―――――――もう手遅れだ





005・昼寝





「大佐・・・何処へいったんだ?」



ユリナは軍部内を歩き回っている。


しかしいつもならもう見つかっているであろうロイの姿がなく。


ユリナは途方に暮れていた。



如何いう事だろう?


今までならすぐに見つかったのに。


何故か胸を“嫌な感じ”が支配する。



「・・・・・大佐・・・?」



かれこれ一時間以上は探していて。


ロイを呼ぶ声が段々頼りなくなってくる。




――――ザワザワ




木々が揺れる。


葉は緑色に輝いていて。



春や秋とはまた違って、これはこれで綺麗なものだ。




「夏だな・・・・」


呟く。



ふと中庭に人影があるのに気が付いた。



誘われるように近づいて見た。




「大佐・・・」



何処にもいないと思ったら・・・。


ユリナは大振りに肩を竦める。



ロイは大きな木の木陰でスヤスヤ眠っている。


もうすぐ三十路のその男の童顔顔は眠っていると更に幼く見えて。



「こんな奴が大佐でいいのかねぇ?」


口から零れるのはそんな言葉。



暑さの中で時々吹く柔らかくて涼しい風に髪が揺れる。


ロイの横に腰を下ろす。



「~~~~/////」


自分から座ったにもかかわらず至近距離にロイの端麗な顔があることにユリナは頬を染める。


そしてロイが起きていなくてよかったと心底思った。


こんな処を見られたらそれこそ恥ずかしくて顔から火が噴き出てしまう。


悔しいがロイの顔は格好良い。


近くで見ると、その顔の一部一部がよく見えて。


意識すればするほどユリナの頬は紅潮し、心臓は早鐘を打つ。



だからと言ってこの場から離れる気にはならず、ロイを起こす気にもなれない。


ユリナはこの感情から逃れようとぎゅっと目を瞑る。


その長いまつげが目元に小さな影をつくって。



いつのまにか力がぬける―――――







+++





「・・・・・・・・・此れは一体・・?」


ロイは肩に持たれかかって寝息を立てている人物を起こさぬ程度に言葉を発する。



確か自分は一人で眠っていたはずだ。


何故―――?


ロイは溜息を吐く。


考えてもわかるわけがない。


自分が眠っている間に全てが行われて、この状態に陥ったわけなのだから。



自分には当然記憶がないのだ。



諦めの色を表情に出すと、隣で眠っている少女―――ユリナを見つめる。



これでロイはユリナの寝顔を見たのは二回目という事になる。


しかしこの間とはワケが違う。



此れほどまでに近くで。


本当に、額と額がぶつかってしまいそうな距離で。


寝息を立てられて、無防備に寝られて。


動揺しない男が何処にいるのだ。


先程のユリナではないが、ロイの心臓が煩く鳴り始める。


「嘘だろ・・」


ロイは呟く。


こんな感情は本当に久し振りで。


頬が赤く染まって行くのが自分にも感じられて。


其の感情をを肯定すると、更に心臓が煩くて。



それの繰り返し。





この感情はまさしく“恋”という名で。


ロイは項垂れる。



今更気付いた自分が情けなくて、阿呆らしくて。



ここ最近のカップル騒ぎは当然ロイの耳にも届いていた。


今となってヒューズが電話してきた訳にも気付いて。


自分が気付かなかったのに親友は気付いていた。


なんとも不思議な感覚が心の中に広がる。




そしてもう一度隣の人物を見てみる。


聞こえてくるのは彼女の寝息と。


自分の溜息と。



鳴り止まない心臓の音だけで。




「馬鹿だな・・・」



そう呟いても、何ら変わりはなかった。











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