――――――――――君が居ないと駄目なんだ












零れ奏でたmelody












理由なんてなかった。


ただ



視界に入ったから。











時々行く店。


気の良いマスターがいて。


酒は美味しくて。


雰囲気がいいから。






―――――――カララン




鈴が鳴って。



店に足を踏み入れた。



「今日は一人かい」


マスターがカクテルを作りながら問った。


「ああ」


答える。



そして目に入った。


自分と同じ一人で酒を飲む女が。



「隣、いいかい?」


一人で飲むのもなんだかなと思っていたから。


美人だし。


お相手には丁度良いかと思った。


「ええ。構わないわ」


女は微笑んで。


「それじゃあ失礼するよ。名前は?」


「ユウ」


女――ユウは答えた。


「私はロイだ」


訊かなかったが一応言っておく。



特に会話は無かった。


少し会話をするとカクテルに目を向けるユウ。


その姿がとても絵になると思った。



何処か切なげに目を伏せる姿も。


お世辞じゃなく綺麗と思った。




思えばあの時からとんでもなく惹かれていたのかもしれない。












それから




何度となくその店に行った。


その店がお気に入りの理由が



一つ増えたから。





彼女はいつも居て。


いつも一人だった。



同じ場所で。


酒を見つめて。



飲んでいた。







いつもならもう口説いていたかもしれない。


でも


なんとなく口説く気にはなれなくて。



それよりも




ずっと一緒に居たいと思ったんだ。



自分で言っていて恥ずかしくなるような感情だ。







「ロイはお仕事何をやっているの?」


めずらしく


彼女から話し掛けて来た。



「私か?私は・・・・」



そこで答えに詰まった。


素直に答えていいものかと。


軍人と言ったら


離れていくのではないか。



不安な感情に囚われた。




「ねぇ?」




ユウは答えを急かす様に覗き込む。


本当の事を言おうと思った。


理由は


彼女が自分に質問したのが初めてだったから。



「私は・・・軍人だ」



彼女の表情が変わるのが分かった。


そしてそれを見た自分の表情も。



どうやら軍人はワーストワードだったらしい。


血の気が引く。




「・・・・・そ・・そうなの」


彼女は振り絞るようにそれだけ告げて。



「・・・バイバイ」




姿を消した。






彼女が現れる事は無くなって。








あとからマスターに聞いたのは



彼女のたった一人の肉親である弟がイシュバールの内乱で軍人に殺されたという事実。









それを聞いて



自分は何も出来なかった。





彼女を探す事も



忘れる事も





何も出来なくて。









ただ謝るだけで。



誰にでもなく謝って。




涙など一滴も出ないが





心が悲鳴をあげた。





唇から零れるのは謝罪の言葉。




頭には内乱の時のフラッシュバック。



見たことのない



想像しただけの彼女の泣き顔。
















「大佐・・・如何したんでしょう?」


「女に振られたんじゃないですか?」


「『ユウ』って人に?」


「そうそう。最近ずっと『ユウごめん』って言ってるでしょ」


「大丈夫っすかねぇ・・・・」










ホークアイ中尉が言っていた。


『部下が心配してますよ』



と。




自分はやっぱり何も出来ない。



仕事はこなした。


普段よりも好スピードだ。




迷惑はかけていないし



かけるほど自分は落ちぶれていない。






でも



心配させたら同じ事だ。



情けない。





唇から零れるものが増えた。



溜息。











「大佐。お会いしたい方がいらっしゃってますよ」



ある日、中尉がそんな言葉と共に入ってきた。


「・・・・・・誰だ?」


「強盗事件の被害者です」


「何故・・・私が?」


仏頂面で問う。


もっとも


あれから笑った数の方が少ないくらいだ。


「だから、お会いしたいみたいですから」


「・・・被害者が私に?」


「違います。『貴方が被害者に』です」


「・・・・・・・・・・は?」


今の廻らない頭でも分かる。



確実に会話が食い違っている。








「被害者の名前は『ユウ・アキヅキ』と言うそうなんですが?」








心臓が跳ねた。



「ユ・・・・・・・・・ユウ・・・・?」



声が掠れる。



「玄関でお待ちです」



中尉の言葉を背に走った。


らしくないなと思ったが


そんな事はどうでもよくて。





「ユウ!?」



「・・・・・・・・・ロイ・・・?」










唇から零れるのは君の名前。


君が奏でるのは僕の名前。







君と出会ったのは月明かりの夜。




君と出会ったのは太陽の光浴びる午後の時。









―――――――――

朝霧 稔夜 様

キリ番800おめでとう御座います。

そして有難う御座います。

あはは。。。。

なんか大佐変ですね;;

補足としてはユウさんが軍部に顔を出したのはロイに会いたいからではなくて

ただ被害者だったから。

ロイがこの場所に居るのも知らなかったです。

彼女の名前を聞いた部下たち【中尉とか】が会わせてあげようとしていたのです。

だから最後のところ、ユウさんも驚いてます【一応;;

この二人が付き合う事になるのかは・・ご想像ってことで;


それでは、これからも休息の羽ごと真翼をよろしくお願いします!






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