―――――本当は辛いのかな
             辛くないのかな





002・其々の思い




「推薦?」


「そうじゃ。今日の午後、新しい下忍が上忍達と会う」


「上忍?」


「忍者は大まかに下忍、中忍、上忍と分かれている」


火影は言う。


「さっきも言ったが、下忍は一番位の低い忍者じゃ。アカデミーと呼ばれる忍者学校を卒業した者達が下忍になる。そして下忍には必ず上忍と呼ばれる忍者のエリートが付く。下忍になる合否はその上忍が決める。わしが推薦と言ったのはその為じゃ」


「それで、私はどうしろと?」


「お主にはまず上忍に合格を貰い、他の下忍三人と共に任務をこなしてもらう」


「・・・・・・成る程。わかりました」


「ならよい」










+++







それから


当然行く当ての無いチアキは火影の家に住まわせてもらうことになった。


チアキは部屋で火影との会話を思い返す。





『さっきも言ったが、いきなり今日の午後から下忍達と会わなければならん』


『・・・・・・急ですね』


『時期じゃからの』


『・・・それで?』


『わしはちょっと出掛けて来る。時間になったら呼びに行くから部屋におれ』


『判りました』




最後まで思い返してチアキは溜息を吐く。


そしてベットに飛び込む。


飛び込むと言うよりは倒れ込むと言うほうが正しい表現かもしれない。


「・・・・・・・・・・・・・なんか疲れたかも。大佐ぁ・・・エドぉ・・・・・・・早く迎えに来てよ・・・・・・・・」



チアキが目を閉じると瞼に皆の顔が浮かんできて目尻に何かが染みた。



「会いたいよ・・・・・・・会いたいの・・・・・・・・」



そこからは言葉にならなかった。




一人は嫌だよ



寂しいよ





答えてくれる人はいない。






+++





「―――――ということじゃ」


その頃火影は決して広いとは言えないとある部屋にいた。


「・・・・・九尾にうちは、異世界娘ですか・・・」


火影の前の男が呟く。


「すまんな。でもカカシに預けるのが一番じゃと思うて」


「・・・・・・皆、気になりますが、一番気になるのが異世界の子の能力ですね」


「悪いがわしもわからん」


「・・・・・・・大丈夫ですかねー」


「お前ならな」


「・・・・・・・・・・」


「それと、異世界の娘じゃが、しっかりしてるがまだ子供じゃ。精神的に深いショックを負っておるじゃろう」


「・・・・・・」


「でも・・・・」


火影は言葉を続けた。


「ハイ?」


「意思の強そうな眼じゃ。強さを感じる」


火影は眼を少し細めた。


「健闘を祈る!」


「了解」


火影の言葉を男は賞味期限の切れた牛乳パックを手に返した。






+++







「チアキ起きんかっ!!!」


火影の声が辺りに響く。


「―――――!?ちゅっ中尉!!ハイッ、仕事っ!やるっ!やりますっ!だから銃はやめてっ!!」


チアキはそんな言葉と共にがばっと飛び起きた。


「チアキ?」


「・・・・・・火影様でしたか・・・」


声のトーンをいきなり落としたその顔には明らかに落胆の表情が浮かんでいて。


「・・・・・・・・・・・」


火影は顔を伏せた。


なんとなく


居た堪れなくなったのだ。


「スイマセンでした」


チアキはぺこっと頭を下げる。


「・・・・・・・・いや。それより、敬語は使わんでいい」


「――え?」


チアキが訊き返す。


其れ程に今の火影の言葉には脈絡がなかった。


「これからは家族じゃ。敬語はアレじゃろ?」


優しげに火影は言った。


「・・・・・・か・・ぞく」


チアキは確かめるかのようにゆっくり復唱する。


火影は頷いた。


「・・・・・嬉しいですっ」


チアキは火影に満面の笑みを見せる。


その目尻には少し涙があって。


火影はそれがなぜか、まだ知らなかった。


「あの・・・・呼び方、おじいちゃんでいいですか?」


「構わんよ」


チアキの初めて見せた本当の―――否、年相応の笑顔に火影も嬉しそうに口元に笑みを浮かべた。


「それじゃあこっからは素で行きますね」


そう前置きして。


「じいちゃん、如何したの?」


チアキは口調を崩した。


「それじゃ。あのな、アカデミーにそろそろ行ってもらおうと思うて」


火影の言葉にチアキはふと思い出したかのように呟く。


「あっ、そういえば・・・」


「どうした?」


「私が異世界から来たこと、黙っといたほうが良いのかな?」


「今更なんじゃ」


チアキの問いに火影は呆れたという様に返す。


「む」


火影の言い草にチアキは膨れる。


「もう里中の噂になっとる」


「げ・・・・・・」


「じゃからもしかしたらお前の命を狙う輩も居るかもな」


「何で内緒にしなかったの!?」


その言葉に思わずチアキは叫んだ。


「お前はそう簡単に命を奪われるようなタマか?」


火影の兆発するような言葉にチアキはまんまとハマる。


「あたしはそう簡単には死にませーんっ!!!!」


チアキは火影に向かってそう啖呵を切る。


それに火影は苦笑にも似た笑みを浮かべて。


「そうそう、その意気じゃ。――ほれ」


火影は紙切れを渡す。


「何?」


まだ先程の興奮が醒めきっていないチアキは肩で息をしながら火影に問う。


「アカデミーまでの地図じゃ」


「一人で行くの?」


「あたりまえじゃ。わしが行ったら大事になる」


「そりゃそうだ」


「じゃろ?」


チアキは火影の言葉に頷いて。



「行って来ますっ」



勢い良く外へ飛び出した。











「頑張るんじゃぞ」


部屋に残された火影は呟いた。








「なあなあ、俺達のもう一人の仲間って誰だっけ?」


「異世界から来たコでしょ?」


「・・・・・・強いのか?」


チアキの向かう先では三人の子供達が噂話に花を咲かせている。








「なぁんで、オレが問題児みーんなの面倒みんのかネ?めんどくさいなー」


チアキと同じ場所に向かっているであろうその男はそうぼやきながらもその声色には嬉しさが含まれていて。











それぞれの思いが交錯してゆく。



異世界少女――――チアキを巡って。




© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: