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ぴかろんの日常
リレー企画 216
千の想い 105 ぴかろん
*****
「キミナー、キミナー、どこ行くぅキミナー」
イナシが席を立ったと同時に、ジャンスさんがガオガオ叫び出した
僕はとりあえず宥めることにした
「ジャンスさん、ウリイナが技を披露しますので少々お待ちを」
「むう!お客様をほったらかして?むうっぷんぷん」
「先輩…拗ね拗ねしても怖いだけです。なぁテソン君」
「ふは…いや、大丈夫です。可愛いですよジャンスさん」
「テソン君、つけあがるよこの人」
テジュンさんがフォローしてくれた
イナシがいる時よりもリラックスしているようだ…
行きつ戻りつ…
そうだよね、僕もそうだった…かな…ふふ
「テソン君よ、俺のために蝋燭セレクションしてくれよぅキミナーがいないとつまんないよう、こんな垂れ目の意地悪男と二人っきりでキミナーの帰りを待つのはいやだよう!」
「垂れ目のちっこい目の意地悪男は先輩でしょうがっ!」
「あーもーケンカしないでくださいよぉ。はいはい、じゃ、ちょっと考えましょうか…」
「テソン君」
「はい?なんです?テジュンさん」
「…テス君に…僕にもモビール選んでって言っといて…」
「…。はい。アロマキャンドルも?」
「…うん…」
「…。テジュンさん、なんならcasaで暫く寝泊りしてみますか?」
「あ…は…。はは…」
「チェミの人生訓なんか聞きながら…どうです?ふふ」
僕は小声でテジュンさんに誘いかけた
とても小さい声のつもりだった…のに
「はいはいはい!テソン君、そのお泊りオプショナルツアー、俺も行きたいっ!」
「…。あは…。あはは…あは…。テジュンさん、今の話は無かったことに!」
「おお」
地獄耳なのかっ?!それともこの『僧坊筋』が実は『耳』なのかっ?!
僕は即座にテジュンさんへの提案を取り消し、テジュンさんも即座に頷いてくれた
「なんでなんでなんでよっ!俺を仲間はずれにしないでよっ!」
『僧坊筋』から雷鼓がにょきにょきと生え、輪に廻らせて『変身完了』し、ジャンスさんは小さな垂れ目のまま、ビカズバと稲妻と雷鳴を轟かせる雷様のような怖ろしい形相になった…ように見えた(^^;;)
それで僕は焦りながら答えた
「…あの…お泊まり前にまずcasaに遊びに来てもらって…あの…」
「やた!行く行く!いつ行こう。今度のお休みに行こうかな、でもお休みの日は家族サービスしないとなぁ…うーん…そだ!明日行こう!なななな!テジュン。明日仕事終わったら行く」
途端に雷鼓がふっとび、可愛らしい笑顔になるジャンスさん…
「あ…の…明日はちっと…casaのみんなの予定もありますし…」
「先輩は厚かましいっ!」
テジュンさんが加勢してくれたのでジャンスさんは少し大人しくなった
「あの…あのcasaのみんなの予定を聞いて、この日ならオッケーってのを書き出しますので…その時に…」
「そ?できれば一週間以内にしてねっ。あと一週間は確実にヒマだから俺達。なぁっテジュンっ」
「あーはいはい。…ごめんねテソン君、パン屋さんの開店準備とかあるんだろ?こないだmayoさんもチェミさんも忙しそうだったし…。ダメならダメって言ってね…僕がなんとかするから」
「まぁ大丈夫だと思いますけど…毎日いろんな人が来ますから…。都合の良い日をイナさんを通じてお知らせしますね…」
「…」
「ん?ダメですか?」
覗き込むと、テジュンさんは甘えたような上目遣いで僕を見た
イナシの名前だけでこの反応…相当重症?
「…。ここにモビールつけときたいよ…テソン君」
「心に?」
「…うん…」
すこし寂しそうに笑う
僕にはなんとなく解る
イナシが憎いわけじゃないのに、イナシを見るとイライラしてしまう…そうなんだろ?テジュンさん…
責めたくないのに責めるような事をしてしまう自分がイヤなんだろ?
そんな自分を跳ね除けたいのに、イナシを見るとヨンナムさんの影が過ぎる…
思い通りにはいかないよね…みんな…
僕はモヤモヤしてたあの祭の頃から、mayo以外の二人にも助けて貰えてたけど、テジュンさんの場合は…ちょっとやっかいかもね…
相手が相手だけに…ふむ…
僕はイナシたちの舞台が始まるまで、アロマキャンドルのカウンセリングをした
「うーん…テジュンさんに今必要と思われるキャンドルは…そうだなぁ…。思いっきり甘えたいでしょ?」
「え?あ…うん…」
「じゃぁ…アップル&シナモンなんかどうかな。あまぁいの。シナモンの香りも入ってて、焼き林檎みたいなの…」
「…お腹空きそうだ…」
「お腹空くと甘えたくなりません?」
「…あ…うん…」
「あまったるぅい香りに包まれてごろにゃぁんって甘えるの…どうですか?」
「…ぅん…」
テジュンさんは俯いて小さな声で返事した
少しニヤついているみたい…
どしてこの顔をイナシに見せられないかなぁ…
意地っ張りで見栄っ張りだったりしてね、テジュンさんって(^^;;)
「あとでサンプル渡します」
「…さんきゅ…」
テジュンさん俯いたまま、照れくさそうに言った
「はいはいはい。俺のはっ?」
…。ジャンスさんに合う香りって…うーん
「えっと…そうですねぇ…太陽光たっぷりあびて爽やかで情熱的でくいしんぼでミステリアス、かと思うと落ち着いた雰囲気もあり、優しい面も垣間見える
清涼感がないとも言えず、爽やかなんだけど時々刺すように意地悪だったりする…。ぐじぐじ悩んでるとシャキっスキっとさせてくれるようだし、ニコっとされるとフワフワした気分にならないでもない…でも…色気はあんまり感じない…と」
「なにそれなにそれ」
「えと…僕から見たジャンスさんの印象…」
「なっにそれぇぇぇ。色気ないってどゆことよっ!ぷん!」
不満顔のジャンスさん
だってそんなだもん!
雷鼓を僧坊筋から生やすような人に色気なんか感じないよ!僕は!
「…だから…そうですね…僕の持っているアロマキャンドルの中には…ないです」
「え?!」
「ぴったりの、ない」
「なんだってっ!どケチっ!」
「…どケチって…」
「テジュンにはサンプルあげるくせにっ俺にはくれないのっ!」
「…あの…だから…。僕が持ってるキャンドルを全部あわせたような香りみたいな気がしたので…」
「じゃあ全種類のサンプルちょうだい!」
「は…」
「せんぱいっ!」
「ちょおだいよっ」
「みっともない!」
ぷーっと膨らませたほっぺたがコドモのようで、僕は思わず吹き出してしまった
「ははは…わかりました…全種類のサンプル差し上げますよ」
「やた!テソン君好きっ」
「…せんぱい…恥ずかしい…」
「そのかわり、全種類同時に点けてくださいね…香り混ぜて試してください。Casaにいらしたときに感想を聞かせていただきますから!」
「は…う…よし…わかったじょ…ふふん」
ジャンスさんの瞳に炎が灯った(よくわからないが『僧坊筋』からまた電電太鼓が出てきたので、きっと闘志を燃やしたのだろう…)
はてさて…あれ全部一度に燃やしたら…どんな香りになるんだろう…
ジャンスさん、トリップしてしまわないだろうか…
「ふふん…明日、会社でやってみよう。テジュン、お前も付き合え!」
「ええええええ?」
えええええ?(^^;;)
気の毒なテジュンさん…
「あの…僕、そろそろアナウンスしなきゃいけないので…。後ほど『テソンスペシャル』お持ちします。そだ、お嫌いな食べ物は…」
「アザラシの肉!」
「は?」
「…テソン君…好き嫌いは無いって事だよ…」
「は…はあ…」
「ゾウの肉も嫌い!テジュンの鼻も」
「先輩っ!」
「…。解りました…失礼いたします…」
雷鼓色気なし!
ったくぅ…
僕は苦笑しながら厨房に戻った
*****
「あ…僕そろそろ舞台があるので…」
バカがソワソワして立ち上がった
「ラブ、行ってくるね。見ててねっくふん」
「ああ…」
「『ちゅ』は?」
「はあっ?!」
「…ラブ…こわい…ぐすん…いってぎばず…」
「ギョンジン君頑張ってねぇ」
「ラブちゃん、今日は事のほか冷たくない?」
「ダメかな…」
「あぅんいいのよぉ~。ラブ様っぷりがたまらないわぁ」
「そ?」
お客様は俺が『ラブ様』になってバカを虐げるのが結構お好きなようだ
今日は演技じゃなくて本気なんだけどね…
だってさ…
バカが舞台に出ろって言われたのは10分ぐらい前だ…
五人でテコンドーの型を披露するとかでさ…
5分ぐらい前にソヌさんとホンピョが席を立った
そろそろ行くのかなと思ってバカを見ると、バカは少し遠くを見つめていた
そっちにはテジュンがいる
テジュンがいるって事はイナさんも一緒って事だ…
気になるのかよ!
ムカついた
ふん!バカ!ほっとけよ!
そして今、ソワソワしだしたバカは席を立って裏へ行く
通路前でイナさんとギョンビンと合流した
バカはイナさんに何事か話しかけ、少し微笑んだ
それからギョンビンにも声をかけて二人を先に行かせ、その後で神妙な顔をした
…何がそんなに心配なのさ…
なんでイナさんの事ばかり気にするのさ…
バカは相変わらず優しいけど、勿体無いぐらい俺に尽くしてくれるけど…
バカはバカだから俺の気持ちをちっとも理解してくれない…
「ねぇマダム…乗馬とかする?」
視線をバカの背中に向けたまま、俺はお客様に言った
「乗馬?しないわぁ庶民だからぁほほほほ」
「俺さぁ、こんど馬に乗ってみようかと思ってさぁ…」
バカに聞こえるように言ったつもり
でも聞こえなかったみたい
バカはイナさんの背中をそっと押しながらガラス張りの通路の向こうへ消えていった
「あらぁ…毎日乗ってるんじゃないのぉほほほほほ」
「…毎日?」
「ギョンジン君にっきゃぁぁぁあアタクシったらぁ」
「…乗ってない…」
「…あらっ?…どしたの?ノリが悪いわね」
「…乗ってないからね…」
「…。小難しいジョークになっちゃったわね…どうしちゃったの?」
「ラブちゃん。相談に乗るわよ、どうしたの?」
「…あいつ…馬力なくなっちゃったみたいなの…」
「「「「「えええええっ」」」」」
その場に居た何人かのマダムたちが一斉に黄色い声を上げた
「前代見聞よっ」
「大事件だわっ」
「ギョンジン君の馬力がなくなるなんてっ!」
マダムたちは馬力をつけるための食事メニューだのマッサージだのをアレコレと真剣に教えてくれた
でも…心の問題なんだよね…あいつの…そしてイナさんの…
「ありがと…。頑張ってみる…」
「貴方達がラブラブでないと『ラブ様技』もサエないのよっ」
「うん…。あ、そろそろ舞台始まるみたいだ…」
千の想い 106 ぴかろん
店内が暗くなり舞台にライトが当たる
音楽が始まり幕が開く
祭んときにイナさんが使った曲だ
『シェリーに口づけ』
五人が等間隔に前を向いて並び、腰横で拳を構えている
イナさんが突きを繰り出し、次に隣のホンピョが突きを繰り出し、それから真ん中のソヌさん、その隣のギョンビン、そして最後にバカが同じ動きをする
今度はバカから前蹴りを披露し、テンポよく順にイナさんまで同じ動きで流れる
次は横突きと横蹴り、逆向きの横突きと横蹴り
ここまでかなり早いテンポで進め、その次のサビの部分はイナさんとホンピョ、ミン兄弟がそれぞれ組み、型を披露する
真ん中のソヌさんは一人で演武している
どだだだだすたっ☆
地響きとともに大きな黒い影が舞台に飛び込んだ
真ん中にいたソヌさんは引きつった顔でその影を見つめていたが、それが『ジャンス』さんだと解ると途端に迷惑そうな表情を浮かべた
舞台に立ち、不敵な笑みを浮かべたジャンスさんは、迷惑顔のソヌさんと暫し睨み合う
そしておもむろに回し蹴りを披露
ソヌさんはふぅっと僅かに上体を逸らせてジャンスさんの足を…あまり長くないみたい…かわした
ジャンスさんはますます不敵な面構えになり、素早く突きだの蹴りだのを繰り出した
ソヌさんは口の端をほんの少し上げて、スーツのボタンをゆっくり留めた
急にリズムを変えて、撓るような足技を使うソヌさん
かっこいい…
けど、ジャンスさんも負けていない
あまり長くない足をキレイに振り上げ、ソヌさんの弱点(絶対弱点!)の生え際にピタと足裏を寸止めする
ソヌさんが初めてニヤリと笑った
そして素早いジャブをジャンスさんの肩?首?…その辺の盛り上がってる肉あたりにお見舞いしている
…てことは…あそこはジャンスさんの弱点かな?…
ジャンスさんとソヌさんの息は、見事に合っていて、結構きわどい寸止めが炸裂している
やがて全員がバラバラと組み合い、迫力ある演武になった
ジャンスさんは飛び入りのはずなのに、他の皆とも上手く合わせている
それでもやはり打ち合わせしていないので、相手に軽く当たってしまったりもする
バカは運動神経がよほどいいのだろう、反射的にうまく避けている…ちょっとかっこいい…
でもイナさんは…
ジャンスさんの足蹴りをまともに腕に喰らったようで、少し顔を顰めた
飛び跳ねるようにイナさんの傍に行くバカを見て、俺の心を留めていた綱が切れた
「ちょっと待っててね」
お客様に微笑んで俺は席を立った
*****
「帰っちゃやだぁん」などと言う可愛らしいジャンスさんをテジュンさんに任せて、僕は早足で奥に戻り、ステージの開演を告げた
あーもー疲れるなぁ…
マイクブースから厨房に戻り、そこにいた彼女に言った
「mayo、僕のスゥイーツはぁ?」
「何がいい?チョコ?マカロン?キャンディとかは?」
「んーん、ものすごぉく疲れたからぁ…」
アヒル口でmayoの前に顔を突き出してみた
Mayoは少しはにかんでそぉぉっと唇を寄せてきた
僕はアヒル口のまま目を瞑って僕のスゥイーツを待っていた
「でーでーでーだいだいだいっ!いたあああいっ!」
「ばかっ!こんなとこでチュウチュウするかよ!」
「mayoのケチィィ」
僕のアヒル口には洗濯ばさみが2つ留められた…ぐすん…
*****
テソン君が仕事に戻り、程なく舞台が始まった
テコンドーの型の披露だ…
大丈夫かな…先輩…
またなんか体温が上がってる気がする…
もうすぐ噴射口に引火しそうだ…って思ってたら…あーあ…点火しちゃったな…止める間もなくすっ飛んでった…
ったくあの人は…
本当にホテリアホテルで敏腕マネージャーとして活躍していたあのイ・ジャンスさんだろうか…
僕は苦笑しながら舞台を見た
一番端にいるイナを見つめた
…ごめん…イナ…
ごめんね、僕、こんなで…
五人プラスイェティのようなジャンス先輩が、舞台狭しと組み手を披露している
まったく、飛び入りだってぇのによく体が動くよな…
格闘技となると我を忘れるからなぁ先輩…
あっ…
ジャンス先輩のごっつい足がイナの腕に当たった
華奢な(そうでもないけど華奢に見える。特に先輩と並ぶと華奢だ!)イナは尻餅をつきそうになった
素早くギョンジンがイナを受け止めた
どっから湧いてきたんだアイツ…
優しそうな顔でイナに何か声をかけている
優しそうな顔…
ヨンナムなら…
今のヨンナムなら…
まっすぐに優しくイナに声をかけるのだろう
まっすぐに悔しいとか腹が立つとか言うのだろう
あいつはイナに解されたから…きっと…
僕はなぜそれができずにいるんだろう
あいつの影が過ぎると僕は頑なになってしまう…
ああ… 思い込みだ…
きっとこれは思い込みだ…
舞台から目を逸らしてイナが座っていた場所を見つめた
*****
ぼんやり座っているテジュンの首にソファごしに巻きついてやった
テジュンは驚いて俺を見た
「なんだ…ラブか…」
「なにしてんの?」
「なにって…舞台を…」
俺はテジュンの頬にキスをした
「…こら…」
「んふ…。ねぇ…デートしない?」
テジュンの耳に唇をつけて囁いた
テジュンは擽ったそうに身を捩った
「デート?はは…」
「冗談じゃなくてさぁ…フルコース…食べたくない?」
「へ?」
「俺のフルコース…どう?」
断られても構わなかった
舞台のイナさんが俺達を見ればそれで終わりにするつもりだった
でもイナさんはこっちを見ず、舞台は終わってしまった
「やめろよラブ…」
テジュンの硬い声が俺を擦った
「…冷たいな…なんで?」
「…そんな気になれないよ…」
「なんでよ…」
「…ラブ…」
耳を軽く噛んでやった
「やめて…。な?」
声が和らがない…つまんない…
俺は通路からテジュンのいるボックス席に入り、テジュンの腿に腰を降ろし、横抱き状態でテジュンに纏わりついた
「ラブ…よして…」
「…やだ…。ね、キスしよう…」
「…ごめん…今そんな気になれないよ…」
「ふぅん…イナさんが気になって?」
テジュンが怒ったような瞳で俺を見た
俺の瞳を覗き込んで、それからフッと笑った
「なにさ…」
「お前、何妬いてるの?ギョンジンはお前にぞっこんじゃないか」
「…」
「ん?」
「キスしよ…」
「…ラブ…」
俺はテジュンの唇に触れないようにキスをした
嫌われたくは、なかったから…
*****
千の想い 107 ぴかろん
演武が終わり幕が下りた
俺達はジャンスさんも交えた6人で、なんだかんだ言いながら舞台袖から裏の廊下に出た
「おおお!オプショナルツアー『BHCの舞台裏』だっ楽しいなっ」
「ジャンスさん、いきなり飛び入りしないでよね」
「すまんすまん、格闘技となるとつい我が無くなる」
「…我が無くなる?」
『忘れる』より激しいって事かな…
「お?ここは控え室かな?どれどれ」
「こらっ!勝手に入らないで!そもそもここだって本とは関係者以外立入禁止なんだぞ」
「俺は関係者だろうが」
「は?」
「俺はお前の『意地悪恋人』の上司だろうが!」
「…そう…だけど…」
「だからお前の関係者だろうがっキム・イナ!」
「…。屁理屈ぅ…」
「ふふん」
俺がジャンスさんを睨んでいると、ソヌさんとホンピョがぽんぽんと俺の肩を叩いた
「「仕方ないって。イージャンスーなんだからさ…」」
ソヌさんとホンピョが声を合わせるなんてっ!
でも妙に納得する意見ではある(^^;;)
ほっとくとあちこちのドアを開けて中に入り込んでしまいそうなジャンスさんを引っ張って、ようやく厨房前の通路に来た
ジャンスさんを先に店内に押し込み、俺達はその後バラバラと通路から出た
ギョンジンは俺に「腕、大丈夫か?」と何度も聞いてくれた
「兄さんってイナさんに随分優しいね」と、いつもより厳しくないギョンビンが笑って言った
ギョンジンはハッとした顔になり、少し間を置いてから「そんな事ないよ」と答えた
兄弟の後ろはガラス張りになっていて、ガラスの向こうの方にテジュンの後ろ頭が見えた
その頭に纏わりつく柔らかな手と、テジュンの頭から半分覗いている閉じられた妖艶な睫毛が俺の胸に飛び込んできて
俺はまた息ができなくなった
立ち止まったままでいるとギョンジンが俺の背中に腕を回し、店のフロアへと促した
口元が強張っていて笑顔にならない…待って…ギョンジン待って…こんな顔で店に出られない…
そう言おうとしても口が開かない
ギョンジンのスーツを強く掴んだと同時に、ギョンジンは歩みを止めた
奴もまた、その光景を見てしまったのだ…
どかどかと先に席へ帰ったジャンスさんが、そのなまめかしい一つの塊にズケズケと声をかけた
閉じられた妖艶な睫毛が開いて、きついまなざしが俺達に注がれた
テジュンの頭にあった腕が緩められ、妖艶な男がその席からすっと離れた
ラブはギョンジンと俺の前を何も言わずに通り過ぎようとした
ギョンジンがラブの腕を掴んだ
「何してたのよ…」
「べっつにぃ…なぁんにも…」
「クソジジイの唇にキスしてたじゃないのっ!」
「唇じゃないもん…」
「うそだ!」
「…ここにキスしてただけ!」
ラブは爪の先でギョンジンの口の端を突き刺した
「でっ」
「ほっぺただよ」
「でっ…こんなトコ…唇じゃないか!」
「へぇぇ…あんたここでご飯食べられるってぇの?お?どうやって?お?…ここは頬でしょうがっ!ふん」
「ちょっ…ラブ!」
ラブはギョンジンの腕を振り払って自分の席に戻った
ギョンジンは唇を噛んでいる
ラブに翻弄されている…
俺もだよギョンジン…
ラブに…
テジュンに…
奴は振りかえって「ごめんなごめんな」と繰り返した
俺は何も言えずにいた
ギョンジンは俺の背中を押してジャンスさん達のいる席の近くに連れて行ってくれた
「おうキム・イナ…ん?キム・イナ?どした?」
「…。あ…」
「…どうしたの?イナ」
ぼんやりしていたテジュンが突然俺に話しかけてきた
テジュンが、いつもの優しいテジュンに戻って俺を真っ直ぐに見つめている
ラブの…
ラブのキスで元にもどれたってぇの?
沸々と滾り始めた黒い感情を、俺は必死になって冷まそうとした
「なんだぁお前はぁ…可愛い子ちゃんとキャ○クラまがいの事したら機嫌なおったのかぁ?」
…そうなんだ…テジュン…
冷ますなんてできない
頭の中でさっきのラブとテジュンの映像が繰り返し映し出されている
「ちが…何言ってるんだよ先輩は!」
「だってさっきまで意地悪光線出しまくりだったじゃんか!それがどうだよ、あの色気小僧君といちゃいちゃした途端これだ。んなじゃキム・イナだって仕事に集中できねえよ!なぁっキム・イナ」
「…は…う…ん…」
「…イチャイチャなんかしてないよ。イナ…僕、ラブにやめてって言ったんだよ…けど」
「解ったよ…」
『けど』なにさ、寂しそうで可哀想で放っておけなくて、邪険に突き飛ばすなんてできなかった…んだろ?!ちがう?!
*****
ラブが口元に吸い付いてきたところをジャンス先輩に見られてしまった
だからやめてって言ったのに…
イナは誤解してないだろうか…
ああ、テソン君と話してようやく気持ちが解れてきたってのにな…
ラブは…
ギョンジンがイナに優しくする事が気に入らないらしい
それで僕に擦り寄ってくる?…酷いなラブは…
だから僕と『フルコース・デート』なんかしたいってわけ?
…バカだなあ…あんなに愛されてるのに…
ああ…イナもきっと僕の心がわからなくて
僕に対してこんな風に思ってるんだろう…
イナが悪いわけじゃない
僕のせいなのに…
ごめんね…ごめん…
ちゃんとイナに謝ろう…
僕はヨンナムを意識しすぎだ…
ラブがお前を意識しすぎるように…
*****
ジャンスさんがチクチクとテジュンを刺す
お前は我儘すぎるし自分勝手すぎる、周りに気を配っているようなフリして一番身近な人間を酷く傷つける、全く成長してない!人事考課Fつけてボーナス無しにするぞ!
と本気だか冗談だか解らない小言を投げつけている
テジュンは結構神妙にその言葉を聞いていた
そして俺に向き直って、いつもの…俺の大好きな笑顔を見せて言った
「ごめんな…イナ…。僕、ちょっとイライラしてた…。お前にあたるつもりはなかったのに…ごめんな…」
きちんと謝ってくれた
俺は笑顔でテジュンに答えた
「ううん。いいよ。ここで気持ちが解れたのなら、俺、嬉しいよ」
テジュンは一瞬真顔になり、それから頷いて微笑んだ
*****
イナが嫌味を言った
イナはラブに嫉妬したんだ…
それだけじゃない…この席に座ってから僕はずっとイナを『苛めて』いたから…
だからイナは嫌味を言ったんだ…
僕がこんなだから…
ごめんね…イナ…
*****
その柔らかいいつもの笑顔、誰が取り戻してくれたの?
俺じゃないよね、あいつだよね?
いやだ!
いやだ、盗られてしまう、いやだ!
なんて現金なんだ、テジュン!
やっぱりアンタの心の底には『ラブ』が敷き詰められてるんだ…
「キム・イナ。『涙目』チェックと…」
「え…」
ジャンスさんの声に俺は身を震わせた
「お前の技、あんまりチェックしてないからなぁ…。なかなかグッと来るな、お前の『涙目』は…」
「これは…」
技じゃない…
感情が止められなくて…ああ…
『俺はパン屋のプロにはなれないけど、ホ○トのプロではある』
そんな事をヨンナムさんに言ったのに…
ちっともプロじゃない…ああ…
「ジャンスさん、今のチェックは外して…」
「なんで?」
「技じゃないから…ごめん…」
「技じゃない?ほほぉ…という事は…お前の感情が剥き出しになったっつーことね?メモメモ」
そんな事までメモ取るなよ…
「んまぁな、恋人がお客で、しかも不機嫌だったのが掌返したように上機嫌なんてことになられたら、それもあんな可愛い子ちゃんがあんなベッタリコンでくっついてぇの掌返しとなりゃあ、俺もキレます」
「…イナ…ごめん…僕…」
「テジュンよぉ…お前それじゃ火に油注いでるみたいなもんだわ。俺なら泣きます」
「…はぁ…」
「キム・イナ、大丈夫か?」
「…大丈夫です…すみませんでした…」
「ふむ。メモメモ…」
「…ジャンスさん…何のメモよ…」
「いいからいいから。でもあの色気小僧君はまた後で来てくれるのかな?」
「…」
「キム・イナ?」
「…う…ん…来ると…思う…」
いやだ…
でも…
『本物のプロ』にならなきゃ…
俺は自分を叱咤した
盗撮 オリーさん
「よおしっ!ソヌのスーツボタンがけの技は久々だ。いい画が撮れた」
「くふん、我ながらいい腕、うふん・・」
「5人衆がそろい踏みってのも迫力満点、くひん」
「一人顔が違うけど、まっいっか」
「おっと、イナが蹴られてジンが受け止め。よしっ!これもいいぞ!」
「監督、何やってるんですか?」
「ソグ君・・」
「こんな物陰に潜んで隠し撮りですか?」
「君こそシミュレーターに何の用?」
「僕は建物全般に気を配る習性が身についてるんです」
「ほお」
「だから営業時間内でもこうやってあちこち見回ってるんです」
「それはご苦労さん」
「で、何で隠し撮りなんかしてるんですか?」
「人聞きの悪いこと言わないでくれよ、こほんっ」
「こほん?」
「僕だって仕事の真っ最中だ。いいか、あの客席を見てみろ」
「ああ、イナさんとこのゲストですね」
「そう、今日はあそこを中心にみんなが入れ替わり立ち代り大サービスで芸を見せてる」
「そうですね。イナさんのお知り合いですから」
「そこで仕事熱心な僕はこうやってハンディカメラを回してるわけだ」
「だからなぜ?」
「察しが悪いな、君は。建物同様柔軟性に欠ける」
「よけいなお世話です。でなぜ?」
「HPに掲載するネタを撮ってるんだよ」
「HPってBHCの?」
「そうBHCの宣伝になるHP。僕が全権を委任されてる」
「任されてるのはソヌさんじゃないんですか?」
「ちっちっ。あいつは確かにフロアーごみチェックのプロだが、僕の本職は監督だよ」
「はあ」
「やっぱり映像が絡めば僕だろ」
「はあ」
「さっきなんかスハ君のおひねり技撮っちゃったもんね」
「おひねり技」
「そう、イナ君がつねられてた、その驚いて痛そうな顔が美味しかったのよ」
「はあ」
「でもってさっきは吉本ばりの漫談もあったしね。今日はいいぞお」
「はあ」
「5人組の格闘ショーはすごかった。あれを紹介したら話題沸騰よ」
「あれはすごかったですよね」
「だろ?」
「でもBHCじゃない人も乱入してましたけどいいんですか?」
「そうなのよぉ。デラルスも来たし、飛び入りするゲストもいるしねぇ」
「いいんですか?」
「デラルスはカットして。あのゲストはモザイク処理か、首から上をBHC顔とすげかえてもいいし」
「体格が違いすぎません?」
「そっか。じゃやっぱモザイクだな」
「ですね」
「あとね、もっと美味しいもの撮っちゃったのよぉ」
「何です?」
「ラブの寸止めちゅうよ」
「寸止めちゅう?」
「見たい?」
「見たいです」
「どっしよっかなあ」
「もったいぶってないで、見せてくださいよ」
「どっしよっかなあ」
「もういいです」
「あ、帰らないでよぉ。今見せるから、ほら」
「相手はイナさんのゲストじゃないですか」
「そうなの。ラブの必殺テク、すごいだろ?これ見たら客がわんさか来るぞお」
「はあ」
「でも相手があれだからなあ・・やっぱこれもモザイク入れようっと」
「でもきわどすぎませんか」
「いいのいいの。愛の楽園BHC。今日はきわどいの結構あると思うのよねえ、うひん」
「ほんとにHP作成のため?」
「もちろんだよ!」
「はあ」
「昨日から新人も入ってるからね。そうだ、彼の技は何?」
「ええっと何だったかな・・そうだ、確か僕と同じ純粋です」
「それは技じゃないだろ」
「そうですか、じゃあええっと子作りかな」
「それって技?」
「違います?じゃあええっと高層ビルの窓拭き」
「それだっ!それをやらせて撮ろう」
「危険です」
「いいじゃんかあ。なかなかできないよ」
「店ではできないでしょ」
「天井ぶち抜けないかなぁ、でもってクライミングウォールみたいの作って」
「ムリです」
「つまんないなあ・・」
「やっぱり面白がってます?」
「ちゃうちゃう!僕のげーじつか魂が揺さぶられるかどうかなのよ」
「げーじつか魂ですか、ふうん・・」
「それより君はどうなの?新しい技できた?まだ耐震強度チェック?」
「けほっ」
「どうなのよ?」
「それが・・耐震強度チェックをほんとにお客さんに頼まれることが多くて」
「だろ?」
「それが縁で結構リフォームの注文とかこまめに入って親父は喜んでます」
「そりゃ親孝行だ」
「でも僕は技が見つからなくて」
「もしかして悩んでる?」
「・・・」
「そっかぁ。案外技術屋ってのはつぶしがきかないなあ」
「けほっ、でも極貧新婚生活ごっこなんかやりたいって言われますっ!」
「そっかぁ。極貧ねえ・・でもあれはごっこだからいいのよ」
「・・・」
「今時あんな生活マジでしたら、いくら新婚でも奥さんキレまくりよ」
「愛があれば大丈夫ですっ」
「何青臭いこと言ってんのぉ。まっ、お金があってもダメだけどね」
「は?」、
「いいの、いいの。さてとっ」
「監督・・」
「おお、ミンギよく来た」
「探しましたよ。こんな箱の中で何してるんですか?」
「ここからベストショット狙って撮ってるのよ」
「は?」
「今日は何かいい物が撮れそうな予感がするんだ」
「で急な呼び出しですか?」
「そうなの。僕が撮れないとこフォローしてよね」
「はあ」
「さっきの僕のオシリふりふり撮ってくれる人がいなかったのよぉ」
「先輩は?」
「あいつが出てくるとしきりたがるからさぁ」
「もしかして内緒?」
「・・・」
「狭い店の中で内緒にできるわけ、ないっしょ」
「おお、シャレが効いてる」
「そういうわけじゃ」
「とにかく、君もさりげなく遊びに来たってことでよろしくね」
「はあ」
「特に狙いはあのキミナーの席だから」
「キミナ?」
「キミナーよっ!」
「ああ、イナさんですね」
「そうあそこに素っ頓狂なゲストが来ててね、今日はみんな技だしまくりなのよ」
「へえ、珍しいですね」
「普段見れない技を撮ってHPに載せるからね」
「なら別にこそこそしなくても」
「・・・」
「そんなに先輩に知られるのがいやなんですか?」
「だってあいつすぐ怒るんだもぉん」
「子供みたいなこと言わないの」
「だってぇ」
「とにかくソグ君、そういう事だからこれは極秘にね」
「はい」
「ミンギ、少ししたら次の出し物何かちょっと探ってきて」
「はあ」
「んでもこの箱、ずっと入ってるとムシムシする」
「3人も入ってるからですよ」
「ソグ君、この中にも空調つけなさいよっ」
「ムリです」
「んもぅ!」
「こんな狭いとこに空調つくわけないでしょう」
「ソヌ君っ」
「先輩っ」
「ソヌさんっ」
「誰がすぐ怒るって?」
「いやん、別にぃ。それよりどうしてここに?」
「フロアーチェックは僕の使命です」
「ったくどいつもこいつもチェック好きなんだから」
「今ちょうどいい具合に体温まってるから足がうずうずするな・・」
「ぶ、物騒なこと言わないのぉ。でもってここは4人入れな・・むぎゅう・・」
「確かに今日はみんな技出しまくってますから、撮影にはいいです・・むぎゅう・・」
「だ、だろ?むぎゅう・・」
「今の僕のは撮りました?むぎゅう・・」
「撮った撮った・・むぎゅう・・」
「僕に絡んできたあの足の短いゲストはモザイク入れてね・・むぎゅう・・」
「わ、わかってるよ・・むぎゅう・・」
「先輩、やっぱ4人はこの箱きつ・・むぎゅう・・」
「ミンギ、うるさい・・むぎゅう・・」
「僕出ます・・むぎゅう・・」
「ソグ君出すにはミンギとソヌ君出なくちゃ・・むぎゅう・・」
「とにかく、みんなが自然体で技出してるとこを撮りましょう・・むぎゅう・・」
「だろだろ、撮られてるとこ意識してないって、いいんだよこれが・・むぎゅう・・」
「じゃあ、僕は黙ってますね・・むぎゅう・・」
「ソグ君、協力ありがとう・・むぎゅう・・」
「それにしても暑い・・むぎゅう・・」
「おい、誰かシミュレーター使ってる?」
「監督があそこから盗撮してるらしいよ」
「盗撮?」
「ほら、HPで紹介する技を撮ってるらしい」
「あ、そうなの」
「じゃ張り切って技見せないとな」
「そうだね」
「俺のマジックショーも撮ったのかな」
「撮ったみたいよ」
「よっしゃっ!」
「じゃみんな引き続き張り切って行こうぜ」
「「「「「うーっす!」」」」」
千の想い 107 ぴかろん
*****
「お待たせしちゃってごめんなさぁい」
「あら二人揃ってお帰りなさい」
「ラブ…」
「何だようるさいなぁ」
「何よぉまた喧嘩してるのぉ?」
「は…いえ…」
「ギョンジンちゃん、聞いたわよぉ。馬力がなくなったんですって?」
「は?え?」
「それでラブ様ご機嫌斜めなのよぉ」
「…はい…」
「夏バテ?」
「あ…う…」
「あらっ珍しいわ。しどろもどろのギョンジンちゃんなんて。たのしーっ」
「あの…いえ…あの」
「コイツさぁ、俺が他のお客様のほっぺにチューしてたらくどくど文句つけやがんの」
「「「「「あらぁ」」」」」
「だって!唇にキスしてるんですよっマダム!」
「唇じゃないよ!ほっぺだよ!ねぇマダム、ここんとこ『唇』っていう?」
「「「「「あらっ微妙~」」」」」
「唇じゃないでしょ?ここでご飯食える?水飲める?ほっぺじゃん!」
「そんなの『ほぼ唇』じゃないか!お客様の唇にはキスしちゃいけないんだぞ!」
「だから唇じゃないってば!ねえマダム」
「うーん、その部分は…唇でもなければ」
「うーん、頬でもない…わよねぇ…」
「うーん…しいて言うなら『口角』?」
「うーん、口の端?」
「うーん…微妙だわぁ…」
「こんなとこへのキスはダメですよね?」
「うーん、それを『ほっぺ』とか認めるとぉ」
「そうよ、今後お客様から『ほっぺにチュウして、ここよ!』なぁんて指定されそうよね…」
「それは大問題だわ、ラブちゃん…」
「そうよ…やっぱり却下よ…」
「マダム達のケチっ!」
「「「「「あっらぁ~ラブ様が拗ねられたわぁ~きゃぁぁぁ(>▽<)」」」」」
「…ほらみろよ…僕の勝ちぃ」
「ふんっ!だいっきらい!」
ラブはそっぽを向いてジントニックのグラスを一気に空けた
暫くしてラブは機嫌を直し、お客様と楽しげに過ごした
お客様がお帰りになるのを送り出し、店に戻ろうとした時、ラブはフラッと路地へ向かった
「どこ行くの」
「タバコ」
「…ラブ…」
「ついてくるな!」
邪険に言われたけど僕はラブの後をついていった
ラブは裏口の横の壁に凭れてタバコに火をつけた
僕はその横にピッタリと並んだ
「あっちいってよ。一人にしてくんない?」
「…ラブ…。なんであんな事お客様に言うのさ」
「…あんな事って?」
「…馬力なくなったとか…」
「ほんとの事じゃん。いっぱいアドバイスしてくれたよ」
「…」
「ふーっ…」
タバコの煙を僕の顔に勢いよく吹きかけ、地面にタバコを落として足でもみ消すラブ
吸殻をそのままにして裏口から中に入ろうとしていたので、僕はラブの腕を引いてダメだと言った
「ゴミしちゃだめ」
「アンタが拾えばいいだろ!」
「僕は奴隷じゃない」
「奴隷だよ!役立たずのね!」
「ラブ!」
ラブの腕を引っ張り、体を壁に押し付けた
「何だよ!はなせよ!」
「…なんで…そんなに…ヤなことするの?」
「…」
「僕の何が不満?」
「は?!言ってるだろ?昼間っからずっと!」
「…お前を…抱いてないからか?」
「…」
「その分昼間」
「誤魔化さないでよ!あんな事してほしくない!」
「…」
「…なんで俺を抱けなくなったの?」
「…抱けなくなったって…。そんなんじゃ」
「なんで俺を避けるの?!」
「避けてないじゃないか!ちゃんと」
「ちゃんとなに?奉仕した?!…そうだね、奴隷らしくね!」
「ラブ…」
「アンタのここが…」
ラブの指先が僕の心臓を突き刺した
「俺を避けてるんだ…」
「違う!避けてなんか」
「ねえ…」
ラブの瞳に色がついて、しなやかな腕が僕の首筋に回る
「誰の事考えながらヤってたの?」
「…は?…」
「ほんとは誰を抱きたいの?」
「…なに言ってるの…僕はお前だけを…」
僕の肩をトンと突いて、きつい瞳のラブが声を荒げた
「ムリしなくていいよ。いっつも一番気にしてるくせに!」
「…ラブ?」
「ちょうどいいじゃん、俺はテジュンと慰めあうから、アンタ、イナさんと熱く燃えればさぁ!」
「ラブ!」
「これでおあいこ」
「どこからイナが出て来るんだよ!イナの事なんてこれっぽっちも思ってなんか…」
「じゃあなんであんなに優しくするの?なんでイナさんばっかり見てるの?!俺なんかどうでもいいんだろ?ずっとそうだったんだ!祭んときからアンタの目はイナさんの方向いてたんだ」
「イナを見てる?…バカ言うなよ…僕がどれほどお前を愛してるか、まだ解んないの?」
「アンタが愛してるのは俺の体だけだろ?」
「はあ?!」
「アンタって優しいから、俺自身に興味なくなっても…色んなことして満足させようとしてくれてさぁ…」
「…ラブ?…」
「もういいよ…俺はテジュンのとこに行くから」
僕に背を向けて扉の取っ手に儚げな指をかける
引きとめてとその指が囁く
「テジュンさんがお前を受け入れてくれると思ってるの?!」
「…」
僕はラブの腕をもう一度掴んだ
「お前…僕の気持ち全然解ってない!…僕だってお前を抱きたいよ!毎日でも抱いていたいよ!でも…変なんだもん…。なんか調子でないんだもん…そんな時もあるって何かで読んだ事はあったけど、僕には関係ないと思ってた…それが突然こうなっちゃったんだ!僕がどんなに動揺してるかなんてお前ちっとも考えてくれない…」
「…」
「イナのせいじゃ…ないと思う…。自分でもよくわかんない…。夏バテなのかな…」
「…。ほんとに?イナさんじゃない?」
「なんで疑うの?!僕を見てて解んないの?!」
「だってアンタ…すぐに庇うじゃん…それに何かを気にしてる…」
「…。何を?」
「だから…イナさん」
「それは違う。そりゃ気になんないとは言わないけど、友達として気になるだけだ」
「…」
「ラブ、こないだまではお前がイナの心配してたのに、どうして?僕の方こそ聞きたいよ。なんでそんなにイナにカリカリ当たるの?テジュンさんのせい?!テジュンさんの悲しそうな顔見たから?そうだろ?」
「…」
「お前がテジュンさんに同情して擦り寄ってくの、僕がどんな気持ちで見てるか知ってる?わかる?」
「…」
「僕よりテジュンさんのが好き?」
「…」
「もしそうだとしても、僕はお前が好きだよ。誰よりも愛してる…。なんで解ってくれないの?なんで意地悪な事するの?なんで僕の気持ちを疑うの?」
「…だったら…証拠見せてよ…」
「証拠って…」
「あんな…奉仕なんていらない…俺もアンタが好きなのに…」
「ラブ…」
「俺を避けないで…」
「避けてなんか…」
「避けてる…」
「ラブ」
「俺もアンタが好きなんだって事、ちゃんと憶えといて…俺もアンタを愛したいんだって…ちゃんと…」
「…ラブ…」
僕はラブを抱きしめた
ラブの腕が僕の背中をそっと包んだ
「…俺…気になるんだ…テジュンの事…。アンタも気になるんだろ?イナさん…」
「…だからそれは…」
「テジュンもアンタも好きだよ…。でも全部欲しいはアンタだけなんだ…」
「…ラブ…」
「だけどさ…」
「ん?」
「…」
「なに?」
ラブは僕の胸を押し戻して聞き取れないぐらい小さな声で言った
「なんでうまくいかないんだろ…」
「ラブ…」
口元にフッと笑みを浮かべてラブは裏の扉からBHCに入って行った
ラブ…僕も…何もかもちっともうまくいってないよ…
僕は項垂れてラブの後に続き、裏口から店内へと向かった
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