のんびり生きる。

のんびり生きる。

今更?今更、そんなことをいうんですか


 佐宗はなにか言いかけて口をつぐんだ。二、三度瞬きした。
「仕事が気になるんですか」
 わたしは相手の意図を手探りしながら、口にした。
「そうです。だって、佐宗さん、わたしの上司でしょう」
 そこまでいったとき、佐宗の顔がふいに紅潮したのをみて、わたしは口をつぐんだ。彼の双眸に濡れた光が揺れている。佐宗は、熱い視線をわたしに注いで口元をおおい、首をふった。やりきれなさの滲む声でいった。
「今更? ぼくは最初からあなたを好きだと言い続けたのに。今更、そんなことをいうんですか」
                 『閉じたる男の抱く花は』220ページ


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