Trachelectomy

Trachelectomy

広汎子宮頚部摘出術の記事



 関東地方の30歳代の女性は一昨年、子宮頸(けい)がんと診断された。
がんはやや進行しており、通常なら子宮の摘出が必要だったが、子宮を温存する新しい手法の手術を慶応大病院で受け、昨秋に無事、男児を出産した。「広汎(こうはん)子宮頸部摘出術」と呼ばれ、この治療を受けた人の出産は国内初だった。妊娠、出産を希望する患者のために子宮を温存する治療の試みが広がっている。
子宮がんには、入り口(頸部)にできる子宮頸がんと、奥の部分にできる子宮体がんがある。

 子宮頸がんには、早期であれば、頸部を円錐(えんすい)状に切り取って子宮全体は残す「円錐切除術」が広く行われている。ただ対象は、がんが子宮頸部の浅い部分にとどまる0期から1a1期に限られ、病巣が広がったり深くなったりした場合、通常は子宮を摘出しなければならない。

 これに対し、子宮を温存する「広汎子宮頸部摘出術」は、子宮頸部と膣(ちつ)の一部、周囲のリンパ節と子宮をおなかの中で支える組織(基靭帯(きじんたい))を切り取り、残した子宮体部を膣につなぐ方法だ。

 慶応大は2002年からこれまでに、既婚、未婚を問わず妊娠、出産を望む20歳代から30歳代の女性20人に実施した。うち2人が妊娠を試み、冒頭の女性が出産した。

 この治療は、がんがやや進行した1a2期から1b1期までが対象になる。ただし、がんが2センチ以上か、「腺がん」というタイプの場合は転移の危険が高く、この治療を受けられるとは限らない。周囲のリンパ節へ転移がある場合も子宮を摘出する。

 同大助手の福地剛さんによると、この新手術は欧米で約15年前に始まり、既に100人近くの赤ちゃんが誕生している。ただ、妊娠しても早産しやすい傾向があり、子宮の入り口を縛り直す緊急手術を行う場合もある。欧米データでは、がんの再発率は子宮全摘手術と変わらないが、安全性が確立しているとは言えず、妊娠中も画像診断などで再発していないかチェックが欠かせない。

 福地さんは「がん治療にあたる医師と、産科、小児科医が緊密に連携して初めてできる治療」と強調する。

 子宮体がんでも温存治療が進んでいる。がんの広がりを防ぐため黄体ホルモンを毎日服用して内膜の増殖を抑えながら、内側を覆う子宮内膜を、細い棒状の器具を挿入して定期的にはがし取る。がんが子宮内膜にとどまる1a期のほか、将来がん化する可能性が高い「子宮内膜異型増殖症」も治療の対象だ。

 慶応大では、1a期の患者30人にこの治療を行い、初回の治療で27人のがんが消失した。1人が出産、もう1人は妊娠中だ。

 黄体ホルモンの服薬中は、4週間ごとに超音波で内膜の厚さを確認する。治療は4か月から半年かかる。同大講師の進(すすむ)伸幸さんは「再発した場合、治療をもう一度繰り返すこともできるが、子宮を摘出せざるを得ないこともある。十分な経過観察が治療成功のカギ」と説明する。治療は婦人科がんを扱う主要な大学病院などで受けられる。

 二つの治療法は、妊娠、出産を望む女性の新たな選択肢だが、まだ研究段階にあることも事実。それを認識し、慎重に行う必要がある。(館林 牧子)

広汎子宮頸部摘出術を実施する主な医療機関
・倉敷成人病センター(岡山県倉敷市)(電)086・422・2111(※腹腔(ふくくう)鏡下手術で実施)
・札幌医大(札幌市)(電)011・611・2111
・東北大(仙台市)(電)022・717・7000
・九州大(福岡市)(電)092・642・5409
                     (2005年4月11日 読売新聞)


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