――――――――貴方と会ったのは偶然?
                    それとも必然?
                      そう、キミは退屈な世界を覆してくれる人





001・一期一会-イチゴイチエ-






大きな雨粒と紅い髪が自分の視界を時折遮断する。



人通りの少なくなった深夜の街を一人の男―――沙 悟浄 は家路に着く為走っていた。







いつものように酒場で賭け事をし、今日は結構な好調だった。


キリの良い所で辞めてその辺の女でも引っ掛けようと思っていた。


だけど―――



「悪い。今日はもう帰るな」



そんな言葉と共に俺は其処を後にした。



特別予定があったわけでもない。


あったらこんなトコ来ないし。


気に入った女が居なかった訳でもない。


今日来てた女は皆、俺好みの綺麗なお姉サンだった。



でもなんとなく早く家に帰らなくてはと意味も無く思ったのだ。


最初はこの初めての気持ちに戸惑った。


しかし其の謎はあっけなく解けてしまった。



酒場を出た瞬間俺の視界に映ったのは水の線。



雨だ。



「なんだよ、ソレ」



きっと俺は心の何処かで只今同居中の雨の日は情緒不安定になる男を心配してたらしい。


だから無意識に雨音を聞いて帰れと脳が命令を送ったのだ。



「らしくねぇ・・・・」



そんな事を呟いてみる。


全くもって事実だ。


自分が他人の心配をするなんて“ありえない”に近い。



「くっそ」



謎が解けても自分の中での胸騒ぎは溶けなくて。


頭ははもう一度飲み直そうと思っているのに身体は走る。


つまり自分の脳の中に今、二つの感情があるという事か。


「きしょくわりぃーっ」


唇は留まることなく動き、減らず口を叩く。


雨も容赦無く自分を打ちつける。


水溜りが跳ねて足元は泥だらけだ。


紅い髪からも雨が落ちる。


「うぇぇ」


自分の今の姿を想像し顔を顰める。


きっとヤバイ事になってるだろう。



そんなこんなのうちに家はもう目の前だ。



アイツが出てきたら何て言おう。


そんな事を考えてみると言い訳しか考えてない事に気付き苦笑する。



ラストスパートとばかりにスピードを掛けた。


と、その時――――――



「うっおわっ!?」


奇声を発して動きを止めた。


「オイオイ・・・・」


動きを止めた張本人――それは一人の娘だった。


自分の家の前に倒れている其の人物。



悟浄はじっとその娘を凝視した。



はっきり言って悟浄としては、


目の前で野郎が、倒れてようが、血吐いてようが、死んでようが、どうだっていい。


しかし、女――しかも美人を放っておくほど悟浄は心が狭くなかった。


裏を返せば只の女好きと言うだけだが。



「とりあえず生きてるみてぇだな・・・」


悟浄が呟く。


確かに其の女は肌は青白く長い睫は伏せられてはいたが、かろうじて生気は放っていて。


呼吸を確認すると其の娘を担ぎ上げた。



そして目の前の、まだ灯りのある自分の家へと歩を進めた。









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