5 ルチャリブレの巻


「すげー排気ガスだな」これが第一印象である。2200メートルという高地にあるメキシコシティは、車の排気ガスが分散されづらく、いつもこんな状態であり、社会問題らしい。またこの標高の高さは水の沸点も違うため(80度が沸点)、レストランでライスを頼んでもすごくパサパサしている。
なんだかんだでサンディエゴからこのメキシコシティまで来るのに3日程かかってしまった。
さすがに旅疲れを感じ、到着したその日は安宿にチェックインすると、友人とともにすぐに寝てしまった。
翌朝、6時ぐらいだっただろうか、けたたましい音楽で目が覚めた。サルサである。
この安宿の近くには市場があり、朝から人がごったがえし、サルサとともに大盛り上がりである。
「朝っぱらからサルサかよ」と友人は笑っていたが、俺は朝から焼肉をガンガン食うぐらい、かなりの違和感を感じた。
こうして半ば強制的に起こされると、この日は街の散策に出かけた。
南米行きを諦め、メキシコシティ行きを決めたのは単純な妥協からではなく、俺はあるもの見たさにこの旅を決意した。
ルチャリブレ。メキシコのプロレスであり、自由な闘いと訳すことができる。プロレスや格闘技が好きな俺にとってはこのルチャ観戦が楽しみでしかたなかった。
安宿の近くにはアレナ・コリセオという、日本でいう後楽園ホールのような聖地がある。
このアレナ・コリセオの前には開場前から選手達が被るマスクと同じデザインの覆面が路上で売られている。俺はいい歳コイてもこのマスクがどうしても欲しくて、1枚200円ぐらいの破格な値段だった事もあり、まず5枚も買ってしまった。そう、まず5枚なのである。結局、日本に帰る頃には調子に乗って20枚近くも買ってしまい、売り子に「いつものあれを」と言うぐらいになっていた。(ウソ)
話を元に戻そう。とにかくこのメキシコ、物価が安い!特別リングサイドでも200円ぐらいである。日本で東京ドームの特別な試合なんていうと特リンは10万円ぐらいするから、驚く程安い。
念願叶って、チケットを購入すると、わらばん紙に2色刷りで刷られたプログラムを渡された。これがなんともいい味を出していてカッコイイ。今でも大切に保存している。
プログラムを読んでいると、俺はあるところに目が止った。
セミで日本人のウルティモ・ドラゴン、そしてメインにはあのドス・カラス!吉ギューでいうところの特盛、卵、みそ汁、お新香並の豪華な組み合わせである。
「いや~来たかいがあったよ!」と友人に言うと「あっそ」とそっけないお返事…。
試合は第一試合からルチャ特有の飛びまくりプロレス!観客席のイスは日本と違い、固定式なのにこっちが「もういいよ危ないから」と言いたくなるぐらいの空中殺法のオンパレード。観客は子供を中心に「メヒコ!メヒコ!メヒコ!」の大合唱!娯楽が少ない国とは言え、尋常ではない盛り上がりだった。
何か懐かしい原風景のような気がした。俺が子供の頃見ていた日本のプロレスも今とは違い、たしかこんな感じだったような気がする。
ウルティモドラゴンが入場してくると、俺はリングサイドへ近寄りサインをお願いした。ルチャは日本みたいに選手と客の垣根がないため、このようなことはたやすくできてしまう。歓声が凄まじく俺の「ウルティモさん、サインして!」の声が聞こえない。
ここまできて引くに引けず、俺は「アサイさ~ん、サインして!」と思わず彼の本名を大声で言ってしまった。さすがにこれには気付いてくれたものの、少しムッとした表情だった。
次のドス・カラスにもサインをねだり、大満足の一日だった。
ルチャにはマスクマンが多い。マスクのデザインもマヤやアステカの神をかたどったものが多い。これは戦時中など選手達が貧しい子供達に希望を与えるため、そして自分も神へ近付く為にこうなったとか。
ルチャリブレとは、自由な闘いであると同時に、自由への闘いであるようにも感じ取れた。
と買い物があるため、今日はこのへんで。


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