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June 21, 2023
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カテゴリ: 教授の読書日記
もうかれこれ1カ月くらい前に読み始めた『大江健三郎 作家自身を語る』という本、ようやく読み終わりました~。

 これ、読売新聞の尾崎真理子記者が、長年、大江健三郎さんを様々な企画の中で取材してきた、それを一冊の本にまとめたもので、尾崎記者の質問に対し、大江さんが答えていく、という形式を基本にしながら、時に大江さんが記者の質問以上に詳しい回答をしたりして、その脱線部がまた面白く、なかなか良質なインタビュー本になっております。

 私自身は決して大江さんの良き読者・良き理解者ではないのですが、これを読むと、大江さんという人がいかに真摯に、小説を書くという作業にまい進してきたか、というのはよく分かる。だから、結果としてできた小説が好きか嫌いかは別として、その仕事ぶりは立派なものだと思う。丹精込めて作られた広大な田畑を見れば、その耕作者に対しておのずと敬意がわいてくるようなもので。

 で、記者の質問に対する回答は、いずれも大真面目なものなのですが、その大真面目な中に何となくユーモラスなところもあって、大江さんという人は、直接会って話せば、話の面白いおじさんだったんじゃないかなと。私も一度くらい、会いたかったですわ。何せファンですらないから、会う契機がまったくないですが。でも、仮に会うことができたとすれば、そこは年長者キラーの私ですから、私は大江さんを魅了することができたのではないかと。私のようなマフィア系のメンタリティーの持ち主は、一般論として、年長者にもてるのよ。

 それはともかく、本書には最後に、106個の箇条書き的な質問項目があって、その一つ一つに大江さんが短く解答するコーナーがあるんですけど、これがまた面白かった。

 たとえばこの質問コーナーによって、大江さんが結構な酒豪(2013年までの話)で、毎晩深夜、ウイスキーのシングルモルトを一杯、しかもエビスビール350ミリ4本をチェイサーにして飲んでいた、なんていうことも初めて知りましたし、酒の席での失敗もそれなりにあったことも知りました。エッセイはモンブラン、小説はペリカンの万年筆で書く、とかね。一番好きな本屋は神保町の北沢書店だったけれども、今はもう見る影もない、とか。

 あと、村上春樹の芥川賞候補作だった『風の歌を聴け』を評価しなかったのはなぜか?という問いに対し、「私はあのしばらく前、カート・ヴォネガットをよく読んでいたので、その口語的な言葉のくせが直接日本語に移されているのを評価できませんでした。私は、そうした表層的なものの奥の村上さんの実力を見ぬく力を持った批評家ではありませんでした」という回答も素晴らしい。

 それから、一番傑作だったのは、「今、一番の願いごとは?」という問いに対し、「東アジアの非核化」と並べて「あいつ(複数)の消滅」と答えているところ。大江さんにして、消えてほしいと思うような嫌な人物があちこちにいるのか、と思うと、楽しくなってきます。

 とまあ、私ですら面白かったのですから、大江さんのファンならなおさら楽しめることは請け合い。この本、教授のおすすめ!と言っておきましょう。


これこれ!
 ↓

大江健三郎 作家自身を語る (新潮文庫 新潮文庫) [ 大江 健三郎 ]





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Last updated  June 21, 2023 05:25:48 PM
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