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ぴかろんの日常
リレー企画 259
ごさいじ・たびのきろく そしてちぇじゅ・てじゅ part4 ぴかろん
テジュンのおかげで元気になった僕は、ワインをちびりちびりと舐めました
それを見てテジュンは、ちょっとやらしそうなニヤニヤ笑いをしました
風呂に入ってこいよと言うと、一緒に入ろううぇへへん♪と誘われました
僕はそっぽを向いて、ワインを舐め続けました
「お前、そのワイン、どこ産かわかる?得意だったんだろ?」
「付け焼刃だよ」
「当ててみろよ~。外れたら一緒に風呂入ろうなっ♪」
そう言ってワインのラベルを隠すテジュンは『卑怯者』だと思います
お前さっき『らすべがすのかじの』で賭けするのは不利だからいやだっちったろ?今、俺、不利じゃんか!と正当な意見を述べた僕ですが、テジュンはそれに対して、僕はヨンナムがくっついてきたって時点で物凄く不利なんだからお前もちっとはハンデをつけろ、とわけのわからない理屈を喚きました
…当てる自信はありません…。負けるとわかっている勝負はしたくありません。でも…。テジュンがちょっと可哀想だったので、僕はワインを観察し、香りを確かめ、口に含み、テイスティング(のまねごと)をして見ました
もし負けても、風呂ぐらいならチャチャッと入ってサッと出ればヨンナムさんにバレないでしょう…でもでも…『チャチャッ』で済むかどうか心配です…
「ど~このだ~?」
「…。んと…。重厚さと繊細さが複雑に絡み合って…。んと…。爽やかで。んと」
「くくっ。無理すんなって」
「んと。ぶるごーにゅ?」
「!」
なんとなくそんな感じがしたので言ってみました。テジュンの顔が引きつりました。あれ?ビンゴ?僕の舌、まんざらでもない?(^^;;)
テジュンはがっくり項垂れて、スゴスゴと風呂に行きました。へへ…よかったぁ!
テジュンは『あんなあれ』ですから、もし一緒に入ったら僕は絶対『無事』ではないでしょう…
なんといってもくどくてしつこいですから、万が一ヨンナムさんに見つかったらと思うと…(_ _ ;)
よかった…。ホッとしました(^o^)
テジュンはバスルームのドアから顔を覗かせて
「ほんとに一緒に入らない~?」
と甘えた声を出しました
「入らない!勝ったもん、俺!」
「…けち…」
寂しそうにドアの向こうに消えたテジュン。ちょっとだけ気の毒になりました
散々迷った挙句、まだ10時半をちょっと過ぎたところだったので、ヨンナムさんはもう少しバーにいるだろう…、ならテジュンの背中だけでも流してやるかと思いました
*****
一人寂しくバスタブに浸かっていると、洗ってやる!などと言いながら、僕の可愛い子ちゃんがバスルームに入ってきた(@_@;)
鼻血が出そうになった!
だって…ぱん○は穿いてるけろ、ワイシャツだけなんだもんこいつったら(@_@;)
イナはアカスリミトンを手にとって、僕の背中をコシコシと擦り始めた。痛くないか?と聞くイナに、痛いよう、痛いようと喚いてやった
イナはムッとした顔で、僕の背中をもっと強く擦った。痛い!本当に痛いっ!
僕はイナの腕を掴んで、この野郎、もっと優しくしろよ!と言いながら、バスタブの方に思いっきり引っ張ってやった
案の定、湯の中に頭から突っ込んだイナは、ひーひー言いながら顔を上げ、目に泡がっ酷いびしょびしょだっ、てじゅのぶぁがっ!と叫びながらタオルを探していた
ふふふ…ははは…
笑う僕の脳裡を過ぎる『同じような光景』
ふ…
『同じような事』を…僕はあの子に…
は…
なんで思い出すのか…、こんな時に…
*****
テジュンはバブルバスでアワアワでした。僕が力を入れてテジュンの背中を擦ると、痛いと喚いて僕の腕を引っ張りました。おかげで僕はびしょ濡れになってしまいました
目にアワアワが入り、痛くてたまりません。タオルをくれと言っているのに、テジュンは知らんぷりです!きいっ!
僕は自力でタオルを探し当て、顔を拭きました。頭から突っ込んだので、ワイシャツもびしょ濡れです!きいっ!
ぶつぶつ言いながら、シャツを脱ぎかけ、あ、ヤバイと思い、チラリとテジュンを見ました
テジュンは…
ぼんやりした様子で小さく目を泳がせていました
胸が痛みました
テジュンに僕の気持ちが伝わるように、僕にもテジュンの気持ちが伝わりました
テジュンは『あいつ』を浮き上がらせてしまったようです
そしてそれを一生懸命沈めようとしています
僕は知っています
沈めようとすればするほど、『あいつ』が浮いてくるのを…
不思議です
妬ましいと思わないのです
ここにいるテジュンの全てが愛しいと感じます
さっきテジュンが包み込んでくれたように
僕もテジュンを抱きしめたい
僕は着けていた服を脱いで、バスタブに飛び込みました
テジュンはハッと顔を上げました
僕はテジュンを見つめて微笑みました。そして目を逸らすテジュンをそっと抱きしめました
「ごめんイナ…僕…僕今…」
テジュンの唇を人差し指で押さえ、その頭を僕の腕でそっと包みました
さっきテジュンがしてくれたように、僕もテジュンの頭や背中を優しく撫でました
小さな溜息が幾つか聞こえました
強張っていた体が柔らかになりました
僕は体を離してテジュンを見つめました
「イナ…僕、ラブに…」
「元に戻ったみたいだね。よかった。その先は聞かなくても解ってる」
「…え…。なんで知ってるのさ、僕がラブを」
「言うなっつーの!ぶぁか!…てじゅがあいつにやりそうな事ぐらい想像つくよ…。元気になったみたいだから、俺、先に出るわ」
「え?!本格的に慰めてくれるんじゃないの?」
「…ふ…」
僕はザバッと立ち上がり、とっととバスタオルを巻いて外に出ました
あのままバスタブで『てじゅを慰める』などしたとしても、テジュンはまた目を泳がせて落ち込むだけです
放っておけば、さっきの感情は流れていくでしょう
部屋に戻った僕は時計を見ました
11時ちょっと過ぎです
ヨンナムさんとスヨンはまだバーにいるのでしょうか…
随分仲良くなったものです…
嬉しいような寂しいような思いがまたふわふわと湧いてきましたが、もう平気です
僕は、くふっと笑い、持ってきたパジャマ代わりの服に着替えました
*****
イナは急激に成長したみたいだ
僕に怒りもせず、上手く流してくれた
ありがたいような寂しいような…
…贅沢な僕…
…あの時は…ごめんね、ラブ…
バスタブの淵に頭を乗せて、僕はソウルに思いを馳せた
暫くして風呂から出ると、イナはワインを舐めながらメールをしている
なんて格好してるんだ!
「あんまりだろう!久しぶりの夜なのにっ!」
*****
ワインを飲みながら、今しがた届いたわけの解らないメールを読んでいると、腰にバスタオルなおっさん姿のテジュンが、僕のパジャマ代わりの服を色気がないと言いました
色気は必要ありません!ヨンナムさんがいるのですよ!
僕はムッとして、いいじゃないか、これが一番しっくりくるんだ!と言いました
テジュンは、そんな色気のない白のTシャツと教練服みたいなズボンなんてっ!目がおかしくなる!大体そんな柄のズボンなんかどこで見つけてきたんだ!と怒っています
これ?このズボン懐かしくてさぁ、東大門市場で買ったんだ、フィットしてとってもいい具合…と言うと、ヘンな服!ヘンな服!といい続けました
僕は今来たメールを見せてやりました
「何?誰から?」
「…ラブ…」
意味ありげに笑ってやると、テジュンはムッとした顔になりました
「…なんだって?」
「んとね、『今仕事終わったよ。イナさん楽しんでる?今夜もピーちゃんと遊びます。今日の昼間はふゆそなツアーで、ピーちゃんとナントカっていう学校に行って、塀のぼりしたんだよ。お姫様みたいに扱ってもらって嬉しかった』って」
「は?」
「ピーちゃんが『ちゅんさん』でラブが『ゆじん』だったって」
「…ピーちゃん?誰だ?」
「クリスマスパーティーで金髪ゴリラやってた人」
「…ラブにずっとくっついてたあのゴリラか!なんでそんな奴と『ふゆそなツアー』に?!」
「…」
「あ…けほ…ど…どういう関係?」
「仲良し」
「…。どの程度の仲良しなんだ?」
「深く口づけあう仲」
「なにっ?!」
「メールもう一通来てる。ピーちゃんから」
「見せろ!」
ピーちゃんからのメールは、『ちゅんさんとゆじん』になりきって、どこそこの公園で雪だるまにキッスをさせ、その後自分たちも『他のツアー参加者のたっての希望により』キッスをしたんだとか…。ただ、雪がないので、『雪だるまぬいぐるみ』でキッスさせたらしいけど…
「雪だるまキッスなんかどうだっていい!自分達もキッスしたってどういう事だ?!」
「気になるの?」
「…(-_-)。なる…」
開き直ったな…。ちっと正直なテジュンが、可愛くもあり憎らしくもあり…です
「動画がある。見る?」
「ど…どうがだって?!」
テジュンと一緒に見たピーちゃんメールの添付動画は、周りのマダムたちに囃し立てられながら、ピーちゃんとラブがキスするシーンでした
…最初軽くチュ…だったのが、チュ・チュチュチュチュ…になり、ついには、はぁぁむはぁぁむはむはむはむ…(_ _ ;)
動画撮影担当マダムのデカい黄色い声が、携帯のスピーカーから真っ二つに割れて聞こえました
「うわ…西洋人は唾液が多いのか(@_@;)…こんな動画なのにラブの口元が…え…えろ…えろ…光って…あ…ああ(@_@;)」
テジュンの目は皿のようになっています
僕はこの動画を保存することにしました
絶対ギョンジンに見せてやる!
ピーちゃんにメールの返事を書きました
『ちゅんさんとゆじんは、清純派代表だと思ってたんですけど違うんですね。今、僕は、とても清純派してます』
「なんだよぉ清純派返上して負けずにすっごい動画送ってやろうよぉ」
「何言ってんだよ、できっこないくせに!」
「なぁんで、できるよぉ」
「ラブも見るんだぞ、あいつ今ピーちゃんと一緒にいるんだから!」
「…」
ぶぁかです!俯いてます!ふんっ
…それにしてもヨンナムさんはまだ帰ってきません
えらく盛り上がっていたようですから、盛り上がりついでにまさか(@_@;)
いえ、それは僕が望んでいたことではありますがでも、初日からまさか(@_@;)
ごさいじ・たびのきろく そしてちぇじゅ・てじゅ part5 ぴかろん
ドキドキしてきました。まさかヨンナムさんは、朝まで帰ってこないつもりなんじゃぁ…
「…イナ、Tシャツの背中に虫がついてる…」
「え?」
「さっきチラっと見えた。背中に変な虫がいた…」
「取ってよ!」
「やだ。僕、虫キライだもの…」
「もぉぉ!ヨンナムさんなら絶対取ってくれるのにっ」
「…む…」
僕は慌てて背中の方を見ました
でも見えるはずがありません
それで僕はTシャツを脱ぎました
「チャーンス!」
「うわあひっ!」
Tシャツを脱いだ途端、テジュンが僕に襲い掛かりました(@_@;)しまった!こんな稚拙な技に引っ掛かるなんて!
両腕を椅子の背もたれに押さえつけられた僕の目の前に、テジュンのニヤけ顔が迫ります(@_@;)
テジュンの腰のバスタオルが外れそうですっ(@_@;)
ひ…ひひん…
どぉしよぉ…こんな時にもしヨンナムさんが帰ってきたらっ(@_@;)
僕は抵抗を試みました
「やめろよっ」
「イナ…」
「やめ」
「…きれいだよ…」
「(@_@;)」
僕は固まりました
だって僕は教練ズボンを穿いているのですよ!
きれい?
僕は僕の状態を頭に描きました
教練ズボン・半裸…どこがキレイ?!
ボケッとしていると、テジュンが色っぽい顔で僕の唇に迫ってきました…
なんかマヌケな状態です。僕はつい吹き出してしまいました
「ぶふっ!」
「…」
「ぎゃははは。き…きれいって俺が?!お前さっきラブの事考えてたから俺とラブと間違えてんじゃないのぉきひひひ」
「…イナ…」
「ひ…ひひ…」
「イナ。きれいだよ…」
「ひ…ん…」
ヤバイですっ!てじゅの瞳がウルルルンですっ(@_@;)
僕は必死で顔を背けましたが、テジュンの唇は執拗に僕の唇を追っかけてきます!
どぉしよぉ…
別にチューぐらいは…
…
いっか…チューぐらい…
僕は決心してゆっくりと目を閉じました
「イナ…」
「てじゅ…」
ばったんこー☆
「ただいまぁヒーッヒヒヒッ」
バタバタバタどすん★痛っ★てじゅ、ばすたおるがおちた★あわわおわわ…★おれのTシャツっ、がしぐしっ
「あ~?邪魔しちゃったぁ?」
「べべべ別に邪魔なんか…」
「ななな何でお前がこの部屋にっ」
「だぁってここ、僕の部屋だもぉんへへひひん。イナぁ。Tシャツはマフラーにはならないよぉん♪」
ヨンナムさんは酔っ払っているみたいでしたが、観察眼はしっかりしているようです…
僕はTシャツを首にひっかけただけの状態でした
「んふ。僕お風呂に入るから、続きをどぉぉぞごゆっくりぃひひん」
そう呟いてヨンナムさんはフラフラとバスルームに行ってしまいました
いけない!あんな酔っ払いを一人でお風呂に入れるなんて!
イナ、どういう事だ?!あいつの部屋がこの部屋ってなんなんだ!僕のこの勢いをどうしろと言うのだ!きいいっ…と叫びながら僕に覆いかぶさろうとしたテジュンをチョイと捻り倒して、僕はバスルームのドアを開けました
「あぅっ」
目の前にヨンナムさんの生背中がありましたっ(@_@;)
「ん?なぁにぃ?僕の裸、見たいのぉ?へひひん」
「だっ…大丈夫?ヨンナムさんかなり飲んだ?」
「大丈夫大丈夫。くふふん」
ヨンナムさんはポイポイと服を脱いで、バスタブに浸かりました
「ふぁぁ~いい気持ちぃ。ん?イナ、何してんの?僕と一緒に入りたいの?くふっ。首のTシャツ外して、こっちにおいでよぉ~」
「…ほんとに大丈夫?」
僕は心配になり、そう言いました。するとヨンナムさんはキュっと僕を見て
「そんなに酔ってないよ。早く行ってやれ。待ってるぞ、あのバカが…」
「…。気分悪くなったら呼んでね」
「ふふ。ほんとに、そんなに飲んでない」
「だってさっき酔い酔いだった…」
「ばか。演技だよ演技。お前らがベッドシーンの最中だったらヤバいかなと思ってさ。ほら、行ってやりな」
と笑いました
僕はバスルームの外に出ました
*****
どーしてっ?!なんでヨンナムも一緒の部屋なんだ!そしてどうしてまた色気のないTシャツをきっちり着なおしてるんだっ!と、僕はバスルームから出てきたイナに猛烈に抗議した
「てじゅ。もし三人で旅行してて、一人だけ別の部屋だったらどう思う?寂しいでしょ?イヤでしょ?」
「でもだってお前っ」
「てじゅはお仕事しに来たんでしょ?」
「ぞうだげどっ」
「らったら、ちゃんと体休めて、仕事に備えなよ。またスヨンに怒られるぞ」
「ぐ…」
確かに今回、僕はイイトコナシの状態だ。それを吹っ切るためにも僕はイナとアレコレしたかったのにっ!くうっ…
僕は床にへたり込んだ
でも待てよ…
「イナ、これじゃ余計に酷じゃないか?僕たちがこっちでくっついて寝てるのに、ヨンナム一人でここに寝るなんて」
「は?俺とヨンナムさんはこっちのエキストラベッドで寝るんだぞ。クィーンサイズはお前一人で使え。その方が体が休まるぜ」
「はぁん?なんで僕が一人でこんなでっかいベッドを…」
「キングサイズがよかったんだろ?」
「それはお前と二人でああしたりこうしたりすると思ってたからっ(@_@;)」
「…。てじゅ」
イナは僕を色っぽい目で見つめ、床に座り込んでいた僕に近づいてきた
くうっ。我慢できんっ
「イナ。イナイナイナ!わかった。ヨンナムが同室だってのはわかった。だから今のうちだ!ヨンナムが風呂に入ってるうちにサッサと済ませよう」
「…何を…」
「決まってるだろう!『愛のセレブレーション』だっ(@_@;)」
「…」
「さんぷんで済ませる自信がある(@_@;)」
イナの色っぽい唇がツンと尖がった
「…イナ…ぁぁん…」
「てじゅ…。俺、てじゅのこと、昨日よりもっともっと好きになったよ」
「…あぅ…いな…僕だってくぅぅっ」
もう少し近づかなければ抱きしめられないぢゃないかっ!
「昨日よりもっともっと…素敵だって思ったよ」
「ひん…いな…」
あう…このままイナと…
「今、最悪!」
「え」
「お前結局そればっかり!<(`^´)>」
「あ」
「しかも『さんぷん』で『あいのせれぶれーしょん』ってなんだよ!」
「だってよんなむがいるし、さっさとおわらせないと」
「ヨンナムさんがいるのにどーしてそーゆーことをしなきゃなんないの!」
「…らって(;_;)」
「俺、お前のことすっごくカッコイイと思ったのに…はぁ…」
「…だって僕…」
僕はしゅんとしてみせた。イナがちらりと横目で見る
「…お前とくっついていたいんだもん…」
「…てじゅ…」
イナはそっと僕の頬を撫で、優しい顔で微笑みかけてくれた
イナの唇が近づいてくる
よし!このままウルウルお目々で同情を引いて一旦イナに主導権を握らせよう
唇が合わさった後に主導権奪回だ!それからでも決して遅くはない!さんぷんがだめならいっぷんでおわらせる!
僕はウルウル瞳を小さく泳がせながら、尖がったイナの唇を待った
ばったんこー☆
「あ~いいお湯らった~」
バタバタバタどすん★痛っ★てじゅ、またばすたおるがおちたよ★あわわおわわ…
「あれぇ、僕ったらまた邪魔しちったぁ?くひひ…」
「早く寝ろよこの酔っ払い!」
「お前寒くない?バスローブ着ろよ。それとせめてぱ○つは穿け。気持ち悪いから」
「うるさいっ!僕はハダカで寝るんだっ!」
「俺、風呂に入りまぁす」
イナはニヤっと笑いながらバスルームに消えた
え?ヨンナムが出てくるって知ってたの?わざとあんな色っぽい顔して僕をその気にさせたの?
(;_;)いなぁ~
「あ、ワインだ」ゴクゴクゴク
「あーっ!なんでイナのグラスで勝手に飲んでるんだぁぁっ」
「え?いけなかった?」
「欲しけりゃ言えよ!違うコップで飲めばいいだろうが!間接きっすしやがってぇぇ(`^´)」
「うるさいなぁもう…」
「だってお前…なんでお前が…ああもうっ」
「テジュン~、お前カメラ持ってるぅ?」
「あ?はあ?カメラ?」
ヨンナムは僕が喚いても全く動じない、くそっ
「…あるよ、デジカメ」
「仕事に使うの?」
「いや、イナと観光する時のために持ってきた」
「わぁっ。じゃあ明日貸してよ♪」
「なんでてめぇにっ!」
「だってさぁ、僕、カメラ忘れて来たんだもん。せっかく旅行してるのに写真も撮らないなんてつまらないでしょうってスヨンさんに言われたんだもん…」
「…す…スヨンさんにか?」
…好感触だったのか?
「うん。明日行く予定の滝二つは是非とも写真を撮るべきだって…。そんで、済州島観光地写真コンテストに応募してみろって」
「…ふぅ…ん…。スヨンさんがそう言ったのか?」
「うん」
「…明日もイナと回るのか?」
「そうだよ。気になる?」
「…。まぁ…僕は仕事があるし…むむぅ」
「僕、明日帰るんだ」
「…なに?」
「明日、帰るの」
「そうなのかっ(・▽・)そうかっ!いいぞ!カメラぐらいいくらでも貸してやる!そうかぁ何時の飛行機だ?」
「3時前後の予定だよ」
「そぉぉぉかぁぁぁ(>▽<)だよなぁ、仕事熱心なお前が何日も配達を人任せになんてできないよなぁくっふっふっ」
「なんだよな…損な性分ねってスヨンさんに言われた」
「そおおおかぁぁスヨンさんに(>▽<)いやいやいや。やるなぁお前もぉけひひん。明日一日、存分に済州島の観光を楽しめ!あははいひひわかった!僕は明日、かなり一生懸命仕事をしなきゃならんからもう寝る。じゃぁおやすみっけひっ」
やった!明日の夜はイナと二人っきりだっ!(>▽<)
そうだと解っていれば、こんなに焦らなくて済んだのに(>▽<)
よぉし、早く寝て、明日イナが帰ってくるまでに仕事をぜぇんぶ終わらせて、そして夜はたっぷり…ぐふ…ぐふふふっ!
…明日、部屋をシャーロッテに変えてもらおう!きひーっ
僕はクィーンサイズのベッドに潜り込み、明日の夜を夢見て目を閉じた
うふふ…うふうふ…うふふふふ…
その日一日中ジェットコースターでアップ&ダウン&シェイクされ続けた僕の精神は、相当疲れていたようだ
すぐに可愛いイナキューピーが…ぐふ…眠り粉をかけてくれて…くふ…ぼくは…ふわふ…ZZZZZ
ごさいじ・たびのきろく そしてちぇじゅ・てじゅ part6 ぴかろん
*****
半裸…いや全…裸のテジュンが…コットンと眠ってから、イナがバスルームから出てきた
「寝ちゃったぞ。隣で寝てやれよ」
「やだよ。寝ててもしつこいもん!」
「あ~あ。かわいそ…」
「そんなことより、どうだった?スヨンといっぱい喋った?」
「…ん?…うん。楽しかったよ。久しぶりになんか…こう…前向きになれた気がする」
「…そ…。よかった」
イナは少し寂しげな瞳で僕を見て、それからテジュンの顔を覗き込みに行った
「突いても起きない…。よっぽど疲れてるんだな」
「『仲良し』したのか?」
「え?」
「テジュンと…」
「し…してないよ!」
「へぇん。『仲良し』したかったから火山ショーの間にずらかったんじゃないの?」
「ちっ…違うよ!」
「…ふ…ま、いいけどさ…」
「…スヨン…どう思う?」
「ん?仕事に燃えてるなぁ。可愛らしい、いい人だ」
「うんうん」
「あ、明日の朝飯、一緒に食おうって」
「えっ」
「皆で一緒にってさ」
「…。邪魔じゃないか?」
「邪魔か?」
「ん?」
「ん?」
二人で朝飯食いたいのか?と僕はイナに問い直した
違うよ、そうじゃなくて…んと…、とイナは唇を指で撫でながら言った
その指を見ているのが少し嫌だった
視線を下に落とすと、イナの教練ズボンが目に入った
「お前…そのズボンはないだろう」
「…なんでさ…テジュンも色気ないからやめろって言ったけど…。色気なんか必要ないだろ?ただ眠るだけなのに」
「僕は…目のやり場に困るけど…」
「ん?」
「ふ…。寝ようっと」
「…ん…」
ベッドに潜り込んでからもイナと話をした
スヨンさんに聞いたぞ、ここのプライベートビーチで早朝デートなんかしてたんだって?…そう言うとイナは、ああ…懐かしいな…、あの頃は毎日ウキウキしてたんだった…あんなときめき、今は無いかなぁ…なんてぬかしやがる。
…そんな事テジュンに言うなよ、あんまり可哀想じゃないか:だってテジュンはすぐに…変なこと…:テジュンはそういう男なんだから仕方ないだろ?…
話していると、あまりにも『すけべじじい』すぎててテジュンが可哀想になった
…ねぇこれ見てよ…イナが渡した携帯の画面を見た
…ラブ君?:うん:うっわぁぁ…ギョンジン君が可哀想…:だよね…:でもお前だって同じだ:なんで!:BHC顔は『罪作り顔』だ:なんでだよぉぉ:もう寝よう、おやすみ…:…ヨンナムさん…:なに?
「明日の朝、海岸の散歩しようか」
「ん?思い出の海岸か?」
「うん」
「…。早起きできたらね」
「うん。おやすみ…」
「おやすみ…」
暫くして静かに寝息を立て始めたイナの顔を見た
僕は今日、知らなかったイナの過去を見せてもらった
イナを育てた温かい人達に会えた
イナが嬉しそうなのは当たり前だけど、僕までもが嬉しくなった
火山ショーの途中で、イナとテジュンの姿が見えなくなった時、ここに来たことを後悔した
二人っきりで過ごしたかったんだろうなって…
「僕はここに来てもよかったのかな…」
半開きになったイナの唇を見つめながら呟いてみた
****
くぅん…朝日が眩しくて僕は目が覚めました。隣のベッドを見るともぬけの殻ですっ(@_@;)
僕はガバリと起き上がり辺りを見回しました。あ…いました…。哀愁の男が朝日の中で爽やかな笑顔を浮べてベランダにいるの図です
『哀愁』と『爽やか』とは同時に存在できるものなのでしょうか?
僕は少し考えてから、まぁいいやとベランダに行きました
お早うを言うと起きたのか?と哀愁爽やか男が答えました。散歩に行こうと誘うとテジュンも起こしてやれよと言われました
僕はテジュンの傍に行って海岸の散歩に行こうと言いました。テジュンは、ううんいやだ寒いから僕仕事があるから、と言いました
ヨンナムさんと二人で行ってもいいのか?と言うと、ちょっとだけ顔を上げて、ヨンナム…。…。まぁいい。そう言ってまたベッドに突っ伏しました
二人っきりで行くぞ、いいのか?!と念を押しました。別に引き止めてほしいわけではありません。後で四の五のうるさく言われるのがイヤだったからです
テジュンは、いいよいいよけひひん…と意味不明のニヤケ笑いをして、ひゃいひゃいと手を振りました
僕は服を着替えて、ヨンナムさんと部屋を出ました
「いいのか?」
「だって、いいって言ったもん…」
「じゃ、いいか…」
「うん」
僕達は微笑み合いました。ああ、爽やかです(*^^*)
海岸に降りて二人並んで歩きました。スヨンとの早朝デートを思い出します。ヨンナムさんは、朝の海って気持ちいいなと言いました
僕は昨日の事を聞きたくて仕方なかったのですが、それは帰りの飛行機の中でだって聞けますし、今は…。そうですね、今は、朝の新鮮な空気をゆったりのんびりと胸一杯に吸うことの方が大事な気がしました
波打ち際で深呼吸をしていると、ヨンナムさんがふざけて僕を押しました。よろけて濡れそうになりましたが、すんでのところでヨンナムさんが僕の腕を笑いながら支え、こけずに済みました
「んもぉぉ!俺、着替えないんだからな!濡らすなよな!」
「BHC顔は体温が高いから濡れてもすぐに乾くんじゃないの?」
「それはきつねだけだ!」
「ごさいじは乾かないのか?」
「普通の人はすぐには乾かない!」
「お前、普通じゃないじゃん。ごさいじじゃん。くはは。ほら、ちゃんと歩かないと波にさらわれましゅよ~」
ヨンナムさんは僕をまた海の方に押しました
「やめてよ、俺、泳ぎあんまり得意じゃないんだからっ!波にさらわれて沖に流されたらどうしてくれるんだよっ」
「…。大丈夫だよ。お前筋肉質だから、その辺に沈むだけだ」
「む」
「あははは」
からかわれています…悔しい…
僕はぶんむくれてホテルの方に引き返しました
ヨンナムさんは笑いながら僕の後をついてきます
悔しいです
部屋に帰ってくると、テジュンがオロオロしていました
「どうしたの?」
「どこ行ってたのぉぉ(;_;)」
「…海岸散歩するっちったろ?」
「ええん(;_;)なんで僕を置いていくのぉ(;_;)」
「…お前…誘ったのに行かないっちったろ?」
「そんな事言うわけないじゃああんええん(;_;)」
「…」
じじいは寝ぼけていたのですね…(-_-)もういいです
7時半になったので、朝御飯に行こうと言うと、テジュンはヨンナムさんを押しのけて、僕の腕に取り縋りました
かっこ悪いから離せと言うのに、いやだやだやだと纏わりつきます
ヨンナムさんは後ろでクスクス笑っています。どうするんでしょう、僕達が帰った後、テジュンはどうやって威厳を保つ気なんでしょう
昨日のペニンシュラの入り口でスヨンが待っていました
僕はテジュンの腕をこそぎ落とそうとしましたが、いやだやだやだを繰り返すテジュンは絶対に僕の腕から離れません
もう知りません!そのままスヨンのところまで行きました。スヨンはじっとテジュンを見て、今日のお仕事は大丈夫でしょうね…と低い声ではっきりと言いました
その途端テジュンはひゅるるると僕の腕から離れ、…はい…と俯きながら答えました。後ろのヨンナムさんはクッククック笑っています
「おはようございます、ヨンナムさん」
「おはよう、スヨンさん。昨日はありがとう」
「こちらこそ。楽しかったですわ」
なんていい感じなんでしょう!
僕達はバイキング形式の朝食を頂きました
「ヨンナムさん、何時にここを出発なさるの?」
「…何時?イナ」
「んと。いろいろ周るから…そだな…8時20分出発ってとこかな?…っつーことは、急がなきゃ。荷造りしなきゃ」
「荷造りってほど荷物ないよ」
「…そか…」
「…ってことで、8時20分出発だよ、スヨンさん」
「そう。じゃ、お見送りできるわね。ね、テジュンシ?」
「あ…え…はい…別に僕は見送らなくても…」
「いいの?!イナさんも一緒なのに?!」
「あ…そうだな。うん。そうだ。はい。じゃ、見送ります」
「…テジュンシ、本当にお仕事、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、やだなぁ。今日の僕は昨日とは違います!ふふん」
「…何かいい事がおありでしたか?」
「いえ!昨日は何もしませんでしたけれど、その分今日がんばります!」
「?」
「ああスヨンさん。すみませんが今夜、部屋をシャーロッテに変えていただけませんでしょうか?人数も減りますし…他の部屋も見てみたいので…ケヒッ」
「…シャーロッテに拘ってらっしゃるのね。確認して空きがありましたら変更させていただきますわ」
「ありがとうっ!僕、今日、ものすごぉぉく頑張りますからっ(@_@;)」
テジュンはやっぱりどこか変です
その後も、スヨンはヨンナムさんににこやかに話しかけていました
いい事です。僕は満足しました。昨日感じた寂しさは、もうそれほど感じなくなりました。いい事です…
ご飯を食べたらヨンナムさんと僕は早速荷造りしなくてはなりません
パタパタと部屋に帰り、荷造りをしていると、テジュンまで荷造りを始めました。なんで?
…。あ、そうか。部屋を変わるとか言ってたから…
「イナ、僕、先にフロントに荷物預けに行くね。部屋、変えてもらわなきゃ、くふふっ。後でロビーでね」
「あ…うん。解った」
テジュンはバチンとウインクをしてスーツケースを持って部屋を出て行きました
僕とヨンナムさんは、忘れ物がないか確かめてロビーに向かいました
ロビーにスヨンとテジュンがいました。僕達は二人に、行ってきますと言いました
スヨンはヨンナムさんに、ちょっと…と声をかけて、二人だけで何か話しています。…。げへん…。いい…ことでしゅ(_ _ ;)こんなにうまくいくとは思いませんでした(_ _ ;)
「イナ。何時に帰る?」
「ん?えっと…確か3時20分の飛行機」
「うん。だから、何時に帰る?」
「…。え?…だから…4時半過ぎに…着くかな」
「じゃ、まだ僕バリバリ仕事中だなぁ…お前何してる?」
「…え?…んと…空港から車…かなぁ」
金浦空港からBHCまで、タクシーで間に合うでしょうか…
ソウルの道はとても混雑しますし…やはり地下鉄の方が確実でしょうか…
僕はちっと考えました
「うん。だから、着いてから何してる?」
「…シャワー浴びて…着替えて…」
「うんうんうん!(>▽<)」
「仕事する」
「仕事?」
「うん」
「なんの?」
「いつもの」
「いつもの?」
「うん」
「え?」
テジュンがきょとんとした顔をしました。テジュンの質問することがよくわからず、僕もきょとんとしました
「イナ、お待たせ」
ヨンナムさんが僕に声をかけました
*****
…なにか話が噛み合ってないような気がしてきたぞ…
待てよ?帰ってきてなんでイナが『いつもの仕事をする』んだ?ん?
「イナ、お待たせ」
「あーい。じゃあ行こうか」
「テジュン、カメラ借りとくからね」
「え?あ…ああ…」
えと…3時20分の飛行機でヨンナムはソウルに帰るだろ?
で、イナが4時半ごろ帰ってくる…だろ?
「テジュン、じゃあね。ばいばい」
「うん。待ってる」
「え?」
「え?」
「…待ってるって?」
「…待ってるけど?」
「何を?」
「お前を…」
「は?」
「え?」
イナが唇をへの字にして僕を見つめた
そのへの字がゆっくり開いて、中から恐ろしい言葉が飛び出した
「俺、ソウルに帰るんだぜ」
「…。え?」
恐ろしい言葉を聞いた僕の思考は完全に凍結した
「じゃあね。ばいばい。スヨン、バイバイ。またね」
「またいらしてね。ヨンナムさんもお元気でね。またお会いしましょう」
「ええ、スヨンさん、ありがとう。じゃあなテジュン」
ばいばい…またね…じゃあなてじゅん…
僕は凍結を急速解凍して、質問した
「え?あ…。え?ちょっとまってイナ?お前ソウルに帰るっちった?」
「うん。じゃあね」
恐ろしい言葉
僕は完璧に氷に閉じ込められたマンモスになった…
「さようなら」
「「さようなら~」」
目は見えている。声も聞こえている。だが僕はフリージング中
遠ざかって行く可愛い子ちゃんと僕のバカ従兄弟
あ…ああ…車に乗ってしまった…
…これは夢だ…
夢に違いないっあは…あはは
「テジュンさん。シャーロッテ空いてましたから、お荷物お部屋に移しておくそうですわ」
「え…あ…」
「では少し早いですが、打ち合わせを始めましょうか」
「あ…の…。ヨンナムは今日帰るんですよね?」
「そうでしょ?」
「イナは?ここに帰ってくるんですよね?」
「…」
「…帰ってきますよね?」
「ジャンスシから、イナさん、ヨンナムさんはご一泊とお聞きしておりますわ」
「…。…。え?」
「お二人は今日の午後便でご一緒にソウルにお帰りになるそうです」
「…」
「ご存じないの?!どうして?!」
「…」
なんだって?イナも一泊?え?
僕の瞳は白目部分が見えないぐらい急速に回転していたのだろう
スヨンさんが真剣な顔で心配そうに僕を覗き込んだ
「テジュンシ?…大丈夫ですか?」
「だ…。だいじょぶ…でしゅ…」
目の前が真っ暗になり、ぐるんぐるんと頭を揺さぶられているような気がした
…イナはソウルに帰る?ヨンナムと一緒に?一泊だけ?じゃあ僕が昨日喜び勇んで今夜のために睡眠をとったあれは何?
「こ…こーひーをいっぱいのめばきっと…」
「横にならなくても大丈夫?」
「だいじょぶでしゅ…こんなことぐらい」
イナと付き合うのだからこんなことぐらい…ううう…ううっ
僕はよろめきながら、会議室へと向かった
その日の午前中、僕はほぼ使い物にならず、ただスヨンさんがニコニコと微笑みながら出すアイディアに、へらへら笑いで応えていた
ソグのメモ オリーさん
今日は休みが多い
こういうときこそ僕の印象を際立たせる絶好のチャンスだと思う
張り切っていこうっ!
実は僕はこのごろ少しあせっている
なぜなら、この店における僕の存在感がイマイチのような気がしているから
それはなぜか?
徹底的に分析して、改善しなくては
より強固な建物、いやホストになるために・・
そんなこんなを考えているうちにイナさんがやってきた
張り切っている
一時期落ち込んでいたが、
最近はすこぶる元気になったようだ
明日から旅行に行くというので、
イナさんは明日の分までがんばるぞっ!とえらい気迫だ
実は僕は密かにこの人を尊敬している
なぜなら、オーラびんびんの元チーフを
正面きって罵倒できるのはこの人しかいないからだ
うらやましい
その度胸のよさはやはり元ギャンブラーの血からくるものだろうか
ちょっと話しかけてみることにする
「おはようございます、イナさん」
「おお、ドンヒ、おはよう」
「イナさんっ、僕はソグですっ!」
「え?ああ、ネクタイの幅が一緒で間違えた、わりぃ」
「・・・」
やはりネクタイが僕の存在を邪魔しているのだろうか
ドンヒシと区別がつかないとは・・
まあいい、とにかく先に進もう
「イナさん、今日は何だか張り切ってますね」
「おお、明日休ませてもらうからなあ」
「旅行ですって?」
「ん・・てじゅえじゅしゅるっ!」
「てじゅえじゅ?」
「「・・・」」
気のせいだろうか、今イナさんがまるで幼稚園児のように見えた
「おっ、いやその、テジュンたちとチェジュドへな」
「あっああ、そうですか。チェジュドかあ、いいですね」
「おうっ」
イナさんはちょっと照れくさそうに微笑んだ
可愛いっ♪
イナさんは五歳児になれると言う噂がまことしやかに囁かれる時があるが
さっきのがそれだったのだろうか・・
ううん、わからない
高層ビルの図面を引いた方が楽だ
とにかく、ちょっと俯き加減で頭をかきながら上目遣いをするといいようだ
早速メモる
「俯き・・加減で・・頭を・・かきながら・・っと」
「お前何やってんの?」
「あ、いや別に・・気にしないでください」
「おはようございます」
突然ギョンビンさんが入ってきた
今日は一人だ
元チーフは今日撮影が遠くの海であるのでお店はお休みという話は聞いている
いつもメン・イン・ブラックのイメージで
スーツをピッチリ着て元チーフと歩いているギョンビンさんだが
今日はセーターに革ジャンというラフな格好だ
イケテル♪
時に革ジャンもよしと、メモる
実は僕はギョンビンさんも尊敬している
この人のお兄さんには大人な接吻の仕方など教えて頂いて
大変お世話になっているわけだが、
僕がギョンビンさんを尊敬しているのには
別の理由がある
あのオーラ出まくりの元チーフのお相手であるからである
僕が御曹司なのは皆さんご存知だろうか?
とても不安だ
僕は御曹司なのになぜかそのイメージを生かすことができない
ここで御曹司というと、このギョンビンさんのお相手
元チーフのあの人を思い出してしまうのはやむを得ないことだとは思うが
それでもあちらは倒産して正確には元御曹司
僕は現役御曹司なのに、御曹司の扱いを受けていない
倒産してただの人になったというのにあの人のオーラは何なのだろう
不思議だ・・
倒産は人を変えない、とメモる
僕のイメージは作業着とか物差しとか、どこかマイナーなイメージばかりが先行している
ネクタイでは、趣味が似ているドンヒシと比べられることもある
おかしい・・
どうせなら御曹司つながりであの人と比べられたいが
そのくくりはないようだ
なぜなんだろう
会社の違いか?
音楽と建設
業界の格差がこんなにあるとは・・意外だった
伸びる業界を先取りしよう、とメモる
とにかくだ、あのオーラ出まくりのお相手をしているというだけで
僕はギョンビンさんを尊敬している
それに、お兄さんもそうだが、元スパイなのだ@@
あり得ないっ!
スパイと言えば、007のジェームス・ボンドを思い出してしまう僕だが
本物を見たのは、ここへ来てあの二人を見たのが初めてだ
あのお兄さんといい、スパイはあっち方面のことも得意なのだろうか・・
スパイはあれがお好き?、メモる
それに元チーフと並ぶと、体型は同じはずなのだが
なぜかギョンビンさんは8頭身、元チーフは5頭身に見える
何かのマジックだろうか・・
不思議だ・・
スパイは体型を自在に操る?とメモる
「どうかしましたか?ソグさん?」
おお、スパイに話しかけられてしまった
「いえ、今日は色々と勉強したいと思いまして、メモしてるだけですから」
「勉強ですか?」
「はいっ!その革ジャン、いいですねえ」
「ども・・」
ギョンビンさんはやはり照れくさそうに笑った
はにかんだ微笑もぐー、とメモる
そこへのーまる組が出勤してきた
BHCでのーまる組というのは、テプンさんやシチュンさんなど
女性をパートナーにしている人たちの総称である
ちょっと待てよ
すると、イナさんやギョンビンさんはあぶのーまるなのだろうか?
あぶのーまると言うのはちょっと妖しい響きがある
まあいいか
とにかく、女性をパートナーにしている人たちを
のーまると呼ばなくてはいけないBHCの事情があるという事だろう
やはり噂ではシム・ウナそっくりの女性と結婚しているジュンホさんも
のーまるに入るのであろう
最近、テプンさんとシチュンさんの会話を小耳に挟んだのだが
結婚・資金・ない・困難・チェリム・怒る・料理・まずい
カフェ・開店・金・ない・困難・メイ・怒る
などと言う単語が飛び交っている
この単語をつなぎ合わせると
結婚したいが資金がなくて困難でチェリムさんが怒り料理がまずい
カフェを開店したいが金が足りなくてメイが怒る
と推測できる
どちらも女性が怒っているのが象徴的だ
それと二人ともお金に困っているらしい
資金は地道に貯める、とメモる
そうこうしているうちに、ドンジュンさんが厨房から出てきた
最近この人は開店前に厨房に飛び込むことが多い
テソンさんのまかないをご馳走になっているらしい
じゅる・・
僕もそのうちご馳走になりたいものだ
このドンジュンさんはあのチーフ天使のお相手なのだ
それだけで僕は尊敬してしまうのであったが
時々恐ろしく膨れる
頬の筋肉を鍛えるべし、とメモる
そうそう、元御曹司のあの人と天使のチーフは、今映画を撮っている
チョンマンさんの報告で大体の様子は把握できるのだが
何やらすごくよさそうな映画なのだ
僕もいつか見学に行ってみたい♪
だが誰に頼めばいいのだろう・・
ジホ監督だろうか
あの人は僕の顔を見るたび、耐震強度と言うので
正直うんざりすることがある
くどい説教は身につかない、とメモる
すっかり痩せてしまったイヌ先生と
春場所に出ているのかと思ってしまうウシクさん
指先だけで人を使うことができるソヌさん
バーテンダーのソクさんと相方のスヒョクさん
そしてメガネズなども次々出勤してきて
いよいよ開店の時間だ
とそこへ、ラブ君もご出勤だ
なぜか金髪ゴリラと一緒だ
この金髪ゴリラは、ギョンジンさんの知り合いでスパイらしい
またスパイだ@@
この店はどうなってる・・
まあそれはどうでもいい
今日は僕の尊敬するギョンジンさんは出張のはず
てっきりラブ君は一人でご出勤かと思っていたら
もうパートナーを見つけているとは
さすがラブ君だ
歩く媚薬、とメモる
店が始まると、その金髪ゴリラは客あしらいがうまく
ケータイを持ちながら、店内を歩きまわりバカ受けしている
不思議だ
客を掴むコツを心得ているようだ
ハリウッドを目指せ、とメモる
さて、今日はだいぶメモもたまった
僕が存在をアピールできる日も近いだろう
このソグメモでいつかきっと華々しくデビューしてみせる
すると指名が入ったという知らせが大関から、もといウシクさんから
イエスっ!よっしゃっ!
今日も一日がんばるぞっ!
で席に着くなり僕はマダムに家の改築のことで相談を受け
耐震強度の説明などをひとくんだりしたのであった
これはこれでいいのだが、
僕のこの特技が
ホストとしての可能性を小さくしているような気がするのは気のせいだろうか・・
課題山積み、と頭の中でメモった・・
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