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ぴかろんの日常
リレー企画 183
花明かり 足バンさん
昼前までベッドで過ごし
ようやく這い出してシャワーを浴びた
やるべきことは山ほどあるが何もする気になれず
巻いていたバスタオルを放り投げ再びベッドにすべり込む
静まり返った部屋の中がいつもより広く感じる
テーブルの上には昨夜挽きかけていた珈琲豆がそのまま…
一度沸いたポットもそのまま冷たくなっている
その白いホーローの縦型ポットは
ドンジュンがいつも取っ手のカーブの美しさを褒めていた
あのねスヒョン…
このカーブってフェラーリのディーノを思い出すんだ
ほらっここ、この曲線きれいじゃない?
ディーノってエンツォ・フェラーリの息子の名前アルフレディーノから取ったんだ
彼はフェラーリ初のV6エンジンを提案したんだけど24歳で亡くなって…24だよ?
それでお父さんが意思を引き継いで完成させたんだ
想いが形になってるんだよね…
そういう仕事っていいなと思うんだよね
ね…そう思わない?
ねぇっ聞いてる?
テーブルの上のポットを眺めながらキラキラした目でそう話していた
部屋を見渡すとそこかしこにあいつがいる
自分の好みの順に勝手に並べ替えたCD
ここは殺風景だと言って自分の家から持ってきたミニサボテン
勝手に自分のだけ買って置いてるベティちゃんのパジャマ
いらないと言ったのに買ってきたバナナホルダー
僕が映画の話を押し通したら
あいつはこんなものたちをみんな残して行ってしまうのだろうか
肌にまとわりつく上掛けが寂しさを誘う
連日の疲れも手伝って僕はそのまま午後まで眠った
誰のものだかわからないふたつの唇が
横たわる僕の背中にくちづけを落としていく
そんな…
どうにも始末の悪い夢に苛まれながら
長く寝たわりにはぼうっとする頭を抱えて少し早めに店に行くと
通路でイナに出くわした
今日はオールインに出ると言う
というか…「おまえ何か変」だとか「映画大変なの?」だとかそんなことを言われて
僕はかなりちぐはぐな返事をしたらしく
結局イナは呆れたような顔をして行ってしまった
あいつもここのところどこか落ち着かないようだが
今の僕にはそれを思ってやるゆとりもないことに気づいた
こんな余裕のなさで大丈夫なんだろうかと…またため息
イヌ先生を事務室に呼んで今後のチーフ代行の細かい話をした
ミンチョル出演の話をしないわけにはいかない
「え?…ミンチョルさんも映画に?」
「ええ」
「映画音楽だけじゃなくて?…あの…ミューズの話じゃなくて?」
「うん…そういうことになってしまって」
「本当に?あのミンチョルさんが?どんな役で?」
「ああと…その…」
「先日話してくれた…あの…あのお話ですよね?」
「うん…」
「…」
「…」
「まさか…まさか相手の男性役?」
「ええ…まぁ…どういうわけか」
イヌ先生には少し前にどういった内容の映画なのかを話したことがある
先生はかなりの驚きの表情で長いこと僕を見つめた
「それは…ああ…それは…いろいろ…大変ですね」
「ええ…まぁ」
その“いろいろ”についてはお互い深く突っ込んで話さなかった
「近いうちみんなにも話さなきゃいけないんだけど」
「わかりました…スケジュールの方はよく確認しておきます」
「すみません…たぶんかなりタイトになると思います」
「大丈夫です…できる限りやりますから」
「助かります」
「安心していいもの創って下さいね」
「ええ」
いいもの…そうね…いいものを…
それしかないんだろうな
開店前いつものようにみんなを集めて声をかけるために店に出る
ひときわうるさい一団の中にやはりドンジュンがいた
新人たちを囲んで何やら騒いでいる
ギョンビンは近くにはいるがちんまりソファに腰掛けていた
全員に開店前の声をかけ予約と特別事項を伝える
「チーフ…今日はイナさんは?」
「あ?…イナは…」
「オールインだって言ってたけど」
「あ、そうそう…それとミンチョルは少し遅れる…んだったかな?ギョンビン」
「はいミューズから直行です」
「そうかそうだった」
「チーフ…ちょっとつかれていませんか?」
「大丈夫だよジュンホ君…じゃ皆さん今日もよろしく」
「「「はい」」」
ずっと下を向いたままのドンジュンを横目に事務室に戻り
何本かの電話を済ませて黒いソファに横になった
やはり疲れてるのかな…自業自得…
「どうした?」
眠りかけていたのだろうか、目を開けると横にミンチョルが立っていた
具合でも悪いのかと言いながらすっと伸ばした手が
僕の額に静かに触れる
「熱はないようだな…大丈夫か?」
「ああ…ちょっと疲れが溜まった」
「少し休んでいたらどうだ…先に店に出るから」
ミンチョルは歩き出そうとしてゆっくり振り向いた
「スヒョン…ミンのことは心配しないでくれ…きちんと話したから」
「きちんと?」
「ああ…その…とにかく大丈夫だから」
「そう…よかった」
「監督から連絡をもらった明日正式に契約をする予定だ」
「そうか…」
「音楽と出演のふたつの契約書にサインだ」
「ミンチョル…」
「ん?」
「こんなことに巻き込んで悪かったな」
ミンチョルはちょっと首を傾けてから再び僕の横まで歩いてきてしゃがんだ
すぐ側に降りてきた微笑みはとても穏やかだった
「巻き込まれたんじゃない…そういう言い方はもうしないでくれ」
「…」
「確かにスヒョンのためでなければ引き受けたりしない」
「…」
「でもこれは僕自信が決めたことだ」
「ミンチョル…」
ミンチョルはしばらく僕の顔を見ていた
「そんな顔をするなスヒョン…大丈夫だよ…うまくいく」
「おまえに励まされるとは思わなかったな」
「たまにはいいものだろう?」
「ふふ」
「指名が入るまで少し休んでたらどうだ」
「ああ」
ミンチョルはぽんぽんと僕の肩を叩いて部屋を出て行った
僕はひとつ大きなため息をついてまた目を閉じる
もう進むしかないのだと
誰もが心動かされる作品を目指すしかないのだと
それが何よりも自分が納得できる方法なのだと言い聞かせた
きっと…
きっとあいつも認めてくれるものを…
また沈みそうになるソファの中の僕に
何か柔らかいものがふわりと降りてきたような気がした
ぼうっと霞む向こうに誰かの背中が去って行き
ドアが静かに閉まる
僕の上には
部屋の隅に置いてあったフリース地の膝掛けが掛けられていた
そのさくら色の膝掛けの思いがけぬ暖かさに
僕はしばし疲れを忘れる
夕べの桜の幻に抱かれて
つかの間の優しい時間
かれとのおもいで ぴかろん
ダーリンが速射砲と電話で喋っている
ポール・ロジャーズは、その立て板に水の如き流暢な喋りで有名である
時には口説き文句を、時には脅し文句を、そして時には激しい苦情を
立て板に水どころか土石流の如く相手に浴びせかける事であの世界では有名なのである
それでついたあだ名が速射砲…。知らなかっただろう?
僕とポールが初めて会った時、彼は女の子を口説いている最中だった
たいして可愛くない女の子だったので僕はポールに話しかけた
とにかく素早く接触しなくてはならなかったのに、どういうつもりだったんだろうあいつは…
ポールは女の子を口説きながら僕に向かって罵詈雑言を吐き、また女の子に甘い言葉を注いでいた
それでも負けなかった僕に、放送禁止用語を並べ立て、また女の子に蕩けそうな口調で話しかけていた
僕は大声で機密事項を唱えてやった
これは効き目があった
ポールは目を剥いて僕の口を分厚いてのひらで押さえ、周りをきょろきょろ見た
そして女の子に、電話するよ、このバカを始末したらまた会おう…と言って僕を引きずって自分の車に押し込んだ
僕はあの時ポールに殺されると思った
掌が分厚くて僕は呼吸できなかったんだ…
最初僕は呼吸が止まっていたらしい
ポールは僕を散々罵倒してから僕の失神に気づいたそうだ
そして…
慌てて人工呼吸をしたんだからなっ!それをさっき口説いていた彼女に見られたんだからなっ!
それで彼女はお前が俺の男恋人なんだって誤解したんだからなっ!どうしてくれるんだ、今宵の僕の恋人が去ってしまった
ああ全く何て無粋な男なんだろう、ああ全く…と嘆きながら唇を押さえていた
僕は別に無粋じゃないしお前の男恋人でもない、僕は仕事しにここに来た、早く片付けたい、早くしないと僕の彼女が逃げちゃうと言ってやった
ポールはキラリと瞳を輝かせた
…ふーん、ゲイじゃあないんだな?彼女が逃げちゃう?どういう事だ?
…どうでもいいから早くこれを受け取ってくれ、それで今回の僕の任務は終了、直ちに休暇に入るから、早くっ
…ふーん、休暇ってどこへ?
…言う必要ないでしょ?はい、受け取ってよ
…冷たいナァ、今俺と熱い口づけを交わした仲じゃないかぁ
…あれは君の掌がゴリラのように分厚くて僕の可愛い呼吸器官が塞がれてコロサレかけたから君が人工呼吸したんでしょ?早くしてよ!
…じいい
…何だよ
…うーん中々いい男じゃない君、名前は?
…えろみん
…えろみん?!
…ん、そ、早くこれ受け取ってよ、あっあっ彼女が逃げようとしてるっ
…逃げるってなんだよ
…かくれんぼしてるんだ!捕まえないとヤらせて貰えない
…ふーん、あそこのスカーフ真知子巻きにしてグラサンかけてる、昭和30年代風のエキゾチック・レディか?
…ショーワとかマチコマキとかは解らないが確かにそのエキゾチック・レディが彼女だよ
…ふーん、捕まえたら、ヤらせてくれるというのか?
…くふ、いや、君にそんな事を言う必要はないだろう!
…ふぅん
…受け取ってくれ、はい、じゃ、任務完了、ご苦労様でしたっ…
ポールの早口には負けるけど、僕だって屁理屈では負けていない
なんせ頑固な弟から僕好みのモノやカノジョなどを根気強く交渉して奪い取ってばかりいたんだから…
学校に『弟と同じ名前で』ってねじ込んだときも、口八丁と思い込み演技で頑張ったもの…
ポールをやり込めて仕事を終え、エキゾチック・レディの方に微笑みながら近づいたとき
僕はダンプカーに追突されたポルシェのようにクルクルとスピンしながら壁に激突した
クラクラクラ…その日二度目の失神である…原因はいずれもポール・ロジャースだった…
僕を突き飛ばしたポールは、僕のその日の彼女に目一杯近づき、口説いていた
そして…すぐに意識を回復した僕の前で、ポールは彼女の唇にがっつりと食いついていた…
そこからかくれんぼが始まった…彼女を姫に見立てて僕らが彼女を奪い合う…
彼女とともに日没の瞬間を見た方が、彼女と夜を過ごすことができるという…そういうゲームをして遊んだ
…お前はその機密事項を届けなくていいのか?!
…はん、もう届けた
…え…
…お前のようなウスノロではない!
…は…そ…
…ふふん…負けないぞ…負けそうになってもキスで口説く!
…キス?…キスなら負けないぞ…
…ふむ、そう言えば意識を失いながらもいい反応してたな…
…だろう!えろみんだからな!
…ぷっ…ふふふん…やるか?
…むむむん…受けて立つ!
まぁそんなわけで僕達は以後、出会う度に、お互いのその日の彼女の奪い合いをしていたのだ
結局その日は三人で日没の瞬間を見たのだ
だから…
けほん…
夜は…さんにんで…けひくふん…
「ほら、替わってって」
「あん…らぶったらこんな危険人物と喋っちゃだめだよう…」
僕はラブから渡された電話に出た
「なに」
『最中?』
「違う」
『あらお気の毒。俺、最中』
「ヘンタイ!」
『あっ…くっ…』
「切るぞ!」
『このところ…便秘でくううっ』
「…大の最中ってことか?」
『はぁぁんくぅぅぅっうん』
「どへんたい!切るぞ!」
『はぁっまてっ…くぅぅ…。ほぉぉ』
「お前のへんたい中継に付き合ってる暇はないんだ!」
『俺だってこんなところから電話しなきゃならないぐらい忙しいんだ!』
「何の用だ」
『極東支部に転属になったんでな、近々ラブ君に会いに行くうふん…』
カラカラカラという音が聞こえる
ううう…どどどへんたいめっ!
「断る!」
『ラブ君にオーケーもらった。便秘に効く薬、用意しておくってくふん…可愛いなぁラブ君…』
「隔離するぞ!」
『楽しみだナァ…ラブ君ちに泊めてくれるんだってぇくふふん…』
「お前は女専門だろう!」
『お前だって女専門だったろ?』
「僕は『真実の愛』の専門家だ!お前のような尻軽ゴリラとは違う!」
『なんだよぉ、よく『貸し借り』したじゃないかぁ』
「知らん!僕は常に『愛した』!」
『ぶはは』
「とにかく、ラブに近寄るなぁはん…あんっ…」
『なんだよ気持ち悪い声だして!』
「あっやんっラブっくっ…」
『…何よぉぉぉ人の事へんたいとか言ってお前のがよっぽど…』
「あっラララブっいきなりそんなとこややや…あああああああいやっだめっ」
『ごくり』
「あぐうううううひいいいん…」
『…そんな…すごいのか?お前の恋人って…』
「はうっあぅっああっぎええええ燃える燃える燃える熱い熱い死んじゃうっだずげでぇぇぇっ」
「これ、せいよくを抑えるツボだって」
「はぁぁんだれもそんなことにお灸すえてくれってたのんでにゃいのにっはへひへほん…」
『英語で喋ってくれ!どんなテクニックなんだ?』
「すごくエキサイティングでマーベラスだ。短時間で昇天する…」
『口などを使うのか?!』
「…口は…使わないな…」
『ごくり…手か?』
「手…、主に指だな…」
『ごくり…そのテクニックを僕にも使ってくれるかどうか聞いてくれ』
「ラブぅ、ポールがこっちに来た時にぃお灸やってほしいらしいけどぉ」
「大丈夫かなぁ耐えられるかなぁ…」
「耐えられるかどうか心配してる」
『耐えなきゃいけないのか?』
「燃え尽きるまでな…僕は今日は短時間で燃え尽きた…」
『気持ちいいのか?』
「少し痛いが気持ちいい…じわじわと効いてくるふぅ…少し時間を置いてもう一度やるとより一層いいらしい…」
『…お前ほどの男が短時間で燃え尽きるとは…。余程すごいんだなふむふむ。だがしかし俺なら長時間もたせられるぞ!』
「そ…それは危険だ!やめたほうがいい!」
『いや…やる…。ラブ君にやってもらう…いいな?』
「…危険だ…」
『いいな?!』
「…そんなにやりたいのか…」
『ああ。ラブ君のテクニックを知りたい…』
「…しかたない、他ならぬお前の頼みだ、聞いてやる…だがお前からラブに触れてはいけないんだぞ!いいな!」
『解った。約束だぞ!』
「ふ…お前も東洋の神秘に嵌るだろうな…ふふふ…」
『わくわく…すぐにでも飛んで行きたい…』
「ねぇ…何が東洋の神秘?」
「ん?ラブにぃ指圧してもらいたいらしい…」
「足裏マッサージとか?」
「ん、それとお灸もだって。あいつ、疲れてるんだねぇ」
「ちょっと替わって…ポール?ラブだよっ」
『おおうラブ君。君、ヤってくれる?』
「…大丈夫かなぁ…痛いよ…」
『(ごくり…ミン・ギョンジンは攻めではないのか?受身なのか?ごくり…)か…構わない。極東支部に配属されるにあたり、東洋の神秘はぜひとも体験したい!』
「泣かないかなぁ…痛くて熱くて…」
『(ごごごくり…ミン・ギョンジン…えむなのか?!)…かかか構わない…たた楽しみにしている…はぁん…』
「俺も楽しみ。じゃあねっちゅっ」
『あうあうっ…』
「ねぇポールさんほんとに大丈夫かなぁ…」
「ああんあんなヤツなんかどうでもいいっ。僕のこのおへそ周りの燃え尽きたもぐさ、取り除いてよぉぉ」
「自分でやんなよ」
「ああああん」
「俺眠くなったから寝る」
「らぶうううう」
ぐーすーぐーすー
ダーリンは本当にすぐに眠ってしまった…
僕はおへそまわりのもぐさの燃えカスをティッシュで拭いた
違うものをティッシュで拭きたいっ!はぁっ…
ダーリンはまさかりを振り下ろすように、どすんと僕の胸に向かって腕を落とした
ぐえ…
ダーリンったらナイフ投げとかしてるから腕、太いんだぞ!自覚してんのか?ぐえ…
しゃわしゃわしゃわしゃわ…
は…はへん…あ…だだだだーりんの太い腕がしゃわしゃわと僕の胸板の上をっきひけへはひほへーん
ぎええええ…こんな状態ではうすってきついよぉぉええんええんああんああん…
泣いていたらダーリンの足が僕の『せいよくをおさえるつぼ』にドスッと入った…ぐぇ…
僕たちの物語3 れいんさん
その時急に僕の携帯が鳴った
驚いて思わず取り落としそうになった
ホンピョか・・?
ゴクリと唾を飲み込んで深呼吸などもやったりして、すぐには電話に出ない
一呼吸おいて、それからなんでもないって風に、さらりとクールに・・
念仏みたいにブツブツ唱え、気を落ち着かせ、通話ボタンを押した
「ヨボセヨ?」
「・・ドンヒ?マリアよ。何してた?」
「ああ・・マリアか。ん・・今起きたとこ」
「今、平気?」
「ああ」
「・・一人?」
「ああ」
「今ね、寮の前にいるの。講義までにちょっと時間があるんだけど、これから会えない?」
「これから?」
「そ」
「まだ・・着替えもしてない」
「支度できるまで待ってる。寒いからそっちで待たせてもらってもいい?」
「え?いや、あの、部屋・・散らかってるし・・」
「あら、そんなの平気よ。じゃ、今から行くわ」
「あっマリア・・」
電話は切れた
僕はぼんやり携帯電話を見つめた
頭の中がようやく起動しはじめ、とにかく急いで着替えようと思った時には、もう玄関のチャイムが鳴った
仕方なくパジャマ姿でマリアを部屋に招きいれた
「ごめんね。起こしちゃったかな」
「いや、ちょうど着替えるところだった」
「・・ふぅん、ドンヒの部屋ってこんななんだ・・」
キラキラした目で、マリアがキョロキョロあたりを見渡す
「あんまりジロジロ見るなよ。散らかってるだろ?」
「こんな感じの部屋って好きよ。」
「そう?・・ああ、そこに座って待ってて。急いで着替えてくるから」
「うん」
別の部屋で着替えを済ませ、マリアのところに戻った
マリアはソファに腰掛けていた
無造作に置いてたはずの雑誌類がソファの端にきちんと積まれていた
「で、講義までの暇つぶし、何か予定は決めてあるの?」
「ん・・特には決めてない。ドンヒの顔が見たかっただけだから」
「う・・」
来たな、マリアの直球・・
いつもこれでペースを乱される
この直球、受けていいのか、かわしていいのか・・
「そうだ、今からこの部屋、私が掃除してあげよっか?」
「いいよ、そんなの」
「あら、いいじゃない。男の子の部屋のお掃除・・なんだかウキウキしちゃうじゃない?」
「よせよ、こんなむさくるしい部屋掃除したってつまらないだけさ。それよりどこか行こう」
「ふぅん、掃除されちゃ困るってワケか・・」
「そ、そんなんじゃ」
「もうちょっとここにいたかったのに・・」
「う・・い、いいから早く行こう。ずっと部屋にこもってたから、外の空気、吸いたいし」
「そう、じゃあ・・仲良く腕組んでお散歩でもする?」
午前中の公園なんて随分久しぶりだ
少し肌寒いけど、なんだか気持ちいい
マリアと行った公園は、寮よりもヨンナムさんちにほど近い
ブルーを拾ったあの公園だ
マリアと並んでベンチに腰掛ける
寒そうにしてるマリアの肩にムートンジャケットをかけた
マリアがにこっと微笑んだ
公園の向こうにはボールを蹴っている少年たち
バギーを押しながらお散歩しているママさん達
新聞を広げたままベンチで居眠りしているビジネスマン
ごく普通のありふれた風景だ
僕はぼんやりとそれを眺めていた
「・・なのよ・・ねぇ、聞いてるの?ドンヒ」
「あ?ああ・・ゴメン」
「どうしたの?ボンヤリしちゃって」
「ん・・昨夜ちょっと飲みすぎたかな・・で、何の話だったっけ?」
「だからね、あれからちょっとパパと会ったんだ。それで色んな話をしたの」
「へぇ、よかったじゃないか」
「でね、お見合いの事、きっぱり断ったの。そんな気はないって」
「それで?お父さん怒らなかった?」
「まぁ、最初はね。で、なぜだってわけを聞かれたの」
「うん」
「だから、好きな人がいるってはっきり言ったわ」
「え?」
「すっきりしちゃった」
「え?え?そ、それで?」
「ん?ああ、『そいつはどんな奴だ』『恋人なのか』『どういう付き合いをしている』なんて質問攻め」
「ちょ、ちょっと待って・・も、もしかして・・」
「うん。ドンヒの事話しちゃった」
「ど、どんな風にっ?」
「ん・・バーで知り合って、私がナンパして、その日の夜は一緒に過ごして」
「ゲホっゴホッ」
そ、そこまで詳しく話さなくても・・
「でね、凄く好きなのって・・とってもいい人で、その人といると素直になれるの、って言ったんだ」
またまた直球
しかも剛速球ド真ん中
まぁ、嫌な気はしないよ、正直・・
どちらかと言えば、う、嬉しいさ
だけど面と向かってそう言われると何と答えていいものか
「そしたらね、パパったら黙り込んじゃって・・その次は急にしんみりした口調になって何をしている人かって聞いてきたの」
「ま、まさか、マリア・・」
「うん、ホ○トやってるって言った」
げげっ。そんな事言っちゃマズイだろ・・
ああ、もう・・
「嘘ついてどうするのよ。それに仕事してるドンヒ、素敵だったんだもん。パパだってドンヒの仕事ぶり見たらきっと気に入るわよ」
そんなわけないよ
いくら何でも・・
それに仕事ぶりっていったって・・
確かマリアのお父さんって代議士って言ってたよな
おいおい、もし視察にでも来られてみろよ
どうするのさ
「でもさ、それ言った途端、パパったら真っ赤になって怒り出しちゃってさ
そんな男との交際を認めるわけにはイカンってね」
そりゃそうだろう
それが普通の反応だ
簡単に認める方がおかしい
「だから落ち着いてって言ったの。その人と付き合ってるわけじゃなくて
私が勝手に好きなだけで、その人には他に好きな人がいるみたいって。」
え・・?好きな人って・・
「そしたらね、今度は急にテンション下がっちゃって・・お前の片思いなのか?って・・」
・・マリア・・
「ここからが可笑しいの。さっきまでは交際に反対していたくせに
突然、その男の目は節穴かっ!どうして娘の魅力に気づかないんだ!って今度は怒り出したのよ。」
「・・いいお父さんじゃないか」
「ふふ・・うん・・私も・・そう思った・・」
そう言ってマリアがコツンと肩にもたれかかった
嬉しそうにその時の事を思い出しているマリア
マリアの心に芽生えた温かいものが僕にも伝わってきた
もしかしたら今までは、互いに違う方向を見ていただけで
向き合って、話し合って、歩み寄って・・
そう・・お互いを完全に理解するのは難しいけど
理解しようと思う事は、そんなに難しくはないはずだ
「でね、何度も言ってるけど、私はドンヒが好きなワケで・・
ここからが本題なんだけど・・ドンヒの心の中に、私が入り込める余地はある?」
「え・・」
正直、言葉に詰まった
ちょっと意地っ張りだけど、本当は優しくて、こんなに可愛い素敵な子が、僕を好きだと言っている
こんな事、僕のこれからの人生で、二度とはないかもしれない
それに僕だって、マリアの事は好きだ・・
頭の中でグルグルと次の言葉を探している時、つま先に何かがコツンとぶつかった
向こうから走ってくる一人の少年
僕の足元にはサッカーボールが転がっていた
僕はボールを拾い上げ、その少年に軽くパスした
少年は帽子を取り、ペコリとお辞儀をした
なかなか礼儀正しい子じゃな・・
「ありがとう、おじさん」
・・何っ?おじ、おじさんっ?
「ぷっ」
隣でマリアが吹き出した
「こ、こら、坊主!おじさんじゃないだろ?どこからどう見てもお兄さんだ!」
「へへん、おじさんのくせに年の事なんて気にしちゃって、女みてぇなおじさんだな」
「ぬ、ぬぁにをっ」
「へへん、綺麗なお姉さんとのラブラブデート、邪魔しちゃった?」
く、くぉのっ・・悪がきっ!
少年は鼻の下をゴシゴシ擦って、ヘヘンと笑って走っていった
その途端、あいつの事を思い出した
ホンピョ・・
少年とあいつの顔が重なった
悪がきみたいなさっきの少年
悪戯っ子みたいにヘヘンと笑って・・
きったない手で鼻の下ゴシゴシ擦って・・
ああ・・こんなにもあいつは僕の中にいる
可笑しくて笑いたいのに、涙が出そうで
切なくて、苦しくて、胸の奥がキュンと疼いた
善い人 足バンさん
店では新人たち相手に騒ぎまくってみたけれど
あまりにも沈んだ様子のスヒョンを目にして
僕のテンションも下がってしまった
昨日投げたひどい言葉の後始末をどうつけたらいいのかわからない
でも…自分の気持ちを無理に引っ込めることもできない
事務室を覗くとスヒョンはソファに横になって眠ってた
疲れた顔しちゃって
ごめんね
隅にあった膝掛けをそっと掛けて部屋を出た
通路のベンチにずるりと座ってると
店から出てきたギョンビンが遠慮がちに声をかける
「大丈夫ですか?ひどい顔ですよ」
「全然大丈夫じゃないけど…店では頑張る」
「ドンジュンさん」
「ん?」
「僕…夕べ彼と…もう一度話しました」
「ギョンビンも?」
「話したっていうか…何て言うか…それで…今は一応…受け止めてみようと思ったんです」
「え…そうなの?」
「ええ…彼の気持ちも少し聞けて…」
「そう…」
「”も”って…ドンジュンさんも話したんですか?」
「話すどころか…ひどく傷つけちゃったよ…もう取り返しがつかないくらい」
「ドンジュンさん…」
「自分が吐き出してすっきりしただけ…おまえには偉そうなこと言ったのにさ」
「僕だって同じですよ…まだ整理はできてません」
「参ってんだ…情けなくてめちゃくちゃ落ち込んでんの」
「ドンジュンさん…」
「ごめん」
「行きましょう…顔洗わないと」
「うん…」
立ち上がって店内に戻ろうとした時
ジホのおっさんが出てきて僕たちの前に立った
「おふたりさん今夜時間ある?」
「「え?」」
「悪いけど無理にでも作ってくれる?」
「「え?」」
「時間だよ…店終ったらこのメモの住所に来て、必ず、いいね」
彼のどこか決然とした口調に
僕たちはわけもわからないまま首を縦に振った
閉店後
僕たちはちょっと出掛けると言って店を出た
ギョンビンはミンチョルさんに遅くはならないからと言い
僕は…スヒョンに何も言えぬまま
メモの住所は…何てことはないジホのおっさんのマンションだった
おっさんは僕たちをニッコニコで迎えた
「僕の家なんて言うと警戒して来てくれないかと思ってさ」
「取って食うわけじゃないでしょ?」
「ふふんどうかなぁ…まぁ座ってよ、酒もつまみも適当にやって」
「僕たちに何の話?」
「わかってるくせに」
そりゃ…あの件だろうってことはわかるけど…
僕らが大きめのソファに座るとおっさんは部屋の照明を少し落とした
「ちょっとこれ観てくれない?」
おっさんはデッキにビデオテープを入れて横のソファにどっかり座った
僕とギョンビンは落ち着かぬまま画面を見た
映し出された「いつか」と題されたテープは
ドキュメンタリーぽい短編映画のようなもの
子供たちが自分の夢を話していく
いろんな国のいろんな肌の色の子供たちがはにかみながら夢を語る
子供たちの表情がみんなすごくいい
僕たちはその何でもない画面に惹き付けられて観ていた
戦闘機乗りかスパイになりたいっていう子の場面では
ギョンビンが思わず苦笑した
テープは「ずっと子供でいたい」と言った黒人の男の子の笑顔で終った
「これはシン監督とユウジって人が若い頃に初めて創った作品」
「あの…」
「そうよ、シン監督って今度のスヒョンさんの映画の監督
ユウジは彼の親友で日系アメリカ人でやっぱり映画監督、僕は直接知らないけど」
「…」
「彼らは作品に協力し合ったりお互いの作品をそれぞれの国に紹介したり
映画を通して兄弟のような仲だったらしいよ
いつか一緒に本格的な作品を撮ろうって話してたって」
「ユウジはね…あの WTC にいたの…2001年9月11日の朝」
「「え…?」」
「シン監督はその日ユウジとの待ち合わせに遅れて…おかげで命拾いして…
遠くから悪魔のような砂煙を見たそうだよ…そしてユウジとは二度と会えなかった」
僕とギョンビンは顔を見合わせた
「監督は親友と夢を一遍に失い塞ぎ込んで…映画から遠ざかってたんだけどね
ユウジの奥さんやお子さんに励まされてやっと立ち直った」
「…」
「それで監督は彼と語っていたストーリィを映画にしようと決心したの
それが今回君たちを悩ませてるあの話」
「…」
「この話を知ってる人はほとんどいない…もちろんチーフも知らないよ
このテープだってカメラのユン女史に頼み込んで借りた貴重なものなんだ」
「ジホさん…」
「だから今回の彼の執着はすごいんだよ…真剣だ
興行を無視するわけにはいかないけど彼には絶対的な価値があるんだ」
僕は喉がからからになって目の前のグラスをあけた
ギョンビンはじっとテレビ画面を見つめてる
画面には黒人少年の笑顔が止まっていた
「こんなこと君たちに話す気なんてなかったし、知られたら監督に叱られるかもね
でもチーフたちがあんな状態じゃ一歩も進めない…わかるでしょ?」
「…」
「いい?君たちに同情しろと言ってるんじゃない
人には全てをかけようと思う瞬間がある…ドンジュン君わかるよね?」
「うん…」
「そのためには全霊で向かわなくちゃいけない、中途半端ならやらない方がいい」
「ふたりとも物語は知ってるでしょ?」
「うん…」
「はい…」
「監督は大切なものの喪失や、家族の強さ大切さ、ノーボーダーという考え方
生きていく意味なんてこと全ての想いを込めて話を創ってる」
おっさんは止まっている画面にちょっと頭を振った
「今回の監督はこういう作品を撮る人だ
プロデューサーやカメラマンもそんな彼を信頼している人間たちばかりだ
僕は今回の作品をひとりでも多くの人に観てほしい」
「…」
「で、その主人公をスヒョンさんとミンチョルさんが演るわけだ」
僕もギョンビンもドキンとして顔を上げた
「僕は彼らならきっと監督の想いに応えてくれると思ってる」
おっさんは急にちょっと意地悪な顔になって僕らを横目で見た
「まぁ彼らだけの努力じゃどうにもならないけどね」
「え…」
「現場に行って台本通り演技してハイご苦労さんって世界じゃない
これからの体調管理やボディコントロール、特に撮影中の精神コントロールなど
側にいる人間が心から協力しなくちゃ絶対できない」
「…」
「そういう意味じゃ特殊な世界だ…普通の仕事じゃない
君たちの協力によってスヒョンさんとミンチョルさんの魅力は何十倍にもなるし
反対に何十分の一にも過小評価される…わかる?」
「う…ん」
「…はい…」
「ああ~イッキに喋って喉乾いた」
ジホのおっさんはグラスにソーダだの何だのを注いでレモンをぎゅっと絞り
それをごくごくと飲み干して”きくぅ”とか唸ってる
僕もすんごく飲みたい気分になって
目の前の焼酎をグラスにジャバジャバ注いで飲んで
その辺にあったつまみをガブガブ食ってやった
ギョンビンがちょっと心配そうにこちらを見てる
しばらく黙ってたジホのおっさんが
画面の少年の笑顔をぼんやり見ながらため息をついた
「創りたいものがはっきり自覚できるってすごいことなんだよ」
「おっさんはもう自分で撮らないの?」
「ん?…うん…そうね…」
そう言ったきりあとは何も喋らなくなった
ちょっと下を向いた彼は何となくいつもと違う
いつもお調子者みたいに見えるおっさんにもきっといろんな想いがあるんだろう
僕はそれ以上聞くのをやめた
「さっ…そういうことでもう帰っていいよ」
「「え?」」
「善人の僕としてできるだけのことやったから」
「でも…」
「それとももっと聞きたい?
ミンチョルさんに励ましの声かけたら”やる以上は恥をかかせたくないからな”って
腕を負傷中の誰だかをそっと見てたこととか?
スヒョンさんが”もし僕が降りたらどうなる”ってぼそっと言ったこととか?
”身近な人間を癒せない自分が他人を癒せるのか”って寂しげに言ったこととか?」
僕とギョンビンは何も答えられず
もうマイリマシタ状態のため息をついた
玄関でピラピラと手を振ってニコニコ見送るおっさんに
僕たちは礼を言って頭を下げた
帰り道
僕たちは何も喋らなかった
ギョンビンは黒いマフラーに顔を埋めて凍った道を見つめて歩いてる
僕はコートのポケットに手を突っ込んだまま
やつの腕をつついて肘を突き出した
ギョンビンはちょっと笑って肘でできた穴に腕を通した
切れるような零下の夜空の下
腕を組んで歩く僕たちは…お互い口には出さなかったけど
たぶん同じことを考えていたと思う
その理由 ぴかろん
僕達は明日引越しをする
僕達は日々荷造りに励んでいる
でも片付かないのは何故だろう…
その理由が…解った…
僕は一生懸命お片付けをしていた
先生も一生懸命お片付けをしていた
僕の片付けは最終段階に入り、これで明日完璧に引越しできるぞ!って感じだった
先生の方も最終段階に入っている…と思っていた
あんまり静かなので気になって覗いてみた
まさかまた散らかしてないよねぇって思って…
積まれたダンボールの向こうに座り込んでいる先生発見
先生の周りには古びた本やノートや文具が散らばっている
まぁこの程度の散らかし具合ならさっさと箱に詰められるからいいか…
「先生?随分片付いたね。お茶にする?」
声をかけると先生は僕に背を向けたまますっと立ち上がった
そしてくるりと振り向くと僕を押しのけて台所へ走っていった
どうしたんだろう…
慌てて先生を追いかけた
先生は小刻みに震えながらコンロの火をつけようとしている
「先生、お茶なら僕が淹れるよ…せんせ…」
コンロの火がついた時、先生は手に持っていた写真をその火にかざした
僕はとっさにその写真を奪い取った
「何!こんなとこで写真燃やす気なの?どうしたのよ先生!」
「あ…ああ…」
「せんせい?」
先生の頬は涙に濡れていた
僕はその写真を見た
体育祭?クラスの男の子たちが先生を囲んで嬉しそうに笑ってる
先生も嬉しそうに笑ってる
先生は背の高い男の子に肩を組まれていて、ほんの少しだけその子の方に体を預けているように見える…
「これ…大事な写真なんじゃないの?何で燃やすの?」
「…燃やさないと…始められない…」
「何を?」
「…ウシクとの生活…」
「…」
泣いている先生を座らせた
ジャスミンティーでいいかと聞くとこっくり頷いた
お茶を淹れる間、僕はその男の子の顔をじっと見つめた
先生は俯いて泣いている
…この子がテヒさんの生まれ変わりって男の子?
柔らかな香りを吸い込みながら僕は先生に聞いた
この写真は何なのか、どうして燃やさなきゃいけないのか…
先生は手に持っていた古びたライターをテーブルに置いて顔を覆った
僕はこの子の人生を奪った
僕がこの子の人生を狂わせた
あの時、普通のバンジージャンプをすればよかったんだ
なぜ僕は彼と飛び降りてしまったのだろう
なぜ僕だけが助かったのだろう…
先生の話を聞いた
テヒさんの記憶を持っていると自覚したヒョンビン君は
駅で待っていた先生のもとにやって来た
それから二人はオーストラリアに飛んだ
バンジージャンプをするために…
テヒさんが望んでいたことだった
先生はただ普通のバンジーをするつもりだった
でもヒョンビン君は命綱なしでやろうと言い出した
死んでしまうよ!だめだ!
この世では一緒になれない…だろ?先生…
ヒョンビン…
テヒって呼びたいでしょ?僕の事…
…
僕は…このままでもいいけど…先生が求めてるのはテヒさんだ…一緒にいても一つにはなれない…でしょ?
…でも…
なら、生まれ変わって一緒になればいいよ先生…僕はちっとも怖くないから…
ヒョンビン
そうして二人は飛んだ
微笑み合いながら、あの世で一緒になれるように願いながら…
でも先生だけが生き残った…
もちろん大怪我は負ったけど…
ヒョンビン君の家族に詫びに行った時、表情をなくしたご家族に告げられたそうだ
息子はあなたを守るようにして逝ったのだと…
息子が守った命を…大切にしてくれ…そして二度と会いにこないでくれと…
「だったら燃やしちゃいけないでしょ?先生!」
「…」
「燃やしたって忘れられないでしょ?先生の命を救ってくれたんだよ、彼は…」
「一緒に死んでやれなかった…」
「…先生…」
「彼自身の17年間は…どこへいっちゃったんだろう…」
ヒョンビン君が自分の中にテヒさんの魂を感じるまでの間、彼は可愛い女の子とデートしたりクラスメートと遊んだりしてた普通の男の子だったんだ
先生が彼のクラスの担任になってから…少しずつなにかが狂いだした
それは先生も同じだった…
この体育祭のときが一番幸せだったかもしれない
その後ウワサが広まり、ヒョンビン君からも反発をうけ、先生は学校を去った
けどヒョンビン君は先生を追ってきた
「何故追ってきたんだろう…」
「テヒの魂を感じたからだろう…テヒに体を明け渡したのかもしれない…。僕と出会わなかったら…彼は彼の人生を生きることができたろうに…」
「…テヒさんの魂に体をのっとられたってこと?」
「…多分ね…」
「…そうかな…。だったら…飛んだ時にどうして先生を守るような事したんだろう…」
「…」
僕、その子自身が先生の事好きだったんだと思うよ
テヒさんの魂が宿ってたかどうかはわかんないけど…
宿ってたとしても…彼自身の全てが乗っ取られてたわけじゃないと思う
どうして?僕は彼の中にテヒを感じたし、彼が僕のもとへ来てくれたのはテヒの記憶が甦ったからだと…
そうかもしれないけど…でも…きっと…
ヒョンビン君は出会ったときから先生に惹かれてたんだ…きっと…
彼自身いろいろな葛藤があったろうけど…でも先生の事、好きだったんだ…きっと…
テヒさんの魂に操られたわけじゃなく…彼自身が…
「…でも…。なら死ななくても…二人で生きていけば…」
「先生が求めていたのはテヒさんでしょ?」
「うん…」
「彼の中のテヒさんを見つめていた…でしょ?」
「…うん…」
「彼は…辛かったんじゃないかな…」
「…」
「彼自身を見つめてほしかったと思うよ、先生」
「…ヒョンビンを?」
「…先生はテヒさんしか見てなかった…優しく見つめられても自分を素通りしてその後ろにいるテヒさんを見つめてるんだって思ったら…ヒョンビン君は辛いだろ?先生を追いかけてきたのに、先生に必要なのは自分じゃなくてテヒさんなんだ…もうテヒさんは死んでしまってるのに…」
「…」
これは僕が考えた事だから本当の事じゃないかもしれない
ヒョンビン君は先生と命綱なしで飛ぼうって言った
きっと先生のテヒさんに対する思いを空に連れて行こうとしたんじゃないかな…
ヒョンビン君の姿のまま、先生と一緒に生きていても、先生はヒョンビン君自身を愛するわけじゃないんだもの
彼は先生の魂を解放したかったんだろうな…
だから…自分の中に宿っているテヒさんの魂と、先生の中にあるテヒさんへの思いとを、空へ返そうとした…自分を投げ出して…
先生に生きてほしかったんだきっと…僕はそう思う…僕もきっと…そうするから…
「彼と飛んで…彼は空へ逝ってしまった。僕は快復してその後…またテヒを探さなくてはと思っていた」
「そして僕に出会った」
「…もうテヒを探せなかったな…」
「彼が連れて行ったから…。テヒさんとの思い出は…僕が流してしまったしね…」
「…僕は…ウシクと幸せになっても…いいのかな…」
「彼がそれをくれたんだよ」
「…彼を死なせたのに?…」
「守ってくれたんだよ、先生を…」
「…」
「彼は先生の幸せを望んでる。幸せになる事が彼への恩返しだよ、きっと…」
「…」
「写真、飾ろうね…毎日の事、報告しようね。きっとまた僕達の身近に、彼は生まれ変わってきてくれるよ
優しくていい子だね…ヒョンビン君は…。テヒさんの魂も受け入れてあげたし、先生を解放してくれたし…まいったな…」
「ウシク…」
「すげぇよ…ヒョンビン…」
「ウシク…」
「…ね…。手を繋いだだけ?」
「…え?」
「…彼と…手、繋いだだけなの?」
「…ん…」
「…キスもしなかったの…」
「…できなかった…」
「…ひどいな…してあげればよかったのに…」
「…できなかった…彼を巻き込んでしまったと思って…」
「…きっと悔しがってるな…今は僕にちゅーちゅーしてるもん先生…」
「…」
「…お墓参り…しようね…。ずっと、忘れないでいようね…彼のこと…」
「…うん…」
「僕にキスするとき、彼のことなら思い出してもいいよ」
「…うん…」
「ほんとはイヤだけどね…」
「…うん…」
「じゃ!これと、そのライターは預かっとく!はい、片付け開始!ちゅっ」
「…」
軽く唇にキスをして、僕はその写真とライターを小さな箱に入れた
先生は僕を引き寄せて、ありがとうと言った
そして、ヒョンビンにキスさせて…と呟くと僕の唇を優しく吸った
深い深い長い長いキスをした
唇を離した後、先生はまた泣いた
彼は帰ってこない…泣いてたって帰ってこない
きっと先生の笑顔を望んでいるんだ、だから…泣かないで…先生…
先生は無理に笑って見せた
僕も笑った
先生は僕を抱き寄せた
「僕となら乗り越えられるでしょ?いろんなこと…」
「うん…」
「僕といるとトクでしょ?」
「…うん…」
「ねぇ先生…きっとまだたくさんの山があるよね…」
「うん…」
「僕がへたりこんだら、先生が助けてね」
「うん」
「先生がへたり込む事の方が多いだろうけどさ」
「…」
「さっ片付け再開しよう!」
「ぶー」
「なにが『ぶー』?」
先生は僕にそっと唇を寄せて、軽くキスをした
うーむ、誤魔化されないからなっ!
「とにかく!明日には引っ越すんだからっ!片付けなさーい!」
「ぶー」
「ぶーじゃないっ!」
…ヒョンビン…今日の報告をします
僕達なんとか引越しできそうです…
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