おきにいり

おきにいり

2026.03.22
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バンコクへ旅行に行ってきた。
結論から言うと、同行者が乗り継ぎの機内にスマートフォンを忘れるというビッグアクシデントから幕を開け、旅の半分はその対応とストレスに支配されることになった。
今回のフライトは、大韓航空を利用した新千歳発・仁川経由のスワンナプーム(バンコク)行き。しかし、出発地点の千歳に着いた時点で、すでに50分の遅延が発表されていた。仁川での乗り継ぎ時間は元々2時間ほどしかない。幸先からなかなか危うい状況だった。
ところが、H.I.Sで購入したパッケージツアーの恩恵か、大韓航空同士の乗り継ぎだったからか、チェックイン時に不思議なことが起きた。なぜか新千歳空港のロイヤルラウンジ利用券とボーディングパスを渡され、預け荷物には見慣れないカラフルなタグが追加されたのだ。遅延のお詫びでラウンジが使えることだけは理解し、私たちはウヘヘと浮かれながら、ビールとつまみで搭乗までの時間を楽しく過ごした。(ちなみに帰国後、スクラップブックに貼ったそのカラフルなタグを調べると、「Short
Connection(乗り継ぎ時間短縮)」と「Priority(優先)」のタグだったことが判明する)。
いざ搭乗し、指定された座席へ向かうと先客がいた。しかもそこはビジネスクラスのエリア。「ツアーでそんなお金は払っていないし、間違いだろう」と思い、いつものエコノミークラスへ向かうと、客室乗務員に「お客様はこちらです」とビジネスクラスへ案内された。先客には移動を促してくれ、無事に着席。理由は全くわからないが、人生初のビジネスクラスでのフライトが確定した。
機内食は鰻丼をチョイス。うなぎ自体は少し固かったが、器は陶器で、ナプキンも分厚い綿。ドリンクメニューも豊富で、ガラスのグラスで提供される。とりあえずビールと思いメニューを見ると、酸味が強くて苦手な「Cass」以外に、済州ビールが作るペールエールがあった。機内でペールエールをガラスのグラスで飲めることに至福の喜びを感じた。
食後はシートをほぼ水平に倒してくつろいだ。千歳から仁川までは約3時間。エコノミーならシートベルト着用サインが出る頃でもドリンクオーダーが可能だというので、私はキューバリブレ、同行者はベイリーズミルクを注文。機内でカクテルとは、恐ろしいほどの贅沢だ。
しかし、これがいけなかったのかもしれない。
ベイリーズミルクで浮かれ気分が最高潮に達した同行者は、着陸時も着陸後もスマホで写真を撮りまくっていた。エコノミークラス常用者の私たちは、「上級クラスの乗客が降りるまで機内で待たされる」というルールを知っていたため、私は同行者に早く降りるよう急かした。同行者は喫煙者であり、3時間のフライトでヤニが切れていたこともあって、保安検査を抜けると浮かれたまま小走りで喫煙所へ向かっていった。
私はスワンナプーム行きの搭乗口前で待つことにした。以前二人とも仁川空港を使ったことがあり、「フリーWi-Fiのログインくらい一人でできるだろうし、最悪連絡はつくだろう」と高を括っていたのだ。
やがて搭乗が始まり、ゾーンごとの呼び出しが終わり、ついに「全員ご搭乗ください」のアナウンスが流れても、同行者は戻ってこない。LINEで通話しても全く出ない。いよいよ呼び出しを頼もうと覚悟を決めたその刹那、同行者が現れた。
「どこにいたの?」と聞くより先に、同行者の口から信じられない言葉が飛び出した。
「さっきの飛行機にiPhoneを忘れたかも……」
本当に眩暈がした。昔はスマホやネットなしで旅行するのが当たり前だったし、私の初海外もスマホが無い時代だった。しかし、今は違う。スマホがないと始まらない手続きが多すぎるのだ。
日本語が話せる搭乗口の職員に事情を説明したが、離陸時間は目前。「忘れ物はインターネット経由で探してください」と無情にも告げられた。私のスマホと、同行者が持っていたAmazon
Fire HDはある。搭乗口で立ち止まっている猶予はなく、後ろ髪を引かれる思いで次の機内へ乗り込んだ。
座席番号を見て驚いた。なんと仁川からスワンナプームへの便もビジネスクラス、しかも機材が違うためか先ほどよりさらに豪華なフルフラットシートだった。しかし、スマホを失った同行者は「わーい」と口では言いながらも、顔面は蒼白になっている。
離陸前、ウェルカムドリンクを持ってきた客室乗務員に、片言の英語と日本語を交えて「同行者が千歳からの便にスマホを忘れた」と相談した。すると彼女は乗務員用の端末で大韓航空の機内遺失物サイトを提示してくれた。「見つかればここに表示されるのか」と少し希望が見えたが、スマホのない生活に戻れない現代人にとって、これからの旅行への期待感はすでにゼロに等しかった。
客室乗務員からもらった赤ワインを飲み、シートベルトを締めて離陸。6時間半のフライト中、ほぼフルフラットにして寝続けたが、2回の食事はしっかりいただいた。メインディッシュは、焼き加減までオーダーできる立派で柔らかいステーキ。何種類かあったワインの銘柄は忘れてしまったが、赤ワインとよく合った。
スワンナプーム空港に到着。不安を抱えたまま、世界最大級の空港を進み入国審査へ向かう。ここで立ちはだかるのがTDAC(タイ入国カード)のデジタルデータだ。紙に印刷しておけばと後悔しても遅い。空港のWi-Fiを使い、なんとか私のスマホからAmazon
Fire HDへ同行者のTDACデータを転送して、無事に入国を果たした。
幸いにもホテルまでの送迎車がついているパッケージだったことに救われた。50分の遅延もあり、ホテルにチェックインした時にはすでに日付が変わっていた。
明けて滞在初日の朝。私は藁にもすがる思いでChatGPTに対応策を尋ねた。「大韓航空へメールで便名、日付、iPhoneの特徴を知らせろ」という提案を受け、そのまま英文作成を依頼し、大韓航空へメールを送信した。(AIは「わからない」と言わないためすべてを信じてはいけないと思いつつも、自分の英語力よりは頼りになった)。
バンコク初日の観光をなんとか終えてホテルに戻ったが、返信はない。しかし夜中に目が覚めてメールをチェックすると、大韓航空から「遺失物サイトから改めて申請してくれ」という旨の返信が来ていた。やはりChatGPTの提案が完全に正しいわけではなかったが、英文翻訳の精度には感謝するしかない。
2日目の昼食中。ついに「見つかった」というメールが届いた。心底安堵した。
受け渡し方法として以下の3つが提示されていた。
帰国のトランジット(仁川空港)で、Lost & Foundオフィスに行き受け取る。
大韓航空が就航している他の空港(私たちの場合は新千歳)へ送る。
韓国国内配送(日本への配送は不可)。
一刻も早く手元に戻したかったため、を選択して返信。ただ、「Lost &
Foundオフィスに行くには韓国に入国しなければならないのでは?」という懸念が生じ、追加で質問メールを送った。すぐに「入国の必要はなく、搭乗口の職員に声をかければ受け取れる」と返信があり、さらに胸をなでおろした。
この安堵感のおかげで、残り少ないバンコク旅行をなんとか楽しむことができたと思う。
そして帰国日。スワンナプーム空港のチェックインカウンターは恐ろしいほどの長蛇の列だった。大韓航空3便のチェックインを同時に行っていたらしい。早めに到着してプレミアムラウンジで祝杯をあげる計画はあっけなく崩れ去った。
ただ、チェックインの際、タイ人のスタッフから「忘れ物は仁川空港の乗り換え時にお渡しします」と口頭で伝えられた。メールでわかっていたこととはいえ、現地スタッフにしっかり情報が共有されているとわかり、安心感が違った。
チェックインが混んでいるということは、保安検査も出国審査も大混雑だ。かなり早く着いたはずなのに、出国審査を抜けた時点で搭乗開始まで30分しか残っていなかった。幸いプレミアムラウンジは搭乗口の目の前だったが、時間がなく利用は諦めた。
帰りの便は当然エコノミークラス。心身ともにクタクタだったため、毛布を頭まで被ってほぼ寝ているうちに仁川に到着した。
仁川空港での乗り継ぎ時。搭乗開始のアナウンスより前に搭乗口前に陣取った。やってきた女性職員に「iPhoneを取りに来た」と伝えたが、「私は空港職員であって大韓航空のスタッフではないから少し待て」と言われる。
15分ほど待つと、男性職員がチャック付きのビニール袋に入ったiPhoneをぶら下げてやってきた。パスポートのコピーと同行者の顔をサッと見比べると、あっさりと渡してくれた。こちらの数日間にわたる心労とドキドキに比べると、拍子抜けするほど呆気ない返却劇だった。
ゲート近くのピザ屋でTERRAビールを2つ頼み、乾杯した。
「次は不安のない状態で、思い切りバンコクを楽しもう」
と思ったものである。





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最終更新日  2026.03.22 09:50:12
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