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January 21, 2018
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カテゴリ: 教授の読書日記
ジョージ・レナードという人の書いた『達人のサイエンス』(原題:The Key to Success and Long-Term Fulfillment)という本を読了しましたので、心覚えを付けておきましょう。

 この本、原書は1991年に書かれ、それが1994年に翻訳されて、今日まで13版(刷)まで版を重ねております。昨日ブログに書いた『神との対話』(文庫版)は2002年初版で今日まで39刷ですから、それに比べたらそこまでではないのですけれども、見た目地味な本なのに、そこそこ売れております。

 ちなみにジョージ・レナードという人は『ルック』という有名なアメリカの雑誌の編集局次長を務めたアメリカの教育問題の専門家。合気道の達人でもあり、そんなところから1980年代には「究極のフィットネス」という特集記事を『エスクァイア』誌に書いて評判となり、それが本書の母体となったとのこと。

 さらに言うと、この人はカリフォルニアの「エサレン研究所」の名誉所長ですな。「名誉所長」って何なの?というのはありますけれども、とにかくこの人がエサレン系であることは確か。つまり、禅とかさ、瞑想とかさ、そういう身体の修業を通じて精神まで鍛えちゃう的なのがお好き系と見た。先にも言いましたが、合気道の達人だしね。

 で、本書『達人のサイエンス』なんですけど、日本語で「達人」と言っているのは、英語では「マスタリー(mastery)」でありまして、楽器演奏でも、スポーツでも、クルマの運転でも、とにかく何かの技術を極めちゃう状態のこと――なんですが、本書で言う「マスタリー」は、その究極の状態のことを言っているのではなく、そこへ到達しようと努力する、その「過程」のことも含めて「マスタリー」と呼ぶわけね。だから、マスタリーはしばしば本書の中で「旅」とも呼ばれます。

 だから、なんであれ新しいことを学ぼうとする時、マスタリーの旅が始まるわけですよ。でまた、学ぶということは、本能によってあらかじめプログラミングされたこと以外の何かを学ぶということであって、極めて人間的な行動であるわけですな。だから、マスタリーへの道というのは、誰にとっても、いつでも開かれている。

 が!

 開かれているというのと、その道を辿るというのは全く異なることなわけでして。

 まあ、人間ってのは誰でも何か新しいことを始めるということ自体には興味があるわけですよ。なんか、楽器を習ってみようかな、とか、外国語勉強してみようかな、とか、テニス教室通ってみようかなとか、社交ダンスやってみようかなとか、そういう思いは、誰しも経験することでありましょう。

 しかし、そういう新たな学びを始めたとしても、誰もがマスタリーの道を歩むとは限らない。要するに、挫折する人が出てくる(というか、大抵の人は挫折する)。

 で、挫折するにもタイプがありまして、「ダブラー(Dabbler)」タイプの人は、ミーハー型で、何にでも興味をもってすぐに飛びつくんだけれども、最初の壁にぶち当たった途端、「これ、ひょっとしてオレに合ってないんじゃね?」と思ってすぐに止めてしまい、また別なものに飛びつくということを繰り返す。

 また「オブセッシブ(Obsessive)」というタイプもあって、とにかく性急に結果を出そうとして初めのうち猛烈に打ち込むんですな。で、そんな風ですから、最初のうちは急激に上達するのですけど、その勢いに乗って成功したり失敗したりを繰り返すうちに、最終的には途中で燃え尽きてしまう。

 もう一つ、「ハッカー(Hacker)」タイプというのがあって、ちょっとでも上達すると、もうそこで満足してしまうんですな。で、そこに留まり続けることに何の不満もない。だから、結局、前進しないわけですよ。前進しないまま、そこでオワリ。

 なるほどね。

 この3つのタイプは、挫折する人の典型症例でありまして、それぞれの人がどれかのタイプにきちっと当て嵌まるというものでもなく、一人の人がそのチャレンジするモノに応じて違うタイプの挫折の道を辿ることもある。事実、ワタクシなんかはダブラーでもあり、ハッカーでもあるかな。例えばワタクシが楽器をマスターできないのはダブラーだからだし、何年やってもスキーが上達しないのはハッカーだから。自分で言っていて耳が痛いわ。

 で、レナード曰く、新しい分野にチャレンジすると、急速に進歩する瞬間と、停滞する期間が交互にやって来ると。全体として見れば、進化は一方的な右肩上がりではあるのだけど、停滞する期間にあるチャレンジャーにとっては、「いくら練習しても上手くならないよ!」という、絶望的な気分に陥ることにもなる。

 で、この停滞する期間のことを「プラトー」と言うのですが、要はこの「プラトー」にどう対処するかで、マスタリーの道を辿れるか辿れないかの分岐点があると。レナード曰く:

 われわれは成果、賞、クライマックスに基づいた評価の仕方を山ほど教えられてきた。しかし、人はスーパーボウルで勝利した直後ですら、もう明日のことを心配しはじめるのだ。もしわれわれがよき人生、すなわちマスタリー的な人生を送っているのであれば、その大半はプラトーで過ごすことになろう。さもなければ人生の大部分はじっとしておれない不安定なものとなり、ついにはプラトーから逃避するための自己破壊的なあがきに終ってしまうだろう。
 そこで次のような疑問が出てくる。プラトーというなかなか成果が見えない長い努力の時期を価値あることとして認め、楽しく生活し、しかもそれが好きになれるような教育が、家庭や学校や職場など、どこで行われているだろうか?

 ま、レナード氏はこの本の最初に述べていることなんですけど、アメリカという国は、成果主義の権化と言いましょうか、とにかく結果を出せ、それもすぐに出せ、という風潮が強まっているのであって、そういう国の中で成果が出ない時期を過すのは、とてつもなく困難だと。

 だーけーどー。

 プラトーを愛さなかったら、それはすなわち人生を愛さないというのと同意だと、レナード氏は言っております。なんとなれば、人生というのは常に、何かへの途上なのだから。

 だから、プラトーに留まりなさいと。練習と実践、それを果てしなく繰り返すこと。これこそが達人の道なのだと。どうせ、何かに到達したと思った瞬間、更に上の目標が出来るのであって、「これが終点」と言えるような到達点なんかもともと存在しないのだから、何かの途上に留まることを愛さなかったら、それはもう生きているのを捨てるようなものなわけね。実際、何かの達人と呼ばれる人は、ゴールに到達することなんか目指してない。彼らは、ただ好きだからやっているだけなのであって、我々もそれを見習うべきだと。

 この辺になってくると、これはアレだね。アブラハム・マズローですよ。「人間ってのは自己実現に向って絶えず成長する」っていう奴。マズローもエサレン研究所系の人だから、その点でもバッチリ符合する。

 で、しかしそうは言っても、プラトーに留まり続けるっていうのは、それなりに骨でもある。そこでレナードさんは、いくつかのコツを伝授してくれちゃってます。

 例えばね、何はともあれ「いい指導者を見つける」こと。これが大事。

 それから「ひたすら練習すること」。

 それから「プライドを捨てて、没入すること」。

 それから「イメージ・トレーニング」を重視すること。人間ってのは、ヴィジョンを持つことによって、後から技術が追いかけてくるということが往々にしてある。思考は現実化するわけですな。

 それから「時には限界に挑むこと」。

 あと、その他の注意点として、自分もしくは周囲からの抵抗に慣れるということね。人間ってのは、恒常性を重視するので、何か新しいことを始めると、古い習慣からの抵抗を受けるわけ。長年、寝坊を繰り返していると、ある時、「よーし、明日から早朝に起きてジョギングするぞ」と決意しても、すぐに意志がくじけちゃうところがある(耳が痛い!)。それに周囲の人間もそう。人が向上を意図して何か新しいことを始めると、「そんなことやめちゃえよ」と邪魔しようとする。でも、そういうことはある意味人間として自然なことなのだから、そういう抵抗があるぞ、と最初から覚悟して、それに対処するつもりでコトを始めないと挫折しちゃうわけね。

 その他、エネルギーというのは使えば使うほど湧いてくるものだから、エネルギーが無くなるから、というのを挫折の理由にしちゃダメ、とか。

 一貫性というのは重要だから、何かの練習を始めるなら、曜日とか時間をしっかり決めた方がいいよとか。でもあまり一貫性にこだわり過ぎるのもダメで、決めたことを二、三回さぼったからって、それを止める口実にしない方がいい。エマソンも言っているように「やみくもな一貫性は、小心者の迷信」だから。

 あとね、マスタリーというのは、何か特別なことでなくてもいい。例えば「家事」のような平凡なことですら、意識的に、能率よく、完璧にこなそうと思えば、それなりの覚悟と練習が必要になってくるので、そういう平凡なことをマスタリーの目標にするのもいい。些事も意識的にすればそれが修業の場になるわけね。

 まあ、そんな感じのことが縷々書かれております。あ、それから、本書の最後には、レナードさん考案になるリラックス法と言いましょうか、ヨガ的な感じの、自分の重心を意識する的な運動法みたいなのも書かれていますので、そういうのに興味のある人は必読。

 というわけで、この本、自己啓発本としてはあまりにもまともと言いましょうか、お説ごもっともな話ばかりで、すごくタメになる反面、それが最初からできるんだったら誰も悩まねーよ、という感じにもなる、そういう本ですね。

 でもね、まあ、「プラトーを愛せ、何故ならそれが人生だからだ」っていう一点については、世の(自助努力型)自己啓発本の要点を一言で表現しているようなところがあって、それは評価できるんじゃないかと。結局、そこにマズローも、チクセントミハイも、全部含まれちゃうわけだし。

 それどころか、この一言って、誰が言ったにしても、ものすごい金言っぽくない? インドのヨガの最高位の行者が言いました、といっても通じるし、オビワン・ケノービが若きルーク・スカイウォーカーに向って言いました、といっても通じそうな気がする。

 っていうか、これちょっとパクって、卒業式の訓示とかで使おうかな・・・。ワタクシ、3月の卒業式の日に卒業生に向ってスピーチしなくちゃいけないんですけど。

 ちなみに、レナードさんは合気道5段の達人ですから、本書の随所に合気道の話が出て参ります。マスタリーの例としてね。しかも、彼は47歳くらいの時に合気道を始めたんですな。だから、45歳くらいで八光流柔術を始めたワタクシとしては、すごく共感できるわけよ。そうそう!みたいな。そういう意味でも面白かったかな。

 ということで、まあ、読んで無駄にはならない本ですので、おすすめ印を押しておきましょうかね。


これこれ!
 ↓

達人のサイエンス 真の自己成長のために [ ジョージ・バー・レナード ]





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Last updated  January 21, 2018 06:19:16 PM
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