のんびり生きる。

のんびり生きる。

ただし欠点があった。



…その冬が来るとピートは、きまって、まず自分用のドアを試み、ドアの外に白色の不愉快きわまる代物を見つけると、(馬鹿ではないので)もう外へは出ようとせず、人間用のドアをあけてみせろと、ぼくにうるさくまとわりつく。
彼は、その人間用のドアの、少なくともどれか一つが、夏に通じているという固い信念を持っていたのである。これは、彼がこの欲求を起こす都度、ぼくが十一ヵ所のドアを一つずつ彼について回って、彼が納得するまでドアをあけておき、さらに次のドアを試みるという巡礼の旅を続けなければならぬことを意味する。そして一つの失望の重なるごとに、彼はぼくの天気管理の不手際さに咽喉を鳴らすのだった。
 こうして見極めがつくと、それきり屋内に閉じこもり、生理的欲求がぎりぎりの線に来るまでは絶対戸外に出ようとしない。外へ出て帰って来ると、四シに雪が凍りついていて、板敷の床の上に木靴でもはいているような音をたてる。そして、ぼくをにらみつけ、その氷を残らず舐めてしまわないうちは、ぼくがどんなに機嫌をとろうが決して咽喉など鳴らさない―舐め終わると、またつぎの欲求の時まで、仲直りをする。
 だが彼は、どんなにこれを繰り返そうと、夏への扉を探すのを、決して諦めようとはしなかった。
 そして1970年十二月の三日、かくいうぼくも夏への扉を探していた。

                       「夏への扉」P7

これもSFでは有名。今回初めて読みました。途中、お手伝いロボットの詳しい説明のところはすっとばした感のあるものの、ナナメ読みではありません。SFとは言うけれど、タイムスリップ(タイムワープ?)を除けば、フツウのお話です。のでSFってやたらとカタカナ多くてって読みにくそう、というイメージを持っていた私は、考え改めました。元々ミステリ以外はあまり読まない私だけど、これを機にジャンルを広げてみようかな、と。それから、私の人生の中で今まで犬としか接点がなかったけれど、この本を初めとして立て続けに読んだ本に猫がでていることもあって、ちょっと猫もいいんじゃない?って思ってきた。長田さんも猫を飼っていたようだし。なんて、本に関係ないことばっか。


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