きっとどこかの物語

きっと見えるから。







過ぎ去った音たち


あの頃のようにまた笑えたらなんて
今も笑ってるんだけどね
あの頃を思い出すと どうしても
今より幸せに笑っているような気がするんだ

あの頃のようにまた泣けたらなんて
今も泣いていたんだけどね
あの頃を思い出すと どうしても
今より優しく泣いているような気がするんだ

あの頃のようにまた話せたらなんて
今も話したりしているんだけどね
あの頃のを思い出すと どうしても
今より正直に話せていたような気がするんだ

過ぎ去った過去
嫌なことは全て忘れた
そんな過去いらない
ただ楽しい 幸せな過去だけ思い出すようにしてる
荒れた部屋とか、殴られる母とか、兄と父の殴り合いとか
そんなのなかったんだ
ただ、過ぎ去った音が奏でる美しいものだけ
思い出したい

美しいものしかなかったように


なのだけれど 過ぎ去った音は無情で
その大音量の綺麗な音の中に
小さくノイズを混じらせやがる






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空にとって


何もかわらないシンジツ
人がどう動こうと
進んだ時の流れは
曲がったりはしないのよ

彼女は言ったんだ
蹴り落とすような言葉を
さも簡単に
だけれどそれがシンジツだった
タイムマシーンなんか どこにもない
誰かがつくったのなら
もう
ずっと前から
この世界は変わっていたはずだった
戻すことのできない時間
どうしようもない過去
そして 醜い現在
変わり果てた自分
彼女の言葉は重かった
涙が出てきそうだった

時間を戻すことはできない
それはあたりまえ
だけれどね
それだけれどね
空はいくら時間がたっても
同じ空なの 何故だか知ってる?

僕は首を振った
彼女は またあたりまえのように言った
空にとって 時間なんかどうでもいいのよ
とてもまじめに言う彼女がおかしくて 笑ってしまった
そしたら彼女は怒らずに 一緒に笑ってくれた






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歌にあわせて描いてみた(意味不明です)


一つの幸せが
終わったときに
涙が流れるのは
あたりまえのことだから
我慢なんかしないで
泣いたっていいんだよ
きっと涙だけでも
君の頬をぬぐってくれる

まだ終わらせない
まだ生きるんだ
強く生きて
涙を流すんだ
涙は幸せがあったあかしだから
だから 不幸を知って涙するんだ
幸せを知らないのなら
涙なんて出てこない

いつかはじまる
また優しい幸せが
そのときまできっと
涙が枯れるように
一つの幸せが
いつか終わるように
一つの悲しみも
いつか終わるから

正しくなんかないよ
優しさが正しいわけじゃない
悲しさが正しいときもあるからさ

今空を見て
風を感じて
どこまでも続く 空に終わりがあるなら
今空を見て
終わりを感じて
きっと空の端っこなんか誰も見たこと
ないからさ

端っこがある空でさえ
誰も見たことがないんだよ
その端っこの終わりの方を

まだ続く空
どこまでも続いているような永遠
だけど終わりがある
悲しさもそんなもんさ

終わりがないような悲しみ
だけどいつか終わるから








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罪なのか ――本能なのか


震える肩と 散らかった部屋が
そこにあったすべてを物語っていた

細い息遣いが 静かな部屋に響き渡る
現実なのかさえ 当事者にもわからなかった

いきなり だったのだ

こんなことするつもりは 本当に なかった

涙は大量に
こんな涙もあるのかと思うくらい
大量に とめどなく

人間の醜さを知った
一度きりの感情で
一度きりの
何もかもを
奪うことができる

震える肩が一層強さを増した
人間の醜さなのか
そんなものではない 本能なのか

カランと軽い
 ―しかし当事者には重い―

鮮血の赤がとびちり
前で倒れている人や
手形に赤く染まっている受話器に少しだけついた

扉の開く音が 静かな部屋に響いた





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殺し合い


土を見つめる無意味な目が
涙を流す
ここで突っ立っていたって何もかわらない
何も、変わらない

雨が石を濡らした
今にもこの石が動きだしそうで

この下に あいつがいるなんて思いたくない

雨が頬を濡らした
無様な塩水を消した
この冷たい雨に打たれていても分かる
まだ ずっと涙はとまらない
目頭が熱い

            ごめん   ごめん
        苦しいだろうに
    そんな土の中にいて
クルシイダロウニ…

戦いが終わった
結果が負けだと知ったとき
お前は俺に言ったな
これで、元の生活に戻れると
戦争なんか、怖くないと

だが、これが戦争というものだった
正々堂々と戦ったものさえも
他国の兵と知れば殺す
これが、戦争というものだった
戦いや争いではない
ただの、殺し合いだということだった






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嘘とか偽とか、ね。



「お前がいてくれてよかった」
その言葉に素直に喜べないのは
「嘘」ばかりつくこの時代のせいなのか
人の言葉に「偽」ばかりをつける自分のせいなのか
定かではない
両方があるからなのかもしれない

もう何を言われても
それが「嘘」に聞こえて
それが「偽」に聞こえて
自分しか信じられなくて

こんなもんじゃないんだ
こんな、誰もが言うような言葉では、言い表せないんだ

本当は喜ぶべき言葉が全て嘘
それに気づきはじめたのは
作り笑いをするようになった頃
笑顔は大切だとか大人は言うけれど
つくった笑顔の悲しさを知ったときに
それが「嘘」だと気がついた

皆「偽」の笑顔で笑ってる
辛かった
そう気づいたとき
辛かった
それだけ
よく覚えてる







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遠い場所


「酷いこと」の境を知らない子供が嫌い
「醜いこと」の境を忘れた大人が嫌い
自由に生きている 本の中の登場人物が好き
酷くもあり その裏で優しく
醜くもあり その裏で美しく
まるでピアノの鍵盤のようだった
表でかなでているようで
本当は 裏で鍵盤を叩いている
だから美しい音が鳴る

現在地じゃない 遠い場所
その遠い場所にあるような気がする
本の中のストーリー
それが好き
実際にはないけれど
あってほしいシンジツ

酷く醜い ここは嫌いだ




END




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感情のない人


いつのまにか死んだ
家の扉をあけたら
死んでいた
目が落ちそうなくらいまぶたを開いて
顔を変形させて
死んでいた

よほど苦しかったのか
カーテンをひっかいてボロボロにして
イスを蹴りちらして
ガラスを割って
手は血で
床は血で
真っ赤だった

苦しかったのか

気づかなかった

そうか

そうか

苦しかったか

ふーん

家をよごさないでほしいんだけれどね








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過ぎ去った時代


倒れている人
それに目を向けずに 人々は
町の中を歩いていく
人は皆 下を向いているはずなのに
人は皆 下しか見ていないはずなのに
誰もが 倒れている人の頭を超えていくだけ
死んでいるわけではない
かすかに息をしているその人を
ただ通りすがりの人のように
見下すだけ

壊れた町の風景だった
それをいつもの光景のように
ただ外を眺めているだけのように
少年が窓から見ていた

全て 終わったことなのだな
少年はつぶやいた
アナタが生きていた時代は
もっと綺麗でしたね
お茶を飲みながら大人が少年に言った

全て 壊れたんだな
これが現実なんですよ

倒れている人の肩が
わずかもなにも
動かなくなった







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無意味な死


重い
体が 心が 目が 世界が
重い

押しつぶされるくらいの衝撃に耐え、
尚、走りつづけることが、
本当に、人間にできるのだろうか。

迷彩服
命をかけた戦い
どうして 目の前で人が死ぬ
何もしていない人が 死んでいく

世界は、もう終わっている。
気づけ、気づくんだ。
殺しあうことの無意味さに。
殴りあうことを止められる、強い意志に。

血が舞い上がった
命令だ。
命令に逆らうと、殺されるんだ。
簡単な喧嘩や殺人とは違う。
これが、
これが、
戦争というものなのだよ。
これが、
これが、
無意味という、ものなのだよ。

恐ろしくもおぞましい、
戦争というものなのだよ。
止めることは、自分の死を、
意味するのだよ・・・。






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空気を探して


この町からはもう離れる
悲しいこともあった
辛いこともあった
それが 重荷だとは思えない

あの人がいないこの 古びた裏通り
きっといつか帰ってこよう

いや、かえるのはよそう・・・。

壮大な空を見上げた
こんなにもちっぽけな自分がいるのか
この空に大小などという小さな枠があるのだろうか
しかしこの空気の中に
彼女が吸っていたものがある
ここにいた現実なんだ
きっと風にながれて
どこかへ

それを追おう
どこまでも
そのうち 自らが彼女のもとに
逝けるだろうから

今のうちに
少しでも探しておこう
彼女のいた
証を
空気を








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よわっちい勇者


勇者は勇敢にも
大きな獣に立ち向かった
小さい僕にはそんなことできなくて
小さい僕には勇気なんてものも小さくて

勇者は勇敢にも
大きな獣に剣を抜いた
小さいことを理由にした僕なんか見ようともせずに
小さい剣を強く握り締めた

小さな勇者の手には小さな剣
僕はあまりの恐ろしさに
歯をガチガチならしていただけ
背をガタガタ震わせていただけ

いつもよわっちい兄は僕を助けに飛び込んできただけ
いつもつよがっている僕は ただ震えているだけ

勇者は勇敢にも
大きな獣に剣をさしむけた
僕は見た 小さな剣をたかだかとかかげる勇者の姿を
僕は見た 小さな剣を持つ手が僕よりも震えているのを

そこに本当の勇者がいた
そこに本当の強さがあった
怖いけれど
剣を抜く
震えるけれど
睨みつける

僕は 兄の横に立ち
腰にかかったナイフを抜いた






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罪というもの


これが罪というものか
こんなにも 重苦しいものだとは 思わなかった

涙より 重いものがある
血より なまなましくグロイものがある

これが罪というものなのか
体がとける・・・いやそんなものじゃない
痛くもないはず
怖くもない
なのにどうして
この重圧は 一体何なのか

いっそうのこと消えてなくなりたい
そう思うことさえも罪
そんなかんじがする

これが、罪と、いうものなのか・・・・

重い

これが、罪というものなのか




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背中の重み


あの頃の握りこぶしはまだ小さくて
力もなく弱そうで
それでも 赤くはれ上がり 血にまみれていた

上を向こう

背負ったかばんの重さなどどうでもよかった
ただ 歩きつづける
それだけが目的

逃げ出そう

もし 逃げることがいけないことだと
誰かが言うのならば
問いたい

何を失ってでも そこにいなくちゃいけない理由は何か

闘争心か
見得か
大切なもののためか
意地なのか

それなら そんなものが本当にない者にまで それを強制するのか

背負った荷物の重みなどどうでもいい
それが重ければ重いほど 足取りは遅くなる
だけれど そのかばんには
前へ進むための道具がたくさん入っている
逃げるための道具かもしれない たとえそうだとしても
背中の重みを忘れたりはしない







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気づいてよ


バカ、のうてんき、マイペース、あほっぽい
みんな そういう
それでいいんだ それで

返り血を浴びて 死肉を掴んで生きている僕に
誰も気づかなくていいんだ
それで いいんだ

知ってる人と知らない人
知ってる人は僕と同じ人種
知らない人は僕と違う人種

今日も明日も 集合のアイズがかけられる
人を「狩る」アイズが

ばーか、明日も学校だかんな、こいよ。じゃあな。

ばかっぽく笑って見せて
一日を終える

普通なら だ

「いくぞ」
今日もアイズが下された
僕のほかにも十数名
ほとんど 僕と同じ子供だった

それが
死肉をつかんで
むさぼって
ツギの日には バカっぽく笑うだけ

END




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どうしてだかは知らないが


遠くを見ていた
ずっとずっと下の方を
がけっぷちにたって
真暗な下を見ていた

きっといつかはあそこに落ちる

この前までいた町の方を見た
皆笑っていた
だけれど
ココと町とでは
区切られた敷居があった
見えない敷居が

いっそのこと
底のない暗闇に

飛び込んで
何日も何ヶ月も何年もたって気づいた

もう一人 一緒に落ちてる人がいる

その人は自分によくにていた

ごめんね
救えなくて

そう謝って
消えていった

どうしてだかは知らないが
僕の意識は消え
町の中にたっていた






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復讐心のはじめ


ワスレナイデイテ
僕らは仲間だ
いつまでも
どんなときも
僕らは仲間だ

踊り狂い僕らを殺そうとする君を見ても
あいつは言った
 ナカマダカラ オマエヲコロスワケニハイカナインダヨ
お願い もとにもどって

トリモドシテクダサイ
操り人形にさせられる前の
君の
ナカマを大切にする心を

踊り狂い刃物を握り締め血をたらす
それが君だと気づいた時には
そいつはもう君を殺していた

カエッテキテクダサイ
動かなくなった
操り人形

ほんとうに
ただの人形となってしまった今でも
ボクラハナカマダカラ


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ばーかばーか


ばーか
何↓向いてんだYO
お前雑魚?
もしかして「私なんかいないほうがいいわー」とか言ってる?
ばーか
人間生きてるうちに何べん人様の邪魔してると思ってんだよ
んなこと言って死んだらさらにウゼーっての
生きろよばか
ばーかばーか

動かねえゴミより
動くゴミのほうが邪魔じゃねえから
動いとけ

ばーか
猫背がカッチョワリーって
もっと背のばせよ
「偽善ばっかしてる自分なんか、どっかいっちゃったほうがいい」とか?
お前、それが偽善なんだよ
気づけ
頭クソかてーっつの
ばーか
誰だってホントは自分が一番可愛いんだっつの
超ばか
ばーかばーか

もっと生きていいんじゃねえの?
ほんとにばかか

ばーか
笑えっての





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ちょっとね


横たわって
血みどろの姿で
「たばこくれ」
なんて
安心させてるつもりかよ

「外に寝転んで、こんなに空を見たのははじめてだ」
「負けたことなかったもんね」
たばこくわえながら
血が出てる口でマヌケに笑ってた
ちんけなヤツだ
「負けて楽しい?」
きいてみた
「いんや、全然」
「じゃあなんで笑うのさ」

「空ってこんなに青かったんだなってな」
負けたときにそんなこと考えるのか
強がっているのか
そうじゃないのか
でも負けてもそんなに余裕があるなんて
ちょっとカッコイイなんて思ったりしたりして


END



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猫が笑った


グラスを手に
サングラスをかけて
タキシードを着て
威勢たっぷりにあやしいライトで照らされた部屋を歩いて
綺麗な女性に話し掛けて

ライトが揺れて
懐から銃を取り出して
煙を出して
店から出て

走る姿が
一匹の黒猫だった
その姿に見ほれて
見ていた僕はついていった

ボロボロな服で
彼とは正反対なカッコして
かくれていたら
「出てきな」

怖くて逃げたら
何かにぶつかって 見上げたら
そこに猫がいた

猫は笑った
僕も笑った
猫も笑うんだな
へんなの

「似合わねぇカッコ」
「そっちこそ」







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全世界の鎮魂歌


おぞましい曲が流れ出した
どこか切ない
大きい何かがないているような
そんな曲だった

町じゅうに響き渡る轟音
慎重に聞いてみれば
それは音楽
悲しみの曲

どこからともなく聞こえてくる
子供の泣き叫ぶ声
大人の狂った罵声
小さくエコーのついたすすり泣き
まるで暗闇の中のように
まるで静寂の中の世界のように
この騒がしいはずの町に響き渡った

だけれど誰も振り向かない
立ち止まりもしない
聞こえないのか、この声が
この、音楽が
世界の終わりを示すような
レクイエムが



END

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踊り舞う その少女の名は


誰も 少女を見たことはないという
しかし本当は 全ての人が彼女を見たことがあるのだ

その 死にもがく踊り子を

彼女の通った後には必ず
血みどろの道が広がるらしい

「知らない」
それが人々の口癖だった

言ったら殺される
これが人々の中の掟だった

笑いながら
殺していく
そして
死にもがきながら
踊り舞う

その少女の名は

「誰も知らない」


END








_____________________________________


踊り舞う その少女の名は


誰も 少女を見たことはないという
しかし本当は 全ての人が彼女を見たことがあるのだ

その 死にもがく踊り子を

彼女の通った後には必ず
血みどろの道が広がるらしい

「知らない」
それが人々の口癖だった

言ったら殺される
これが人々の中の掟だった

笑いながら
殺していく
そして
死にもがきながら
踊り舞う

その少女の名は

「誰も知らない」


END



_____________________________________



一緒にどうぞ


決められた道を歩くなら
大好きな道を歩きたい
たとえそこが血の海でも
平然とした顔で歩くから
どうか手を引かないで

もし 君がいいのなら
君が許すのなら
血の海でもいいのなら
一緒に歩きませんか?
きっと手は血だらけになるけれど
その先には
きっと

決められた道を歩くなら
大好きな道を歩きたい
きっとそのさきには
大好きな場所があるから
一緒にきますか?






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踏み入れちゃいけない場所


この世はね
足を踏み入れちゃいけない場所があるのさ
まだ乾ききっていないセメントのようなところのことだよ

ほら
また一人
ヒトが死んだよ

このヨはね
アシをフみイれちゃいけないバショがあるのさ
報道などされない場所がね
そう
世間からは
闇とか
裏とか言われている
そうだろうね きっと
世間のような場所からは見えない
暗い場所
裏側
そんなもんだよね

ほら
また一人
ヒトが死んだよ



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暗闇から


今はまだきっと
薄暗い闇から出かかったばかりだから
ただゆっくり こっちに歩いてきてください
まだ 足元がよく見えないはず
僕の手につかまって

疲れたよね
今まで我慢してくれて
ありがとう

光へ出ればまた
一緒の体になれるから
だけどお願い

暗闇にいた頃のこと
忘れないで

悲しさの中にいた頃のこと
忘れないで

怖いかもしれないけれど
それがきっと
何かの盾になるはずだから
それがきっと
君を何かから守ってくれるはずだから

ほら またあの頃のような
いや きっと違うけれど
暖かい光が見えてくるから

やっと 出てこれたんだね



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ただ、これだけ伝えます。


無意味なんて言わないで
僕がはじめて決めた道なんだ
優しく見守っていてください

アナタに優しさを感じたことはあった
けれども愛を感じたことはなかった
例えアナタが僕を愛していたとしても
僕はそれを決して受け入れはしなかった

無意味なんて言わないで
僕がはじめてアナタの歩いた道を歩こうとしているんだ
暖かく見守っていてください

死んだ、父さんへ。


END









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ヒトはすでに


自分の醜さを
自分の恐ろしさを
自分の憎さを
とうにそれらを知ったから
とうに僕は死んでいた

呼吸をしている
心臓が動いている
血液が循環している
そんなんじゃない
生きているっていうのは
そんなんじゃない

いつからヒトは思考を持ち始めたのか
それが悲劇なのか
それが最悪なのか
今となっては
思考を持ったはずなのにわからない
解るはずがない

何も知らずに
この先のことを考えずに
いや考える暇もなく
思考を持ってしまった

そのとき
ヒトはすでに
死んでいたのかもしれない


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コロシテアゲヨウ


ねぇ。笑ってるよ。
顔が、ほら、笑ってる。
あはははは。かわいいね。
かわいい。笑ってるよ。

コロシテアゲヨウカ
殺してあげる。
その笑ってる顔
ボロボロにしてあげる。

手がさ、血の色になるほど
踏んづけて
骨をくだいて
ボロボロにしてあげる。

鮮血がよく似合うよ。
キレイだね。

コロシテアゲヨウ
もっともっとキレイにしてあげるから。
もっともっと汚くさせてね。

コロシテアゲヨウ
コロシテアゲヨウ





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崩壊未来世界


崩れかけた世界
本当に いつか崩れるのだろう
ヒトは下を見て歩いている
背中は 自然と曲がっていた

崩れかけた世界で
星の明るさを知る人は少ない
ボロボロになりながらも
それでも尚 背筋をぴんと伸ばして

古い井戸の中の腐乱臭が少年を襲った
水を飲もうとしてこのざまだ
どこにいっても
腐ったヒトの死体ばかり

木さえ天を目指さなく生えている
下に垂れ下がり
地面ばかり見ていた

いつか、あの星になれるなどと抜かしていた
あの幸せな時代
あの幸せな場所
もう誰もその時代を知る者や
場所を持っている者などいない

またヒトは猿に戻った
背中を曲げ 歴史を振り返らない

崩壊未来世界は
すぐそこに

もっとも これが正しい世界像なのかもしれないが





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そこにたしかにあったはず


そこにたしかにあったはず
あの日の夕焼けが
波打つススキが
そこにたしかにあったはず

むぎわら帽子をかぶってさ
走っていたよね
あのときが一番幸せだったかもしれない
そう思ったよね
その現実は
そこにたしかにあったはず

魔法が使えるなんてさ
ほうきのうえにまたがって
飛んで
落ちたことが
そこにたしかにあったはず

そこにたしかにあったはず
苦しくない
笑っている自分が
胸がとくとく言っている体が
赤い血がながれている腕が
腐っていない肉体が
そこにたしかにあったはず

そこにたしかにあったはず
そこにたしかにあったはず

死ぬ前の自分自身が

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無題


小さな願いが叶うのなら
この花を咲かせてください
今にもツボミまで
落ちてしまいそうなこの花を

咲く前に枯れる花
それが運命だとしても

悲しすぎるでしょう
切なすぎるでしょう
夢を見るだけで終わる
この世界に根を張り生きている
この花に幸あれ

人はきっとそう
この花と同じなんだね

水がなくちゃさあ
光がなくちゃさあ
花は決して咲かないでしょ
土台はこの場所に
この地上にどこにでも
あるからアキラメないで



END


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2004年6月20日


バカみたいに騒いで
「バカだー!」とかいいながら大笑いして
でもそれが楽しくて

カラオケで鈴をシャンシャン鳴らして
いぇいいぇい言って
バカ笑いして

帰り道で走りまくって
おどかされて
叫んで

踊って
「よってるだろ!?」とか言われて
へらへら笑って

酒なんか飲んでなくてもさ
お前らといると
楽しくてよっちゃうんだよ

恥ずかしくていえなかったけどさ
でもさ
笑ってれば伝わるかな
なんて思いながら
やっぱりへらへらバカ笑いしてみたりして



END


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障害の鍵


「お前じゃムリだ」
切断された道
無理矢理天井をつけられた空を見ているようだった
そこには、確かに空があったのに
野原を走り回っていた頃 見つけた小さな夢
自分ならできると信じて いつまでも野原を走り回った
やっと道を見つけて
やっと空に近くなって
いざ 外に出ようとしたとき
軽く言われた言葉とともに
外へと続く扉は閉ざされた
鍵は、あの言葉で十分だった

出たいよ。
出してよ。
道が、やっと道が見つかったんだ。
空に、やっと空に、近くなったんだ。
出してよ、出してよ・・・・

コワシテヤル

「お前にはムリだ」なんて鍵ぶっ壊して外に出てやる
そして 小さいけど 大きい夢を叶えに行くんだ
大きな空にやっと近づいたんだ
もう 一人でも 生きていけるんだ
そう叫んで もっと叫んで 鍵を粉々にした
そうしたら鍵は形を変えて 言った
「お前にはデキる」

久しぶりに出た外は 道が小さく細く険しく見えた
久しぶりに出た外は あの頃よりも もっと空が近かった
「だけど、それは、お前が大きくなった証だ」
鍵は形を失って、消えていった。






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天国という場所


 昔ね、一人のおじいさんがいたんだって。
 そのおじいさんは苦しそうに亡くなったの。
おじいさんには、お孫さんがいてね。
 孫はまだ小さくて、でも言葉はちゃんと喋れたの。
 それでね、その孫は、おじいちゃんを見て言ったんだって。
  おじいちゃん。笑っているね。
 笑って言ったんだって。
 孫のお母さんは驚いてね。
 でもお母さんは嬉しそうに言ったの。
  きっと、幸せな場所に逝けたのね。
 お母さんは、嬉しそうに言ったのよ。

 ねぇ知ってる?
 誰かが言っていたのだけれど、
 天国という場所にいけた人の近くには、
 やさしい人たちが集まるの。
 やさしい、人たちが集まるの。
 私は、やさしくできたかな。

涙が一滴、少女の頬に落ちて、アゴを伝った。
涙は一滴、少年の頬に落ちて、動かなかった。
少女は涙の落ちた頬をぬぐって、笑った。

 明るい場所に、逝けたかな。
 暖かい場所に、逝けたかな。
 天国という場所に、逝けたかな。
 やさしくできたかな。
 やさしく、してたかな。
 天国という場所で、きっと待っててね。
 きっと待って、いてね。

少女は気づかなかったかもしれないけれど、
そのとき、少年顔は、幸せそうに笑っていた。





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ここは、こういう場所だから。


血みどろになりながら
何かを殺しながら
それでも 弱弱しく震えるこぶしを
それでも それでも
振り下ろさなくてはならない
思い切り振り下ろして
壊さなくちゃいけない

彼は言った。
ここは、こういう場所だから。
泣きながら、彼は言った。

これは自分の血なんかじゃない
返り血を浴びながら
それでも 堂々と生きる彼を
それでも それでも
殺さなくてはならない
泣きながら殺して
生き延びなくてはならない

僕は言った。
ここは、こういう場所だから。
泣きながら、僕は言った。

それでも それでも

ここは、こういう場所だから。


END




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殺人鬼


「お前なんかいらない。この場所から消えてくれ」
それが最後の言葉なら、貴方は優しすぎる。
私は何も思わず去りましょう。
私は何も言わず歩きましょう。

血を見ても何も思わない。
泣きもしない。
簡単に人を殺せる。
それが、殺人鬼だから。

貴方はどう思いますか?
泣きもせず、人を殺す私を、殺人鬼を。

命令に逆らえば殺される。
次のターゲットは

貴方

「お前なんかいらない。この場所から消えてくれ」
貴方は優しすぎる。だけど、演技が下手すぎるよ。
そんなのじゃ、私は貴方をうらめない。殺人鬼になんかなれない。
私は泣いてしまう。
私は、泣いてしまう。

本気で言って下さい。私を恨んでください。
私に恨ませてください。私を殺人鬼にして下さい。

どうか、貴方を殺人鬼として殺させてください。


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救えないんね


あの時、言っていればよかった。
「絶対に行くな」
そうすれば、救えてた。
だけど、行った方が幸せなのかもしれんかった。
だから言わんかった。
あの時言っていれば、こんなことになど。

泣いてた。
電話の向こうから聞こえる声は、泣き声だった。
傷をつけて帰ってきたんだ。
無力なんよね。
自分は無力なんよ。
お前を救えないんな。

救えないんね。

深く奥まで入った傷は、
例え治ったとしても、
傷跡として残る。
その傷を見てられないのよ、すまんね。
すまんね。本当に、ごめんね。

俺が、ソノ上から傷をつけてやろうかと思ったのにね。
手が動かないんだよ。
どうしても、ソノ傷はもともと俺がつけたような気がして。
助けられなかった。
救えなかった。

お前の決して消えない傷跡を見るたび、思い出すんだ。
もう、俺がどうしようと、誰がどうしようと、

お前を救えないんね。






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トオボエ

息を切らした狼が空を見上げた
何も信じられぬこの世界で 一人で生きていく
そう決意した狼は 星の下で泣いた

  ハシレ マダマニアウ
   デモ ボクハナカマニイレテモラエナイヨ・・・
  ダイジョウブダ オマエハヒトリジャナイ オレガツイテル

狼は地面を見た
暗くて人の目じゃよくみえないだろう
だが 狼の目にはしっかりと見えているはずだ
目の前のシンジツが

  モウスグ モウスグナカマノモトヘツク
   コレデ ゴハン タベラレルネ
  サァ ホエロ ナカマヘイキテイルトシラセヨウ トオボエハナカマノシルシダ

狼はもう一度空を見た
ギリギリと睨むまなざしは どこか遠い星を見つめていた

  ・・・・ドウシテダ
   タ・・スケテ・・・・・
            オマエハモウナカマジャナイ

狼は歯を食いしばった
その口には血がついていた
激しく走ったせいか 泥のついた足元には
まだ少しだけ暖かいモノが 少しだけ息をしていた

   ナカマ・・・ダヨネ?

オオカミは胸を張り上げ 鼻先を星が輝く空に向け
たからかに吼えた
ヨクキケ コレガサイゴノトオボエダ






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迷彩


許されない場所に足を踏み入れた
もう二度と戻ることなんてできない
どんなに奇麗事を並べてみても
赤く飾られた花のグロさは隠し切れない

色の下に隠されたシンジツの色
自由に塗られることのない迷彩
笑顔という名の不自由な迷彩
戒めとして塗られた迷彩

赤い華麗な花の下に隠された黒い花びら
けたけた笑っているそいつが
今にもまたうきでてきそうで

どんな色を塗っても
その下にまだ色があることは十分承知
それでも華麗に着飾ろうと

許されない場所で咲いた黒い花は
雨を浴びて
少しだけ本当の色を見せた


END


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引き止められたなら


あの時もし 引き止めることができたなら
あの時もし 手を引いて「逃げよう」ということができたなら
あいつは今も笑っていたかもしれない

「忘れてくれてもいいからさ」

誰も好きになどなれない
それが呪われた血筋を持った運命だった
あいつのことさえ呪ったから
あいつのことさえ信じられなかったから
へらへら笑うあいつは いつも楽しそうで
裕福な家庭のあいつを幾度呪って
こんな自分も愛してくれたあいつを幾度恋しくなっただろうか

何を犠牲にしてもいい
また笑ってくれるなら
魂だって売ってやる

あの時もし 引き止めていたなら
あの時もし 地獄へでもいい あいつの手を引いて 走ることが出来たなら

もし、寂しそうに別れを告げたときに
気づいてやれていたら

あいつは、親に殺されることなんてなかったのに


END





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16歳の死刑囚


いつかの時代の どこかの場所で
16歳の少女は 偉大と偽の名を称された金持ちを刺した。
死刑囚となった彼女は
遠くのどこかに逃げていった。

それを追う一人の警察。
少女の後を走り回り
遠くのどこかに追っていった。

少女は草原にたどりついた。
大の字になって
風と、頬にあたる草を感じて
昼寝した
涙を流して、昼寝した

一人の警察は、少女の過去を調べた。
何故犯行に及んだのかがわかるかもしれない
一人の警察ははっとした
誰よりも早く、彼女を探し出さなくては

少女は泣きながら
幸せそうに笑っていた
まるではじめて笑ったかのように
はにかんだ顔で笑っていた
「自由だ!」

一人の警察は草原にたどりついた。
少女を見つけた。
部下が捕らえようとしたが
一人の警察は手を出して止めた。
「最期ぐらい、好きな場所で死なせてやれ。」
部下は下がって、上司に微笑んだ。

ヒラヒラでズタズタなメイド服を風になびかせて
少女は笑う。
皮のない 肉丸出しの赤い腕を伸ばして太陽をあびた

「あのコだったんですね。」
部下が言った。
「あぁ。」
上司が言った。
「罰、受けてもいいんですか?」
部下が言った。
「構わない」
上司が言った。
もう一度上司が続ける。
「最期ぐらい、娘を見届けてやりたいんだ。」

ワケアリの死刑囚
ここで死なせたい理由

最期ぐらいは、自由な場所で。

買われ閉じ込められた子供
売った大人
買って殺されたカネヅル

一人の警察は
部下に背を向け涙を流し
帽子をとって
頭を下げた。


END


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本当は愛さなくてはならない人


俺はアンタを憎む 殺したいほどに
手に握ったハサミが震えだす
それを見たアンタは車で逃げていった

どうしようもない怒りのやり場
そんなもの アンタ以外に向けても意味がない

俺はアンタを憎む 殺したいほどに
ドロドロした感情も アンタに向けると正義になるような気がした。

アンタは「どうしてそういう態度をとるのか」ときく
本当に分からないのか?アンタがしたコトを思い出せ

目の前ですがり、罪をこう母
それを蹴散らすように、暴力をふるう父
歯を食いしばって見ているだけの自分。

それがなかったかのように「もうしないから許せ」というアンタ
それなのに、未だに母の影で俺をこらしめるアンタ

アンタは見たことがあるのか?
知っているのか?
隠れて泣く、母の姿を


END




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ベストフレンド


君は僕に
「本当の家族みたいだ」といってくれた
君の言う「本当の家族」を知らなかった僕は
その言葉がすごくうれしくて 照れ笑いした

その本当の家族みたいな僕が
もし死んだら
君は泣いてくれるだろう
そう考えるだけで死にそうなくらい嬉しかった

だけど君は知らない
大声で泣き叫ぶ
君の本当の家族のような 人の声を

僕は 唯一の家族である君を悲しませたくない

だけど
ゴメンナサイ

僕の手が
僕の心臓が

近々君を泣かせるかもしれない


END



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笑えない君へ


手を振ることも できないんだ
これでもう 終わりなんだ

夢の中で会えたら良いなんて
ダレが言ったのさ
笑ってさよならなんて
ダレが言ったのさ
君はもう夢も見られない
君はもう笑えない
それなのに なんで僕がそんなことするのさ
夢も見たくないし笑いたくもないよ

手が震える
涙が落ちる
ぎゅっと目をつぶって 目の前の現実を見ないようにした

ふと、誰かの手が僕の手をとった
そして、目の前で眠る人の頬へおいた
冷たい
さらに涙が流れた
泣くな
冷静な声
誰かわからないけど ソイツは言った

もうコイツは笑えない
だからお前は笑って見送れ
泣けないコイツの前で泣くのはやめろ

何故だかわからないけど はっとして
僕は涙をぬぐった
涙目で鼻水が出ていて、情けない顔だったけど、
僕は精一杯笑った





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母親になるはずだった


子猫を抱える母親
母親が少し離れると
別の猫が飛んできて
子猫に母乳を与えた
出るはずもないものを与えた

とても幸せそうに子猫を眺めた
まるで自分の子でも言うかのように
細目で子猫を見つめていた

お前のコじゃないんだよ。

言ってもきかなかった
離れたくないと言わんばかりに
声を低くして鳴いた

母猫がかえってくると
母猫がうなってその場をどかせた
猫はしぶしぶ逃げていく

母猫の目のすきを盗んで
猫は子猫のところにいく
そして子猫をいっぴきくわえて
どこかへ連れて行こうとした

僕は猫を部屋の外に出して
ドアを閉めてしまった

切なそうに大声で鳴く猫
声を張り上げて鳴く声は
子供を求めている母猫の声

ごめんね。

猫はいつまでも鳴きつづけていた
本当に泣いているかのように
絞りだしていた声はいつか枯れ
静まった

ごめんね。

溢れ出しそうな感情を胸の中に抑えて
ドアを少しだけ開けて猫を見た
その小さな隙間に顔をつっこんで
力強くつっこんで
部屋の中に入ろうとする

ごめんね。
生みたかったんだよね。
母親になりたかったんだよね。
ごめんね。

人間の勝手な都合で下ろされた子猫
おなかの中には5コ 丸いものがあったらしい

お前も 子供産みたかったんだよな

ごめん。

本当にごめんなさい。

泣く声は、いつまでたっても廊下に響いた





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END


ボクは生きている


悲しみを忘れられなくて
それでも生きていたくて
だけど何も出来ない自分を責めて 殺しそうになる
だから何も出来ないボクを押さえつけて 仮面をかけさせて

情けない自分を隠して生きていくなんて難しくて
それでも悲しみを抱いて走り続けていたくて

優しい風に触れたとしても
それが優しさだと気づくのが遅かった

全ての愚かさが自分にあると埋め込んで生きていく
それだけが術だと思って仮面をかけて生きる
自分だけが悲しめば良いなんて思いながら
誰かの悲しみを笑いながら見ている

そんな自分を殺したい

だけど手が動かなくて
息を止めるのが苦しくて
忘れられない悲しみが襲って
こんなことで死んでたまるかと叫び出す

死ぬ決意も情けなく崩壊し
ボクは今も生きている


END






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斬らない剣士


一人、つり目の剣士が村にきました。
大きな剣を腰にして、一つのロケットを首にして、宿へいきました

三日泊まらせてくれ、と剣士はいいました。
宿の主が代金を言って、剣士を中へ通そうとします。
そこへ一人の少年が、
そんなやつ、この村から追い出せよ。
宿の主は、気にしないでくれ、と苦笑いをしました。

次の日、剣士が起きてロビーに行くと、
昨日の少年がいました。
少年は剣士をものすごい形相で睨んでいます。
でていけ!
剣士は少しの間だけ少年を見て、
宿を出て、散歩に行きました。

夜、宿へ帰ってくると、やはり少年は剣士を睨みます。
剣士はあまり気にしていない様子でした。
そこへ少年は、
剣士なんか出てけ、お前らなんか、お前らなんか・・・
少年は泣きそうになりました。
それを見られたくなかったのか、少年は宿を飛び出しました。
それを見ていた宿の主は、またも、
気にしないでくれ、といいました。
剣士は、静かに宿を出ました。

空には月が、そして星が、村を照らしています
少年は足音に驚いて、後ろを振り返りました。
ぐしゃぐしゃの泣き顔で。
くるな、おまえなんかだいきらいだ!
剣士は言いました、
お前は優しい目をしているな。
剣士は、さやに入ったままの大きな剣を
少年の前へつきだしました。
持ってみろ。世界に一つしかない剣だぞ。
少年はしりもちをついて怯えました。
少年は剣を触ることを怯えたのです。
剣士は少年の目を、月に照らされた目で見据えました。
その目は、月夜に照らされる黒い猫の目でした。
少年は怯えてかけだしました。

次の日の夜も、同じように、同じ場所で、
少年は泣いていました。
そこへ剣士はやってきました。
なんでくるんだよ。
少年は罵声を飛ばしました。
しかし剣士は、またあの目で少年を見ます。
剣をつくる者は、よりよく斬れるようにつくる。
剣は何者にも負けないようにつくられているんだ。

剣は、大切なものを守るためにある。

剣士は言いました。
少年の怒りは倍になりました。
じゃぁなんで、父さんと母さんは殺されたんだ。
少年は叫び、宿へ走っていきました。

二階へ駆け上がる少年を見ていた主は、ためいきをついて、
あのコは、親を剣士に殺されたのさ。あの場所でね。
宿の中に入ってきた剣士に言いました。
剣士は昔の自分と少年を、重ね合わせていました。

次の日、剣士が宿にとまって三日目です。
穏やかな朝でした。
剣士は宿に勘定を払って、宿を出ました。
すると、いきなり刃が剣士の前に。
剣士はそれを軽々とよけました。
4人か。
剣士は頭の中で人数を数えました。
4人の一人は言いました。
まさかあの大剣の持ち主に、こんなに早くあえるとはね。
笑いながら言いました。
その騒ぎに宿の主は外へ出てきました。
4人は主を見て、都合がいいと言わんばかりに捕らえました。
大剣を渡さないと、この主を殺す、とでも言いたいそうです。
しかし、剣士にとってそんなことはどうでもいいことでした。
剣士はただ、その光景を見ていただけです。
そこへ、ドアの隙間からそれを見ていた少年が叫び出てきました。
なんで助けないんだよ!剣は大切なものを守るためにあるんだろ!
剣士にとってはどうでもいいことでした。
剣士にとって主は大切な人ではありません。
剣士は笑って少年に言いました。
俺にとってはどうでもいい。
お前にとってはどうだかわからないがな。
そういって、剣士は大剣を少年に投げました。
少年は落ちてきた剣に怯えます。
剣士の方を見上げても、剣士は笑っているだけ。
お前に貸す。助けてみたらどうだ?

剣を触るのはとても怖い。
剣で親は殺された。

でも

今目の前で、また一人、大切な人が殺されようとしています。
少年は目を思い切りつむりました。
握り締めた拳に力を入れます。

剣は、大切なものを守るためにある。

少年は大きな剣を拾い 握りました。
その大きな風格とはうってかわって、とても軽い剣でした。

4人はその光景を面白がりました。
いかにも弱そうな少年からなら、大剣を簡単にとることが出来ます。

少年は4人を睨みます。
剣を持つ手は震えます。
しかしそれ以上に、大切な人を守りたい。
少年は走り出しました。
大きく、軽い剣を握り締め。
4人のうちの一人も、少年に切りかかります。
しかし大きな剣の方が、相手の体にはやく届きました。

しかし、斬ることはできません。

倒れた一人は、苦笑をして立ち上がり言いました。
あたったのはいいものの、斬り方を知らなかったようだな。
少年は怯えました。
大きな剣が高い音をたてて地面に落ちます。
立ち上がった一人が、少年に切りかかりました。

剣は、大切なものを守るためにある。

剣士はそういって、少年の前に踊り出、
地面に落ちていたはずの剣を持って、相手の剣を止めました。

そして一振り。

その一振りで、3人は倒れました。

主を捕らえていた一人は、その光景に怯え
逃げていきました。

しかし、地面には一つも血など落ちていません。

少年はその光景に絶句しました。
俺の大切なものは、自分の意志だ。
もう二度と、自分の前で血は流させない。
剣士は優しく笑いました。
少年も、怯えていた顔を徐々に笑わせて、
不器用な笑顔で思いきり笑いました。

斬らない剣士の剣は、斬れない剣。
刃などついていない剣。

剣士は、少年に向けて背を向けようとしたときに言いました。

大切なものをまもるための刃は、
心にでもしまっておけ。

剣士は背を向けて、村を去りました。

少年は宿の主にいいました。

剣がほしい。



END









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