――――――私は・・・・・
           大切な人を
              守れなかったよ





007・試験の合否






あのお昼の音が演習場の空を切り裂いてから10分。


チアキ達は元の丸太のほうまで来ていた。




――――――ぎゅるるるるるる




空腹を知らせる音が辺りに鳴り響く。


そんな中、チアキはむすっとカカシを見やる。


ルール的に鈴を取ったチアキは昼ご飯を食べても良いはずだ。


しかしカカシから良しの合図は出ない。


つまり、食べてはいけないと言う事だ。


そんな事は無視して食べればいい話だが、そんなことをしてナルトの二の舞になってしまったら堪らない。


ちなみにナルトはルールを破って弁当を食べようとした罰で丸太に縛り付けられている。


とんでもない馬鹿だがこんなに腹が減ってはナルトの気持ちもわかるなと人知れずチアキは心の中で呟く。



一方、チアキに先程から殺気を送られているカカシは、其れには気付かない振りをして四人を見渡せる位置――真正面に着く。


「おーおー腹の虫が鳴っとるね・・・・・・君達。ところで演習についてだが」


カカシは其処で言葉を切った。


そして先程までと変わらない軽い口調で続ける。


「ま!お前らは忍者学校に戻る必要もないな」


カカシの其の言葉に皆は三者三様―――否、四者四様の喜びを見せる。


チアキも微笑んだ。


ということは、自分以外の三人も鈴は取れなくとも、それ相応の良い動きをしたということで。


「じゃあさ!じゃあさ!ってことは4人とも・・・」


ナルトが嬉しそうに先を促す。


カカシもそれに答えてにっこり笑ったが、


発せられた言葉は皆が思っていた言葉とはまるで違った。


「・・・・・・そう4人とも・・・忍者をやめろ」



「「「「!!??」」」」



「忍者やめろってどーゆーことだよォ!!」


ナルトが平常心を保ってられずそう叫んだ。


「どいつもこいつも忍者になる資格もねェガキだってことだよ」


カカシのその言葉にチアキも頭に血が上ったが、サスケのほうが早かった。


カカシに向かって飛び出して行く。


しかしカカシによって無残にも踏みつけられた。


「サスケ君を踏むなんてダメーーーーー!!!」


サクラのその言葉に論点がずれてるよなんてツッコミを入れる者は誰一人としていない。




「あのさ、どーでもいーけど、先生その餓鬼に・・あたしに負けたじゃないの」


チアキが睨む。


三人が驚きの表情でこちらを見る。


が。


「それはそうだ。そのことは誉めてやるよ。でもそれだけじゃ合格はやれない」


カカシの様子は変わらない。


怯んだ様子も――――ない。


「・・・・・・じゃあ何?」


「それはチームワークだ」


カカシは言う。


チアキはその意図を掴みあっと声をあげる。


が、その小さな声はサクラの追求の声によって掻き消された。


「なんでスズ三つしかないのにチームワークなわけェ?三人で必死にスズ取ったとして一人我慢しなきゃなんないなんてチームワークどころか仲間割れよ!」


サクラのその言葉は正論だ。


しかしこの試験中には其れは全くの見当違いになる。


「チアキ、わかったか?」


カカシはサクラの言葉を半ば無視し、チアキに問った。


「わかった。此れは仲間割れを仕組んだ演習ね?」


チアキの答えにカカシは満足そうに頷く。


「どっどーゆーこと?」


サクラが今度は此方にに問う。


「つまり、この追い詰められた状況下で直、仲間を優先してチームワークによって任務を出来るかってことでしょ」


「そういうことだ」


沈黙が包んだ。


其々色々考えているようだ。


カカシの声が其れを破る。


「これを見ろ。この石に刻んである無数の名前。これは里で英雄と呼ばれている忍者達だ」


カカシがその石の方へ歩む。


ナルトは英雄という言葉に反応し其れに名を刻むと言った。


「・・・・・・・・・・・駄目だよ・・・・。名を刻むとか・・・・・言わないで・・・・」


そんなナルトに向かってチアキは振り絞るような声で言う。


先程までの言葉の勢いは何処にも感じられなかった。


「「「・・・・?」」」


今にも泣き出しそうなチアキをナルト達が不思議そうに見つめる。


カカシだけがまた眼の奥を光らせて意外そうに言う。


「へえ・・・この石に刻まれた名前の意味、知ってるのか」


チアキは頷く。


「・・・・・前の世界にも似たようなのあったから・・・・・。私の大好きな・・・・仲間の名前が・・・・刻まれてるから・・・」


チアキがぎゅっときつく拳をつくる。


カカシはそうかと小さく呟いて言った。


「任務中殉職した英雄達だ」


「!!!」


ナルトの表情が見る見る曇って行く。


チアキの脳裏にはいつも笑っている一人の男の顔。


彼が其処に刻まれたのはまだ記憶に新しい。


「ヒューズさん・・・・・・・」


チアキの呟いた声はカカシの声が被さるように発せられた事によって誰にも聞かれる事無く消えて行く。


「これは慰霊碑。この中にはオレの親友の名も刻まれている・・・・・・・・・」






+++






チアキはぼーっと弁当を見つめる。


カカシはナルトには弁当を食わせるなと告げ、昼からまたゲームをするからとチアキの鈴を取って、消えてしまった。


慰霊碑を見てからチアキは幾度か目の重い溜息を吐く。


「ホラよ」


チアキが我にかえったのはなんとなく優しい響きのあるそんなサスケの言葉だった。


見るとサスケがナルトに弁当を渡していた。


どうやら先程の声はナルトに掛かった声らしい。


そんなサスケにチアキは少し微笑んで、チアキも弁当を差し出した。


サクラも少しの葛藤はあったようだがナルトに弁当を差し出す。



「へへへ、ありがと・・・」


ナルトが言う。



チアキは思った。


昔の事を気にしてもしょうがないと。


今は


皆と頑張って忍者になろうと。





その直後だった。


煙と共に現れたあの上忍に合格を言い渡されたのは。












© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: