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ガラス越し






       ガラス越しに見える君に。






       夏の雨。
       外を涼しくしてくれればいいのに、と思う。
       市立図書館、ガラスに囲まれた読書スペースから外を眺めた。



       帰ろうとしても帰れない理由がある。
       このガラスの前で、立ち尽くす君がいる。

       それが、理由。

       ずっと立ってる理由も知っている。
       人を待っている、三時間も。

       馬鹿だなぁ。

       待ち人がこないことを私は知っている。
       君は信じないけど。
       せめて惨めな気持ちにさせないように。
       ちょっと顔たててるんだよ。



       でも、もう 我慢できないかなぁ。
       君ではなく、私が。

       傘も差さず立ち尽くす君の、頬のそれは雨ではないだろう?

       汚れた雨に、きれいな涙。
       ガラス越しに見える君。
       これ以上、悲しいことはない。



       ……なぁ。

       「おい、昼過ぎたよ」
       傘なんて差してやらないけど。
       「飯くらいおごってやる、食え。」
       一緒に濡れてやる。
       「……。」
       涙止まらない君を支えてあげるから。
       「…ついて来い」


       他の人を想わないで。
       他の人を愛さないで。

       私を愛して。





       どんなに傍にいても、触れていても。
       君はガラスに囲まれていて。
       その心には、触れられない。


       ガラス越しに見える君に、私はどう伝えればいいのだろう。


       触れない心に、汚れた雨。 









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