彼岸花


如何して逝ってしまったかも
如何いう風に逝ったかも
最期の言葉も
最期の顔も
最期の貴方も


私は貴方に最期を見せなかった
見せたくなかった
其れは私が貴方にとって
哀しい思い出に成ってしまうのが怖かったから

窓際に飾った彼岸花
此の華が散ってしまう頃にはもう私は居ない
貴方の傍には居ることは出来ない
何より哀しかった

私にとっても貴方を哀しい思い出にしたくなかった
貴方と居た日々は
確かに
そう、確かに
何物にも代えられない程幸せだったから


僕は貴方に何一つしてあげられなかった
貴方は其れでも何時も笑顔だったけれど
何時までも抱きしめて居たかった
その華奢な身体を
その貴方の笑顔を
その想いを

香りは敏感すぎて
貴方の香りを思い出すたびに
貴方が居ないことがこの胸に突き刺さる


貴方に出会えて私は本当に幸せだった
最期に伝えたかったのはその言葉だけだった
日に日に痩せて醜くなっていく私を
貴方が見たら
きっと自分の無力さに泣き崩れるでしょう
そんなことさせたくなかったから
そんな貴方の姿は見たくなかったから
私は貴方に最期の姿は見せなかったの

私が貴方にとって
何より哀しい思い出になるよりも
私は独りで逝くことを選んだ


僕が知っているのは
貴方が独りで逝ったことと
窓際に飾られていたという
彼岸花


貴方は知っていますか?
彼岸花の花言葉
「悲しい思い出」
だから私は
貴方の彼岸花に成らないように
最期に窓際に彼岸花を飾ったの

_其れは違うかもしれない_
私は悲しい思い出でも
貴方に忘れて欲しくなかったのかもしれない
其れでも
言い聞かすように彼岸花を飾った


貴方が最期に飾った華
彼岸花
その香りを嗅ぐ度に
僕は貴方を思い出す

最期まで独りだった貴方_
css彼岸花


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