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ぴかろんの日常
リレー企画 208
千の想い 79 ぴかろん
※207からの続き
「ちょっと待てよヨンナムさん、そっちがその気になったからって俺も同時にその気になるとは限らないだろーがっ。ったく、『恋の素人』はこれだから…」
「ふん!恋愛は素人でも『技をかけるタイミング』ぐらい知ってるもん!イナ、タイミング悪い!もっと勉強しろよ!」
「な…。なっまいきぃぃ。もういい!知らない!勝手にしろよ!」
「…」
「俺はcasaにパンを作りにいってきますから!」
「…」
「じゃあサイナラっ!」
「…。付き合うって言った…」
「…はぁ?」
「僕と付き合うって言った…」
「…言ったよ…」
「…。取り消さない?」
「え?」
「取り消ししないでよね…」
「…心配ならケンカ吹っかけるような事すんなよ…ややこしい人だなぁ…」
「…」
「めちゃくちゃ扱い辛い…。こりゃ恋人なんてできっこないわ」
「…ばか…」
絶対ラブと同じだ…
ってことはもしかするとこの人物凄くえっち?
何度目だろう、抱き寄せるのは
あーあ、俺以上にすぐに涙目になる…
苛めるの…楽しいな…くふ…
俺は軽くヨンナムさんの唇にキスをした
ヨンナムさんはムッとした顔で俺を睨む
俺は笑ってもう一度チュッとくちづけた
ヨンナムさんはますます俺を睨む
それで俺は『友達以上、恋人未満』の魅力的なこの人に
本気でキスを仕掛けてやった
仕掛けたのはこっちなのに
やっぱりテジュンの従兄弟だけある…
この人…エロいよ…
俺達は朝っぱらから長くて濃いキスを楽しんだ
千の想い 80 ぴかろん
イナと付き合う事になった
僕は生まれて初めてと言っていいぐらいふわふわした気持ちになった
イナのくれるキスが心地いい
思いっきり甘えられるのって気分いいな…
「ラブにエサやった?」
そんな僕の柔らかな気持ちをイナが遮った
僕はむくれてイナを睨んだ
イナは可笑しそうに笑って、また睨むぅ…と言った
「…ラブってなんだよ!」
「ことり」
「あれは『イナ!』」
「違うよ、『ラブ』だよ」
「『イナ』なの!」
「『ラブ』が嫌なら『ヨンナム』だ」
「なんで?!」
「俺を突くから!」
「ふんっ」
僕は小鳥にエサをやった
イナが水を替えた
いつまでもむくれている僕をイナが背中から包み込んだ
気持ちいい
小さい頃から甘えるのが下手だった
どうやって甘えればいいのか解らなくて両親にも甘えられなかった
テジュンは平気で僕の両親に甘えていたのに
僕は羨ましいと思いながら
とうとうそれができなかった
どうしてイナになら甘えられるのだろう
僕の心をゆっくりと解きほぐしてくれたから?
傷つきながら、諦めずに僕に沿ってくれたから?
テジュン、ごめん…
暫くこうさせてくれよ…
いいだろ?お前いつも親父達に甘えてたじゃないか
彼女にもさ…
イナが僕の顔を覗き込み、頬にキスをする
イナはテジュンを愛していると言った
僕にこんなにも優しいのに?
僕よりテジュンが好き?
…そんな事どうでもいい…
僕を凭れさせてくれるお前が
僕の傍にいてくれるのだから
でもそのイナの後ろには
テジュン…
僕ごとイナを支えているお前がいるんだね
お前は凄い男だよ
ホントにそう思うよ、テジュン
僕を軽く揺さぶった後、イナは僕に言った
「さてと…。俺、パン作りに行ってくるわ」
「え…」
「ん?なに?」
「…配達…一緒に回ってくんないの?」
「え?」
「…」
「だって俺、パン作らなきゃ…その間ヨンナムさん仕事してたらいいじゃん」
「…配達、午後からだもん…」
「じゃ、午後から手伝うよ」
「…午前中、僕、何してればいいのさ…」
「何って…洗濯だの掃除だの…好きだろ?ヨンナムさん…」
「…そんなの…とっくに済んでるもん」
「…」
「…なによ…」
「…いや…いい嫁さんになると思ってさ…。とにかく、俺、行くわ」
「僕も行く!」
「は?!」
「イナの傍にいたいもん!」
「…。い…いいけど…あんまり面白くないと思うよ…ほとんどの時間、粉捏ねてるだけだし…」
「いいの!行く!」
ヨンナムさんは出かける用意を始めた
戸締りをして、午後からの配達分の水を用意し、俺を引っ張ってトラックの助手席に乗せた
…送ってもらえるのは嬉しいけど…
昨日、てじゅといたcasaに、今日はヨンナムさんを連れて行くのって…ヤバイかなぁ…
絶対なんか言われそう…
俺はあれこれと思いを巡らせて外の景色を見ていた
「おはよーチェミさん」
「おう、おはようイナ…ん?!」
「おはようございます」
「…おは…おはようござ…います…」
案の定、ヨンナムさんを見たチェミさんはびっくり顔で暫し佇み、ヨンナムさんを見据えたまま、深々と礼をし
それから俺の腕をぐいいっと引っ張って工房の隅に連れて行った
「…おまえっ、濃顔さんはどーしたっ!」
「会社」
「ののの濃顔さんがいないからって、爽顔さん連れてくるなんてっ!」
「…」
「濃顔さん可哀想じゃないか?お?あんなそんなこんなにお前に尽くしてるのにっ(@_@;)」
「…。俺一人で来るつもりだったんだけどさぁ…聞かなくて…」
「だれがっ(@_@;)爽顔さんがかっ?」
「うん…」
「…。あー。…。どういうことだ?!」
「だから…。付き合う…」
「は?!」
「ヨンナムさんと付き合ってみるって事にした」
「なんでだっ(@_@;)」
「傍にいてほしいって言われたんだもん…甘えて…」
「(@_@;)」
「…でへへ…」
「でへへじゃないっ!」
「…テジュンは…承知してる…はずだ…」
「はず?!」
「俺が誰を好きでも構わないって言ってた」
「そ…それはだな…お前の前ではそうは言ってもだなっ、濃顔さんはだなっ…ああっ…はぁぁぁ…」
チェミさんは額に手を当てて大きなため息をついた
「チェミさん、テジュンの味方?」
「…ここに相談に来たんだぞ。お前には見せてないだろうが、辛そうな顔してた…」
「うん…」
「うんってお前…ああ…ふぅ…」
「…。俺、テジュンが好きだよ…。テジュンも俺が好きだって…。だから俺、テジュンに倒れこむことにした」
「…あの人を抱えてか?」
「うん」
「…濃顔さん、堪えられると思うか?」
「…うん…」
「…」
チェミさんはもう一度ため息をつき、俺の肩を二度、バンバンと叩いた
「しょうがない奴だな…」
「…。うん…」
チェミさん…、俺は二人を繋ぎたいんだ…
「…言い訳かな…」
「お?」
「…いや…。なんでもない。さ、パン作ろ。早く作んないと、昼から配達手伝わなきゃいけないし…それに…ああ…」
「なんだ?」
「…膨れてる…」
「…お?」
ヨンナムさんはほったらかされてむくれている
「あの人、今、『こども』だから…」
「…」
俺はヨンナムさんの傍に行って膨らんだ頬を人差し指で突いた
「早く作ってよ!」
「…あのねぇ…」
「早くぅ」
「…」
振り向いて『こういった具合です』という顔をした俺に
チェミさんは下唇を突き出して『ん』の顔で頷いた
粉を捏ねる俺をヨンナムさんは嬉しそうな顔で見ている
何がそんなに嬉しいのか…ニコニコニコニコ…か…かわいいし…
そんなこんなでパンの成型が終わるまで、ヨンナムさんは俺の様子を大人しく見ていた
「よっしゃ…後は膨らませて焼いたら終わり」
「じゃ、もう出られるね」
「は?」
「一個配達してからぁご飯食べてぇ、公園にいこ」
公園は…昨日てじゅと行ったのに…な…っと…
そ…それに…
「や…焼きあがるまでが『パン作り』なんだぞ。出来上がるまで待っててよ」
「待てないもんっ!」
「な…」
チェミさんが俺達の様子を見て、意味ありげにクッククックと笑っている
俺は小声でチェミさんに聞いた
「なによ…」
「『こぉえん』は『濃顔さん』といきましたぁ、昨日『俺』は、『待てない』って言って『焼き』を『チェミさん』に任せましたぁ…ってか…くっくっ…
ったく…こどもには敵わないな、お?クックッ」
…俺はチェミさんを軽く睨んだ
それから着けていたエプロンを外し、丸めてチェミさんに投げつけた
「そーゆーわけだから!『今日も』『焼きを』『よろしくお願いいたしますっ!』。行こう、ヨンナムさん」
「わーい」
「おっ…イナっおまえっ」
「いってきます!」
バタン☆
「…かわいくないっ!」
チェミさんの野太いくぐもった声が工房に響いていた
La mia casa_42 妄想省mayoさん
結婚式を済ませ..新婚生活に入ったじゅのに
大学復学も同じ時期に重なり..何かと気忙しいのだろうと
闇夜は連絡だけは取っていたが訪ねることはしないでいた..
ヨンジンは会社の同僚やBHCの噂を聞いていたらしく..
じゅのからBHCの話を聞いた後..さして驚きもしなかったらしい..
「オモオモ#..ちょったぁ~~(ぉゃまぁ..いいじゃないのぉー)
生徒と皆で行かなくちゃ~~早く店にデビューしんしゃい..」
ヨンジン母の親友..舞踊家のジュリおばさんは責っ付くほどだとじゅのは闇夜に話していた..
ジュノに何かと辛く当たっていたヨンジン母は自分にも恋人が出来..プロポーズもされたという..
たが..その恋人..仕事で知り合った建築会社のチョン社長の母親は意固地細胞の塊..
とも言えるほど..かなりの頑固なお婆様で..ヨンジン母は未だ交際をも強固に反対されていた..
自分も反対される立場に置かれたのか..ヨンジンの母のジュノに対する頑なな心が少しづつ解れ始めていた..
ある日の午後..
闇夜は携帯で電話をかけながら単車用の革ブルゾン片手にダダダ...とガレージへ降りてきた..
この足音は尋常ではないこと..を意味するに等しい..
闇夜がカーゴパンツの腿ポケから単車のキーを取り出しちぇみに放った..
僕が闇夜の携帯を持ち..両手の空いた闇夜はブルゾンに袖を通し..
ちぇみはガレージから単車を出し..エンジンをかける..
テスは闇夜のメットを手に既にちぇみの傍にいる..
ガレージの外へ出た闇夜が電話を切ると直ぐさまテスがメットを闇夜に被せ..
シールドを下げたちぇみがコツン☆とメットにぐぅーを落とし..
僕は闇夜の背をすりすり〃する..
闇夜は単車に跨り..ぶるる..ぶるるん~~と出掛けていった..
「テソンさん..mayoシの電話..」
「じゅの..かなぁ..」
「っと..また喧嘩か?..」
「ぅ~ん..かもね..」
「今回はちょいと深刻そうだな..」
「ぅん..かな..」
じゅのとヨンジンは結婚してからちいさな諍いを繰り返していた..
意地っ張り同士..痴話喧嘩に相当する可愛い喧嘩の類ではあるけれど..
じゅのは結婚後..早く"倉庫"から出なくては..という思いが強く..
夜中の整備車両テスト走行のバイトを週4~5回ほどに増やしていた..
かなり体力的にはキツイはずだ..
じゅのがなかなかBHCに来なかったのはそんな事情もあった..
小一時間程で闇夜は工房へ戻ってきた..
いつになく沈んだじゅのの声音にただならぬものを感じた..
と闇夜は口火を切り..事の詳細を僕等に報告した..
ヨンジンに新しい命が宿ったのだという..
「ぉっとぉ..じゅのは速攻だな..」
「若いからねぇ..ゲンキなんだよ..きっと..」
「mayoシ~~もぉー..」
「はひ..^^;;..」
「喜ばしいことじゃない..mayo..」
「ぅん..そうなんだけどさ..」
「現実は厳しいか..」
「ぅん..2人は手放しで喜べない事情もあるしね..」
「「「はぁ...」」」
実際..ヨンジンは母になる喜びを自分の母に伝えた時..
「何て計画性がないんだ..」と母親に言われた..
そしてヨンジン母はあろうことか..
「今回は諦めなさい..」..っとヨンジンに言った..
じゅのはまた一旦休学し..子供が生まれて落ち着く間..就職する道を選択しようとしていた
レース仲間の一人の父親が経営する企業に面接に行き..いい返事は貰えそうだという
ヨンジンはじゅのにもう休学だけはさせたくない..何としても今回の復学で卒業させたい..と思い..
収入を増やすため..会社の仕事以外にもアニメのセル書きのバイトを採り..毎晩遅くまで家で仕事をしていた
そしてまた..じゅのは取り敢えず手っ取り早く収入を増やそうと..
結婚後に辞めていた宙づり窓掃除のバイトに出掛けようとした..
それで朝にヨンジンと大喧嘩になったらしい
「僕は..貧乏で..不甲斐ないから..まともな家も..お金もない..」
「っつ..じゅのさん..」
「愛は..お金がないと育てられないんですね..子供も..」
じゅのはぼそりと闇夜に言った..
「アタシ..思わずじゅのに"蹴り"..入れたくなったよ.我慢したおかげで奥歯が痛いさぁ..」
「mayoシぃ~~..^^;;..」
「俺なら一発殴ってるかもしれん..」
「ぁん..ちぇみぃ~~..^^;;..」
「僕は思いっきり持ち上げてるかもしんない..」
「ぁぅ..テソンさぁ~ん..^^;;..」
「もぉ~..しょうがないなぁ..みんなぁ..^^;;..」
テスはぽちゃぽちゃで3人の手を交互に握った..
僕等4人が恐れていたのは
ヨンジンがじゅのに断りもなく..宿る生命を葬ってしまう事を選択することだった
「もし最悪..そうなら..きっとむやみにそこいらの病院を選ばないとは思うんだ..」
「どこか心当たりはあるか?..」
「んっとぉ..んっとぉ..」
「思い出せっ#..」
「ぅ~~~ん..ぅ~~っと..ぅんと..ぅんと…ぁ..ヨンジンさんの親友の叔母さん..って..」
「ん..」
「江南銅雀(ドンジャック)区のR病院で産婦人科の医者..だったよぅ~~な気がする..そこかなぁ..」
「銅雀区のR病院..と言ったか?..闇夜..」
「ぁっ#」
「んっ#」
ちぇみと闇夜は同時に作業台をコン★と叩き..しゅっ#..っと瞬時に人差し指で互いを指す..
***こんな時の..
ちぇみと闇夜の絶妙ともいえる.."間"..には僕とテスには吹かない「風」が起きる…
ちぇみは申君に電話を掛けながらテスの頭を懐に引き寄せ..テスの髪をくしゃくしゃ#..とし..
闇夜は僕の腰に手を回し..きゅきゅっ#..と贅肉のない僕の脇腹を掴む..
そんな風に2人は互いに視線を絡めることなく..
ちょっとした仕草で僕とテスを求め..余計な渦が巻かない様に..「風」を..鎮める....***
折り返し申君から連絡が来た..
申君の知り合いにR病院の小児科医がいて..
このデニス・オ並に韓人離れの顔立ちを持つドクターが病院内を歩くだけで
職員は勿論..付添いの若い母親達は唇半開きで躰の動きが瞬時..停止状態になるという..
「あのドクターが受付嬢..及びナースにひと声掛けておく様..申が連絡を入れたそうだ..」
「さんきゅ..」
「お前の読みが当たるといいんだがな..闇夜..」
「今回は外れたら大変なことになる..」
「ん..」
僕等4人は互いに深くため息をついた..
それから3日後..
4人で朝食を摂っている時..♪Brave Heartが流れた..
ちぇみが携帯を開く..
「ぬぅぁにっ..」
ちぇみはひと言発し..僕等に指一本で床を力強く示す..『階下へ..』の意だ..
僕と闇夜..テスは立ち上がり..ちぇみは電話を切る..
僕達4人はダダダダと..(1名はトットコ..)1Fへ降りた..
僕は向かいの駐車場へ走り..車のエンジンを掛ける..
僕の車が駐車場から出た時..闇夜の単車は路地から大通りへ向かって既に走り出していた..
何処かへ電話をかけていたちぇみの声が響いた..
「テソン#..じゅのは家にはいないっ..大学へ行けっ#」
クラクションを鳴らし闇夜の単車の後に続いた..
大通りに出て僕と闇夜は二手に分かれた..
僕はK大学...闇夜はR病院へ向かった..
大学で僕と同じ顔を探さなくてはならない..
先ず..じゅのの恩師..教授の部屋へ入った..じゅのはその部屋にはいなかった..
「はほっ?..」
教授は僕の顔を見..黒セルの眼鏡をかけたり..外したりの動作を繰り返す..
「ジュノ君はっ..何処ですかっ..」
僕の低音に教授は目をパチパチと瞬せ..ゼミの場所を教えてくれた
やっと見つけたじゅのの腕を掴んだとき..僕の♪Brave Heart..
僕は携帯を開いた..耳に慣れ親しんだ掠れ声が短くひと言..
「確保..」
闇夜は間に合った..
肩にずしっと響くほど..大きくため息を吐き..ちぇみに電話を入れた..
受話器の向こうのちぇみとテスの安堵の声が聞こえた..
じゅのを助手席に乗せ..R病院へ寄り..闇夜と一緒にいたヨンジンを後部座席に乗せた
casaへ戻る道すがら..じゅのとヨンジンは感情的になり始めていた..
「車の中で喧嘩しないでくれないかっ#罵り合っても何の解決にもならないだろっ#..」
僕は前を見据えたまま..怒声を吐いた..
じゅのは蚊の鳴く様な声で「すいません..」と僕に言い..
ヨンジンは俯いて肩を震わせていた..
闇夜の単車は僕より速くcasaに戻っていた
工房の脇に車を止め..先にじゅのとヨンジンを降ろし..駐車場へ車を停めた
闇夜はヨンジンと2Fへ上がり..
じゅのはテスが1Fのカフェの椅子に座らせていた..
千の想い 81 ぴかろん
俺はヨンナムさんと、最初の配達を済ませて昼飯を食った
それからヨンナムさんの『聖地』であるあの公園に行った
昨日テジュンと行ったのは、ここじゃなくてもっと小さい店の近くの公園だった
ヨンナムさんは俺と手を繋いで木立の中を歩いている
俯いた横顔は『こども』じゃないのに、握り締めたその手は、何かに縋る『こども』のようだった
例の『広場』の前に来て、ヨンナムさんは俺の手を離した
「イナ…ちょっとだけ待ってて…僕…」
俺はそれ以上言わせず、コクンと頷いて広場に背を向けた
ヨンナムさんは一人でその『林の中の広場』に入って行った
きっと『彼女』に何か話したいのだろう
ヨンナムさんが『彼女』を思う間、俺は『テジュン』を思った
こんな答え出しちゃったよ、テジュン
お前が揺れることぐらい、想像はつく
ねぇ…
『まさか』だったんだ…
まさか自分がこんな風に動くとは
俺、思ってなかったんだ…
ヨンナムさんとは『いい友達』でいようと思ってた
あんな風に切り出されてさ
目の前で不器用に自分を出しながら震えてるあの人を見てたら
正直に答えなきゃと思っちゃったんだ、テジュン
昨日お前の目が怯えてたのは
こうなるって予感してたからだろ?
でも俺はお前が好きで、お前以外の男に抱かれようなんて思ってない
お前のヨンナムさんに対する、そしてヨンナムさんのお前に対する複雑な気持ちが
なんとかならないかなって俺…
「イナ!」
振り向くとヨンナムさんがニコニコ笑って俺を呼んでいる
俺は釣られて笑顔になり、ヨンナムさんの傍に行く
「何してたの?」
「イナこそ…」
「俺は待ってただけだよ」
ヨンナムさんは俺をじっとみつめて言った
「キス…して…」
…
「やだ」
「なんでっ!」
「さっき家でしたろ?」
「ここではしてない」
「ずっと前にした」
「今してよ!」
「…」
「なにさ」
「…。キスはぁ…したくなったらするけどぉ、今はしたくないなぁ」
「僕がしたいんだもんっ」
「じゃ、貴方から仕掛ければいいじゃ…」
言葉が終わらないうちにヨンナムさんが俺に吸い付いた
俺は面食らって目をパチパチさせた
…
こんな事…俺…昔したな…
スヨン
懐かしい
初めてキスしたのは
日本語のテストでめちゃくちゃな解答をして
スヨンがブリブリ怒ってた時だったな…
俺、隙をついてスヨンの唇を奪った
俺に預けられた柔らかくて小さな体を思い出す
今まで思い出した事なんてなかったのに…
そっと唇を離してヨンナムさんの顔を見た
「ほんとに俺の事が好きなの?」
「…好きだよ…」
「こういう事がしたいから『俺』なんじゃないの?」
「…」
「『違う』とは言わないね」
「…だって…キスもしたいしさ…イナも好きだしさ…」
「ふぅん」
「今までそーゆー事と縁がなかったから…その…この際…」
「この際?!…この際はじけちゃおうって事かよ」
「…」
「…ったくぅぅ…」
「…」
「こんなの『友達以上恋人未満』って言えないんじゃねぇの?」
「…だったら…『恋人』に格上げしてよ…」
「…え?…」
「…」
「貴方本気で言ってるの?」
「…。わかんない」
「…わかんないって…」
「わかんないんだもん!そんなに問い詰めなくてもいいじゃんか!」
また拗ねる…もぉっ
「こら」
「…」
「ったくぅ…。テジュンになんて報告しよう…」
「…テジュンに…言うの?」
「言うよ」
「…全部?」
「全部」
「…」
「なに?」
「…ううん…。テジュン、辛くないかなって思った」
「辛いんじゃない?」
「…。辛い目に遭わせるの?」
「しょうがないじゃん」
「しょうがないって…」
「隠してたら今までと同じだろ?」
「…」
「俺は、貴方とテジュンが別人だってちゃんと解ってる。二人に対する気持ちも微妙に違う。テジュンには俺の事、全部話す。テジュンがそうしてほしいって言ったから」
「…。あいつ、そう言って牽制してるんじゃないの?お前が僕に近づかないように…」
「かもね。でもテジュンが『そうして』って言った。俺が誰を好きでも構わないって。テジュンが選んだ方法を俺は言葉通り受け取るよ」
「…」
「全部話したらテジュンはどうなるのか、傷つくんじゃないかって前は思ってたけど…今は違う。俺は真っ直ぐテジュンに向かう。気持ちを全部話す
それを処理するのはテジュンだ。どう受け止めるかなんて俺には解んない。伝えられるのは俺の気持ちだけだもん、先回りしてあれこれ考えたってしょうがないもん」
「…イナ…」
「なによ」
「…かっくいい…」
「…」
『かっくいい』って…
俺もよく人に言うけど…言われる方って結構くすぐったいんだな…
変なの
今まで気づかなかった事にどんどん気付いていく
俺は目の前のヨンナムさんを抱きしめた
「あわ…」
「変な感じ」
「…」
「なんか俺、『男ぉぉぉ』って気持ちになってる…」
「…じゃ、僕、『女』?」
「…さあね…。なんかすっごく新鮮…」
「…イナ…」
「いっぱい変な発見しちゃう…」
「…僕も…」
「そ?」
「うん」
「…じゃ、よかったんだ…俺達の選択…」
「…かな…」
「よかったんだよ、前向いてるじゃん?」
「…テジュンにとっては…どうかな…」
「…。きっと…前向くよ、テジュンは…」
「…うん…あいつ、『凄い奴』だもんね…」
「そうだよ…」
ヨンナムさんの体を離してもう一度顔を見る
そっくりなのに全然違う
俺にできるのは自分に正直になる事だけだ
あんなに『失くしたくない』って怯えてたのに
それで隠し続けようとしたのに…
『今』、誰にも嘘をつきたくない
俺はヨンナムさんにまたキスをした
軽く終わる予定だったのに、こっちが仕掛けると『待ってました』とばかりに俺を捉える
ヨンナムさん…ここ、貴方の『聖地』じゃなかったの?
俺の唇を、柔らかくて形のいい唇が啄ばんでいる
やっぱしあの小鳥は『ヨンナム』…だよな…
エサを上手に食べるもん…
されるがままだった状態を盛り返してみた
ちくしょう…『恋の素人』のくせに、一体いつ、どこでこんな技を覚えたんだよ!
俺は持てる限りの『技』を仕掛け、『正統派の流れを汲む、天然えろ男』の舌に対抗した
てじゅん…俺、この人とキスしてると…色っぽいっていうより…プロレスしてるみたいだ…
その後俺達はまた配達に行き、夕方近くにRRHに戻って着替えた
時間がなかったので慌てて下に降りて行くと、ヨンナムさんはロータリーで俺を待っていてくれた
BHCまで送ってもらい、俺は手を振って路地に入ろうとした
路地に、ラブとギョンジンが突っ立っていた
千の想い 82 ぴかろん
ラブはまた怖い顔をした
俺はもう視線を逸らさなかった
「はぁん…そういう結論?」
「ラブ…よしなよ…」
ギョンジンが気を遣っている
ラブは暫く俺を睨んで、それからフイっとBHCの戸口に向かった
ギョンジンはラブを行かせてから俺を見て少し微笑んだ
「いいんじゃない?」
「…なにが?」
「いい顔になってるから、いい選択したんじゃない?」
「…」
「こうなると心配なのはダーリンよ。『略奪陵辱男』を逆略奪するかもね…あれ…言いにくい…『略奪陵辱男 逆略奪』…。ねねね、イナ、これ、三回続けて早口で言ってごらん」にこにこにこ
俺はギョンジンを穴が空くほど見つめた
ほんとに凄いヤツ…
思考回路、どうなってるんだか…
「ねねね。言ってごらん」
「…言えたらどうなるの?」
「ごほーびあげるっ♪」
「どーせ『はむちゅう』だろ」
「あらぁん…そんなごほーびつまんなぁい…。せめて『はむれろちゅうちゅうはむさわれろれろんまんまれろっんっふん』ぐらい言ってよ…あ…イナって…イナってばぁ」
呆れてギョンジンの横を通り過ぎると、奴は後ろから追いすがってきた
「あはぁんつめたぁいもぉん」
「…なぁ…」
「なになになに?」
「…」
「なになになになに?」
「…。お前ってさ、凄い男だな…」
「なになにどゆことどゆこと?」
「…。あー。…」
「したことないのにどして『すごい』ってわかっちゃったの?!」
「…。そういう意味じゃなくてな…。…。ま、いいや…」
「いやんいやんおせーておせーてっなになになに?」
確かに『凄い男』だと思う
けど
うるさい!
うっとおしい!
そして
しつっこいっ!
俺は纏わりつくギョンジンの腕を軽くペシンと叩いた
ギョンジンはチャカチャカしていた動きを止め、俺が叩いた腕を押さえ、涙を浮かべた
器用な奴…
「ひどぉぉいぃぃ」
「…。あ…そだ…」
「なになになに?」
引っ込む涙
ほんとに器用
「んと…俺さ…」
「うんうんうんうん」
「ちっとだけお前の気持ち、解った」
「え?えええ?なになにどゆことどゆこと?」
「『魔性の男』の相手って、並大抵じゃできないな」
「え?えええ?それはマイ・ダーリンの事?ダーリンの相手したいのっ?いやん僕も入れてくんなきゃ許可できない!」
「…じゃなくて…。ラブと似てるんだ…」
「誰が誰が誰が?」
「…ヨンナムさん…」
ギョンジンはまた動きを止めて俺をビックリ目でみつめ、おもむろに大きく息を吸い込み、そして大声でこう言った
「あの手の顔とマイ・ダーリンのどこがどう似てるってのよっやめてちょうだいっ僕死んじゃうっ!」
「だって似てるもん…あまのじゃくだし」
「あの手の顔が『あまのじゃく』なんて百年早いわっ!やめてちょうだいっ」
「でも…お前の気持ち、なんとなく解った…。えむのふりして実はえすだろ、お前…」
「…。やっだぁーイナったら!いつの間にかよんじゅっさーい!なによなによなんなのよっその大人っぷり!」
「は?」
「いやぁん見抜かれたかしらぁどぉしよぉくふんけへん」
「…」
「あはぁん…」
「…ギョンジン」
「なになになに?」
「お前…かっくいい」
照れるかな?
「そんな事百も承知よ」
「…」
「でも嬉しい。イナにかっくいーって言われると嬉しい♪」
「…そ?」
「うんうんお礼に濃厚なはむれろちゅうしたげるっ♪」
バッタンコー☆
「何やってんのさ!早く来いよばか!」
「あっ…やーねぇダーリンったらヤキモチやいて…」
「三つ数えるうちに来なかったらアンタと別れる!」
「またあんな事言って、やーねぇ僕のテクが無いと眠れないくせにっ♪」
「アンタと別れて『もっと素敵な彼』との『愛欲に溺れる』から、いいね、いーち」
「ちょ…ちょッと待ってタンマ!…『愛欲に溺れる』…多分あの略奪陵辱男の事よね…。それは解るわ…。でも…『もっと素敵な』が当て嵌らないわ!誰の事よラブ!」
「にーい」
「誰よ!イヌ先生?ソヌさん?誰なのよっ!」
「さー」
シュンっしゅるるん
「ああんらぶぅぅ、僕にはお前だけだょぉんくふけひん…」
ギョンジンは襟巻きになってBHCの扉の奥へ消えた
あんなでもやっぱりアイツは『かっくいー』と思う
けど何で『オネエ言葉』?
店の中に入りロッカールームに向かう途中電話が鳴った
テジュンからだった
「もしもし?もう仕事終わったの?」
『…まだだけど…早く終われそうだから…』
「そう?じゃさ、迎えに来てくれない?話したい事がいっぱいある」
『…ん。わかった…。閉店の頃に行くよ』
「うん。待ってる…」
電話を切って深呼吸した
どうやって切り出そう
ヨンナムさんと少し付き合ってみることにしたと
テジュンがまたグラグラと揺れるのは解っている
こないだ俺を支えてくれたテジュンを
俺はヨンナムさんを抱えたまま支えなくちゃいけない
店に出て営業
今日は頬張り芸でテプンと競争させられた
テプンには負けるだろうと思っていたのに奴は今日、不調だった
なんでかこっそり聞いたら、チェリムさんが来ていて、出勤前に無理矢理食べさせられたという
「だってよぉ…スッカラクに山盛りのピビンパ、あーんなんて目の前に持ってこられてみろよ!食うだろ!」
「…うん…」
ヨンナムさんにそうされた時を思い出した
「食うな…」
「だろ?でも俺としてはよぉ…けひっ…『あーん』っちってるチェリムの唇を…その…食いたいと…ひひへーん」
「食えばいいじゃん婚約者なんだから」
「それがよぉ!テジが俺達の様子をじーっと眺めてるんだ!」
「…ああ…」
「んでな、俺がパクッと一口でいくとよぉ、テジがパチパチ拍手するんだ」
「ふぅん」
ほのぼのしてる…
「そのテジを見てヨォ、チェリムがニコッとするんだけひひひ」
「…うんうん…」
「そのチェリムを見て俺がニコッ、その俺を見てテジがニコッ…くはは…幸せ~ってカンジぃ?」
「幸せそのものじゃん…」
「その顔が見たくてよぉ、みんなが止めねぇんだ、自分の作業を…」
「…」
「で、腹いっぱいになっちまってよぉ…」
「ピビンパ、旨かったんだ…」
「旨かった!」
「よかったじゃん、チェリムさん料理上手くなったんだな」
「あいつは飯を炊いただけだ」
「…」
「あ、野菜切ってたけど…大きさが不ぞろいだったから途中から俺が得意の千切りを披露した…」
「んと…じゃ、だれがあじつけしたの?」
「決まってるだろう!テジだ」
「…あ…そ…」
「テジは天才だぞ!テソンに弟子入りさせようかな」
「ま、幸せってことだな?」
「そうだ!後は結婚するだけだ!」
「早くすればいいのに」
「そのうちな…はは…はぁ…」
「なに?ため息なんかついちゃって」
「いや…その…時々遊びに来てくれるのはいいんだが…」
「誰が」
「チェリムだ」
「うん」
「いつもテジと一緒なんだ」
「いいじゃん。親子ってカンジじゃん」
「…はぁ…寝る時もテジと二人でくっついて寝てるんだ」
「ますますいいじゃん、ほんとの親子だ」
「でもな、テジはチェリムを相変わらず『ヒョン』って呼んでるしな…」
「…」
「それによぉ…テジが寝た後…その…なんだ…俺とも『ふれあい』の時間を持ってほしいのによぉ!ちぃっ」
「持ってくれないのか?」
「ぐーすか寝ちまってる!」
「…」
「それも、テジより寝相が悪い!」
「…」
「俺はチェリムの寝相を直して布団をかけてやる」
「ふむふむ」
「30分後、チェリムの頭は『きっちり30分』進んでる」
「は?」
「だから…察してくれよ!こう、俺が枕んとこにチェリムの頭を乗っけてやるだろ?」
「うん」
「んで…まぁ…唇にチュッとして」
「ふむふむ」
「んで俺も寝る」
「はい」
「30分後、ふと目を覚ますと」
「ああ!チェリムさんの頭が『足のあった位置に動いてる』ってことか」
「そうなんだ!すげぇぞ!あいつ、『時計の長針』みたいなんだ!」
「…」
「テジはよく一緒に寝てられると思う」
「ほんとだな…」
「…はぁ…結婚したら俺、寝不足になると思う」
「…」
俺達の『内緒話』は既に内緒話ではなくなっている
お客さんたちがクスクス笑いながら聞いている
そして「抱きしめて寝てあげたらいいじゃないの」とか「一緒に回ったら」とか
あまり役に立ちそうもないアドバイスなんかくれている
とにかくテプンは、『しあわせ』そうだった
ふと厨房の方を見るとニコニコしているヨンナムさんがいた
配達の時間だったのか…
俺は席を立って裏の通路に行った
千の想い 83 ぴかろん
「イナ」
「どうしたの?」
「配達ついでに覗いてたの」
「そ」
「帰り、迎えに来ようか?」
「…。いい」
「歩いて帰るの?」
「…。テジュンが来てくれる」
そう言った瞬間、ヨンナムさんの笑顔が強張った
俺は一呼吸おいてヨンナムさんに言った
「俺は…テジュンが好きだって…言ったよね?」
「…」
「ヨンナムさん?」
「うん…ごめん…そうだった…」
「昼の配達は手伝うから」
「…手伝う…」
「ん?」
「…。配達ついでじゃなくて…。デートしたい…」
「…」
「…ダメ…かな…」
「…デートしてるようなもんじゃんか…」
「…」
黙り込んで俯くヨンナムさんを見て、俺はため息交じりに告げる
「はいはい、考えときます」
「ほんと?」
「昼間だけね」
「うん!」
かわいい
単純に喜んでるよ…
「じゃあ明日の朝待ってる」
「ヨンナムさん」
「うん」
「俺、朝はパン作りだよ」
「…」
「だから…昼からね」
「…」
「ヨンナムさん?」
また拗ねたかな
「ヨンナムさ…ちょっと!」
ヨンナムさんは俯いたままぷいと俺に背を向けて裏口へスタスタと向かった
俺は彼を追いかけて腕を掴んだ
「離せよ!いいよ!ムリしなくてもっ!」
「また拗ねる」
「拗ねてない!」
「ヨンナムさん」
「つまんないっ!」
「…」
「もういいよ!」
「短気」
「!」
「スネオ」
「!!」
「我儘」
「ばかっ!」
ヨンナムさんは俺を振り払って外に出て行った
俺はバタンと閉められた扉を見つめて苦笑いした
ドアを開けて外に出ると、ヨンナムさんは思った通り路地に突っ立って俯いていた
「ヨンナムさん」
「ごめん…イナ…」
「また泣いてるの?」
「ぐすっ…」
ヨンナムさんを抱きしめて頭を撫でてやる
こんなにどうしようもない人だったのか?
どうしちゃったのさ
俺はヨンナムさんのおでこと自分のおでこをくっつけて小さな声で言ってみた
ヨンナムさんはごめんごめんと繰り返し、我儘が止まらないと言った
それから、なんで抱きしめてくれるの?こんな奴、僕だってイヤだよと言った
イヤなら止めればいいじゃんか
止め方からわからない
簡単。止めればいいだけ
…
な?
…
その簡単なことができないもんなんだよな…
俺も…貴方も…テジュンも…
「ヨンナムさん、俺、テジュンがいなきゃダメなんだ。テジュンも俺がいなきゃダメみたい」
「僕だってイナでなきゃダメだもんっ!こんな自分、他の人になんか見せられないもんっ」
「それは…たまたま俺が貴方の近くにいたからで…」
「イナがいいんだもん!イナでなきゃダメだもん僕だって!」
胸の奥の方が甘く緩む
頼られている事が心地いい
テジュン、お前もそう?
「ヨンナムさん。俺ってヤツは、テジュンがいてこその俺なんだ」
「…」
「俺は、『こどもぱん』を作りたいんだ」
「…ぅん…」
「貴方とも楽しく過ごしたいし、貴方に幸せになってほしいと思ってる。言ったよね?」
「ぅん」
「俺の体は一つだけだからさ」
「…」
「全部貴方に向けられないよ」
「…。わかってる…」
「だから…昼間は…一緒にいられるけど」
「ん…わかってる…ごめん…わかってる」
「わかってても我儘言っちゃうの?」
「…ちっと…言ってみたかっただけ…。引くに引けなくなっちゃっただけだ…」
ほんとかよ…
「僕ってガキだな」
うんうんそうだ
「情けなくなった」
「うん」
「でも…」
「でも?」
「こーゆーふーにしたらイナがきっと来てくれると思ってた…」
やっぱり『魔性』の才能アリだ!
「そんな駆け引きしないの!」
「かけひき?」
天然でやってんのかよ!
「こーゆーのが駆け引きなのかぁ…」
無意識の場合はどうなんだ?
俺が『?』を頭の上にいっぱいくっつけていると、ヨンナムさんはそっと体を離してにっこり笑った
「じゃ、また明日のお昼にね。パンが焼けたら電話してね、迎えにいく」
「あ?お…お…ん」
「じゃあおやすみ」
「あ…お…やすみ…」
ヨンナムさんは爽やかにトラックに向かう
俺はなんだか腑に落ちない気持ちでその後姿を見ていた
と、突然くるりと振り返り、俺のところに走って戻ってきた
そして俺の頬を包んで、濃厚なキスをした
たっぷりと俺の舌を絡め取ったあと、いきなり唇を離してまたニッコリ笑い
「おやすみのキスだよ」
と言って走ってトラックへ戻っていった
面食らった俺はただ呆然と、その『天然魔性系』の男をみつめていた
イナに電話してから、退社して行く同僚達をぼんやり見送った
「ハン・テジュン、残業する気か?」
先輩に声をかけられた
「あ…はぁ少し…」
「どうした。キム・イナとうまくいってないのか?」
痛いところを突く
「は…うまく行ってます、イナとは…」
「イナとは…。じゃ、お前の問題か」
ほんとに…急所を突く
「…はい…」
「んじゃどうしようもないなぁ」
「…」
「イナ君とうまく行ってるなら俺の出る幕はなさそうだ。帰る」
「…は…」
「そうだ。ちっと研修が暇になるからな」
「はい」
「明日、キム・イナの店に行こうじゃないか!」
「…は…はい…」
「どうせ今から会うんだろ?よろしく言っといてくれ。明日行くって」
「…はい…」
先輩を連れてBHCへ?
気が進まない…
いや、今夜イナに会ったら気持ちが変わるかもしれない
いい方に?
それともより悪い方に?
僕は首を振ってパソコンの画面に向かった
メールのチェックをする
ミン・スヨンからメールが来ていた
へぇ…仕事が早いな…
今回の研修の訂正箇所、付け加えたい箇所などをわかりやすく纏めてくれた
僕は暇に任せてメールの返事を書いた
極めて事務的なその返事の、最後の行に
『なんとかやっていけそうです』
と付け足し、送信した
せっかくの提案を検討しようと、資料とそのメールをつき合わせていた時、新しいメールが受信された
送信者はミン・スヨン
慌てて新しいメールを開く
『今、会社にいらっしゃるのですか?私も残業中です。ちょっと息抜きにチャットでもいかがですか?』
会議、打ち合わせの時にチャットを使うのだが、それとは別に私的に使用できるチャットもある
彼女はそちらから呼びかけてきた
僕は少し戸惑いながら彼女の呼びかけに応じた
ジンブルー 足バンさん
例えばこうだ
閉店後、事務所のデスクで書類を片付けていると
向こうのソファからミンチョルの視線を感じる
その視線は僕というものの中に手を突っ込み何かを捜しているようにも見える
いつもの僕なら「ラブシーンのリハーサルでもする?」くらいの軽口を叩くのだけど
そういうムードではない
ミンチョルは僕(じゃなくてジン)の顔を穴があくほど見つめ
いい加減僕の居心地が悪くなりだした頃に
急に何かを思いついたようにメモをとり携帯を手にする
何ごとか話した後にパンッと電話を切り立ち上がる
「スヒョン…明日休みをもらいたい」
「ああ…CM?」
「明後日が勝負だ…よろしく頼む」
「すぐ後のポスター撮りは大丈夫?」
「心配ない」
「ちゃんと寝なさいよ」
「ああ…今日は先に上がらせてもらう」
そう言ってネクタイを整えると、ビジネススーツのCMのような美しい動線を描き
資料らしき物を抱えてさっさと部屋を出て行った
まぁ…何と言うか…
知らない人間が見たらあの男があのヒョンジュを演るとは想像すらできないだろう
僕は回転椅子に深く沈んでため息をつき、シン監督の言葉を反芻する
「え?ミンチョル君に演技なんてつけないよ」
「は?」
「彼に演技は求めてないの、彼の咲き方を撮るつもりだから」
「は?」
「順撮りの意味もそこにある…ジンに出会って段々色づいてもらうわけ」
僕がまるでわかっていない顔をしていたためか
珈琲を飲んでいたカメラのユン女史も口を開く
「彼に”ここで笑って””ここで切ない顔して”って言っても無理だってことは
交渉した時から承知してます」
「僕は状況説明はしていくけれど、彼に何かを考えてもらおうとは思ってない
ただジンを愛してくれればいいんだよ」
「彼の”目”を追い続けるわけです」
「その変化していく表情はユンさんのレンズが逃さない」
「…」
「だからスヒョンさん、あなたが色づかせるわけです」
「は…?」
「彼の感情はあなたにかかってるってことです」
「台本にもコンテにも表現できない部分にリアリティが潜む!…ん?いい言葉だな、メモしとこう」
「難しいけどやりがいがあるでしょ?俳優同士の共鳴」
「そんなこと僕に…」
「「できますっ!」」
僕の長いため息にノックの音が重なり
ジホ君が珈琲と書類を持って部屋に入ってきた
「おっ…何だかいい感じでブルー入ってますね」
「落ち込んでるように見える?」
「まぁジンブルーってくらいですから…はい、これ監督から預かってきました」
それはもしやジョーク?ってノリを時に織り込みながら
シン監督からの細かい調整やスケジュールなどを伝えてくれる
今回は事情のわかるジホ君がいてくれるお陰でずいぶん気が楽だ
濡れ場の徹底演技指導をしてくれると言い張る点を覗けば
全て安心して任せられる
「初めにヒョンジュとのシーンを時間軸で一気にいきますが、海の場面は天候次第です
その日は子供時代も一緒にいきたいんで」
「うん」
「今度のポスター屋外編は雨でも決行です」
「雨の草っぱらにミンチョルと寝転ぶの?」
「おっと…それもいいなぁ」
「ミンチョルのスケジュールがきつくない?」
「余計なこと考える時間はない方がいいんです」
「そう?」
「あの人の場合は特にそうでしょう」
皆さんミンチョルのことはよく研究済みだな
「告祀(こさ※)はずらせないですからスタートは動きません…まぁイケるでしょ
普通の撮りよりはずっと余裕みてありますから」
「うん…」
「こういう話もできれば元チーフもご一緒したいけど」
「CM曲の追い込みでそれどころじゃないらしい」
「頭の中は一杯みたいですね」
「うん…」
「で…何か問題でも?」
僕は「ミンチョルを導け」というお達しに戸惑っていることを
正直にジホ君に伝えた
あのビジネスモードのミンチョルのどこをどうやって
”僕を潤んだ瞳で見つめる純真無垢な男”にしたらいいのか
クランクインまで1週間たらずだというのに
彼はいつもの調子で聞いていたがいきなり真剣な目になり
向こう側のソファから少し身を乗り出した
「いいですかチーフ…映画は虚像です…全て嘘です」
「うん」
「でもその中にリアリティを創りだすんです」
「うん」
「知り合いのCMコーディネーターが練り菓子のCMでね…うまくテカリを出すために
あらゆるものを塗ってみたけどダメで…結局べろべろ舐めたらすごくおいしそうにテカったって」
「ギョンジンが喜びそうな話だな」
「そんなものです…リアリティってのは究極の創造です」
「うん…」
「だから演じる本人も目一杯ただ妄想すればいいんです」
「妄想?」
「チーフは元チーフのこと好きでしょ?」
あまりの明け透けな質問の真意がわからず
僕は「まぁ…好きに越したことはないだろ」などと間抜けな返答をした
「だったら思いっきり元チーフを誘惑すればいいってだけの話です」
「誘惑って…」
「いろんな意味でうまく誘導するってことです」
「ああ…」
「祭の時のダンスを思い出せばいいんですよ」
「あの時とはワケが違う」
「基本は同じです」
まぁ…あの時は確かに全てを預けてくれたような気もする
「だからチーフも思う存分妄想で本気になればいいんですよ、そうすれば相手も影響される、ねっ」
「ねって…」
「例え話の世界に入り込んでどこが境目だかわかんなくなってもOKですよ
僕たちは”抱擁”に必要な最高の瞬間を全て拾いますから」
何て微妙な発言をしてくれることか…
「とにかく”おまえは愛しおまえは生きた!ただそれだけでいいんです
どうです、すっきりしたでしょ?」
「いや…」
「さぁ忙しくなりますよ!僕も久々の現場で腕が鳴る胸が躍る!頑張りましょうね」
「あ…うん…」
「そういえば撮影終わったら突撃青年とナスカに行くんですって?」
「ナっスカっ?」
「ええ言ってましたよあいつ…遺跡がダメなら地上絵だって」
「…」
「でも僕はギアナ高地を勧めておきました
食虫植物探検はどう?って言ったらあいつめちゃくちゃ反応してましたよ」
「…」
「じゃ今日はこんなとこで、お疲れさまでした!」
ジホ君は上機嫌で空の珈琲カップを手に出て行った
どうしてこうも映画関係者は元気なんだ
すっきりとは行かないが…参考になったような気は…する…
とにもかくにもそんな悶々とした思いを抱きつつ
ギアナ高地っていったいどこだ?などと心の片隅では思いつつ
僕は数日後のポスター撮影に挑むこととなる
※告祀:厄運をはらい繁栄を神霊に祈願する祭祀
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