったよ~~ん..ほぉらっ見てぇ#...」
「くくっ...で?」
「衣装はこれさっ#..もうすぐみんなに会えるよぉん#...きぃきぃ!!..」
「んぐぐ..で?」
「待ちに待ったCD発売..バァーン#....歌う彼らにいつ逢えるの#...待ちきれなぁ~ぃ#..」
「ぷっ..で?」
「ショーケース..バァーン#....きゃぁ~~ひひぃ~~ん##.....ってな感じでどうでしょう..」
「あはは...いいかもしれないな..」
作業台に肘を付き..額に手を当て.....いつものポーズ
片手を置いている腰が笑いで揺れる..揺れているのは脇腹か..^^;..
「HPは..PCに詳しい..ソヌさん..ミンギ..ドンヒさん..テソン..シもいますし..」
「ふっ..ぅん..」
「セキュリティはソヌさん..ミンギで完璧でしょう..」
「ミンギ君も?」
「仕込みがいいですから...」
「はは...そっか..なるほど..」
「それと同時進行で..」
「今度は何..」
「雑誌にも情報載せましょう..」
「雑誌か..女性誌かな..」
「そうですね....今後のことを考えて..1つか..多くても2つ..」
「今後??..どういうことかな..」
「ちょっと..考えてることあるんで..」
「と言うことは...出版社のアタリはついてると考えてもいいのかな?」
「多分..大丈夫でしょう.」
「OK..じゃそっちは任せていいかな..」
「はい..」
「TV出演はどう思う?..公開番組がほとんどだから..それだけ露出度が高いと思うんだが..」
「避けた方がいいかと..」
「何故...」
「TVの音楽番組は..出演料が安い上に他の歌手との共演が多く..新人には不利..
それに..局側の..マイク持たせるから歌え..みたいな感は拭えません..」
「ふっ..よくわかってるね...」
「私はTVの音楽番組は...ほとんど観ません..ネットの方がいい画像観れます..」
「やはりネットか..かえってTVに出ないことで付加価値も上がる...か..」
「はい..安易な方法で..安売りはしない方がいいかと...B・H・Cですよぉ?..」
「くく..わかった..その方向でミューズも考えてみよう..」
「ぁの..」
「ぅん..何かな..」
「スヒョンさん..映画出られますよね..」
「ぁ..ケホッ..そうだね..それが?」
「ドラマや映画の音楽監督達が企画会社に音楽パートを任せる..というのがここ最近の方式になってるんで...」
「僕はほとんど観ないけど..ドラマもそうなのか..」
「視聴率上がればOSTも売れます..初版即完売ってことありますよ..」
「すごいな..」
「企画会社で作るOSTは..捨て曲を作らない..当たった映画..視聴率のいいドラマのアルバムは全曲いいです..」
「結構気を抜けないな..」
「はい..でも..映画が当たれば...必ず..売れます#..ウハウハですよ..」
「ぷぷ..」
「ミンチョルさん...是非#...ミューズで..」
「ふぅ...」
ため息をついて..口を横にっ#っとさせ一人で頷いている...
闇夜はその様子を見てちょっと肩をすくめた..
「ぁのぉ....参考になりましたか?」
「ぷっ..かなりね..ありがとう..」
「ぃぇ..」
椅子から立ち上がり..箱の中のチョコレートをまた一個..口に入れた後..
また..目に掛かるメッシュの前髪を指で祓った..
闇夜が僕の側に戻ると..
「テソン..邪魔したね..」
「いえ...」
左眉を上げ..満足そうに笑った後..左手を上げて厨房を出て行った..
「ねぇ..テソン..」
「ん?」
隣の闇夜が僕を見上げた..ちょっと口がアヒルの口になってる..
「どうした?」
「アタシ...まぁた..べっらべっら..喋り過ぎちゃったよぉ...>_<..」
「ぷっはっはは...」
僕は天井向けて笑った後..闇夜の肩をぎゅっ#..と掴んだ..
僕は何だか闇夜が可愛くてしょうがなかった..
*サイクル活動方式:韓国の音楽業界の一般的な販売戦略
アルバムを発表しプロモーション活動が一段落すると次のリリースまで制作に没頭し..活動休止する方式
花の家 足バンさん
その日の午前中僕はテジンに電話をいれた
僕の映画の件で相談があるので昼頃会えないかと前の日に言ってあった
テジンの携帯にかけたにもかかわらず出たのはスハだった
「テジンは?」
「あ…今…ちょっと横になっています」
「出られる?」
「あ…はい…あ…でも…」
「無理なら掛け直すけど、今日予定通り会えるのかな」
「あ…はい…じゃ…聞いておきます…」
「…」
「…」
「体調でも悪いの?」
「え…いえ…あの…あの…いえ何もありません」
「…」
「では…失礼し…」
「自宅?」
「は?…あ…はい…」
「今から行くから、テジンにそう伝えて」
「えっ…あのっチーフ!」
「そ、う、伝えて」
僕は仕事途中のパソコンを閉じジャケットを掴んで家を出た
彼の応答は不自然のかたまりだった
僕が ”体調が悪いのか” と聞いたのに ”何もありません” と答えるなんて
君の小さな教え子にだっておかしいと気づかれるよスハ
彼らはふたりで住むようになって落ち着いた
もちろん難しい問題を抱えていたふたりが
ただただ幸せにのんびり暮らしているとは思えないし
時には店で辛そうな表情を見せることもある
しかしテジンは充分大人だし
彼はプライベートに踏み込まれるのは嫌いな人間だ
彼が何も言ってこなければそれでいいのだと考えていた
ただ理由も言わず約束を無視するような、そんな男じゃない
初めて訪れたふたりの家は門から花がつづく美しい家だった
その美しい家のリビングで
テジンはソファに座り僕と向かい合っている
スハは僕がお茶を断るとそのままドアの側に立って動かない
「正直に言ってもらわないと困る」
「チーフ…」
「僕がキレて、おまえの心を読みに立ち上がる前に話してほしい」
「その前に…ちょっと寄りかかっていいですか」
テジンがソファのクッションに身体を預けようとすると
スハが駆け寄って座りその支えになった
「何があったんだ?」
テジンは言葉少なに昨夜起こったことを話した
淡々と話すテジンはいつもの彼だった
スハはそのテジンを気遣いながら目を伏せてじっと聞いている
話を聞き終わると僕は携帯を取り出した
「すぐに病院に行って」
「でも…」
「大丈夫、BHCに通じてるところがある、連絡を入れておくから」
「チーフ…」
「ただしそこの医師には正直に話してくれ、でないと余計面倒なことになる」
「僕は彼女をこれ以上傷つけたくない」
「傷が浅いなら家庭内事故で処理してくれる」
「すみません…」
僕はその場でオーナーに電話をし了承を得てから病院に連絡を入れた
そこはずいぶん前にミンチョルが世話になった病院でもある
「すぐにでも来ていいって…このメモの所に行って」
「わかりました」
「この件は他言はしないが前チーフにだけは報告する、いいね」
「はい」
「さて…スハ…お茶をくれる?冷たいやつ」
「あ…はい…」
スハがキッチンに入ったのを確認して僕は口を開いた
「おまえの傷は大丈夫でも、彼女の傷は大丈夫じゃないよ」
「それは…わかってる…」
「きちんとケアしてあげなさい」
「うん…」
「病院に行ったと報告して安心させてあげるんだよ、それが第1歩」
「もう一度謝らなくちゃいけない」
「今はおまえがあれこれ言ったってだめだ、彼女は惨めになる」
「じゃどうしたらいいんですか?」
「奥さん…いやウンスさんと話す機会を作ってあげたら?」
「…」
「酒でも飲んでおまえの悪口を思いっきり言わせてあげるの」
「ふふ…なるほど…」
「そうだ…僕の用件もウンスさんだったんだ」
「え?」
「映画で赤ん坊との絡みがあるんだけど…赤ん坊の感覚ってよくわからないから一度
会わせてくれない?…それにひとりで頑張ってる彼女の話も聞いてみたい」
「ああ…はい…連絡しておきます」
「おまえにも聞いてみたいんだけどね」
「僕?」
「うん…自分の子が生まれた時の気持ち」
お茶を乗せたトレイを持ったスハがドアから入って来て話は中断した
氷の入ったグラスを丁寧に置くスハの手を見ながらテジンに言った
「そういう話を素直に話せるようになったらもっと変わるんじゃない?」
「え?」
「あ、いやテジンに僕の仕事の話してたの」
テジンが僕をじっと見て目を伏せた
僕はグラスに直接口をつけアイスティーを一気に飲んで立ち上がった
「じゃテジン映画の件はまたあらめて…病院はすぐに行けよ、スハよろしくね」
「はい」
スハは玄関まで送って出た
「綺麗だね…花…」
「ありがとうございます」
「大事に育てていってね…ゆっくりね」
「え…あ…はい…」
花の中のスハに手を振って僕は車を出した
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