ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

リレー企画 151

La mia casa_24  妄想省家政婦mayoさん

シャワーの後部屋着の上にフリースのパーカーを羽織り
ベンチの背に片手を伸ばし..だらりと座っているちぇみの隣に腰を降ろした..

「はるみ..お~はよっ」
「みゃぉ..みゃ..みゃ~~ん..*^o^*..」

はるみを抱き上げて胴をふるふると揺らす..
ほっぺchuをもらった僕はベンチにはるみを降ろした..

「テスは?..っていつも遅いか..」
「...いつもより遅く起きるだろ..今日は..」
「@_@」
「何だ..」
「のーこーっだった..てことね..」
「たっぷり可愛がったと言え.....ふっ..」
「^^;;..」

ちぇみはちょっとやらしい含み笑いをして..
はるみは..(>▽<)..右前足でちぇみの腰をスリスリした..

「闇夜は?」
「まだ寝てる..」
「珍しいな..もう9:00になるぞ..」
「あのままバタンキュー..疲れたんだと思う..」
「ん..」

闇夜は釜山から帰って皆と食事を取った後..テスとパンフレットのチェックをし..
留守中に妖怪あんどれから届いた新作ショーのVを見ていた..
ソファの下でテスと並んで2人で床に胡座をかいて座り..
ちぇみはソファに片足を座面に立てて座り..
僕はキッチンでちょっと仕事をしていた..

「ぉ..ぇへへ..」
「ぁ..ぉい!テソン#来いっ#..」

僕がちぇみに呼ばれてソファに行くと
闇夜は胡座の状態のまま..隣のテスにコテッと倒れ込み..
頭はテスの腿の付け根..と微妙な位置にあった..

「ぁちゃ..寝かせてくるょ..」
「僕はこのままでいいよ..テソンさん..ちょっと気持ちいい..」

「「テテテ..テス!!」」

「^^;;ごめ~~ん..」

羨ましそうなちぇみを横目に僕は闇夜を抱えてベットに運び..寝かせた..
そのまま部屋着のまま寝込んだ闇夜はまだ起きないでいた..

「...」
僕がちぇみに向いて..何かを言いかけて..また前を向いた...ちぇみが察した..

「テソン..」
「ぅ..ぅん?」
「気を使うな..」
「ぇ..え?」
「..僕も”のー”です..と言ってもいいぞ...」
「ち..違うってば#...」
「何だ..違うのか..」
「もぉー#....」
「はは...すまん..」
「...」
「何か言いたいんだろ..何だ..」

「ぅん..昨日さ...闇夜そのまま寝ちゃったじゃない..」
「ん...」
「それで....ぁ..ぃぃ?」
「ふっ..莫迦..続けろ..」
「ぅん...闇夜から..潮の香りがしたんだ..」
「はは..釜山の港でぼぉーっとしてたんだろうな..」
「たぶんね..」
「ん..」

「僕さ..海が嫌いなんだ..」
「テソン..」
「嫌いになった..って言った方が正しいかな..」
「嫌な思い出があるのか..」
「..小さいとき..海によく連れて行ってもらった....父さんに...」
「海で父親を思い出すから..嫌いだ..と決め付け..閉じこめてたんじゃないか?...」
「ぅん..そう..前は海が頭に浮かぶと..身体が震えた..」

ちぇみは無言でベンチの背に伸ばしていた手で僕の肩を軽く擦った..

「でも..昨日の潮の香り..さ?」
「ん..」
「..なんか..僕に懐かしい..って思わせてくれた..」
「闇夜が釜山から持って来たんじゃないか?..それを..」
「そうかな..」
「ん..お前を見てると..父親も暖かいと思えてならない..」
「ちぇみ...」

「4人で海に行ける日が来るといいな..」
「はぁ..来るかな..そんな日..」
「ん..」

ぴた☆ぴた☆...スリスリ〃

今朝のちぇみのこれは僕に..大丈夫だ..と言ってる気がした..


バタン#

「ぁ..^_^..」

部屋のドアが開いて..同時にベンチから腰を浮かした僕に
ちぇみは..ぷっ#..っと吹いて僕の背中をぐいっ#と押した..
前のめりでちょっと踏鞴を踏んでから僕は体制を立て直した..

「あのねっ#」

ちぇみは..ぷはは....と笑い..シッシ〃っと僕を軽く手で追っ払った...
僕は冷蔵庫から水を取り出した闇夜をいそいそと迎えに行った..
部屋に入る前に振り返るとはるみがちぇみにふるふるされていた...


Leg Bang General Hospital   れいんさん

チーフの対応は迅速かつ的確だった
僕がどんなに言っても「面倒を起こしたくない」と拒んでいた彼は
チーフの一言で渋々了承した
僕達はチーフが渡りをつけてくれた病院へとすぐに向かった

18号線と7号線の交差点を右折して10キロほど走ると
右手に大きな病院がある
チーフの説明どおり、それを見つけるのはさほど難しくはなかった
近代的な最新鋭の設備を誇り、優秀なスタッフドクター達を抱えているという
Leg Bang General Hospital
院長は心理学の権威でもあるという噂の女性
彼女のカウンセリングを希望する患者も少なくないらしい
ミンチョルさんやテスさん等も面識があるそうだ

僕達は受付を通さず、直接担当外科医であるドクタードンゴンの部屋に通された
軽くノックをし部屋に入ると、デスクの上に両脚を乗せ
つまらなさそうにカルテを眺めている一人の青年医師がいた
彼は僕達の姿を見るとゆっくりと脚を下ろし立ち上がった
白衣を翻し、ツカツカと歩み寄る彼は医者特有の威圧的な印象を受けた

「僕が担当外科医のドンゴンだ」
握手をしたその手はひんやりとしていた
射るような眼差しを向けられながら事の顛末を手短に説明した
ドクタードンゴンはおもむろにテジンさんの着ている服と包帯を取り傷口を診た
鼻をならす音が小さく聞こえた

「本来僕は比較的軽い症例患者の担当にはならないのだが院長からの内々のお達しだ
君の場合、軽い裂傷が見受けられる。
病院の立場からすると警察への通報が義務付けられているのだが、そこのところは上手く処理をしておこう
治療の方針としては、数針縫って、念のため二日程の抗生剤投与で経過を見る。それで十分だろう
君の担当看護士はベテランのキャロル嬢だ。すぐに病室の手配をする様連絡しておこう」

ドクタードンゴンは受話器を取り、電話口で何やら指示を出していた
担当看護士が来るまでの間、僕達はその部屋で待たされた
「僕は以前ミンチョル君を担当した事がある。彼は元気かな?」
「銃創患者のイナ君はどうしている?彼は非常に興味深いケースだったんだが」
「君の後頭部はミンチョル君と同じくらいの大きさだな。
僕は後頭部が肥大している患者には好奇心をそそられる」
テジンさんがドクタードンゴンのお喋りに苛ついているのを感じて
僕は気が気ではなかった

キャロル看護士が来るまでの間がひどく長く感じられた
キャロル看護士は早速僕達を病室へと案内した
テキパキと有能そうに見える彼女だったが
「私こう見えてもなぜか男運が悪いの」
などと冗談を言っていた
確かにそう言われてみると薄幸そうな印象を受けないでもない
「女泣かせの小児科医に弄ばれたり、婚約していた整形外科医には結婚式当日にすっぽかされたり・・」
彼女は手際よく手術前の準備を施しながら独り言の様にそう呟いていた
「1時間後に縫合手術を始めるわ。手術といってもほんの数針縫うだけよ
すぐに済むわ。事前に局部麻酔の処置をしておくわね」
彼の傷の具合が心配でたまらなかった僕はこうしてやっと胸を撫で下ろす事ができた

彼のその後の経過は順調だ
僕はずっと彼に付き添っている
店の方はチーフが休暇扱いにしてくれてうまく取り計らってくれた
ここに入院している事はごく一部の人しか知らない 
込み入った事情があるので話すわけにはいかなかった


それにしても彼はかなりの病院嫌いだ
病院食が口に合わないと何度もぼやいていたし
何よりも、辛い過去を思い出すのが嫌だったようだ
だけどそれももう少しの辛抱
明日には退院だ
僕が小児科医のロス先生にウインクされてくらくらした事や
内科医のグリーン先生の声に一瞬聞きほれてしまった事は内緒にしておこう

「スハ、やっと家に帰れるな」
「そうですね。経過が順調でよかったです」
「だから病院なんていいって言ったのに」
「またそんな事言って・・。あのまま放っておいたら大変な事になってましたよ」
「ちぇっ」
「ふふ。それより家に戻ったら快気祝いしましょうね」
「そんな大袈裟な。たった三日いただけじゃないか」
「だけど・・それはそれです」
「そんな事より。帰ったらすぐにでもしたい事がある」
「え?何?」
「ふふふ・・ア・レ」
「えっ?」
「アレだよ。ア・レ。病院ではできない事」
「えっ・・なっ・・そんな・・」
「何、赤くなってるんだ?」
「だって・・」
「だからさ・・早く工房に戻って家具作りたいの」
「え・・な、なんだ・・家具作りの事ですね」
「何だと思ったんだ?あっ・・やらしーな、スハ。お前やらしい事考えてただろ?」
「なっ、なっ・・もうっ!テジンさんのばかっ」
「くっくっくっ」
「・・・」
「う・そ。・・実を言うと家具作りよりも先にしたい事があるんだ」
「え?:
「お・ま・え・が・ほ・し・い」
「いっ・・」
「あはははっ。スハ、このリンゴよりお前の方が赤くなってるぞ」
「もうっ!テジンさんの意地悪っ!」
「なあ、スハ。今日が入院生活最後の日だからさ・・本当にさ・・今夜ここで・・してみる?」
「えっ・・ええっ?」
「結構スリルあると思うんだけど」
「ば、ばかっ!もう知らないっ!」

テジンさんがあんまり僕をからかうものだから
僕は花瓶をえいと持ち上げ
「お水を替えてきます」
と言って病室を出た

まったくもう・・
いくら退屈だからってさ、あんな事ばっかり言って・・
でも僕は彼が心底可笑しそうに笑う姿を見るのが本当はとても嬉しかった
ただ一つ気がかりだったのは、あの日以来エジュさんからの連絡がぷっつりと途絶えた事だった


僕の先輩_10 妄想省家政婦mayoさん

「今日も泊まるス」
「...@@...はっ...」
キレのない右目...唇5mm開きため息..で..返事なし..つーことは..OKつーことっスね..

先輩の様子がおかしい..
ちょっと焦点の合わない瞳..ぁ..これはいつものことか..
唇に締まりがなくて....寝顔の5mm開き状態が続く..

右目ギロリも虚ろで怖くない..
カツカツカツ#は..キレがない..
いつもなら軽く躱す監督には絡まれて逃げられない..

変...

ラテアートの葉模様はぐちゃぐちゃで..
「はっ...」
唇1cm開きでため息を吐く..

「駄目だ..上手く出来ない..」
「先輩~..そういう日もあるからさぁ..」
「何故だ..いつもと同じリズムで描いてるのに..」
僕の話..聞いてない#

「ミルクの温度が低いのか..」
「充分熱いッス..」
「何故滑らかにならない..」
「そんなに根性入れなくてもさぁ..」
「ミルクの脂肪が足りないのか..4.3を買うべきだった..」
「牛乳..今日のお買い得品にしたんじゃないっすか?」
「@@」
ぁ..聞いてたっスか...^^;;..

「もったいないから..飲んで..ミンギ..」
「ぁ..ぅ..ぅぃっス...」
先輩の納得のいく葉模様出来るまでさぁ...
何杯も飲まされるわけよ..げぷっ@@
僕の身にもなって欲しいわけ..

でも先輩想いの僕は今日も家にお泊まり..
僕の読みでは..先輩がおかしいのは...♀絡み??..っと思うわけょ..
まぁたヤバイ♀に”邪な色ボケ”したのかなぁ...
まさかここにまた..襲ってこないよなぁ..

先輩のスタンドぱちぱちが終わって部屋が暗くなった..
暗くなってちょっと僕の身体がピクついた..
急に明るくなってさぁ..ビシッ!..パシッ!....来ないな..大丈夫みたいだ..

僕は暗い中..先輩のベットの上で胡座で座って枕抱きながら考えた..
先輩の様子がおかしくなったのは..んっと...

◆一昨日
店から帰る時に..デニムの尻ポケに薄い雑誌が入ってた..
部屋に帰って..丸まったままの雑誌..虚ろに見て..ソファにポンと投げた..
で..先輩の後に..僕がシャワー浴びて..リビングに戻ると..雑誌広げて..見てた..

「先輩..何の雑誌スか?」
「ぅん?..ぅん...」
先輩は雑誌をぱたと閉じて..ソファの下に滑らせた..
[うん]って雑誌かょ#..っとそん時思った..

◆昨日
デニムの尻ポケにはまた..雑誌が入ってた..
店に来るなり..テソンさんにツカツカ寄って..

  mayoさんは? ~ 今日はちょっと ~ 来ないの? ~ 多分 ~ 多分? =ちょっと険悪..

テソンさんに電話..電話の終わったテソンさん...

  今日は店には出ません..何か..僕では? ~ ぅん..ぁの..ぃゃ..その..いい..ごめん..=歯切れ悪し..

テソンさん..ちょっと笑った..何か知ってる...

部屋に帰って..また.雑誌をソファにポンと投げた..
先輩のシャワーの間に..雑誌を見た..表紙は料理で..中は..仏語?..伊語?...読めねぇ#
英語じゃないことは判った..慎重に..投げた状態に雑誌をソファに戻した..
僕のシャワーの後はソファの上に雑誌が無かった..
先輩が寝てからそろぉ~り床を這って...ソファの下を覗いた..雑誌は無かった..

◆今日
先輩と店に出勤した..先輩はヌナと話をした..テソンさんも聞いてる..
やっぱりテソンさん..知ってたのかな..やっぱりあの料理の本??..
ヌナは先輩に何かメモを渡した..
先輩は着替える間..何回か手が止まる..ネクタイは2回..締め直した..
=営業中=
指ぱっちん→指かすかすで音悪し..
ケーキ食べれば口端にチョコぺた..お客さんは喜んで競う様に先輩の口を拭おうとした..
素直に応じる先輩..うっそだろぉー@@...今日のお客さんは超~ラッキーだ##

「ヌナ...」
「ん..何..ミンギ..」
「先輩..何かあるんスか?」
「ぁ~ぁ..心配?」
「ぅん..ね..先輩...これ??(小指立てる..)..」
「あはは..ん~~..直接聞けば??..」
「言わないッスよぉ..♀関係..」
「ぷっ..」
「危ないことないっスよね..」
「それはないよ..大丈夫..」
「ならいいけど..ヌナ..知ってるんすか?..先輩のこれ??(小指立てる..)..」
「...」

ぁ..はいはい..僕なりに調べろ..つーことっスね..
わっかるわけねーじゃん#..


Expansion オリーさん

割れた窓ガラスと一緒に黒い影が飛び込んできて
窓際の見張りの二人に襲いかかった
その影はなんと、アンドルーさんだった
彼の動きは驚くほど俊敏で飛び込んだと同時に
見張りの一人の武器を奪って殴りつけた

僕たちの方へ歩いていた男がとっさに銃をアンドルーさんに向けた
僕は夢中で飛び出し男に体当たりした
男は体勢をくずして前のめりによろけた
ふりむきざまを回し蹴りで攻め、男の銃を蹴り落とした
着地と同時に腕のつけ根に激痛が走った
構わず落ちた銃を遠くへ蹴るとバランスを崩した
温かいものが滴り落ちてきた
銃を落とした男は上着の下からナイフを取り出した
僕は動かない右腕をかばいながらジリジリと後ずさりした
男が持つ刃物がまるで生ある物のように
ゆらゆらと動きまわり僕の胸元をかすった
よけた瞬間にバランスを崩して片膝をついてしまった

立ち上がろうとした僕にさらに男のナイフが襲いかかり
右の二の腕に熱いものを感じた
新しい場所からまた出血した
間合いを取って男の胸元に蹴りを入れた
男はよろめきながら、また向かってきた
攻撃をかわしながら、僕はだんだん壁際に追い詰められた
視界がぼやけてきた
背中が壁について後ずさりできなくなった
男はナイフを構えて襲いかかってきた

ナイフを持つ男の手を片手で押さえながら
体を預けもつれあった
何度か床の上を転がり組み敷かれた僕の上に男は馬乗りになった
必死で男の手を押さえるが、じわじわと押し戻される
ナイフの刃先がキラキラと光り、僕の喉元に近づいてくる
このナイフは本当に生き物のようだ
アサシンが使う独特の半月形・・
その生き物がもうすぐ僕の喉元に届く・・

そう思った瞬間、男が倒れた
後ろにアンドルーさんの大きな影があった
ぼやけた視線を窓際に向けると見張りの二人が倒れていた
一言大丈夫かと声をかけられた
僕は、はいと答え体を起こした
その時だった

正面の寝室のドアが動くのが見えた
下から誰かが上がってきたと直感した
ドアのところに人影と光る銃口が見えたと同時に
僕は立ち上がってアンドルーさんを突き飛ばした
銃声と同時に僕の頬を熱いものがかすった

アンドルーさんが叫び、僕は前のめりに倒れこんだ
どこかでもう一度銃声を聞いたような気がした
たくさんの叫び声と同時に荒々しい足音があちこちから響いた
助けがきたのだろうか・・それとも・・
だが床の上で動く事ができずにいた
喧騒が遠ざかり僕の回りの世界は静かになった
誰かが僕を抱きおこした
ぼんやりとした輪郭はアンドルーさんだ
彼の口がまた、大丈夫かと動いた
僕はまた、はいと答えようとした
けれどそれを言うことができないうちに目の前が暗くなってしまった

目を開けると、白い天井が見えた
消毒の匂いがつんと鼻についた
ここはどこだろう・・
知らない顔が僕を覗き込んだ
「目が覚めた?」
僕はまだぼんやりとしていて話ができなかった
「出血が多かったけど傷はたいしたことないから心配ない」
僕は首をかしげた
「ここは病院ですか」
自分の声がどこか遠くから響いているような気がした

「そう、病院。もう心配ないから」
「先生は?」
「無事だ」
「あなたは?」
「僕?ポール・ロジャーズ、MI6のブラピと呼ばれてる。兄さんから聞いるだろ」
確かにブラッド・ピットが刈り上げればこんな感じだ
そう言えば兄さんが出かけるときに名刺をくれたっけ
「あの、アンドルーさんは・・」
「アンドルーさん?ああ、大佐ね。ちょっと席をはずしてる。すぐ戻ると思うよ」
「大佐?アンドルーさんが大佐?」
「ああ、元SASの隊長だよ。あのオヤジ引退したのに元気で困るよ」
「SAS?海軍の伍長じゃないんですか?」
「SASはイギリス陸軍の特殊部隊だよ。君まさか知らないの?」
「SASは知ってますけど、アンドルーさんは伍長だって・・」
「あのオヤジ相変わらず冗談きついな。文字通りカーネルっていうニックネームで
泣く子もだまるSASの鬼隊長だった」
「そんな・・」
僕は飛び込んできたアンドルーさんを思い出していた
確かにあの動きは・・

そのとき後ろから太い声が響いた
「まだインテリジェンスがうろうろしてるのか」
「カーネルのお出ましだ」
クルーカットは僕にウィンクした
「カーネル、いつから海軍の伍長?経歴詐称もいいとこですよ」
「引退したんだから何だっていいだろう」
「リタイアしたんなら大人しく庭いじりでもしててくださいよ」
「何言ってるんだ、お前らがしっかりしないからこんな事になったんじゃないか」
アンドルーさんは僕を指差した
「そう言われると文句は言えないけど・・」

ブラピは僕の耳元でそっと囁いた
「昨日カーネルがさ、勝手に教授の家に突入しちゃったの」
「ああ」
アンドルーさんはブラピのコソコソ話にちょっと視線を泳がせた
「一人だったんですか?」
「正確には3人。教授を張ってた僕の部下がいたからね」
「お前らを待ってたらミン君は死んでたぞ」
カーネルが怒った
「でも彼も一応インテリジェンスだから」
「え?ミン君、政府機関のリサーチャーじゃないのか」
「すみません、経歴詐称でした」
僕は謝った
「お互いさまでしたね」
ブラピはうれしそうに笑った
「回し蹴りがうまいはずだ」
カーネルはいたずらっぽい目で僕を睨んだ

「さてと、これで一件落着と言いたいけど、どうやって課長に説明しようかなあ。
MI6の仕事にSASが入っちゃたなんてまずいよなあ・・」
「コホッ。課長に連絡しとけばいいんだろ」
「頼みますよ。アーメッドをロンドンで見失ったのはミスだけど
その後始末をSASがやったなんて課長が知ったら僕は大目玉ですからね。
できたら、その・・部長にも。両方にフォローしてもらえると嬉しいなあ」
「調子のいい奴だ」

「カーネルも相変わらずお元気で何よりでした」
「用が済んだら帰れ。ミン君が疲れる」

「はいはい、退散します。あ、そうだ、君、兄さんには一応連絡しておいたから」
「え?」
「電話貰ったんだよ、お取り込み中に。でもこっちも教授を内偵してたから
詳しい事情を言えなくてね。だからせめてものお詫びに連絡しておいたから」
「何て言ったんですか?」
「撃たれた、でも心配ないって」
「撃たれたって言ったんですか?」
「うん」
「いつ電話しました?」
「昨日の夜。様子が変だったなあ、あいつも取り込み中だったかな」
ああ、まずい・・

「今何時です?」
「朝の8時」
「じゃあ僕、一晩寝てたってことですか」
「その通り」
ということはあっちはもう夕方・・
「あの、すみませんけど・・」
「何?」
「兄にもう一度連絡して、あの、その・・」
「何?」
「ええと・・誰にも言わないようにと伝えてもらえますか」
「誰にも?」
「そう言えばわかりますから」

ブラピは僕の顔をじっと見つめた、がすぐ笑顔になって答えた
「わかった、言っとくよ。恋人には言うなよって」
「あ・・」
「でも君ストイックだってあいつは言ってたぞ」
「・・兄とは親しいんですか」
「親しいというか、何というか。貸しがいっぱいある」
「貸し?兄にですか?」
「モロッコの女、ミラノの女、ハンブルクにアムステルダム、マドリード、
ニューヨークもいたなあ・・」
ブラピは一本一本指を折った
「みんな女性絡みですか」
「僕の取り巻きよく紹介してやったよ」
「はあ・・」
「僕は世界を股にかけるブラピだからね。じゃ連絡してみる」
「お願いします」
MI6のブラピはカーネルに敬礼して、僕にはウインクして出て行った

そして僕とアンドルーさんが部屋に残された

ミン完成


Pulse ぴかろん

営業中、僕はラブに支えられていた
ふっとあの嫌な予感がよぎると、ラブはすぐにそれを察知する…
ありがたい
でも…申し訳ない…

ラブが僕を敏感に感じ取ってくれる事は解っていた
だからラブに知らせたくなかったんだけどな…
そんなにヘボいかな…そんなに…普通に振舞えてないかな…
腕が落ちたかなぁ…まだ辞めて僅かしか経ってないのに…

「大丈夫、俺にしか解んないよ…ちゅ」
「…お前だけ?」
「…あ…。…。イナさんも…」

イナの名前を口にした時、ラブは少し俯いて拗ねた
可愛いな…
可愛いけど…
いつもならむしゃぶりつくんだけど…
はぁ…

でもお客様の前なので僕はラブにむしゃぶりついた…
ずっと後ろから襟巻き状態だったり、ラブを膝に据わらせて腰巻状態だったり…

そうしろってラブが言ったからだ…
いつもなら我慢できないのにな…
はぁ…

僕はなんとかうまくやっていた
明るくラブとのパフォーマンスをこなした

いつもなら…パフォーマンスではなくて、九割がた本気…なんだけどな…
はぁ…

そんな心のため息や不安はおくびにも出さず頑張った


ラブを僕の股の間に座らせて、後ろから襟巻きパフォーマンスをしていた時だ
(いつもなら自分を抑えるのに必死な体勢だ…)
ラブの首筋にふざけてキスした瞬間、僕はとても妙な、ザラザラした気持ちになった
とても苦しくてとても…
逃れたいのに逃れられない…
無理矢理心をこじ開けられるような…そんな感覚が突然…
ギョンビン…
ギョンビン…
…まさかお前…


ギョンジンが俺の首筋に唇を当てたまま動かなくなった
俺は一人大げさに芝居した

「もうっやめてよっお客様の前で何やってんの!それに腰押し付けるの迷惑なんだけどっ!」
「…」
「ああんもうってばっ。ばかっ」

後ろを振り向いて呆然としているギョンジンの頭を…殴るふりして自分の手を叩き、音を立てた
お客様からは解らないと思う…
ギョンジンは少し俯き加減で、虚ろな目をしていた

「あっごめんっ大丈夫?ちょっと強く叩きすぎた?」

聞こえてないのは解っていた
多分この後頭を抱え込むだろう…
なんだか解らないけど相当動揺している…
ばか!プロって言ってたくせに…

俺はギョンジンの顔を上げさせてピタピタと頬を叩いた
それでもどこを見ているのだか解らない瞳を宙に彷徨わせている

「ごめんねぇっちゅうううう」

お客様には大サービスのキス・パフォーマンスだ…
俺からこんな濃厚なキスをするパフォーマンスなんてめったにないのでお客様は固唾を呑んでいる
ギョンジンは俺の唇の感覚も判別できないほど混乱している…

何があった?
なんか…すっごく大変な事だ…

俺は唇を離してもう一度ギョンジンの頭を殴った
ホントに殴った…軽くだけど

「なんで応えないんだよっ!ばかっ!」

俺の『エス』っぷりにお客様は小さくきゃあきゃあ言っている
とにかくギョンジンを控え室に行かせてやりたかった
俺はイナさんを呼んでギョンジンの頭にできたコブを冷やしてやってと頼んだ
コブなんかできてないけど…

「ラブ様、どうしたの?今日は一段と冷たくない?」
「だぁって、変なことするし、俺のキスにはまともに応えないし!」
「ああんきひいっ…」

お客様の相手をしながら、俺は控え室に行ったギョンジンのことが気になっていた


気がついたら控え室にいた
イナがすぐそばにいる…

「…イナ…」
「どうしたの?気絶したわけでもないのに意識なかったぞ」
「…」

僕はそばにいるイナを求めた
イナは何も言わず、また僕を胸に抱き締めてくれた
イナの胸の中で僕はガタガタと震えた
涙が流れそうだった…
まだ何も解らないのに…
でも…でも…

無事じゃない…

ゲイの教授…
狙われてる弟…
心理学者
…だから…心をこじ開けて…
卑怯者…辞めて…
弟を壊さないで…

僕はイナにしがみついていた

「どうしよ…どうしようどうしよう…イナ…どうしよう…」
「ギョンジン…大丈夫だ…大丈夫だから…」
「…」
「…お前がここでどんなに悩んでも…どうしようもないだろ?離れたとこにいる人を助けられるわけじゃなし、どうしようって言ったってどうしようもないじゃん…お前にできることっちゃ、その人が無事でいるように願うか祈るか念を飛ばすかだ…」
「…」
「…俺たち、あの祭の後の四日間を乗り切ったろ?俺たちにはどうしようもなかったラブとてじゅの事、乗り越えたろ?だからできる…必ず」
「…」

イナが優しく僕の髪を撫でる
大丈夫、大丈夫と何度も声をかけてくれる…

大丈夫?
どうして大丈夫なの?!
僕は知らず知らずのうちに、イナの肩や胸に力なく拳を打ちつけていた

「…なんにも解らないくせに…何も知らないくせに!」
「…」

僕の暴言にイナは黙り込み、そのまま僕を抱きしめ、頭を撫でていてくれた

「なんにも…解らないくせにっ!」
「…そだな…解らない…」
「なんにも知らないくせにっ!」
「ん…なにも知らない…」
「一人で乗り越えられなかったじゃないかっ!お前なんか…一人じゃ何もできなかったじゃないか!」

イナの胸を力なく打ちつけながら僕は震える声でイナに訴えた

「…そだな…一人じゃなんにも…できなかった…」
「…」
「ごめん…余計な事言って」
「…イナ…イナ、イナ…」
「ごめんな…」
「イナ…。ごめん…イナ…ごめん…」

イナにしがみついて不安を払いのけたかった


指名の合間をみて俺は控え室に飛んで行った
そっとノックしてドアを開けると、ギョンジンがイナさんにしがみついていた
俺の方を振り返ったイナさんは柔和な微笑みを浮かべてギョンジンに何か言った

イナさんのまわりは温かくて柔らかい光が取り巻いている

「ラブ…代わってくれ」
「…え…」
「代わってよ…」
「…でも…イナさんの方が…」
「お前でなきゃダメだよ…。俺、わかんないもん…」

首を傾げてこっちへ来いと合図するイナさん
俺はしがみついたギョンジンの側に座り込み、彼の顔を見つめる
蒼ざめて震えている
ギョンビンの危機を感じているのだと解る…
イナさんがそっとギョンジンの腕を剥がし、自分の居た場所を俺に明け渡す
俺はそこに立ってギョンジンの頭をそっと抱き締める
顎でその髪を擦ってくちづける…

知らぬ間にイナさんは出て行った


ギョンビンが…あの教授に…
ギョンビンの心が…あの教授に…
僕はラブの体を抱き締めて耐えた

30分ほど立った時…突然…違うざわつきを感じた…
ザラザラした感覚が、心をこじ開けられる感覚が突然消えた
僕はラブの顔を見上げた

「どうしたの?」
「…違う危険が…」

これは…不思議な高揚感…
そして緊張感…
生と死との境界線上にいるような…
ああ…
まさか…何かの事件に巻き込まれた?!
じゃあさっきのザラザラはどうなった?

まるで映画のように場面が突然変わった…
どちらにしても…危険には違いない…
僕は震えていた
精神的な危機ではなく、肉体的な危機に襲われている
ギョンビンが…闘っている…
無事でいるように願うか祈るか念を飛ばすか…

僕がギョンビンの心を感じ取れるのなら、ギョンビンも僕の心を感じ取れるかもしれない…
僕は祈り続けた…祈りと言うよりは、イナの言う「念を飛ばす」という事なのかもしれない…
ギョンビン、お前は必ず助かる…無事に帰って来る…だから…がんばれ…がんばれ…
僕はラブを抱きしめながら暫くの間そう祈っていた

また突然ざわめきが消えた…
そして何も感じなくなった…

何かが起こったのは確かだ…無事なのか?!
無事だとは思う…だけど…なぜざわめきが消えたのか…
…多分ギョンビンは生きている…大丈夫だ…それは…感じる…
けどそれ以上は解らない…
教授と何があったのか、その後の出来事はなんなのか…皆目見当がつかない…

「…大丈夫?」

心配そうに僕を覗き込むラブをそっと抱きしめる

「…戻ったね…」
「…あ…」
「…無事そう?」
「…命は無事みたい…」
「…」
「でも…何か…あったみたいだ…」
「…。命さえ無事なら…」
「…わからない…僕の勘だから…」
「大丈夫だよギョンジン…」

優しく微笑みかけるラブに、僕は甘えた…
ラブは僕の頬を両手で包み込み、潤んだ瞳で僕を見つめ、切なそうにキスをした…


Intermission ぴかろん

何とか営業をこなした
僕はきっとボロボロだったろう…
ラブとイナに助けて貰った
ミンチョルさんには気づかれてない…と思う
でもここからが問題だ…

今からラブを連れてミンチョルさんのマンションに行く…となると
イナとミソチョル君とミンチョルさん相手に酒盛りすることになる…
どうしよう…
とりあえず、手ぶらではなんだからというラブに連れられて、僕は手土産選びに付き合わされた
イナとミンチョルさんは先にマンションに帰っているっていうわけだ

不安気な顔をしているとラブが僕の肩に顎を乗せて、顔を覗き込む

「心配しないで。俺にまかせといて…」
「え…」
「アンタの様子がおかしかったらフォローする…。どうしようもなくなったら…早く二人になりたいからって部屋に誘うから…」
「…あぅん…」
「…」
「ん?」
「…。調子狂うな…。いつもならああんくぅんひへんけへんってうるさいのに…」
「…」
「ちゅっ」
「…」
「ちっとも乗らない…。つまんないな。俺にも乗らないつもり?」
「…」
「…。もうっ!ちょっとぐらい反応してよっ!」

ラブはプリプリ怒って先に歩いて行った

ラブが選んだのはニューヨーク・チーズケーキのホール…

「これって…」
「そ。ミンチョルさんが貪り食うと銀髪になるヤツ」
「…」
「ほんとかな」
「ほんとだったらオバケだよ…」
「銀髪のミンチョルさんってカッコイイよね…抱かれたくなる」
「ふーん…」
「あれっ?アンタは?ぞくぞくしないの?」
「…する…」
「…」

僕は全くふ抜けている
弟の命は無事「らしい」
でも何かの事件に巻き込まれている「らしい」
そしてゲイの教授とも何かはあった「ようだ」
僕の勘を信じればの話だ…

そして、イナの言ったとおり…ここでやきもきしててもどうしようもない…
弟のためを思うならミンチョルさんを不安にさせない事だ…
ふぅっ…

トンプソンさんに挨拶をしてエレベーターに乗り込む
扉が閉まるとラブがキスしてくる
うまく応えられない僕
唇を離して少し膨れるラブ

「…そりゃ…解るけどさ…」

そう言ってふっとため息をついて階数の表示を見上げる
40階手前になったとき、ラブはまた僕に吸い付いた
そして扉が開く
ラブは離れない

「なぁにやってんだかぁもうっ!」

イナの声がした

「ん…ラブ…着いたんんっ…解ったから…」
「お兄さん、今日は逆転ですか?」
「あ…え…んんっこらっ…ラブ…」
「んはっ…あー美味しかった…、あっミンチョルさん、これ」
「…ん?!こっこれはっ…」
「お好きですよね?」
「…食べ過ぎるとミンに怒られる…」

ズキン
ごくん…

胸の痛みと共に唾を飲み込み、僕は仮面をつける…
うまくつけられるかどうか自信がない…

「少しなら大丈夫でしょ?食べようよ皆で」
「お酒にあうかなぁ…」
「な~に言ってんの。食べたいくせにぃ」
「…けほっ…じゃあ…少しいただこうかな…」
「ミンチョル、太るぞ」
「う…うるさいな…あとでジムで汗流す!」
「ふんと?じゃ俺も後でつきあうわ」
「なんで!お前今日も飲み明かすとか言ってなかった?」
「だってどうせこの二人、早々にお部屋にお篭りざましょ?」
「…」
「やっだぁんイナさんったらぁ…。じゃ、ご期待に応えて今から」
「こここらっラブ!だめだよ・くふ・ぼぼ僕のファンの前でそんな事言っちゃ・困ったなぁ・今日は三人とも僕のファンみたいだからなぁ」

なんてひどいセリフだ!ぶちぶち切れている!
イナが変な顔をして僕を見た

「お前ラブ様の前でよくそんな事ほざけるなぁ」
「うっ…」
「そうだよ!後で…ひどいからね…」
「あ…」
「どうひどいの?」
「ミンチョル、そんな事聞くもんじゃねぇよ…」
「僕の場合のおしお…あっうっ…」
「おしお?」
「げほっ…お塩が濃いといけないと…」
「は?」

なんだか解らないけどうまく誤魔化せたのだろう…
きょうもミソチョル君を交えての宴会だ
ラブは始め不思議そうな顔をしていた
イナがミソチョル君を渡すとじいっと彼を見つめてにっこり笑った
ミソチョル君の頬が赤くなった

「かわいいね、この子」
「よかったなぁミソチョル」
『…』
「お前、なんで喋らないんだ?」
「え?この子喋るの?」
「おう…バリバリだぜ。てじゅからの電話もちゃんと伝言してくれたしなっ」
『…』
「ん?ミソチョル…なんなんだ…酒、足らないのか?飲むか?」
「お酒…飲むの?」
「おう!いける口だ。あとチーズが好きで茎わかめはスヒョンからなら食う」
「…茎わかめ?」
「ためしにやってみる?」

ラブが茎わかめをミソチョル君の口元に寄せるとあくあくあくと食べた

「きゃああああっ!」
「こいつっ!なんで俺だと食わねぇのさっ!」
「かわいいいっ」

ラブはぎゅうぎゅうとミソチョル君を抱きしめた

『ひん…はへん…』
「あ…喋った…。こんにちはミソチョル君」
『こここんばんわ…ららららぶしゃん…』
「きゃあああああっ!きいきいっかわいいっ」

ラブは嬉しそうにミソチョル君と遊んでいる
どうやらミソチョル君は照れていたらしい…
どうして僕には照れないんだ!
などというツッコミも、今日はできない…

みんなでチーズケーキを食べ、ミンチョルさんの仕事についてラブがミソチョル君を抱っこしたまんま色々質問していた
イナは僕の顔をじっと見つめている
気にしてくれてるんだ…

ミソチョル君はラブにたくさんお酒を飲ませてもらって上機嫌だ

「そんなに毎晩飲んでて大丈夫?糖尿病にならないか?」
『けっ。ぬいぐるみにはびょーきもなにもありましぇんっけひっ』
「あ…酔っ払ってる…かわいいっ」
『けひん…らぶしゃん…けひんこんばん、とまっちくんれしゅか?』
「うん」
『けひっだれとねんねしゅるんれしゅか?』
「…う…」
『だれもいにゃいならぼくとどーれしゅかっ?』
「あ…」
「ミソチョル!おめーは俺と寝るんだろーがっ!それにラブは今日はギョンジンとあはははんなんだよっ!」
「イナさんっ!」
『あははははん?…ああ…なかよしれしゅか?』
「そーだ。じゃますんな!」
『じゃ、らぶしゃんも、ミンチョルさんとミンみたいにぐいーんとかひゃひゃひゃひゃっとかえいえいってされてはへはへなんでしゅか?』
「…」

ずきん…少し胸が痛む…
ラブが真っ赤になっている
今日はミソチョル君の口を誰も止めない
ミンチョルさんでさえも…
だって今日はスヒョンさんもいないし、それにもう何度も同じ事を聞いているのでどうって事ないんだ、僕達三人には…
ラブだけが免疫がなかった…

『ありっ?きょうはだれもとめないっしゅね?ふーんひーんほーん…。じゃああ…らぶしゃんとギョンジンしゃんは、ぐいーんらけじゃなくてミンチョルしゃんとミンみたいにぐんっぐんっとかんくっんくっとかなってあっあっあっあっああーばたっでしゅか?』
「ミソチョルッ!」

ミンチョルさんが真っ赤になって立ち上がった
そしてミソチョル君の前に置いてあったチーズケーキを一口で食べてしまった…

『あああうっひどいれしゅぅぼくのチージュケーキをぉぉぉええんええんぐええんぐええん』
「ミソチョルが変なこと言うからっ!」
『へんなことってなんれしゅかぁぁぁんぁぁんええんええん』
「ぼくとミンがぐん…。げほっ…」
『なにもへんなこといってないれしゅうううひどいれしゅううえええっえええっ』

ミソチョル君が大泣きしたので僕はもう一切れチーズケーキを切って、彼にあげた
ミソチョル君は泣きやんだ…

ミソチョル君の大泣きを機に、ラブが立ち上がった

「じゃ、そろそろご期待に応えて…濃厚してくるね、ミソチョル君」
『あん?ぼくもっぼくもいきましゅっ』
「お前は俺と寝るの!」

結局ミソチョル君は、寂しがりやのイナに連れて行かれた
後から聞いた話だが、それを見つめていたミンチョルさんも枕を持ってイナの部屋に行ったらしい…


Gift  オリーさん

厨房を出ると廊下でスヒョンが携帯で話していた
僕は話し終わるのを待って、覗き込んだ
「昼間はありがとう」
「お前、mayoさんと仕事の話?」
「彼女が色々とヒントをくれた。おかげで何とかなりそうだよ」
「さすがだな、よかった」
「で、どうした?」
「何が?」
「ちょっと浮かない顔してる」
「僕が?」
「ああ」
「お前にそんな事言われるようじゃ天使も形無しだ」
「もしかして今の電話、テジンか?」

スヒョンはふっと軽いため息をついた
「明日退院できるそうだ」
「よかった。結局見舞いに行けなかった」
「それは仕方ない。みんなには言ってないから」
「戻ってきたら一度様子を見に行こう」
「そう・・だね」
「何か?」
「あの二人の事を考えると正直胸が苦しい」
「確かに。お互い犠牲にしたものが大きい」
「特にテジンは子供が生まれたばかりだ」
「知ってる、だから・・」
「だから?」
「自分の事を棚に上げてなんだけど、僕はテジンには父親になって欲しかった
いい父親になれると思っていたから」
父親と言う言葉にはやはり冷静になれない自分がいる
「スヒョン、ひどい父親を持つのと、父親がいないのとでは、子供にとってどっちがましだろうな」
「ミンチョル・・」
「僕には父親はいたけど、いないと同じだった。それの逆で、
テジンに気持ちさえあれば家を出ても父親にはなれるだろうか」
「そうだな、テジンが赤ん坊の父親であることは変わらないさ」
スヒョンは天井を見つめ、僕は床を見つめ、しばらく二人とも黙っていた

「テジンの話を聞いた時、思った。彼女との間に子供がいたら僕は家を出たろうか、と」
「未練があるのか?」
「違う、ただ彼女の夢はかなえてやれなかった」
「それはお前だけのせいじゃないだろ」
「しばらくは病気の事が優先だったから・・」

「子供がいたら違ったと思うか?」
「わからない。ただ子供は捨てられないと思う。たとえ家を出たとしてもだ」
「そうだな。テジンもスハも父親であることはやめられない。それだけは確かだ」

「何かを得るのがとても難しく、どうしてもそれが欲しいとき、
人はどれくらい自分自身を削り落とせるものかな」
「・・・」
「そぎ落とすものが一時はとても大事だと思っていたもの・・」
「自分の事を言ってるのか?」
「僕には子供はいない、父親でもない。だが僕がそぎ落としたものは一生を誓った女性だ」
「いまさら自分を責めるのはよせ」
「責めてはいないよ、ただ忘れてはいけない、そうだろ?」
「それはそうだけど」
「彼女の気持ちはもう僕にはないと思う」
「だったらなぜ別れる事を拒む?」
「僕を離したくないからじゃない。僕といた頃の自分を離したくないんだ」
「どういう意味だ?」
「夢を語ってそれを実現しようと生きてた頃の自分、それを追いかけていたいんだと思う」
「今は夢がない?」
「彼女の夢は幸せな家庭と好きな絵を描くこと。家庭には子供が不可欠だ。
病気のせいでそれが難しくなった」
「だったら絵を描けばいい」
「彼女はそれを割り切れないでいる。でも僕といればそれも目をつぶってすごせる、
そう思っているのかもしれない」
「ミンチョル・・」
「そんな彼女を僕はそぎ落とした・・もちろん自分の身も削ったが」

昔の恋人に刺されたテジン
それを何も言わずただひたすら看病するスハ
家庭という安らぎの場所を捨てた二人は、どれほど自分の身を削った事だろう
血を流しながら身を削り、なお微笑んで寄り添う二人を僕は思い浮かべた

いつの間にかスヒョンが僕の肩を抱いていた
「テジン達のことは時間が必要だ。だがいずれうまくいくだろう。
テジンはお前よりずっと大人だ。ちゃんと考えてるさ」
「そうだな。僕が心配しても何の役にも立たないな」
「それよりお前だよ」
「何が?」
「あいつがいないと、すぐ下を向きたがる」
「・・・」
「とっておきの話をしてやろう」
「何?」
「神様を信じるか?」
「都合のいい時だけね」
「ひどい奴、まあいいだろう。そんな奴にも神様は平等だ」
「それで?」
「神様はみんなに平等に贈り物をくださる」
「どんな?」
「お前みたいに我儘で意地っ張りな奴は父親には向かない。子供が迷惑だ、
だから父親にならないように神様が特別に配慮してくださった」
「ひどい話だな」
「最後まで聞け。その代わり神様はお前に与えた」
「何を?」
「いつも見守ってくれる心優しき素晴らしい友人と、
我儘を許してそばにいてくれるしっかり者の恋人を」
「それって・・お前とミンの事?」
「当然だろ。情けないお前の為に僕とギョンビンはいる」
「じゃあドンジュンは?」
「え・・あのフグはね・・その・・」
「面倒見がよくて超多忙な天使が働きすぎないよう、神様が与えてくださった監視役ってとこか」
「ケホンッ」
スヒョンはあわてて肩の手を離した

「ドンジュンはいよいよ明日だな」
「ああ、予定通り」
「またうるさくなる」
「確かに」
僕とスヒョンはくすくす笑った
こんな二人の姿を見たら、ドンジュンは膨れ、ミンは目を吊り上げるだろう
二人とも神様が与えてくださった僕らの贈り物・・
僕が少しくらい身を削ることは必要なのだろう
もうすでに贈り物を貰ってしまっているのだから

テジン、色々な苦悩を抱えてきたお前にとって
スハは神様が与えてくださったとっておきの贈り物・・
だけど無償で贈り物をくださるほど神様は寛大ではなかったようだ
僕はまた二人の寄り添う姿を思い浮かべた

そしてミンのひまわりのような笑顔が浮かんだ
僕がどれほど身を削り血を流しても決して離すことのできないその笑顔を










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