3 暴走バスの巻


ロスモチスまではその中間ぐらいだから約15時間だ。
バスは2時間おきぐらいに停まり、トイレ休憩がある。その際サンドウィッチ等を買い込み、昼食や夕食にする。
バスから見える風景は見るもの全てが新鮮であり、飽きはこない。しかしながら長時間のバス移動は尻も痛くなり、苦痛でもあった。
そんな俺の苦痛を一蹴させたのが、このバスの運転手。道は山の登り道。普通は慎重な運転になるはずだが、なぜか逆にスピードを上げやがる。あまり仕事をしたがらない国民性、この人も早く仕事を切り上げ、さっさと帰りたいのだろうか?いやいや待ってくれ!こっちはお前に命を預けているんだから!
とその時、さらに俺たちを震撼させる光景が目の前に飛び込んできた。
この山道にはガードレールがない。よくよく窓からこの山道を見ると、何台もの車が所々に落ちている!
最初はスクラップの換わりに山に車を捨てているんだろうぐらいに思っていたが、その落ち方はあきらかに事故である。国土が広すぎて、いちいちニュースにもならないんだろうか?
「マジかよ~!」とふと友人の顔を見ると、「海外にはこんなのつきものだよ」と海外通ぶりなお答え。しかしながら、さすがによだれが垂れそうになっていた。
対向車が来ても、スピードを落とそうともしない。スレスレでかわす。ある意味凄いテクニック!
俺:「どうしてそんなにとばすんだい?」
バス運転手:「皆様を大変不安がらせてすみません。しかし、私には最愛の妻がおりまして…」
俺:「奥さんがどうしたの?」
バス運転手:「子供が産まれるんです。過去に何度も流産しまして、そんな辛い日々を送っていたのですが、今日ようやく待望の第一子が産まれるんです!」
俺:「ほんとに!それはよかったじゃん!で、出産には立ち会えるの?」
バス運転手:「えー。このまま時速100キロぐらいで飛ばせばなんとかなると思うのですが…」
こんな会話は実際にはしていないのだが、俺は心の中でこのバス運転手と交信し、気を紛らせていた。そう思い込むと恐いもので、「えーい!もっと飛ばせ!飛ばせ!山道なんて関係ねーぞ」とチョーバカな思いを募らせる俺がいた。
このあと、夕飯食ったら“今日の”日記を書くことにする。


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