mY HEART DRAWS A DREAM

第二笑


もし、あれに反撃できる方法があるとしても、怪物でも・・・人間ではないとしても・・・自分の家族を殺すことをどうしてできる?
 逃げ続けるしかなかった。ただ、走るしかなかった。そうする事で、自分を恐怖から遠ざけようとしていた。後ろは振りかえらない。もし振り返れば、もう走れなくなるだろう。家族の変わり果てた姿を見て、自らの生を投げ出すだろう。それがわかっていたから、谷崎は振りかえらなかった。
 走る、走る、走る。しかし突然、地面が目前に迫ってきた。足下になにかがあったのに気付かなかったのだ。家族の姿が脳裏をよぎる。
 「いゃぁぁあああ!」
 おもわず、後ろをふりかえってしまう。眼がない、もはや見なれてしまった異形の怪物。後ろにあとずさる。そのとき、なにかにぶつかった。後ろを振り向く。そこには、手があった。血に塗れた、片方の手。肘から先のみの・・・。そして、その傍らには、そのままくり抜かれたような、眼球があった。
 思わず、嘔吐しそうになる。そのとき、ふと、我にかえった。あの異形の怪物が、脳裏をよぎる。ケラケラケラケラ・・・。笑い声がもう耳もとにまで迫っているような気がする。
 「あぁぁああ!!」誰かがそれに体当たりをする。笑い声をあげながら、異形のものが転がる。
 「早く逃げろ!!」立ち上がった人は、男だった。男が走る。谷崎がそれに続く。
 ケラケラケラケラ・・・。笑い声も続く。「くそ!」男が悪態をつき、何かを投げる。 
キラリと光るそのなにかは、それの頭に刺さり、それは活動を停止した。
 が、谷崎はみた事がある。活動を停止したはずのそれが、起き上がってくる様を。それは男もわかっているらしく、ム投げたものはナイフだった・・・。ムを引き抜くと、すぐに走り出す。
 谷崎もそれに続き、家らしき所に辿り着いた。中に入ると、男が尋ねて来た。「・・・大丈夫か?」谷崎はその言葉を聞いた瞬間、男に抱きつき、泣いた。
 名前も知らない男だったが、今は人の温もりを感じたかった。今まで抑えつけていた感情。生き残った、死を覚悟したのに、という思い。全てが涙となり、流れてきた・・・。


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