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ぴかろんの日常
創作の部屋 1
ナンバーワンシリーズ(2005年7月18日現在) びょんきちさん
誰にだって得意部門があるのさ。
だから今日から君もナンバーワン
優勝者発表!
【ハグハグトントン部門】 ホンピョ
【腰にタオル部門】 テス
【色即是空部門】 ソク
【変な服部門】 ラブ (次点 ホンピョ)
【3頭身部門】 ミンチョル
【朴訥無口部門】 ジュンホ
【勘違い部門】 チョンウォン
【ウザイよ部門】 ソンジェ
【えろちっく部門】 ミンミン
【癒し系部門】 スヒョン
【迷える小羊部門】テジュン
【後ろダッコ部門】ラブジン
【本妻部門】 ギョンビン
【能面部門】 ヤン・スングク
【年齢不祥部門】 ヤン・ミミ
【ドベルマン部門】 イナ
【オヤジ部門】ちぇみ
【ナイスガイ部門】 闇夜
【パペットマペット部門】 ミソチョル (次点 はるみ)
「炳天」DVD紹介 バカボンの母さん
「バンジージャンプする 2」
BHCのメンバーが、世界中のホテル、旅館、民家の寝具に「大の字」になってジャンプして、布団に着地する、一瞬を捉えたアクションドキュメント。
寝具も、ふわふわから、体育館マット用、シルク、麻、木綿、化繊、氷、草、コンクリート、等々ある。
(ルール)
着地した瞬間うつ伏せ寝のまま、左側を向いて、間をあけ、「よし、合格」と言わなくてはならない。
(特典映像)
1.ミンチョルが江ノ島岩本楼旅館で、敷居に躓き、床の間の九谷の壷に激突し鼻血を出した珍しい映像。
2.ラブが、ティシュ箱が枕元にないベットは、お断りと、ダダをこね、監督ともめた映像。
3.ジュンホが「よし、合格」という一言がなかなか言えず、NG23回出したシーン全て集録。
本日より、貸し出し開始。
「京都議定書」 バカボンの母さん
「京都議定書」とは、「同姓感情防止国際条例」で決められた、約束の事であります。
人間関係において、感情のおもむくまま、行動を起こしてしまうと、自己又は、他者を含め精神破綻者が増加傾向になります。
本能的、感覚的な欲望行動を取ると、自分を責めたり、他人を傷つけたり、周りに迷惑を掛けたり、仕事に支障をきだしたり、と色々問題が、出てきます。
又、青少年に「え~っ、気分次第で攻めていいんだ」と言う、安易な考えを植え付け、健全な精神を教育するには、難しい状況になってきております。合理的、理論的に判断する能力を身に付けさせるには、まず、感情のみで、行動している人間に抑制してもらうしかないと言う事です。
そこで、ラブ君15%感情抑制して下さい。スハ君9%(メール消去したので、ポイントアップ)。イナ君11%。ミンチョル君10パーセント。ギョンビン君11パーセント。・・・etc。
と決めましたが、ラブ君から「感情抑制したら、ボクの魅力がまったく無くなってこれまで通りの豊かな生活が出来なくなるじゃん。それに、先進人ばっかだけじゃなく、途上人にも、BHCに関わる全員に抑制選定を出さなきゃ、不公正だ」と意見が出て一時、暗雲に乗り上げました。
しかし、このままでは、この世の中、嫉妬、疑懐、猜疑、ストーカ行為、と暗黒面に取り付かれてしまう要素が増加します。そこで、先進人にも、受け入れてもらう為、「抜け穴」対策が提案されました。
つまり、他人の感情排出権を買い取る事が出来ると言う事です。現在、出番の少ない、チョンマン君の排出率5%抑制は、感情を排出していない為これを売却する事が出来ます。これをラブ君が取得すれば、自分は、6%の抑制率に下がると言う法案です。
現在、売りたい人(若干数人)と、買いたい人(多数)で話し合いが日夜続けられております
ジョンドゥ公判前日 バカボンの母さん
「ジョンドゥ、お前又、早送りになってだぞ。クスクス」
看守に声を掛けられ、呼吸が乱れて、肩で息をしている、自分にかえった。
足元には、カラの弁当箱が転がっている。
昼飯を貰ったのが、12時ジャスト。
今の時間は、12時3分12秒、13秒・・・。
そうだ!あの音楽だ。無声キートン映画のバックに流れる様なあの陳腐な音楽だ。
その音が頭の中で、鳴り出すと、手足がムズムズして来て、俺は、1.5倍速化してしまうんだ。
「わしがよう、リクエストしたら、床種目、跳躍技、柔軟技、転倒技、屈伸バランスから片方靴脱ぎコンビネーション、フィニッシュは、箸くわえ投げもしてくれたぞ。クスクスクス」
あちゃぁ。なんてこった。
明日の公判で、こんな姿を見せたら、初犯ですぐ出られる処、実刑がついちまう。
全ては、ストレスだ。我慢を溜め込むと、強度行動障害「1.5倍速病」が起こる。
そして、アルコールを飲んで、血液濃度3.5m/mを超えると、「5分間ハイド化」病を併発するんだ。
平常心だ。明日一日、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍べば、シャバに出れる。
ピクピク
「オイ、ジョンドゥ 、手足が又、動いてんぞ。クスクスククス」
24-twenty four-過ぎ去った季節(とき)からの声(00:00-麻布十番) 猫型人間さん
BHCの閉店後、戸締まりを確認して帰宅の途につこうとしたオーナーの携帯電話に突然見覚えの無い番号が表示された。
おそるおそる電話を開くと、遥か遠くから「ヨボセヨ」と囁きかける声が聞こえた。
「どなた?」「ボクです」「解らないわ。ちゃんと名乗って下さい」
不安を募らせるオーナーに、電話の主は「今、部屋の窓から東京タワーが見えますね。眼を離さないで下さい。電話も切らないで」確信に満ちた声で語りかけた。
慌てて窓に駆け寄り、東京タワーを見つめていると「ハッピーバースディ」聞き覚えのある懐かしい声と共に、東京タワーの照明が消えた。
「ついてこれるかな?」その時初めてオーナーは声の主が誰であるかを悟った。
言いようの無い不安に襲われたオーナーは、先に家に着いていた夫に迎えに来てもらったのであった。
24-twenty four-ベイサイドの闖入者(01:00-晴海) 猫型人間さん
帰宅途中、ベイサイドの夜景に魅せられたオーナー夫妻は、美しい橋がよく見える公園のベンチに腰掛けてしばしの間愛を語らっていた。
そんな二人の背後から、ただならぬ人の気配がした。頭上越しに突然ミスターNが飛び出して来たのだ。
目の前に現れた彼は見事な着地を決め、たった一言こう囁いた。
「邪魔したね」
一顧だにせず走り去っていく彼をただ呆然と見つめるだけの二人だった。
24-twenty four-誘蛾灯への誘(いざな)い(02:00-中野) 猫型人間さん
甘いひと時を過ごした二人は軽い空腹を覚え、家の近所にあるなじみの屋台に向かった。
終電が去った後の陸橋の上に毎晩出ている、その味を近所では知らぬ者がいないこの屋台は不安定な現代の夜を守る陸の灯台でもあるのだ。
二人が屋台に着くとそこには先客がいた。
暖簾の中に身を乗り出し、顔こそ見えないが明らかに興味津々と言った様子でおでんの具が何であるかを屋台の店主に矢継ぎ早に聞いていた。
店主もまんざらではない様子で、彼の質問に一つ一つ丁寧に答えていた。そこには鍋いっぱいのおでんから立ちのぼる湯気以上の熱い空気が充満していた。長いやり取りを経てやっと彼の注文も決まったようだが、凝り性の彼は『おでん』がどんな料理なのかを完全に理解するまで帰ることはないだろう
どうやら今夜一晩は彼の貸し切り状態のようだ。
次に来る時は彼と肩を並べて心ゆくまでおでんを味わい、酒を酌み交わしたいと心底思う二人であった。
24―twenty four―トンネル内の秘め事(03:00-洗足) 猫型人間さん
今夜はもう帰ろう…夫に促されたオーナーは、家路に着く途中コンビニに寄った。
おでんを食べ損ねた空腹感に気を取られ、店の入口ですれ違った人影には気づかなかった。
軽い夜食を買って店を出ると、帰り支度をしたおでんやの主人に出会った。
「今日はもう店じまいですか?」訝しがるオーナー夫妻に主人はこう答えた。
「さっき屋台に来ていたお客さんが食べ始めた途端、大勢のお客さんで押すな押すなの大混雑になってあっと言う間に品切れですよ。いつも楽しみにしているお客さん達には悪いけど、今夜は早めに帰らせてもらうことにしました」
「この辺りも最近物騒だし、ちょうど同じ方向だから一緒に帰りましょう」夫の言葉に主人もうなずいた。
帰り道、線路下のトンネルを通ろうとする3人の耳に「オゥ…ノゥ…」と溜息交じりの声が聞こえた。
物陰に隠れて見つめる3人の目に飛び込んできたのは、困惑しきった様子のミスターNの後姿とトンネルの壁一杯に貼られた指名手配ポスターだった。
「あの人まだ追いかけられていたのね」「さっきのお客さんですね。こんなところにまでポスターを貼られるとは大変だな」「何かするようだぞ」
ミスターNは3人がすぐそばにいることに全く気づかないようだ。
さっきのコンビニで買ったらしい黒のマジックペンで自分の写真にブルースブラザーズのような落書きを1枚残さず書き足すと「オーケィ…Good!」満足気に呟いて静かにその場を去って行った。
24―twenty four―夜明け前の訪問者(04:00-天王洲) 猫型人間さん
家に着いたオーナーは夫と共に床に着いたが、さっきまでの出来事に心が揺れて眠りにつくことができなかった。
気持ちを紛らわそうと愛犬を連れてマンションの入り口まで散歩に出ると、物陰から突然現れたミスターNが微笑みかけた。オーナーは彼につかつかと歩み寄った。
「どうしたんですか?そんな恐い顔をして?」「どうして今更現れたの?せっかく忘れかけていたのに。
貴方が目の前に現れたりしたせいで私の心は波立っているのよ。いっそのこと、何もかも捨てて貴方と一緒にどこか遠くへ行こうかしら…」
オーナーの言葉に彼の笑顔が失われた。彼は外灯の後ろを2・3度行き来したと思うと、立ち尽くす彼女を置き去りにして幻のように消えてしまった。
24―twenty four―目覚め始めた街で(05:00-渋谷) 猫型人間さん
わずかな時間仮眠を取った夫は、始発電車で渋谷の街に降りた。今日は早朝出勤なのだ。
駅を出ると、そこには昨夜目の前に現れたミスターNの後姿があった。
「君は妻とはどういう関係なんだ?」急にその一言が聞きたくなった彼はミスターNを路地裏に追い詰めた。
「あっ!」彼が追い詰めたのは、ミスターNとは似ても似つかない全くの他人だった。
そんな彼を遠目に、微笑みながら走り去っていくミスターNだった。
24―twenty four―異種格闘技交流~橋の上にて(06:00-向島) 猫型人間さん
眠れぬ夜を過ごしたオーナーだったが、心の迷いを振り払うため元ボクサーの専属トレーナーと一緒に朝食前のジョギングに出かけた。
橋の上にさしかかると、向こうからミスターNがやって来た。
持っていた携帯のカメラでミスターNがトレーナーのシャドウボクシングを何度も撮ると
今度はトレーナーが綺麗なフォームでキックを披露するミスターNを撮影した。
携帯を忘れて走り去ろうとする彼をトレーナーが呼びとめた時、それまで一度も見た事が無いような、とびきりの笑顔を見せた。
言葉は通じなくても、同じ格闘技の世界に身を置く男同士通じる物があったのだろう。
すぐそばにいる自分に全く気づかないミスターNを見て
彼は自分が立ち入れない世界を持っている…少し寂しさを覚えたオーナーだった。
24―twenty four―迫り来る追跡者たち(07:00-代官山) 猫型人間さん
久しぶりの休日、今日は子供達を起こす前にカフェで朝食を済ませてこようと
オーナーがやって来たオープンカフェでミスターNがコーヒーを飲んでいた。
彼が読んでいる英字新聞を見ると、ちょうど彼の顔と反対側の面に一面全部を使った指名手配写真が載っていた。
心配する彼女や、何度も彼の顔を覗き込むぶしつけなウェイターの様子をよそに淡々とした表情でコーヒーを味わい続けるミスターNだった。
ふとした拍子に目線が合ってしまった彼女に新聞の陰からいたずらっ子のような視線を向けた。
彼は一体何を考えているのだろう…。
24―twenty four―癒しの森の妖精(08:00-代々木) 猫型人間さん
朝食を済ませたオーナーは、少し回り道をして帰ることにした。
この近くには彼女お気に入りの緑豊かな公園があるのだ。
森林浴を楽しもうと公園の中に入って行くと、目の前に突然ミスターNが登場した。
森の妖精のように軽やかな動きで木々の間を行き来すると、再びどこかへ消えてしまった。
いつの間にかミスターNが目の前に現れることを期待している自分に気づいた彼女だった。
24―twenty four―路地裏の逃亡者(09:00-月島) 猫型人間さん
オーナーが久しぶりに夫の実家を訪ねると、義父は今日も路地裏に縁台を出して友人との将棋を楽しんでいた。
すると突然現れた人影が将棋台に駒を置き「王手!」一言言って走り去って行った。
「何しやがんでぃ!」義父の目の前にまで現れたミスターNの後姿を呆然と見詰めていると
「あいつは一体何者なんだ?」問わず語りの義父の言葉が聞こえた。
動揺を悟られないよう沈黙を保つのが精一杯の彼女だった。
24―twenty four―雑踏の道化師(10:00-浅草) 猫型人間さん
胸騒ぎを隠したまま、昼食は義父行きつけのちゃんこ屋に一緒に行くことにした。
義父は昔町内会の世話役や相撲部屋のタニマチをしていた関係で
今でも浅草にはなじみの店が多いのだ。
今日も前から顔見知りの力士二人が歩いてきたので挨拶をしようとすると、その後ろから突然ミスターNが走り出してきた。
驚く二人を前におどけた仕草をすると、店の間の路地に駆け込んで行った。
「あの男、どうやらあんたの知り合いのようだな」
二人の間にしばしの間気まずい沈黙が流れたが、次の瞬間義父の口から出た言葉は予想もできない物だった。
「まあいい。人間誰にでも秘密があって当然だ。それを詮索するのは野暮ってもんさ。事情(わけ)の一つや二つあった方が、人間艶も出るってもんだしな」
そう言って枯れた色気のある笑顔を向けた。
安心した様子の彼女に「今日は軽くそばでもたぐって帰ろう」優しく声をかける義父だった。
24―twenty four―都会の守護天使(11:00-西大井) 猫型人間さん
オーナーの息子ポンジュンは塾に行く途中、公園でクラスメートとかくれんぼを楽しんでいた。
今日は学校が創立記念日で休校なのだ。
母には「最近物騒だから子供だけで寄り道なんかしないようにね」と言われてはいたが、そんな言葉におとなしく従う彼ではなかった。
たこの形をした滑り台の後ろに隠れていると、公園の入口方面から鳩が一斉に飛び立つ羽音と共に
突然滑り台のトンネルをくぐって見覚えのある男が現れた。
しかし今は彼が誰なのかを考えている時ではない。とにかく見つからないようにしなくては…そう思ったポンジュンは自分の隣に彼を座らせた。
もしかすると、彼は子供達の安全を守るために現れた神様の使いなのかもしれない。
24―twenty four―海辺の盗撮者(12:00-芝浦) 猫型人間さん
オーナーの夫は倉庫街のビルの屋上で愛妻弁当を食べ終わると、潮風に吹かれながら休息を取っていた。
ここは誰にも教えていない、彼だけの息抜きの場所なのだ。
そんな彼の前に突然目の前にミスターNが現れ、満面の笑みを見せたかと思うと
声をかける間さえ与えず携帯のカメラで彼を撮影して去って行った。
一体何の目的でそんなことをしたのだろう…わけもわからず呆然とするだけの彼だった。
24―twenty four―昼下がりのレストランにて(13:00-丸の内) 猫型人間さん
オーナーは、OL時代の友人と彼女のオフィス近くのレストランで昼食後の会話を楽しんでいた。
ここは知る人ぞ知るオフィス街の隠れ家的な店なのだ。
「最近はどう?」「実はね…」彼女が口を開きかけたその時、突然隣の席で携帯電話が鳴った。
「誰かしら?マナーを知らない人ね」振り返ってみると、そこにはミスターNがいた。「失礼しました。でもあなたももう会社に戻った方がいいと思いますよ」
友人にそう話しかけて走り去っていく彼を、ただ見つめるだけの二人だった。
24―twenty four―湾岸沿いを逃亡せよ!(14:00-青海) 猫型人間さん
夫の職場を訪ねた帰り、気分転換に家具店のショールームに寄った。
帰りはゆりかもめとりんかい線、どっちに乗ろうか…テレコムセンターの近くを散歩していた
オーナーの前に突然、道の向こうからミスターNが走って来た。
戸惑う彼女に微笑みながら「ここまでおいで…」あの甘美な声で囁きかけてきた。
このまま彼について行ってしまおう…突然目の眩むような衝動に襲われた。
それは午後の陽射しのせいなのか、それともミスターNの
甘い囁きのせいなのか、今の彼女には全く判断がつかなくなっていた
24―twenty four―初めて出会った日のように~束の間の冒険(15:00-六本木) 猫型人間さん
手に手を取り合って走っていた二人は、東京のランドマーク六本木ヒルズにやって来た。
オーナーにとって、プライベートでは久しぶりにやって来た華やかな場所だった。
突然通りかかった二人連れの若い女性が「写真撮って下さ~い」と声をかけてきた。
そういえば、私が彼と初めて会ったのもああやって写真を撮ってもらったのがきっかけだった…。
そう思っていると、ミスターNは彼女の存在を忘れてしまったかのように夢中で写真を撮り始めた。
出会った頃と何も変わっていない彼の様子を冷静に見ている自分に気づき
もう二度とあの日の自分達には戻れないことを痛感したオーナーだった。
24―twenty four―ほろ苦い時間(16:00-恵比寿) 猫型人間さん
二人はミスターNが常宿にしているホテルの一室に入った。
彼はルームサービスでチョコレートケーキとコーヒーを注文した。
「君は何も食べないの?」その時部屋の柱時計が時を告げる鐘を鳴らした。
「私はいいわ。そろそろ家に帰ってご飯の準備をしなきゃいけないし…私達、もうあの日には戻れないのよ」
二人の間に気まずい空気が流れた。オーナーは部屋を出て行った。
一人取り残された彼は、気を紛らわせるように携帯電話をMP3代わりに音楽を聴きながら黙々とケーキを食べ続けた。
その直後激しくドアをノックする音と共に彼を追いかける人々の声が聞こえた。
やはり彼女には平穏な日常の方が似合うのだ…そう思いながら、安住の地ではなくなったこの部屋から逃げることにしたミスターNだった。
追手が無理やりドアを開けさせて室内に押し入ると、彼はもうどこかへ去って行った後だった。
24―twenty four―遊園地のシンデレラ(17:00-後楽園) 猫型人間さん
塾帰りのポンジュンと待ち合わせたオーナーは、彼を遊園地に連れて行くことにした。
先週塾のテストでいい成績を取ったご褒美なのだが、今日はミスターNについて行こうとしてしまった後ろめたさもあったのかもしれない。
アトラクションに夢中になっている息子を遠目に見守っていると、背後から「ゴゥ!」という掛け声と共にさっき別れたばかりのミスターNが現れた。
呆気にとられる彼女が見えないかのように目の前の屋台に走り寄ると、マスタード抜きのホットドッグを1つ注文した。
「あのおじちゃん、子供みたいだね」いつの間にか母の後ろにポンジュンが来ていた。
「シーッ。聞こえるでしょ」息子に注意しながら、彼女の頭の中には疑念がわいていた。
夫も自分もチョコレートケーキやマスタード抜きのホットドッグは好きではない。それにスポーツも得意ではないのに、なぜこの子は…。
もしそうだったとしても、この秘密は墓場まで持って行かなくてはいけない。
傾きかけた日差しの中、決意を固めた彼女だった。
24―twenty four―本の林での遭遇(18:00-赤坂) 猫型人間さん
仕事帰りの夫と待ち合わせたオーナーは、家族揃って本屋へ行った。
夫妻は読書嫌いな息子に本を読む習慣をつけさせようと目論んだのだ。
本屋に入った3人はそれぞれ夫が時代小説、彼女が写真集、ポンジュンが星の王子さまの絵本と
好みに合った本を選びレジに向かおうとすると、突然黒縁メガネをかけたミスターNが現れた。
彼はフランス文学の本を数冊選び、会計を済ませると
驚きのあまり声も出ない3人の姿に気づき「じゃ、お先に」と
声をかけて出口の方に走り去っていった。
24―twenty four―ナイト・ウォーカーinオフィスビル(19:00-東陽町) 猫型人間さん
残業を終えた夫の部下が一人エレベーターに乗ると、突然天井が開いた。
驚く間もなく、頭上からスルスルと人影が現れた。
「あの…何階まで」なんて見当違いな質問を…彼がそう思う間もなく
黙ったまま止まったエレベーターのドアから走り去っていったミスターNだった。
そんな二人の様子を見ていたのは、誰もいない警備室のモニターだけだった。
24―twenty four―夜陰に身を隠して(20:00-高田馬場) 猫型人間さん
今夜のミスターNはガード下の露天で友人と帽子を売っていた。
帽子デザイナー志望の彼のアトリエに置いてもらう代わりに、帽子好きの彼はアドバイザー兼マヌカンを務めているのだ。
突然通りすがりの客がミスターNに気づき、捕まえようとした。
彼は友人に迷惑がかからないようにその場を急いで離れた。
ミスターNには平穏な時間はいつ訪れるのだろう…。
24―twenty four―嵐の疾走(21:00-九段下) 猫型人間さん
オーナーの弟は、今夜もパントマイムの練習に励んでいた。
小さな劇団に所属している彼だが、今度の公演でようやく役が与えられたのでチャンスをものにしようと必死なのだ。
「嵐にも動かないオブジェ」の役を一人練習していると、目の前をミスターNが勢いよく走り去って行った。
その風に飛ばされ、ひっくり返った彼に会釈して去って行ったミスターNだったが
やがて何度も繰り返し彼の前を走っていった。
もしかするとその行動は彼の練習のためだったのかもしれなかった。
24―twenty four―なつかしい顔(22:00-南青山) 猫型人間さん
ぐっすり眠ったポンジュンをベビーシッターに任せた後、オーナー夫妻は行きつけのバーに出かけた。今夜は店が改装工事で休みなのだ。
「今日はいろいろなことがあったね」「ええ、本当に」
突然夫が聞いた。「ところで今日何度も僕達の目の前に現れた彼だけど、君の知っている人なの?」「ええ、実は彼は…」
彼女がそう言いかけると、いつもは無口なマスターが口を開いた。「お客さん、どこかで見た顔だね」その声の先にはミスターNがいた。
「人違いでしょ」「そうかなぁ」カウンターの中にはやはり指名手配のポスターが張ってあった。
やはりここも安住の場ではないと知った彼は静かに出て行った。
24―twenty four―告白(23:00-新宿) 猫型人間さん
バーを出た二人は、オールナイト上映の名画座に寄った。
ちょうどその映画館では二人が結婚した頃に公開された映画が上映されていた。
二人が懐かしい思いに浸りながら映画を見ていると、少し離れた席でミスターNが眼を潤ませていた。
彼は現実世界に適応するにはあまりにも感受性が繊細過ぎたのだ…。彼女は彼が自分の前から去って行った理由の全てを悟った。
「どうしたの?」ただならぬ様子の彼女に夫が声をかけた。
「実はね…あの人は昔私の恋人だったの。あの人と別れてすぐにあなたと結婚したけれど、もしかしてポンジュンは…」
声を詰まらせる彼女に、夫は優しく声をかけた。「君がどう思っていようと、僕の君に対する愛は変わらないよ。それに、誰が何と言おうとポンジュンは僕の息子だ。」
この人と結婚して本当によかった。オーナーがそう思った途端、ミスターNを追う男達の騒がしい声が聞こえてきた。
寂しそうな顔で映画館を出て行った彼が、無事逃げ切れるようにと夫妻は心から祈った。
番外編~フィナーレ・ミスターNからのメッセージ~ 猫型人間さん
家に帰った二人はナイトキャップの用意をし、オーナーはシャワーを浴びてボディシャンプーの甘い香りが移った体にシルクのバスローブを身にまとった。
BGM代わりにヒーリング画像でも見ようとDVDディスクをデッキに入れると、画面にミスターNが映った。
驚く二人に画面の中の彼はこう語りかけた。「とうとう、僕に追いついたね。これで君も誰よりも先を走れるはずだ。おめでとう。次は2.5インチ画面で会おう」
彼がそう言い終わると、ディスクの画像は元に戻っていた。
彼は無事逃げ切れたのだ…その事を祝福して極上のシャンパンで乾杯した後、愛を交わした二人だった。(完)
ぴかろんの部屋 猫型人間さん
♪ルールるっルルルルールるっるるるるーるーるーるーるーるるー♪
皆様、こんにちは。ぴかろんの部屋でございます。
本日は5/3に東京ドームで大規模なファンイベントを行った、韓国の大人気俳優イ・ビョンホンさんをお迎えしました。
ユニセフでの活動のお話などを中心にお聞きして行きたいと思います。
では一度CM入ります。
ぴかろん
まーようこそいらっしゃいました
あらー今日も素肌に中尾…いえ…微妙なタイ?スカーフ?素晴らしくセクシィィなファッションでございますが、この「肩称」には何か意味が?
「…」(すみません。意味はない…とおっしゃってます)
あらーそうですかぁ…まぁ…そのスカーフ?タイ?になりとうございますわぁほっほっほっ…
ところで、ドームでのナマ着替えは本当にナマ着替えでしたの?
「…」(ご想像にお任せします…と言う事で事務所から…コホ)
あらー知りたい見たい触りたい…げほ…えー。あー。ところで、写真集をお撮りになったとか…
ほっかいどーがお好きだそうですが、前に一度いらしたというのは「不滅の愛」の撮影でいらっしゃる?
ゴクン…そ…その時大変よい思い出とかがおありになった?あの…共演された方との思い出とかが?
「…」(ノーコメント)
そ…そうですか…おありになると
「…」(答えておりませんが…)
いえ…私の耳には「ある」と聞こえました…おほほほ
んで、あの白馬ですが、なぜ撮影が遅れたのか…やはりあれですか?貴方様のフェロモンのせいでお馬様の…ピー…
「…」(馬というものはそもそも…(長い説明のため略))
あのDVDを拝見しまして、ますます「乙女」だと感じましたが…え?誰がって?貴方様がでございますが
「…」(私は男ですとおっしゃってます)
はい!でも「乙女」でしょう?
「…」(おっしゃる意味がわかりませんとのことです)
あらーまーええ?そうなんですかぁ?
…事務所からのクレームのため、一旦CMに入ります…
れいんさん
おーほほ・・わたくし、先ほど、CM中に、イ・ビョン(ホン)さんの
上腕二とう筋をお触りさせて頂きましたのよ
あらまぁ、ファンの皆様、ごめんあそばせ
それはもう、ぐふっ、逞しゅうございましてよっ
ところで、イ・ビョン(ホン)さんは
ファンは好きな時にご自分のところに来たり離れていったりしていい特権のある存在だ、と仰ってましたね。
ほんとーーに好きな時にアナタの所に行っても構いませんのね?
男に二言はありませんわね?
「・・・」(そ、それはそーゆー意味で言ったのではないと仰ってます)
ふぅ~ん・・
コホ。
では山登りのお話ですが、ファンと一緒に頂上を目指して一歩一歩登って行く・・
時にはどちらかが先に行ったり、時には負傷した者を助けたり・・
なんて仰ってましたが
もし負傷したら、イ・ビョン(ホン)さん、貴方が助けて下さるんですね?
お姫様ダッコして下さいますのね?
「・・・」(だ、だからそれは例え話で・・と仰ってます)
ふぅ~ん・・
お姫様ダッコするのはあの方だけなのかしらね?
ギクっ・・
「・・・」(あのCMはまだですか?と仰ってます・・)
びょんきちさん
ふふふ、だからこの上腕ニ頭筋がたまらないって・・・
あら、なんだかずいぶん毛深いのねえ~ ぎゃっ!!!
まあ、驚きました。CM中にビョンさんのお友達がいらっしゃいましたぁ~
あなた、「スキナオトコノタイプは?」って馬だったの?
守備範囲が広くていらっしゃるのねぇ~ ほほほ・・・
おまえ、勝手に来たらダメだって言ったろ!
ひひ~~ん
写真集の撮影で、僕とずっと一緒だったんですが、妙に馬が合っちゃって・・
まあ、ビョンさんたら、ダジャレもお上手!
だから、ビョンさんじゃないって!
それじゃ、馬さん、御挨拶を!
こんばんは、白馬です。ちょっとうまっけが強いのがたまにキズです。
あら、やだわ。玉に傷だなんて、オッホホホ
話が妙な方向に行きそうだ。早く、早くCMはさんで!!!
滝汗流すソン理事・・・
「ぴかろんの部屋」モニタールームにて 猫型人間さん
(画面上にミスターNの「ツイテコレルカナ?」と「モウオイツイタ?」のCM流れる)
プロデューサー「今日はぴかろんさん、いつも以上にノってるな」
女性AD1「そりゃそうですよ。なんたってあのイ・ビョンホンさんですもの。私、さっきお手洗いの前でハンカチを渡したら『ありがとう』って握手してもらっちゃったんですよ」
女性AD2「勝ったわ!私なんかゆず茶を出したら『お礼に僕のキスでも…』って言われちゃったのよ。」女性AD1「(生ツバをゴクリと飲み込んで)そ、それでどうしたんですか?」
女性AD2「そんなことを言われて、断るバカはいないわ。でもこの前読んだ雑誌に『韓国では簡単にOKすると軽く見られる』って書いてあったから、手の甲だけにしておいたけど。当分は手を洗うわけにはいかないわね」
プロデューサー「(笑いながら)汚ねーなー」
ディレクター「プロデューサー、もうすぐCMあけます。ビョンホンさんのメイク直しがまだなんですが、次はどのCMにしますかね?」
プロデューサー「この前放送許可が出た、ダンキンドーナツのCMの画像がいいだろう」
急いでビデオテープを差し替えるAD。TV画面にはダンキンドーナツのCMが流れる。
(交換室からの電話)電話交換手「プロデューサー、大変です!電話回線がパンクしています」
プロデューサー「一体何があったんだ?」
交換手「このチャンネルがネットされていない地域から、DVDにするかせめてネットサービス『ぴかろんの別荘』で配信するかして欲しいというリクエストです」
プロデューサー「わかった。局長室にファントムの社長が来ているから、さっそく相談して来る」
(CMあける)
「先ほどのドーナツのCM見させていただきましたけど、あのCMの時ドーナツを60個もお召し上がりになったんですって?」
「イェ(はい)」
「今日はドーナツを用意させていただいたので、召し上がってみてくださらないかしら?ホホ(と60個のドーナツを差し出す)」
(しばしの沈黙の後)「…」
(通訳)「最近は甘い物よりワインの方が好きになったので、ご容赦下さいと仰っています」
「まぁ残念。ところでさっきのCMで左の眉だけ器用に動かしていらしたけど、貴方がTV局のオーディションに合格なさったのもお顔の筋肉を動かす芸をして見せたのがきっかけですってね。見せていただきたいわ」
「イェ(はい)」答えると即座に眉毛や神をリズミカルに動かし、耳もウサギみたいにパタパタとさせる。最後に目玉の片方だけを別の方角に向ける理事。
「まぁー!凄い。そういえば、ジム・キャリーさんのモノマネも出来るんですって?」
「…」
(通訳)「お安い御用だ、と仰っています」
ジム・キャリーのモノマネを披露する理事。
「今日はいろいろ見せていただいて楽しい時間を過ごさせていただき、本当にありがとうございました。今度は韓国で再会できる日を楽しみにしています」
(エンディングテーマ流れる。)
「やれやれ、一時はどうなるかと思ったがきれいにまとまって安心した」
スタジオの片隅で安堵のため息をつくソン理事。
その同じ時間に電話交換室の回線がパンク状態になり、局長室で番組プロデューサーと局長、ファントムの社長が「ぴかろんの部屋」ネット配信を巡って激しい駆け引きを繰り広げている事は誰も知らないことだった(つづく)
真夜中の訪問者~at 閉店後のBHC裏口にて~ 猫型人間さん
その日も無事に営業を終えたBHCの裏口。
閉店当番のミンチョルが裏口の鍵をかけて帰ろうとした時、店の入口近くに不審な人影を発見した。
「誰だ?」「…」声一つ立てない人影に懐中電灯を当てると、そこにはタートルネックのセーターを着た見覚えのある男がいた。
「君は『クラブポラリス』のミニョン君?」
「その名前で僕を呼ばないで下さい!」
「一体何があったんだ?君はその名前でイルボンで大成功を収めたんじゃないか。大勢の『家族』と呼び合う人たちにも囲まれて」
「その『家族』達が、僕に寄せる過剰な期待が辛いんです。僕にはミニョン以外にもドンヒョクやジェホ、チョ・ウォンという名前だってあるのに…」
「君の場合はミニョンとしてのインパクトが強過ぎたからな。いっそのこと、原点に戻ってファンミでマカレナでも踊ってみたらどうだ?」
「CMのオファーが来た時、それも試してみました。グラビアアイドルとチョコのCMで共演した時、ダジャレを言ってみたりもして。でもやっぱり僕の家族達は『彼はトイレにだって行かないのよ!』と僕を偶像化しているんです」
「今夜はもう遅いから、相談に乗ることはできないが明日また営業時間内に出直してくるといい。僕の仲間がいいアドバイスをしてくれるだろう」
「ありがとうございます」
…そして彼は深々と頭を下げながら夜の闇の中に去って行った。
創作童話 観音様と地蔵様 猫型人間さん
むかしむかし、ある所に2体の仏様がいた。
片方は大きなお寺の奥に置かれた金無垢の観音様、もう1体はその山門のそばの道端に置かれた石彫りの地蔵様だったそうな。
夜、人間達が眠りについた頃観音様が地蔵様に語りかけた。
「地蔵さんや、私はあんたがうらやましくてしょうがないよ」
「どうしてだね、観音さん。あんたはこんな立派な寺に守られて毎日大勢の参拝者や坊さん達が丁寧に手入れもしてくれるし、お供物だって沢山いただいているじゃないか。私なんぞは通りがかりの人が余った菓子を気まぐれで置いていったり、雨が体を洗ってくれる程度よ。この前なんぞは馬に噛みつかれそうになってヒヤヒヤものだった」
「私はそれが苦痛なんじゃよ。たまには一人で故郷の天竺に帰りたいと思っても、それも叶わない。好きな時に好きな所へ一人で行けて、いつでも子供達と自由に遊べるあんたがうらやましくてたまらない」
…観音様の言葉を黙って聞き続ける地蔵様であった。
BHCテスト びょんきち@会社さん
お昼の憩いのひととき、皆様いかがお過ごしですか?
たまには、こんなテストで、BHCへの愛を深めましょう。
それでは仕事に戻ります。(^^;
みんみんとは?
1)ミンミン蝉
2)餃子屋
3)イ・ミンチョル&ミン・ギョンビン
ぽーるろじゃーずとは
1)新生クイーンのボーカル
2)ブラピ似の極東秘密諜報部員
3)アメリカの大リーガー
エリックとは?
1)コリンファース似の教授
2)甘い人生に出演していた俳優
3)EHエリック
ホ○ト祭りの演出を手掛けたのは?
1)アンドレ先生
2)秋元康先生
3)細木数子先生
ホ○ト祭りのソクが披露したのは?
1)接吻ショー
2)節分ショー
3)雪隠ショー
その昔、きちゅねがいらついて壊していたものは?
1)ヨネスケ
2)フクスケ
3)デンスケ
ミニョン救出作戦!~ホスト達のセラピー~ 猫型人間さん
閉店後の「クラブポラリス」控え室でミニョンがうなされていると、従業員入口をノックする音が聞こえた。
反射的に飛び起きると「どなたですか?」と微笑を作ってしまった。
最近は営業時間を過ぎても不意打ちで尋ねてくる「家族」や同業者が増えたので彼には一時の安らぎも許されないのだ(ーー;)。
「僕だよ、ミンチョルだ」思わぬ人物の訪問だった。
「ミンチョル君、どうしてここに?」ドアを開け、ミニョンが尋ねるとミンチョルが答えた。
「君が苦しんでいる事をうちの店のチーフに伝えたら『彼を連れて来るように』と指示されたんだ。何しろ彼は、かつて愛に迷走する3姉妹とその弟を救った天使だからね。他のホスト達も君が来るのを待っているから、早く行こう」
「君達は一体、何を考えているんだ?」
「つべこべ言っている暇があったら、早く車に乗れ!」
ほとんど引きずり込むようにミニョンを車に乗せたミンチョルであった。
彼の運転する車は漆黒の闇の中をBHCに向けて一目散に走って行った。
ミンチョルの運転する車は、風のようなスピードでクラブBHCに着いた。
「さあ、入りたまえ」ミニョンは閉店後の店の更衣室に連れて来られた。そこにはBHCのホスト達が一人残らずいた。
やがてその中から、チーフのスヒョンが前に進み出るとミニョンにある物を渡した。
「ミニョン君、これに着替えなさい」それはかつてスンドン会長が、学校に教師として勤めていた時愛用していたローズ色のジャージだった。
「こ、これは一体どういうことですか?」黙って笑っているスヒョンに代わってホンピョが答えた。
「お前さあ、普段はタートルネックかスーツしか着ないんだって?それじゃあ体が緊張しっ放しで疲れがたまっちまうぞ。だから、ミンチョルの奴から事情を聞いたうちのチーフが『パジャマパーティー』ならぬ『ジャージパーティー』を企画したってわけ」
「そんな事をして、もし誰かに知られたらどうするんですか?」
「大丈夫だよ。みんな同じ格好なんだからその中に紛れ込めばわかりはしないさ」
気がつくと、目の前にいるBHCのホスト達は全員色とりどりのジャージに着替えていた。
「ソヌさん!あなたまで何て格好を」
「なんだ、君は知らなかったのか。僕は『甘い人生』の撮影の休憩時間、ずっとえんじ色のジャージを着ていたんだよ」
「何てことだ…」ミニョンは思わず笑いがこみ上げてきた。その笑顔は、同業者や「家族」達に向ける物とは全く違う本心からの笑顔だった。
心から笑ったなんて、何年ぶりだろう…ミニョンの両目から涙が滂沱と流れていた。
「何だよ、辛気臭い奴だな。せっかくエビフライやダンキンドーナツを山盛り用意しておいてやったのに」
「テプンもこう言っている事だし、早く着替えてパーティの席に着きたまえ」
「ぼ、僕は…体調管理のために食事制限をされているんです。ましてやエビフライやドーナツのようなカロリーもコレステロールも高い物なんて」
「一晩くらいは大丈夫さ。実はここの理事だってイルボンでの大切なファンイベントの前にワインを飲んでリラックスしたそうだし、TVのインタビューに赤ワインを飲み過ぎた翌朝出演した事だってあるんだから」
「彼は本当に自由に生きていますね…しかも彼のファン達はそれを容認するどころか、むしろ人間的で魅力的だと言ってくれる」
「君も今夜一晩だけは何もかも忘れてリラックスするといいよ」
「わかりました」スヒョンの言葉に、ローズ色のジャージに着替えたミニョンはBHCのホスト達の輪の中に入って行った。
その夜は、ミニョンにとって夢のような一時だった。
やがて夜が開ける頃、すっかり元気を取り戻したミニョンは迎えに来た車で「クラブポラリス」に帰って行った。
「あいつ気の毒だな」
「なまじ『家族』なんていうものがいると悩みも多くなるんだ。かつての僕だってそうだった」
「俺達は、理事のおかげで仲間になれてよかったな」
朝の光の中、ミニョンを乗せて去って行く車を見つめながら呟くホンピョとミンチョルだった。
創作童話 観音様と地蔵様2 猫型人間さん
観音様の言葉を黙って聞き続ける地蔵様であったが、やがて口を開いた。
「観音さんや。こっそり近所を散歩でもしてみないかね。ついでに般若湯なぞも少し飲んでこようじゃないか」
「そんな無茶な。私を見た途端に『触ったらご利益があるから』と力任せに触る者達が増えたんじゃ。お陰で毎日が身の細る思いよ」
「それならこうすればいい」
地蔵様は足元の粘土を掴むと、いきなり観音様の全身に塗りつけた。
「うわっ!地蔵さん、何をするんじゃ」
「ついこの前、私の前を通りかかった若い娘達が『ゴスペラッツ』とかいう歌手の噂をしていたんじゃ。仕事を始めた頃は、変装のために顔に靴墨を塗っていたとか」
「なるほど、それはいい考えじゃな」
「実は私もこの前、全身に粘土を塗って出かけてみたんじゃが誰一人私だと気づかなかった。絶対に大丈夫だから出かけようじゃないか」
2対の仏様は、全身に粘土を塗りたくり散歩に出かけた。
普段観音様に平伏しているような小奇麗な店の主達は、変装した仏様たちを門前払いにした。
「やれやれ、ひどい目にあわされたな」
「結局私の力なんぞ、見てくれだけのものよ」
「あそこの『おでん』の屋台なら、入れてくれるかもしれないぞ」
その小さな屋台の主は仏様達を快く迎え入れ、温かいもてなしをしてくれた。
「心が安らぐ…これが本当の『幸福』という物なんじゃろうなあ」
「喜んでもらえて、本当によかった」
心底安らいだ表情の観音様を見て、満足感を覚える地蔵様であった。
理事、突然訪問す 猫型人間さん
その日のBHCは、営業が終わった後も大騒ぎだった。
「チーフ、昨日は理事の誕生日でしたね。私達も何かしなくてよかったでしょうか?」
「心配することはないよ、ソヌ君。4月にミスターNが立ち寄った時『理事の誕生日の晩に、東京タワーのライトを吹き消して欲しい』と頼んでおいたから」
「さすがはチーフ。理事も東京タワーは大好きですものね」
「お礼として、理事からオーナーに今日写真集が届いたらしいぞ」
「さっきテソンがワカメスープを作ったので、みんなで食べながら理事の誕生日を祝おうじゃありませんか」
その時、ドアを軽くノックする音が聞こえた。
「どなたですか?」そこには理事の姿があった。
「理事!映画の撮影中だというのに大丈夫ですか?それに台風の被害だって大きかったようだし…」「大丈夫。今年の誕生日は撮影現場でお祝いしたんだ。写真集も無事オーナーの所に届いたようでよかった。明日からまた、韓国映画界の未来のために『スクリーンクウオーター縮小抵抗運動』も頑張らないと」
「理事、今夜位は何もかも忘れてゆっくりして下さい。せっかくテソンが作ったワカメスープもあることですし」
「そうだな。せっかく日本に来てまでそんな事を言うのは野暮というものだな」
テソンが作ったワカメスープを食べ終えると、疲れが出たのか理事はBHCの控え室のベッドルームで眠ってしまった。
「ちーふ…りじ、おつかれのようでしたね」
「お前もそう思うか、ジュンホ。責任ある立場に置かれているお方だからな。今夜はゆっくり休ませておこう」
「はい」
…BHCのメンバー達に見守られ、つかの間の休息を取る理事であった(--)Zzz(^^)Zzz。
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