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無尽の鎖 第15話

無尽の鎖 第15話「クレバスの中で ―Dancing Tonight―」
作者:J・ラコタ

―アイスランド―
アイスランドは、北極海に面する島であり、グリーンランドの近くにある。
当然のごとくこの島は寒いのだが、この島には、実は温泉が湧き出ている。
2020年代には、クレバスの下に、温帯気候並みの暖かさの通称、「熱洞窟」が1つだけ見つかっている。
その洞窟は、アイスランドが火山島であり、温泉があり、そして、地熱が発生しているために出来たとされている。

この極寒の島に、カイン、ミラル、ウランの3人は来ていた。
3人とも、防寒着を着ている。
地底では地熱が発生していて、2、30℃だが、しかし、地上は-10℃の世界。
さらに、夜の光の無い時間となると、地上の気温は-40℃にもなる極寒の地なのだ。
当然、防寒着をいくら着ようと寒い。

カイン「うぅぅ・・・、寒ぃ・・・。」
ミラル「冬のセルビアでもこんな寒さは体験したこと無い・・・。」
ウラン「何言ってるの!」

しかし、1人平気なのがいた。
・・・ウランだ。

ミラル「こんな寒いところで、よくそんなことを・・・、」
ウラン「僕はスウェーデンで育ったし、寒さにも慣れているんだ。
2人とも、僕よりも年上なのにこんな寒さで弱音吐かないの!さぁ、行くよ~。」
カイン「・・・はぁ・・・。やっぱり来るんじゃなかった。」

3人の吐く息は白かった。
ウランは雪国のフィンランドで生まれ、スウェーデンでラルドと共に暮らしていたため、寒さには強く、ハイテンションになっている。
一方、カインとミラルは寒さを堪えるのが精一杯で、この青く輝く透き通った空とは逆に、テンションは下がり気味だった。

じゃぁ、何故3人がこんな極寒の地に足を踏み入れているのか?
それは、ほんの1時間前にさかのぼる。


―1時間前―
ファラス「アイスランドにいるのか!?」
ミラル「うん。感じるのよ。」
ラルド「だがな・・・。・・・ミラル。まだ力を完璧に操れるわけじゃないだろ?
ただの間違いかm」
カイン「俺は行くぞ。」

ラルドの会話にカインが割って入った。

ウラン「・・・今何て言ったの?」
カイン「ミラルが行くなら、俺も行く。」
ラルド「悪いことは言わない。やめておけ。」
ウラン「アイスランドはとても寒い場所なんだよ!?僕ら2人で行ったほうが・・・、」
ミラル「いいえ。私が言い出したことだし・・・。私が行くのは当然でしょ?」
カイン「それに、何かあった時に、俺が行かないで誰が行く?」
ラルド(いや・・・、ファラスや私でも十分にミラルの補助は出来ると思うのだが・・・。)←小声
ウラン(見せ場を確保したいんじゃない?まだ人気投票の事を引きずっているみたいだし・・・。)←小声
カイン「(・・・何考えているんだ?)」
ラルド「・・・わかった。カイン。頼むぞ。」
カイン「・・・よし、任せなv」
ウラン(本当に大丈夫なの!?)←小声
ラルド(ウラン。お前も行って来い。ワープポイントを開くとなると、お前の力が要るはずだ。)←小声
ウラン(OK、ラルド。)←小声


というわけで、彼らはアイスランドにいて、こんなことになっている。ということだ。

彼らは気付いてなかったが、実は、これはプラノズの罠だった・・・。

プラノズ「さて・・・。あの3人がどこまで持ちこたえられるかな・・・。」
ユーリィ「ふふっ、いい作戦ですね。まさかあの「ミラル」って子が感じたのが、プラノズ様のテレパシー波だとは、さすがに思わないはず。」
プラノズ「もっと面白くしてやるか。」

そう言い、プラノズは指を鳴らした。

突然、カインとミラルの足元にあった氷が砕けた!
ウランは2人を助けようとしたが、遅かった。
2人はクレバスの中へ落ちていった。

ウラン「カインーッ!ミラルーッ!」

クレバスの中に声が響いたが、返事が無い。

ミラル「・・・!」

ミラルはハッと目を開けた。
なんと、ミラルの手をカインはしっかり握り、もう片方の手で岸壁につかまっていた。
しかし、氷は冷たく滑りやすい。
このままでは、見たところ10mはある高さから落下するハメになる。
下手をすれば、凍った地面に叩きつけられる。
だが、そこでカインはあることを思いついた。

カイン「ミラル・・・、成功する保証は無いけど・・・。」
ミラル「何?」

カインは岸壁から手を離した。

ミラル「え、えぇーっ!?」

2人は落下していく。

カインは頭と手を地面に向けて念じた。
すると・・・、

ドポンッ、

2人はお湯の中にダイブしたのである。

カイン「ふぅ・・・、間に合った。」
ミラル「カイン・・・、(怒」
カイン「ゲッ・・・、わ、悪かったよ。で、でも、助かったんだし・・・、」
ミラル「寿命が縮むかと思ったわっ!ふんっ。(怒」

ミラルはそっぽを向いた。

カイン「そんな怒らなくても・・・。」
ウラン「ねぇ、2人とも無事ーっ?」
カイン「あぁー・・・無事だよ。・・・一応。」
ウラン「待ってて、すぐに引き上げるから。」

ピシッ、

ミラル「・・・何か今音がしなかった?」
カイン「ん?・・・いや、全然・・・、」

カインが言い終わろうとしたその時、

ピシピシッ、ビキビキビキッ、

カイン「・・・今のは取り消し。嫌な予感が・・・。」

その予感は次の瞬間、的中した。
なんと、目の前にあった氷の壁が割れたのだ。
カインとミラルは浸かっていたお湯と一緒にその穴に引きずり込まれた。

ウラン「カインーッ!ミラルーッ!おーい!!」

ウランが見たもの。
それは、まるでトイレのように流される2人の姿だった・・・。

ウラン「大変だ・・・、どうしよう・・・。」


一方で、その穴の中に引き込まれた2人は・・・、
まるで水道管のごとく、凄いスピードで洞窟の奥へと流されていく。

カイン「ミラルッ!」
ミラル「カイン・・・、私もう・・・ダメ・・・、」

ミラルは気絶した。
何故こんな短時間で気絶したのかというと、水圧や酸素不足などが原因だ。
当然、カインも息苦しくなっていて、ミラルの手を繋いでいるのが精一杯だった。

カイン「ミ・・ラル・・・、頑張れ・・・、もう少しだ・・・、」

カインはその流れに逆らいながらも岸辺を見つけた。
そして、その岸辺を掴んだ。
だが・・・、酸欠で意識がもうろうとなり、その岸辺に手を掴んでいられなくなってしまった。
この洞窟は、酸素よりも、二酸化炭素や炭酸ガスの濃度が高いようだ。
カインは気を失い、2人は力なく流されていった。


気が付くと、2人は洞窟の奥深くに流されていた。
だが、何故か炭酸ガスや二酸化炭素の代わりに酸素がある。

カイン「ここは・・・、」

そして、目の前にはクリスタルの結晶が、床や天井などに無数に生えていた。
美しく輝く洞窟だ。

ミラル「うぅぅん・・・、」
カイン「ミラル・・・大丈夫か?」
ミラル「・・・ここは?」
カイン「分からない。でも・・・。」
ミラル「・・・綺麗ね。・・・私たちどれくらい流されたのかしら・・・?」
カイン「それも分からないんだ。途中で俺も気絶して・・・。・・・そういえば、服が・・・、」
ミラル「びしょ濡れね。・・・寒くないわ。」
カイン「言われてみれば、この洞窟って、地上よりも暖かいみたいだけど・・・、」
ミラル「・・・まさか、ここで脱げって!?」
カイン「い、いや、そう言おう、・・・となんて、してn(汗」

パシンッ、

洞窟中にその音が伝わった。

カインの左頬に手形が残っていたが、お互い上着を脱ぎ、着ているのは下着だけだった。
正直、これも危ないような・・・。(蹴

カイン「・・・そういえば、・・・前にあったなぁ・・・。」
ミラル「・・・え?」
カイン「ほら、中学校時代の「年越しパーティ」だよ。」
ミラル「・・・「カフェ・レヴァティックス」ね。・・・もう2年も経っているわ。」
カイン「2年・・・か・・・。みんなどうしているんだろう。」


―2年前―
―アメリカ合衆国 カルフォルニア州 ロサンゼルス―
これは、カインとミラルが中学生の時。
2019年の大晦日の日の夜8時だった。
白い息を吐きながら、カインとミラルはロサンゼルスのストリート街を歩いていく。

ミラル「この辺りね。」
カイン「本当にパーティをやるのか?」
ミラル「いいんじゃない?アメリカとセルビアの習慣は違うのよ。それに・・・、あ、・・・ここね。「カフェ・レヴァティックス」。」
カイン「・・・ここって、「ダンスクラブ」っぽくないか?「カフェ」じゃなくて・・・。」
ミラル「でも、ここであっているわよ?」

ということで、2人は中へと入った。

少年1「よぅ、カイン、ミラル~。来たか。」
ミラル(・・・カイン。ここってダンスクラブね・・・。)←小声
カイン(だから言ったろ・・・?)←小声
少女1「ヒューヒュー、お2人さん~。」
少年2「熱いねぇ~。」
カイン&ミラル「/////」


ミラル「確かに、「カフェ」じゃなかったわね。」
カイン「あの後、「クラブ・レヴァティックス」に改名したんだよな。」
ミラル「・・・そうそう。思い出したわ。マンディよ。」
カイン「マンディか・・・。確か兄貴がDJで、親がそこの店のオーナーで・・・、」
ミラル「新年会の時にあの店で、みんなでパーティをやったのを覚えている。」
カイン「忘年会と新年会を織り交ぜたパーティで、俺らが入った時に、ジョナスとデューク、それにマリナがいたんだよな。」

ジョナス・カーン(=少年1)「お先に~。」
デューク・タイラー(=少年2)「噂をすれば何とやら。だな。」
マリナ・ケイン(=少女1)「しかも、2人揃っての登場だからねぇ~。」
ミラル「も、もぅ・・・。」
ブライアン・ゴードン「ははは、セルビアからのお客さんが来たか。」
カイン「・・・あれ?まだ6人しかいない?」
ジョナス「他の連中も待っているんだ。そろそろ来るぞ。」
ゼブ・レイナー「まぁ、まだ8時を少し過ぎた位だ。待っていれば来る。」

すると、カインとミラルの後ろにあったドアから、また3人入ってきた。
2人は少年で、1人は少女だった。

ジム・ブランソン「あちゃー・・・、来るのが早すぎたか?」
ゼブ「ほらな。」
ザンダー・マディソン「・・・あれれ?」
ブランソン「クラス全員やプラスα入れても、こんな少ない人数じゃないんだけどなぁ。(笑」
サマンサ・ローガン「やっぱり、早やく来すぎたん?(笑」


カイン「・・・でも、午後11時になってくると、クラス全員が集まった。ウェブにオリヴィア、シルバー、それにジュリアも。
で、全員が集まったところで・・・、」


『あー、あー、マイクテスト、マイクテスト。』

全員「?」
マンディ『みんなお待たせー。今、12時10分前。大画面に注目してね☆』

大画面に映し出されたのは・・・、カウントダウンの映像だった。
2019年が終ろうとしている。
そして、2020年が始まろうとしている。

オーストラリアのシドニーでは花火の準備がされ、日本の東京渋谷では若者達が集まっている。
アメリカのニューヨークや、イギリスのロンドンも大賑わい。
ロサンゼルスも賑わいでは負けていなかった。

いよいよ新年まで1分を切った。
そして・・・、

カウントダウンが始まった。

『3、2、1!・・・0!!』

遂に2020年が幕を明けた。

カイン「もう2020年かぁ・・・。何だか実感が無いなぁ・・・。」
ミラル「カイン、まだ終ってないわよ?」
カイン「・・・へ?」
マンディ『新年、明けましておめでとう~。じゃぁ、この忘年&新年会の最後として、これでGO―!』

と、マンディが言うと、DJの席にスポットライトが当てられた。
そのDJの席に座っているのは、マンディの兄、ジェイソンだった。

マンディ『今日のDJは、私の兄、ジェイソン・ランバート。曲は、1970~2005年までのディスコ&スーパーユーロビート!』
ジェイソン『OK、ワン、トゥ、スリー、フォー!』

その掛け声と共に音楽が流れ出した。
流れている曲はヌアージュの「Sunday」である(しかも、オーバーハード・チャンピオン・リミックス)。

カイン「新年早々ダンス。か・・・。」
ミラル「ねぇ、カイン。」

カインはボーッとしていて無反応。

ミラル「・・・カインッ!」
カイン「うわぁ・・・、・・・ゴメン、ボーッとしていたんだ。」
ミラル「ねぇ、カイン・・・。・・・いっしょに・・・、・・・踊らない?/////」
カイン「・・・/////。」

すると、カインの近くにいたザンダーとゼブがカインに声を掛けた。

ザンダー「どうした?セルビアボーイ。彼女が呼んでるぜ?」
カイン「・・・。」
ゼブ「ははっ、さては・・・、例の「熱病」にいよいよお前らも掛かった。というわけか。」
カイン「/////。」
ザンダー「ほら、やっぱり顔が赤くなっている。」
カイン「う、五月蝿いなぁ・・・。」
ザンダー「カイン、こんなチャンスは二度と巡ってこないかもしれないんだぜ?」
ゼブ「カイン。お前のルームメイトとして、先輩として1つ言うが、こんなチャンスを逃すな。」
ザンダー「そうだ。一丁、」

ザンダーがカインの座っていたバースツールの向きを変え、

カイン「!?」
ザンダー「行って来い!」

と、ザンダーはカインの背中を押した。
・・・いやいや、比喩ではなく、マジで物理的に。
ザンダーに背中を押された勢いで、カインはミラルとぶつかった。

ミラル「あ・・・、カイン?」
カイン「や、やぁ、ミラル・・・。・・・踊る?////」
ミラル「・・・うん。////」


ミラル「あの時ほど照れくさかったことなんて・・・////」
カイン「ミラル、・・・顔赤い・・・////」
ミラル「カ、カインだって・・・。」


―2020年 8月23日―
真夏のロサンゼルスにいるカインとミラル。
しかし、彼らは、無事にロサンゼルスの中学校を卒業し、留学を終えた。
留学を終えると、基本的には2つの選択肢があった。
1つは、あと数年はロサンゼルスに留まるか。
もう1つは、セルビアへ帰るかだ。

だが、カインは3年前に留学する直前に、遣り残したことがあった。
・・・部屋の片付けだ。
母親が留学の直前に急死し、家の中は恐らく、出発前と同じく散らかっているはずだ。
じゃぁ、カインは何故、3年間も留学をしていたのか?
それは、母親の死から早く自分を立ち直らせたかったからだ。

一方、ミラルはこの時は母親と同じように、外交官の道に進もうと思っていた。
でも、留学している間に「自分の進む道は1つじゃない。」と気が付いたのだ。
ミラルの母、アリアがこの留学を彼女に薦めた訳がようやく分かった気がしたのだ。

ミラル「・・・カイン・・・。お母さん・・・、私の決めたことに怒らないかなぁ・・・?」
カイン「さぁ・・・。でも、分かってくれると思うけどな。
俺よりはマシだと思う。家に帰ったら、3年間ほったらかしにしていた家の中を片付けないといけないし。」
ミラル「・・・ふふっ。それもそうね。・・・どれくらい掛かると思う?」
カイン「片付け?・・・多分、3日は掛かると思うけど・・・。それが?」
ミラル「手伝うわ。」
カイン「わ、悪いよ。」
ミラル「いいの、いいの。掃除は得意なのよ。」


カイン「・・・あの後、セルビアに帰ると、君は部屋の掃除を手伝ってくれたんだっけ。」
ミラル「さすがに、あれは目を疑うぐらいの状況だったけど、3日掛かる仕事を1日で終らせた。でも、カインったら、すぐに散らかすのよね。」
カイン「・・・(汗」

その時、

ウラン「やぁ、」
カイン「わわわっ、ウランか・・・。・・・って、どうしてこんなところに!?」
ウラン「忘れた?ボクはワープポイントを作れる能力があるんだよ?2人がいるところはどこなのかを念じたら、ここに出た。というわけ。
・・・それにしても・・・、・・・凄い格好だね・・・。」
カイン&ミラル「五月蝿い!」
ウラン「うっ・・・、漢字で言われたよ・・・。(--;」
ミラル「・・・じゃぁ、早くここから連れ出して。」
ウラン「そんな格好で?」
カイン&ミラル「/////」
ウラン「お望みならやるけど、」

と言って、ウランはワープポイントを形成しようとしていたが、
そこでカインが待ったを掛けた。

カイン「ウラン・・・、せめて、着替える時間ぐらいくれ。」
ウラン「ハハッ、冗談。冗談だよ♪終ったら呼んで。奥にいるから。」

カイン「・・・服、乾いたみたい。」
ミラル「・・・それじゃ・・・、ここから早く出ましょ。」
カイン「そうだね。」
ミラル「・・・カイン・・・。」

ミラルはカインの頬っぺにキスした。

カイン「!?」
ミラル「ありがとう。コレまでも、これからも。一緒にいようね。」
カイン「な、何だよ?いきなり・・・。」
ミラル「さっきのお礼よ。」
カイン「(俺が岩の氷を溶かしてお湯にした事?・・・あれって怒っていたはずなのに?)」

カインはそう考えていた。
でも、ミラルにはこの事が伝わっていた。
で、ミラルは、というと・・・、

ミラル「(・・・何か勘違いをしているみたいね。・・・でも、いいの。カイン。あなたの事が・・・、好き。)/////。」

ミラルの顔が赤く染まっていたが、その事にカインは気付いてはいなかった。
そして、2人はウランと一緒に、セルビアへと戻った・・・。


第16話に続く

※この話はフィクションです。実際の、国名、団体、都市などには関係ありません。


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