ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

リレー企画 247

I'll be back 1 ぴかろん

♪タタンタンタタンタンタン・タタンタンタタンタンタン・タラリ~ラ~リロ~タタンタンタタンタンタン・タラリ~ラ~リロォ~タタンタンタタンタンタン…タタンタンタタン! タタンタンタタン! タタンタンタタン! タタンタンタタン!
♪(^m^)


重く張り詰めた旋律
金髪の男が潜む物陰
黒いグラスで隠された瞳は今宵の獲物を求め
その照準は獲物を排出する扉に合わされた

ピピピ…
BHC顔
認識照合
キツネ・ツリメ
照合不可
スルー


ピピピ…
BHC顔
認識照合
フグ・天使
照合不可
スルー


ピピピ…
わらわらわら…

同じ顔
認識照合
サル・ウマ・ウマ
照合不可

ピピピ…
想定外行動:サル、逃走。否、単戻(戻っただけ)

ピピピ…
想定外行動:ウマ×2、呼戻(呼び戻される)

No Person…
I’m lonely…

*****

夕方RRHからテジュンに電話した
今夜はヨンナムさんちに帰ると聞いていた
その事を確かめたかった

テジュンは迎えに来ない
ヨンナムさんも来ない
俺を避けているのか配達は夕方に済ませたらしい…

『てじゅにまかせなさい』

明るく言ったテジュンに全てを委ねよう…

気持ちを切り替えたくてシャワールームに行った
珍しくギョンビンがいた
聞けば浮気の証拠を消すためだと言う
冗談なのかマジなのかわからなかった

今日…ミンチョルとスヒョンはキスをしたんだ…

ギョンビンの余裕
醒めた微笑
くちづけ
くちびる
せつないハグ
聖母のひとみ
俺とあのひと…

頭の中に一瞬で広がるそれらの映像
想像でしかないのに体が強張った

「試してみようかな…」

やめとけよ、お前はきっと本気になる…


店が始まる前にミンチョルとスヒョンがやって来た
テプンの鋭いツッコミが場の雰囲気を和らげた
ドンジュンもギョンビンも笑っている
辛いだろうに…

一緒に笑いながら込み上げてくる何かを堪えた

休憩しようと裏へ回ったとき、通路の端からぼんやりと店内を眺めるスヒョンに出くわした
目が合うとスヒョンはいつものスヒョンになり、口元に笑みを湛えて、「パン、美味かったよ。ありがとう」と礼を言った

俺の心も読み取れない、イッパイイッパイの天使
ばか…

今日…ミンチョルとスヒョンはキスをしたんだ…

キュッと唇を噛みしめ、スヒョンの腕を軽く掴み、俺は聞いた

「現場、行ってもいいか?」
「…え?」

反応鈍すぎ
そんなに衝撃くらったのかよ…
過ぎる聖母の瞳
醒めたギョンビンの微笑み

「撮影現場…、覗きに行ってもいいか?」
「ああ。…うん…。いつでもどうぞ」

にっこりと微笑む天使
薄皮一枚で支えられている『ホスト』の顔

「…撮影…」
「ん?」

やめよう…
俺に何ができる?

「頑張れよ」
「ふ。ありがと」

掴んでいた天使の腕をポンポンと叩き、俺は控え室に行った


店が終わり、ミンチョルとギョンビンは連れ立って俺の少し前を歩いていた
ミンチョルは事務室の前で立ち止まり、ドアを少し開いて中に声をかける
そして裏口に向かい、いつも通り仲のよいふたりのまま、足早に出て行った

パタンと閉まったドアをぼんやり見ていた
何も起こりませんように
でも俺は感じている
もう既に始まっていることを…

事務室の前に差し掛かったとき、ドンジュンの大きな声が聞こえた
必要以上に驚いた俺は、すぐ前にいたソクの腕を掴んでしまった

「どした?」
「どしたの?」

ソクとともにスヒョクも俺を振り返った

「あ…」

ごめんと謝ろうとしたのに、俺の口から出てきたのは違う言葉だった

「…なんて…今…」
「ん?」

目を丸くするソク
心配そうに見つめるスヒョク
どきどきする心臓を宥めながら俺は落ち着いて言葉を吐いた

「あ…の…ソク…。ドンジュン、なんて…言ってた?」

何事か起こったのかと心配だった
ギョンビンの醒めた微笑
昨日のドンジュンとスヒョンのハグ
『試してみようかな…』

今日…ミンチョルとスヒョンはキスをしたんだ…

「ん?」
「あ…お…お前、耳がいいから…聞こえたかと…」
「…。聞きたいの?なんで?」
「け…喧嘩してたんじゃないかと思って…」
「ふ…」

優しい顔で俺を見つめるソク
重なるテジュンの顔
重なるヨンナムさんの…微笑み…

ガタン
事務室のドアが開き、スヒョンとドンジュンが寄添って出てきた
俺達に軽く手を上げ、外に行った

「心配損だな」

ソクが笑う

「…。なんて…。ドンジュンは…さっきなんて言った?」
「『めちゃくちゃ高級なフレンチが食いたい!』って」
「…。は…」
「心配損でしたね、イナさん」

スヒョクがニコッと笑って俺の頭を撫でた


「おさきー」
「あ、待てよチョンマン!どっか寄ってこうよ」
「いいけど、メイさんお迎えに来るんじゃないの?」
「今日は仕事あるって…。シチュン、寂しい~」
「俺もぉ…寂しいんだけど…」
「テプンさん…なんで?」
「最近、チェリムが会ってくんねぇ…」
「それはまた聞き捨てならないねぇ…」
「んじゃ、ノーマル三人で一杯やっか?」
「よっしゃ♪行こう行こう」

ワイワイと賑やかに、チョンマン、シチュン、テプンが裏口近辺で喋っている
帰ろうとしているギョンジンをとっ捕まえて、お前なら『いい飲み屋』を知ってるだろう!と半ば脅し気味に聞いている
ギョンジンが挙げた幾つかの店をそれぞれ暗記しながら、三人が戸を開けて帰って行く
ソクとスヒョクと俺も、裏口に向かいかけた

「イナ」

ギョンジンが呼び止める
横にラブがいる
チラチラと俺の顔を盗み見ている

「なに?」
「もう大丈夫か?」
「…。ん…。ぼちぼち…」
「イナさん…俺…」

ラブが口ごもった時、チョンマンが慌てて戻ってきた

「たった…たいへんっ…」
「どうした?」
「あっ!テプンさんとシチュン…」

と言うと、もう一度外に出て行き、そして二人を連れてまた戻ってきた

「なぁんだよチョンマン!なんで戻るんだよ」
「きっ…危険!」
「は?」
「見なかった?!」
「は?何を?」
「たっ…たったっ…ターミネーター!」
「「…はあ?!…」」


訪問者10  オリーさん

その女に出会ったのは偶然だった
この国に来てあいつの居場所をつきとめてから
だから3ヶ月ほど前のことだろうか
大学であいつの居場所を探していたら
人気のない建物に迷いこんでしまった

そこは学生は立ち入り禁止だと、突然声をかけられたのだ
オレに声をかける女はめったにいない
大抵の女はオレを見るだけで満足するから

最初はきつい口調でオレを咎めた女は
オレの顔を見ると、その表情を和らげた
オレが見つめると女は大抵同じ反応をする
その瞳に媚びた表情を浮かべるか
気後れしたかのように視線を彷徨わせるか
そのどちらかだ

オレはとてもすまなそうな顔をして釈明した
ある教授の部屋を探しているが
迷ってしまって困っていると
この建物が立ち入り禁止だとは知らなかったと

丁寧に頭を下げたオレに
女はなおも注意を繰り返した
こんな女がオレの優位に立てることはまずない
その機会を得て女は有頂天なのだろう
忌々しい

見苦しいほど醜くなく、さりとて美しくもない
いわゆる普通の女
学生が立ち入り禁止の建物にいるのだから
たぶん職員だろう

オレはもう二度と同じ過ちを犯さないと約束して
その場を逃れようとしたが
突然別のアイディアが浮かんだ
そう、オレはとても機転がきくんだ

オレは女の文句が途切れるのを待って切り出した
お行儀よく、怪しまれないように、丁寧に
とても反省している
お詫びの印にお茶に誘いたいと
女の瞳に淡い期待の色が浮かんだ
それからふと我に返り
仕事中だといかにも残念そうな顔をした

うっかりしてました、終わるまで待ちましょうと言うと
女の顔に歓喜の色がこみ上げてくるのが見てとれた
単純な生き物

それから待ち合わせ場所を決めオレは開放された
ここで知り合いを作っておくのも悪くはないだろう
何かの時に役に立つかもしれない

女は勤めを終え待ち合わせの場所にやってきた
大学の前の喫茶店
オレは約束どおり女にお茶をご馳走し
興味があるふりをして女のことを聞きだした

女は独身で一人暮らし
おあつらえむきだ
やっぱり役に立つかもしれない
オレは自分のことは黙っていた
焦らした方が女は喜ぶ
そうだろう?

すると女は意外な事を言った
オレの在籍簿が見当たらない、学部はどこかと
今日のお前の仕事はそれだったのか
イラついたが、まあいいだろう
少しは脳みそが働くらしいことの証明だ
だが、それまでだ
それ以上オレのことを調べるな

一瞬で様々な想定を繰り返し
オレはあっさり本当のことを白状した
学生ではないと
女は驚いたようだった
だったらなぜ大学に・・
そうだ、当然の質問だ

オレは女の好奇心を満たしてやるために話をした
嘘もあれば本当のこともある
オレは親をなくして身寄りがない、だから貧乏だ
生活のために色々なアルバイトをしている
日雇いで工事現場の仕事をすることもある

学生でもないのに、なぜ大学に出入りしているのか
それは、勉強がしたいから
本当は大学に通いたいから
だから時々ヒマを見つけてはここに来てみる

大学生でないのと親をなくして身寄りがないのは本当だ
だが貧乏ではない
当然工事現場で働いてなどいない
大学生になりたいのも嘘だ

オレの話を馬鹿な女は丸ごと信じた
そして身寄りのないオレに同情した
部外者が大学に無断で出入りしている事実には興味はないらしい
さすがだ

女は媚びた声でオレに言った
あなたみたいに綺麗な人が工事現場だなんて
これでも案外力持ちなんですだ、と
オレは最上級の笑顔を見せてやった

喫茶店で終わりのはずだったが
女が余計な事を言ったために変更になった
オレは女を食事に誘った
高くもなく安くもない普通のレストラン
この女にはちょうどいい
それでもこんな女と外で食事をするのは最後にしたい

食事をしながら、女の話をもう一度聞かされた
独身、一人住まい、仕事は大学の職員
さっきしゃべったことの繰り返しだ
全部話しても一分で語れる
だが女はそれを話すのにたいそう時間をかけた
大学での仕事がつまらないこと、
馬鹿な上司や同僚や学生相手に毎日疲れること、
なかなか気の合う相手にめぐり合わず独身でいること

仕事がつまらないのはお前が無能だから
相手が見つからないのはお前に魅力がないから
なぜそんな簡単なことがわからない
ついでに言えば、
お前のような女になぜオレが声をかけたのか
不思議に思わないのか、聞いてやりたかった

笑顔を浮かべて女の話を聞くふりをしているオレに
女は、芸能人、そうモデルになればいいのに、
俳優にだってなれるわ、と陳腐な言葉を並べたてた
それほどオレは綺麗だそうだ

だがお前に教えてもらわなくても知っている
オレは綺麗だ、誰よりも美しい
そう言ってオレを抱いてくれた男(ひと)がいた・・

食事をしながら、酒を飲ませオレは女に頼んだ
時々大学に行くのを許して欲しい
オレが学生でない事を二人だけの秘密にして欲しいと
二人だけの秘密
こういう言葉を馬鹿な女は好む

女は上機嫌になって、時々授業に出ちゃえば、と言った
そんな事をして大丈夫かと聞くと
私さえ黙っていれば大丈夫、と物欲しそうな口が笑った

オレは期待に応え、女を家まで送って行った
当然のことだが、女はオレを部屋に誘い
オレは遠慮するふりをしながら中へ入った
女のいれた味のないコーヒーをすすった後で
お決まりのようなキスをした
女は抵抗するふりをしながら喜んで受け入れた
あげくに言ってくれた
安っぽい女ではないと

それから先に進もうとして、オラはためらうふりをした
何せ安っぽい女ではないのだから
さっきの言葉など忘れたように女は焦れて、
あなたならいいと口走った
オレは本当にいいのか、と聞き返した
何をするにも確認作業は重要なのだ
女は馬鹿の一つ覚えを繰り返した
あなたならいいと
本当に女は愚かだ

許可が出たのでオレは女を押し倒した
女の上に跨りゆっくりと服を脱いだ
女はオレの裸体を見て息を飲んだ
どうだ、綺麗だろう
肩から上腕部にかけてほどよくついた筋肉
贅肉のかけらもない引き締まった上半身はオレの自慢だ
よく見るがいい

ナチはユダヤ人に絶望と恐怖を植えつけて蹂躙した
オレはかわりに美しさを使う
優しい征服者だろう?
女はオレの体を見ただけで一度はイッたようだ

オレは女の服を一枚づつ剥ぎ取り
そのだらしなくたるんだ体をむき出しにした
やることはやってやる
二人だけの秘密のために

女はオレが触れると、
電気ショックを受けたように震え上がり悦んだ
最初だけは恥らうふりを装っていたが
それも無駄な抵抗だった
乳房を掴み、乳首を舐めただけで
聞くに堪えない淫らな声を上げた

馬鹿な女は夢中でオレにすがりついた
オレはその手を払いのけ、一気に最後まで突き進んだ
両腿を掴んで持ち上げ
女を見下ろしながら何度も突いた
覚えておくんだ、これがオレだ
オレを裏切るな

女の顔は醜く歪み、
だらしなく開いた口からはうっとおしい悲鳴が漏れた
オレはその痴態を目に捉えながら
まったく別の事を考えていた
これからの大事な計画
オレのために、あの男(ひと)のために
やらなくては
そのためにはこんな女を抱くくらい何でもない

事が終わってオレがくわえたタバコに
女が不器用なしぐさで火をつけた
さっそく恋人気取りか
オレは笑顔でお礼を言いながら心の中で舌打ちした
しばらくの我慢だ

しばらくして女は言った
さっきの話だけど・・
何?さっきの話って?
授業に出るって話よ
ああ、そのこと・・
ただ、部外者だって秘密にしていてくれればいいよ

女はオレの首に絡みついた
オレは鳥肌が立つのをこらえた
女はそんな事には気づかずオレに囁いた

授業なんてもぐりこんでしまえばいいの
でもゼミはだめ、出席を取るから
大きな教室でやる授業なら大丈夫
誰がいたってわかりっこない
そうだ、学生証をなんとかしてあげましょうか

え?学生証?
あなたのためなら何とかしてあげる
女は得意満面で微笑んだ
オレはお礼を言って女を抱きしめた
そしてその日初めての成果に拍手を送った

簡単な事ではないから、ちょっと時間がかかるし
もしばれたら、私は大変な事になる
女はそう言って、オレの顔を見つめた
馬鹿な女がオレを試している
ハラワタが煮えくり返りそうになりながらも
オレは予想以上の獲物にありついたことに満足した
女はオレの顔を覗き込み、あなたのためならと言った
その調子でオレのために働いてくれ

オレは確認のため、もう一度女の体にオレを押し込んだ
女はさっきよりもっと淫らに乱れ
オレの教えた嘘の名前を何度も呼びながら果てた
この行為のどこをどう探ったら愛という言葉が出てくるのかわからないが
愚かな女がオレに愛されていると勘違いをした事は確かだ

それから一週間ほど経った頃、女から連絡が入った
学生証に貼る写真が必要だと言う
オレは写真を用意して大学に行った
女はころげるようにオレに近づいてきた
上司が会議で嫌味な同僚が休みだから都合がいいと言う
オレは写真を渡してしばらく待った
女がまたオレに駆け寄ってきた

あなたのイメージにぴったりの名前の学生を見つけたの
女は得意そうに言った
それで一週間も手間取ったのか
オレは舌打ちした
が、女はそれに気づかない

この学生は親がお金持ちなの
ついこの間からスイスに遊学してる
当分帰ってこない、もしかしたらもう帰ってこないかも
だから彼になっちゃいなさいな
でも彼を知ってる人には気をつけて
女が生意気にオレに意見している

女はIDの意味をまったく理解していない
これがどれほど貴重なものか、知っているのか
国が違えばこのために大金を積む
命を賭ける奴もいる
自分を証明するのはそれほどのことなのだ
だが、愚かな女は自分のしていることを理解できない
オレは思わず苦笑した

その笑いを馬鹿な女は勘違いした
そんなに嬉しい?
相変わらずの恋人気取りでオレの顔を覗き込んだ
オレはますます可笑しくて大笑いした
すごく嬉しいよ、ありがとう
女は勘違いしたままにっこりと笑った

それからオレはファン・ミンスになった
学生証を使ってマンションを借り、銀行口座を作り
時折大学に行ってはあいつの周りをうろついた
そして、あの店に行った翌日のことだった
女から電話が入った

「来たわ、あなたの言った通り、例の外国の先生」
「それで何を聞かれたの?」
「あなたが今日授業を取ってるかどうか」
「どう答えたの?」
「学部が違うから教えられない、学部長の許可をもらってって」
「それで?」
「でも先生にだけ特別に教えてあげるって」
「そしたら?」
「とても丁寧にお礼を言われたわ。さすがに紳士ね」
「そうだね」

「今日はあなたは授業を取ってないって言ったの」
「それだけ?」
「そうよ。ついさっき来たわ」
「わかった、教えてくれてありがとう」
「これでよかったの?」
「うん、あの先生にちょっと目をつけられちゃって」
「そうなの。気をつけてね」
「ありがとう、ハニー」

女が電話の向こうで呆けた顔をするのが見えるようだ
ハニー
お前の本名は何だったかな
名前を覚えていないからハニーと呼んでいる
必要のない事は忘れるに限る
オレにとって女はすべてハニー
オレのお馬鹿なスィーティ

あの可愛いお兄さんは早速あいつに連絡したようだ
あいつがオレを探しているらしい
そろそろ会いに行ってやろうか
少しはオレの存在を自覚してもらわないとな
これからのお楽しみに花を添えるために

オレはゆっくりと大学の方へ歩き始めた



I'll be back 2 ぴかろん

戸口を塞いで真っ青になっているチョンマンを、まん丸い目で呆れたように見つめるテプンとシチュン

「いたんだ!ターミネーター」
「どこに!」
「出たトコ!駐車場の…車の陰に…」
「「はあ?!」」

ターミネーターを見たと言い張るチョンマンは、帰ろうとする俺達を押し留め、絶対危険だから今夜は皆でここに泊まろう!なんて言い出す

「じゃ、一斉に出よう。ターミネーターか変質者か知らないけど、とにかく多勢に無勢っていうだろ?これだけの人数で出て行けば怖くないさ」

ギョンジンの提案に皆が賛成した
それで、そこにいた全員…すなわちシチュン・チョンマン・テプンの三人、新人のソグ・ビョンウ・ジョンドゥとじゅの君、ジュンホ君、テジン、センセとウシク、ラブとギョンジン、ドンヒとホンピョ、ジホさんとソヌさんとテソン、スヒョクとソク、そして俺…は、どどっとかたまって外に出たのだ

*****

ピピピ…
同じ顔

わらわらわら
わらわらわらわら
わら
わら
わらわら
わらわら
わらわら
わらわらわら
わらわ…ピー!不適合!違う顔!
わら!ピーピーピー発見!ターゲット発見!
ターゲットに照準を合わせよ!

しゅたん!
♪タタンタンタタンタンタン・タタンタンタタンタンタン…タタンタンタタン! タタンタンタタン! タタンタンタタン! タタンタンタタン!

*****

「ほほほっほらっほっ…でたっでたっターミネーター!(@_@;)」

チョンマンが大げさに叫び、駐車場を指さす
車の陰からぬっと立ち上がった黒い革ジャンの金髪男に皆が注目する

「うわ…」
「武器もってないょ」
「ナニジンだ?」
「グラサンで目隠してる」
「つよそう…」
「こわ…」

男は俺達の塊に近づいてくる

「あれ?」
「どした、イナ」

俺の疑問符とともに、仲間の多くが小さく囁いた

「あれ?」「あれ」「あれだよね?」「あれぇ?」「あれさ」「あれだねぇ」「あれだあれだ」「あ~れ~」

俺はその金髪の男に近寄る

「イナさんっあぶないっ!」

チョンマン一人が大きな声で叫ぶ

「ジャンスさん何してんの?」
「ええええっ?!」

「チョンマン、ホントにわかんなかったの?」
「僕、あの撫で肩でわかりましたけど」
「僕も」
「見る目がないのよね、この子」
「監督っ!(>o<)」

「ちいっ!バレたか…」
「なによ、どしたの?この金髪…」
「ふふん。ヅラだ。それより、これを…」

ジャンスさんは金髪を揺らして、俺に赤いバラを一輪差し出した

「…。なにこれ…」
「プレゼントだ」
「…。は?!」
「テジュンが来なくて寂しいだろうから俺がお迎えに来てやったぞ♪」

「ジャンスさんだ」「ジャンスさんだ」わらわらわら わらわらわらわら…

皆がジャンスさんの周りを取り囲んだ

「う…うおっ…こんなにイッペンに同じ顔に囲まれると…くひひ…悪いことしたくなりますなぁ」
「…なんでジャンスさんが俺のお迎え?」
「いやぁ、俺も今夜はヒマなんでな。くふん、マイハニーがコドモ連れて実家に里帰りなんだ」
「…。夫婦喧嘩か?」
「ノンノン!俺んとこはお前らと違ってグッジョブ・グッコミュニケーションなスウィート・ファミリーなんだ♪心配すんな」
「…。誰も心配しねぇけど…。グッジョブって何のこと?」
「きゃっ!えっちぃぃぃ」

顔を覆ってしゃがみこむ『撫で肩怪人』

ああ…
きっと『そっち方面』の事を誇示したかったんだな…(-_-)

「で?その扮装は何」
「趣向を凝らしたお迎えだ。気に入ったか?」
「…。チョンマンがビビった」
「くふん」
「他の皆は一発でわかったけどな」
「…」
「んで?お迎えに来てくれたのはいいけど、俺、ひとりで帰れるからさ」
「ああん。そんな事言わないでジャンスと遊ぼうよぉぉ~」
「は?!」
「飲みに行こう♪」

「行きたい!」「ボクも」「俺も」「「「俺達も行くっ♪」」」「「連れてってぇぇ~」」

俺も僕もワタクシも拙者も…と、そこにいた半数以上が手を挙げてジャンスさんに群がった

「しょうがねぇなぁ。じゃ、皆で行くかぁ?くふん」

ジャンスさんは嬉しそうに、人数を確認し、馴染みの店とやらに電話している

「ぼく、とってもいきたいのですが、そにょんさんと『でぃぶいでぃ』をみるやくそくをしてるので…。もうすぐおむかえにきてくれるんです…あっ!きたきた。そにょんさぁん」
「ジュンホさん(^o^)お待たせ…あら?きゃあっ!ターミネーターじゃないの!どうして?どうして今夜私達が見ようとしている映画の主人公がここに?!」
「そにょんさん、こっちにきて。たーみねーたーさん、すみません、ぼくのつまとしゃしんをとってください。そにょんさん、ならんで」
「きゃあきゃあ♪」

カシャ

「あ、ドンヒくん、ぼくとそにょんさんとたーみねーたーさんとのすりーしょっとをとってください。ぴーす♪」

ジュンホ君は、携帯のカメラでそんなアホーな写真を撮ってもらい、それから名残惜しそうにジャンスさんと固い握手をして帰っていった

「ボクもちょっと野暮用があるのょ…」

ソヌさんがポソリと言った
うん
ソヌさん、行きたくないだろうな…こんな『ターミネーター』な人と飲みになんか…

「残念だナ…。勝負したかったんだけどナ…」

ん?
行きたかった?

そうして、ソヌさんは『ターミネーター』の胸板に軽くパンチを浴びせ、ニヤリと笑ってカツカツ夜の街に消えた

「ナゾだなぁ~ソヌ君は…。そろそろ『恋人』を紹介してくれてもいいのに」
「いっ?!ソヌさん、彼女いるの?」
「さあ~」
「…。ジホさん、あてずっぽうでモノを言うの、やめてくんない?」
「ふふーん。ボクも行こうっとぉ♪」

ビデオ片手にのらりくらりのジホさんも行く気満々のようだ

「悪い…僕は…帰る…」
「ん?あ…うん。気をつけて…」

テジンは伏目がちに呟いて、ゆらゆらと帰って行った
…テジンにも何か問題が起きたらしい…

「僕は明日の仕込みとかいろいろあるから、すっごく残念だけど帰るね」
「たまには付き合えよぉテソン~」
「んー、もっと前から言っといてくんないとぉ、明日、店、開けないよ」
「そっか…。そだな。わかった。じゃ今度はちゃんと計画立てて飲みに行こうな」
「うん。僕もホントは行きたいんだから。ジャンスさん、こないだのアロマセットの実験結果、今度教えてね。じゃね(^o^)」
「チェミさんによろしくな」

テソンはにこやかにcasaへと向かった
多分、casaで『美味いもの』が待ってるんだろう…

「ウシク…僕達は失礼しようよ」
「や!」
「でもウシク…。僕はどうもジャンスさんと会話が噛み合わなくて…」
「や!」
「ウシクぅ」
「帰りたければセンセ一人で帰って!」
「んな危険な事!お前を一人で飲みに行かせるなんて!」
「…うふ…やっぱり心配してくれるんだぁ♪」
「当たり前だろう。ほっといたらどれだけ食べるか…。夜食べると即『脂肪』だぞ」
「…」
「だから、帰ろう。ね?」
「や! ()`^’()」

というわけで、渋っていたイヌ先生も、頑固なウシクに負けて一緒に来ることになった

じゅの君は、帰りたそうにしていたけれど、「ちょっと顔出してスッと帰ればいいじゃん♪」というチョンマンの言葉を真に受けて『不安半分・期待半分』といった複雑な表情で参加を決めた

「イナさん…」

ラブが俺に声をかける
俺にはちょっとだけ、わだかまりが残ってる

「俺も…行ってもいい?」
「…。来たけりゃ来いよ…」
「俺の事、キライになった?」
「…。いや」
「ああんラブを嫌う奴なんていないわよぉ、ねぇイナ?」

しゃしゃり出るギョンジン
俺を見る目がちっと厳しい…

「…。お前ともちゃんと話したかったから…丁度いい機会だ」
「…イナさん…」
「ああん、イイコねぇイナったらぁ」

ギョンジンが俺をハグした
暑苦しい!
案の定、ラブにパンチを食らっていた

後の奴等は帰る気などさらさらない、という顔でそこにいた
そうして俺達は、『ターミネーター』なジャンスさんの、馴染みの店に行くことになったのだ…ふぅ…


So What? 1 ぴかろん

♪ゴォォォォン♪

その店のドアを開けると重厚な銅鑼の音が響いた

普通「カランコロ~ン」ってな音がしないか?

そう言えばBHCのドアの開閉音は「♪キラキラキラリラリン♪」ってカンジの音だったなぁ…今まで意識してなかったけど…
とにかくこの店は重厚な銅鑼の音なのだ…

「よぉよぉよぉ、すまんですなぁ重鎮」
「遅いですぞ、ジャンス殿!」

「う」
「あ」
「チン隊正…」

「お?こっ…これは…BHCの皆様…」

ジャンスさんの馴染みの店ってのは、なんとなんとなんと、「MUSA」だったのだ!
俺達がチンさんと知り合いだって事、ジャンスさんは知っていたようで、別段驚きもしない
そしてその懐かしいオヤジさんを、ジャンスさんは『重鎮』と呼んでいる
俺達はわらわらと、バーカウンターの向こうで渋いバーテンダーに変身した『重鎮』チンさんの前に駆け寄った

「お…おお…お久しぶりでございますなぁ皆さん、お元気であられたか?」
「チンさんこそ…。え?…チンさん…ひとり?」
「最近ウチのホ○ト達が売れに売れておってなぁ…」
「ふっ。重鎮だって引く手数多じゃねぇかよ」
「ジャンス殿、お戯れを申すな。ワシのような老いぼれなど…」
「なぁに言ってるんですか重鎮…、俺は知ってますぞぉ、重鎮、チョコチョコ出てっては大金ドーン♪でしょうが」
「げほっ!ジャンス殿!…将軍の耳に入らぬようにお願いしますぞ」

「そう言えば暑苦しいあの二人は?」
「ヨソルさんもいないね」
「顔だけはバッチリな三人だったのに何でいないの?」
「お…おお…ですから皆『売れに売れ』ておるのですわい」
「「「へえええ~」」」

チンさんの話では、ヨソルもジョン将軍もドンも、それぞれ『別の』仕事がたくさん舞いこんでいて、中々店に出られないんだそうだ
客は来るのか?と皆心配したのだが、静かな雰囲気を好むおっさん達が仕事帰りにやってくるらしい…
ジャンスさんもその中の一人だと言うのだが、ジャンスさんがやってきたら『静かな雰囲気』はブチ壊しなんじゃねえのかな?

「時に、あの、元気のいい車好きのお坊ちゃんはいかがいたした?」
「え?…ああ…ドンジュン?」
「左様、ドンジュン殿はお元気かな?今宵はお見えではないようじゃが…」
「んー、今日はぁ…彼氏と…」
「デートデート、あいつも色々あってさぁ」
「ほほう…ドンジュン殿の彼氏といいますとあの…」
「そうあの…」
「絢爛豪華男絵巻の方でしたかのぉ…」
「…」

俺達は言葉に詰まり、チンさんは腕組みをして口を開いた

「…。いろいろと…のぉ…。ふむ。…絢爛豪華総天然色男複雑絵巻…ですな?」ギラリ

チンさんの鋭い眼光に、俺達は皆俯いた
さすがだぜ重鎮
という訳で、俺達もチンさんを『重鎮』と呼ぶことにした

チンさん一人の店に客は俺達だけ
貸切状態だ
みんな、適当に散らばって酒を飲み始めた
ジャンスさんはそれぞれの席に酒を注いで回った

チョンマンとジホさんは『重鎮』と映画の話をしている
その隣でじゅの君は、真剣な顔をして頷いている

テプンとシチュンは、お互いの悩み事を打ち明けあっているようだ
時折テプンが「うえっ?そんなに頻繁にヤるもんなのか?」とか「うえ?そんなに長いことしなきゃいけないのか?」とか「一発デカいホームランじゃだめなのか?」とか叫んでいる
どういう悩みなんだ!

その二人の前でドンヒとホンピョがぽけっと座っている
何やってんだこいつら…

ビョンウとジョンドゥは二人してじぃぃぃっとイヌ先生とウシクのカップルを観察し、時折コソコソと内緒話をしては、何かをメモに書き付けている
こいつらも何してんだろ…

そして俺は、一番大きなボックス席で、ギョンジンとラブ、ソクとスヒョクのバカップルのイチャイチャっぷりを、どういうわけかソグ君と一緒に味わわされているのである

*****

うーむ…キム・イナと二人でじっくりこってりコテコテジュンの話をしようと思っていたのに、随分な展開になっちまったものだ
しかし楽しい
学生時代を思い出す
こうやって、わらわらわらと若い連中を引き連れて飲みに繰り出すのは何年ぶりだろうなぁ…くふふん
俺はこちょこちょと固まっているBHCの連中の席を、酒瓶を持って回ったのである

最初は重鎮のいるカウンターだ
のらりくらりのジホ君が、重鎮の前ではえらく礼儀正しい好青年っぷりを発揮している
重鎮はトッショリだけあって、いろいろなことをご存知だ
ジホ君の専門である『映画』についても、様々な知識をお持ちである
流石は重鎮!たくさんの裏話にジホ君の瞳がキラキラ輝いている

隣にいるサル…いや…チョンマン君が、そんなジホ君の顔に、口を半開きにして見とれている
ジホ君のもう片隣には、可愛らしいじゅの君がいて、重鎮の話を真剣に聞いて頷いている
いいコだなぁ…俺の会社に来てくンないかなぁ…

俺は、呆けた顔のサル…いや…チョンマン君を肘で突き、酒を注いだ

「なぁにに見とれてるんだな?おお?」
「は…いや…監督のあんなキラキラ顔って…初めて見たんで…」
「ふぅむ…映画が大好きなんだな?のらりくらりひょんは…」

俺が呟くと、サル…いや…チョンマン君はハッとして俺を見、それからまたジホ君を見つめた
ん?
ちっと熱を帯びたような赤ら顔になってるぞ、ますますサルだ…

「惚れたか?」
「…え?!」

真っ赤な顔のおサルさんが、潤んだ瞳で俺を見た
落ちたらしい…
のらくらヒョンに…

落ちるポイントはあったのか?
ただ重鎮と映画の話を熱く、熱く語り合ってるだけじゃないか…

「ほ…惚れたって?」
「ジホ君に」
「はあ?!」
「だってキミ、顔が赤いぞ。お目々もウルウルだし」
「いや、監督っていつもヘラヘラしてるけど、映画を本当に愛してるんだなぁってわかって…。なんだか今までより親しみ持てる気がして…僕も映画を愛してますからっ!それに…」

そう言うと赤ら顔のおサルさんは、今度は重鎮をより一層熱い瞳で見つめた
ジジ専なのか?!

「…チンさんってカッコイイ…。祭の時もかっこよかったけど、バーテン姿でさりげなく深い知識を訥訥と語る姿がすげーカッコイイ…(*^^*)」
「重鎮はよく映画に出ておられるぞ」
「え?!」
「なんだ、知らないのか?ラブストーリーから社会派ドラマまで、幅広くご活躍だぞ」
「そ…そうなんですか?!」
「おいおい…勉強不足だなぁ、サル君」
「…はぁん…(*^^*)」

おサルさんの落札ポイントは、『映画』らしい…
わからん!おサルの頭の中はわからん!

俺は、清純派のじゅの君の隣に移動し、グラスに酒を注いだ

「あっ。すみません、有難うございます」
「奥さんは?順調か?」
「はい、ありがとうございます。とっても順調です♪」
「…ぱぱか…こんなに可愛い顔をしているのに、もう…」
「…えへ…」
「BHCに来る前、かなりボンビーな暮らしをしてたらしいが」
「あ…はい…僕、学生でしたし、バイトしかできなかったし…」
「そぉんなボンビーな暮らしでも、アレだな?ん?やることはやって…」
「ぶほっ…」
「…。なぜ『気をつけなかった』のかなぁ、若いって素晴らしいけど、やぁねぇ♪」
「げほっ…」
「俺も身に覚えがある。命を大切にな」
「…は…はい…」
「で?お前さんも重鎮の話に惚れたのか?映画に興味アリか?」
「あ…の…。僕の両親、早くに亡くなったので…なんだか僕の父親みたいに思えて…。お話もとってもためになりますし…」
「ほほう…なるほどなぁ。キミはほんっとにイイコだなぁ♪」

じゅの君の頭をナデナデしてあげた
ジホ君は重鎮と熱く語り合っているので、酒を注ぐのはやめておいた

それから次に、うるさいうるさいテプン君とシチュン君の席に行った
ホンピョ君がピクリと動く

「うぉい、俺は『いいジャンスー』だぞ」
「わかってら…。どーしてもその顔が『わるジャンス』と重なるんだよ」
「こら!ホンピョ!」
「なんだよドンヒは小うるせぇ…」
「口の聞き方に気をつけろよな。すみませんジャンスさん…」
「相変わらず保護者とガキなペアだな、お前ら」
「「保護者とガキ…」」

二人はそれぞれの理由で、俺の言葉に少し傷ついたらしい
ジャンス、しーらないっとぉ♪

「ねねね、ジャンスさんちの『グッジョブ』ってどんな具合よ」

シチュン君が俺に食いつく
その隣でテプン君がまっ青な顔をして呟く

「…俺は『バッジョブ』しかしてなかったのか…。それでチェリムは最近冷たいのか…(;_;)」
「ええっと…」

俺は、シチュン君とテプン君の、恋人とのコミニュケーション・グッジョブ編について、持てるだけの知識を披露した
シチュン君は『そんな事は知っている』という顔で、テプン君は『そんな事をしなければならないのか!』という驚き顔で俺の話を聞いていた
横目で確認したのだが、ドンヒ君の反応はシチュン君と同じで、ホンピョ君の反応はテプン君と『ほぼ』同じだった事を報告しておきたい


So What? 2 ぴかろん


*****

スヒョクとソクはまだいいとして、やっぱりこいつらはどうにかしてほしい…
ギョンジンはラブに纏わりつき、ラブはそれをうっとおしそうに振り払う
その度に俺の隣のソグ君は腰を浮かせて「ギョンジンさん、大丈夫ですか?」と手を貸す
そうするとラブが怖ろしい顔になり、ギョンジンの腰をぐいっと引っ張り寄せ、「俺の肩を揉んでぇん」とか「俺、腰が痛ぁい」とか、口調は甘えたさんだけど表情は氷の女王といった状態でソグ君を睨みつけるのだ
でもソグ君はそんな事まーったく気づいていない
爽やかな好青年だけど…なんかこう…無頓着っつーか無防備っつーか…
どっか「ズレ」てるんだ
大丈夫なのか?って背中叩きたくなってくる
で、ラブの腰とか肩とかモミモミしながら、ギョンジンはあはーんとかくふーんとか、変な声を出す
んでまたラブにお仕置きされ、その度にソグ君が…

はあ…

三人を横目で見ながら酒を飲んだ
こっちに気をとられて油断してるとスヒョクとソクが熱い視線を交わしながら軽いキスを繰り返していたりする!
やっぱこいつらもよくない!
軽いキスじゃなくて、もっとガンガン!『例のコト』を!ヤッちまえ!バカジジイ!

「はあっ!」

大きな溜息をついた
5人が一斉に俺を見た

「…なにさ…なんだよ、見るなよ!」
「イナ…寂しかった?」
「ごめんよイナ…ほったらかしだった?」
「イナさんごめんね、お話しようか」
「…俺…イナさん…俺…」
「イナさんの顎の角度は55度ですね。ミンチョルさんは60度でした」

「「「「「はあ?」」」」」

「つまりイナさんの方がやっぱり痩せてると…」
「何言ってるの、ソグ君」
「いくらミンチョルさんが体絞ってもイナのが細いに決まってるじゃないか!」
「なんでギョンジンさんもソクさんもそんなにカッカしてんのさ!イナさんの事となると見境がないんだからっ、ねぇラブ」
「…。俺…イナさん…」
「でも本当の事です。ちなみに顔の幅も数ミリですが違いま…」
「「んな事、僕達解ってるの!」」
「…」

ソクとギョンジンに怒鳴られて、ソグ君は急に涙目になった

「あ…ソグ君、ごめん、怒鳴っちゃって」

ギョンジンが謝る
ラブがブーッと膨れる
ソグは俯き涙を拭う
俺はソグを慰める

「…えっと…お前なんで泣いてるの?」
「ギョンジンさんが怒った…ぐすん…」
「いや、ソグ君ごめん、つい大きな声を痛ぇぇぇぇっ!…ひん…ラブ…ちゅねらないでよ…」
「ふんっ!」

「ソグ君はギョンジンが好きなんだよね~」
「む」
「だよね~ソグ君?」

スヒョクがすこぉしばかり意地悪い顔をして、ラブをチロチロ見ながら言った

「…はい…好きです。尊敬しています」
「あ…へへん…。ラブ、そ、尊敬してくれてるだけだから…」
「こないだは、キスの仕方を教えてくださいました…」
「あんだって?!」

ラブの頬がドンジュンに、目がギョンビンになる

「…どういうこと?!こいつがお前にどんな風にキキキスを教えたってぇの?!」

燃えている
ラブが燃えている
嫉妬の炎がメラメラだ…
だがソグ君は、そういう事には気づかない
くすんくすん鼻を啜りながら、ギョンジンのレッスンの模様を『忠実に』再現した

…僕がちょっと落ち込んで一人で控え室にいた時、ギョンジンさんが入ってらして…そして『スタイリッシュなキスの仕方って知ってる?』っておっしゃったんです
僕が『知らない』と答えると、『教えてあげる』って言ってキスを…

「したの?!」

強い口調でラブが聞いた

「はい。十通り、教えていただきました(*^^*)」
「!」
「あ…ラブ、違うの、あの、すべて寸止めで…いや、二回ぐらいはその…確かに触れたけど軽くだし…」
「…ひどい!ギョンジンさん!二回だなんて!三回でしたっ!ラストの一回は3分12秒でしたっ!」
「…3分12秒?!」
「え?そ…そうだっけなぁ」
「それ…軽く?」

ラブの瞳が燃えながら泳ぐ

「あ…うん…軽く…へへ…ね?ソグ君(^^;;)」
「はい。軽かったです」
「…そ…。そんなら…まあい…」

ホッとするラブ

「ギョンジンさんにとっては『軽い』んだそうです…でも僕…あ…」
「「…」」

固まるギョンジンとラブ
斜め下を向いて唇に手をあてるソグ君
口を挟む意地悪なスヒョク

「ギョンジンには軽いけど?ソグ君には?どうだったの?」
「…いまだかつてない恍惚感に満ちたくちづけでした…」

ソグ君の瞳がふわふわと彷徨いだし、頬に紅がさす

おいおいおーい…(^^;;)

「唇が触れたかと思うと、まず上唇を軽く…あ…。そして歯をこじ開ける舌…。は…。僕の舌は恐れをなして隠れていたのに…あ…。探り当てられて強く吸われ…はん…。軽く…あ…噛まれてあああ…。パッと突き放されて少し寂しさを感じよう…とする間もなくかぷっと唇全部を食べられはぁぁん…。僕は立っていられなくなってギョンジンさんに凭れ掛かり、それを壁に押し付けられてまた僕の舌を吸い、僕は…僕はそれに自然に応えああああ…」

ガクっ

とソグ君は項垂れた

5秒、沈黙の時間が流れた

そしてダンっ!とテーブルを叩いたラブが、鬼のような顔をして席を立った

「あっ!ラブっ」

追いかけようとするギョンジンにソグ君が纏わりつく

「ギョンジンさん!僕は…」
「そっ…ソグ君、あの…」

身動きできないギョンジンのかわりに、俺はラブを追った
店の隅の隅の隅っこにダダダダっと走っていったラブは体を震わせている
わだかまりは残っていた
でも、いい気味だとは思わなかった

*****

「とにかく回数を重ねて経験を積むことだな。頑張ってちょーだい」

と、しょげているテプン君に『追い討ち』をかけて、俺は次のボックスに向かった

「もうよしなさい」
「だっておなかすいたもん!」

イヌ先生とウシク君が何やら言い争っている
俺は『メガネズ』のグラスに酒を注ぎ、その横に腰を降ろして彼等とともに『観察』を始めた

「みんなの分、バクバク食べちゃって!ピーナツはカロリー高いんだよ」
「だって他に食べるものないんだもん!おなかすいた!コンビニでキムパプ買ってくる」
「ウシク!」
「おなかすいた!」
「…ちょっと待ってなさい…チンさんになにか貰ってくるから…」
「キムパプかラーメンがいい!」
「…」
「それかどーなつ」
「…はぁぁ…。やめた!」
「…え?」
「僕は帰ります」
「…え?」
「お前がこれ以上ガツガツ食べるところを見たくない」
「…センセ…」
「言っても言ってもやめない…。もういい」
「…セ…」
「どーなつでもキムパプでもちゃんこ鍋でも好きなものを好きなだけ食えばいい!」
「…しぇ…」
「僕がイヤになったんだろう!」
「へ?」
「太って太ってニホンへ行く気なんだろう!」
「…へ…」
「いい相撲取りになればいい!僕の事は忘れてくれ。どうせ僕はトッショリだ。一人寂しく鬱々と暮らすよ…」
「…せっ…せんせ…僕、相撲取りになんかなる気はない…」
「だったらどうしてそんなに食べるんだ!」
「おなかすくから…」
「今日店で何本のキムパプを食べたと思ってるんだ?せっかくダンスのレッスンしても、いつもいつもいーっつも、必要以上に食べて!」
「…ぜ…」
「僕の言う事はちっとも聞いてくれない!」
「…」
「可愛くない」
「…。む…」
「帰る」
「…」

スッと席を立ち、出入り口に向かうイヌ先生を睨み付けているウシク君
目には涙が溜まっている
痴話喧嘩だ…ふふふ…楽しいな…ふふふ
ジョンドゥ君は必死で何かをメモしているし、ビョンウ君は電卓を取り出して何かを計算している
ウシク君はぷるぷると震えて今にも爆発寸前である
イヌ先生はドアをぐいっと押し…押し…

先生、そのドアは手前に引かないと開かないぞ

押し…押し…

バッ
ウシク君が立ち上がり、どどどどどーっと出入り口に突進した

振り向くイヌ先生の顔が一瞬引きつった
と同時に

どぉぉぉぉん

「うげ…」
「や!や!センセのばか!帰っちゃヤ!きらいっうええんうええん…センセが言うほど食べてないもんっ!キムパプだってお客さんにちゃんと配ったもんっ!テソンさんに頼んで僕の分は、ちゃんと『こんにゃく米』混ぜ込んだご飯で作ってもらってるもぉぉんえええんえええんっひぃぃんひぃぃいん」
「う…しぐ…ぐるじ…」
「センセこそ僕がキライになったんだ」
「え゛?」
「最近…ちっとも…ええんええんええん」
「ぞ…ぞれはお前が…」
「僕が食べてばかりいるから?!」
「…お前が…お…重くて…」
「…」
「元気で…」
「…」
「コワいんだもん…」
「こわい?」
「…。僕が壊れてしまいそうで…」
「え?」
「だってお前ったら…ごにょごにょ…」
「え?…。くふん…。だって…。けひん…」

「ジョンドゥさん、あの会話は何でしょうね?」
「もし今夜、ナニのアレの場合、どっちが『攻め』でどっちが『受け』なんでしょね」
「それはえーっと…記録によると…。『五分五分』だけどぉ…今日の形勢から見るとぉ…」

「ちょっと待てメガネズ・セルフレ君」
「…僕はビョンウです」
「そのビョンウ君。記録って?」
「あ、僕、出勤した皆さんを観察して記録つけてるんです、健康管理のために…。第一印象で皆の体調を察知して、それをテソンさんに伝えると、テソンさんが皆の体調に合わせたお茶とかお菓子とか用意してくれるんです」
「…ほぉ…」
「僕の勉強にもなりますし、テソンさんのレパートリーも広げられるし、ゆくゆくはお客様のその日の体調に合ったお料理なんかを『突き出し』として提供できるようになれたらなぁってテソンさんと話してたんです。その記録によりますと…」
「…五分五分って?」
「だから、先生が攻める日とウシクさんが攻める日とが五分五分なんです」
「…。そんな事、見ただけで解るの?」
「何もない日は二人とも穏やかですね。そんでウシクさんが攻めた日は…ね?ジョンドゥさん」
「はい。すぐに解ります」
「…どうして?」
「先生の溜息が止まらず、ウシクさんの食欲も止まらず。で、先生の瞳潤んでて、ちょっとウシクさんに甘えて…ね?」
「うん。可愛いのな、センセ」
「そうそう。んで、そういう時は、ウシクさんがドーナツバクバク食べててもなぁんにも言わないのね、うるうる見つめてて…」
「うんうん。ね」
「…ほぉぉ」
「で、先生が攻めた日もすぐわかるんだよね?ジョンドゥさん」
「そうそう」
「先生はジョンドゥさんを見つけると駆け寄ってきて栄養ドリンクを買います。ね?」
「うん。必ず二本」
「…」
「んで、先生がちょっと威張り気味でウシクさんが先生にもんのすごぉぉぉく甘えてます。ねっジョンドゥさん」
「うんうん。そうですね。先生が誰かに話しかけただけで『いやだぁぁぁ』って…」
「…アツアツだなぁ…」
「で、先生大抵腰の辺りを押さえて辛そうにしてます。ね?」
「うん。『どうしたんですか?』って聞くと、『とてつもなく重いモノを何度も持ち上げた…夢を見た』って答えるんですよ、必ず」
「…。とてつもなく重いもの?夢?」
「夢って慌てて言い訳するんですよ、センセ。くふふ。んでウシクさん、多分『上』が好きなんじゃないですか?ね」
「…。ビョンウ。経験もないのによくそんなこと平然と言えるね」
「あ、ジョンドゥさんだって『それほど』経験ないくせに」
「あー…。わかった。とにかく『上』に『重いの』が乗っかってくると…」
「そうです」
「それを何度も『持ち上げる』と?」
「そういう『夢』を見るんだそうです」
「…」
「かなり疲れるみたいです」
「…そう…」
「多分今夜あたり久々に…だよね?」
「そうだね。明日あたり栄養ドリンクと湿布を大量に用意しておかないといけないかな」
「…。うーん…。十日ぶりかな…」
「そんなに空いてたの?」
「前の時に腰を痛めたのがひびいてるみたい」
「そうかぁ…。じゃ、やっぱりウシクさん、少し体重を減らさなきゃねぇ」
「先生に負担がかかるよね」
「うんうん」
「今晩どっちがどうかな」
「先生がピシピシ厳しいからさぁ」
「やっぱ先生かなぁ…。腰、大丈夫かなぁ…」
「…人の心配より自分達の心配しなさいよ、お前たち」
「「どうしてですか!これもBHCのためなんですよ!」」
「…あ…そ…」

メガネズとそんな会話を交わしている間に、ウシク君と先生は、重鎮からチャプチェを貰ってニコニコと席に戻ってきた
結局また『食べる』らしい…











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