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H9年5月
間髪入れずに欲しかったけど、なかなかうまくいかなかった二人目の妊娠。それでもターが一才半になろうという時に2番目を授かった。どういうわけか貧血がひどく、また職場でのそれとないイジメからくるストレスが辛くて、はやく産んでしまいたいという気持ちが強かった。
健診に行く度に、「今度も帝王切開なのだろうか?」と気になるのだが、前回切っても次は普通分娩で、という話はよく聞くし、どっちになるかは医師の裁量によるから、自分は踏み込んではいけないと、気になりつつもずっと聞けなかった。
予定日は6月中旬であった。5月のある日の健診で、突然言われた。
「もう、37週で満期だから、手術のための検査をします。」
あーー、やっぱり帝王切開になるんだな。もうちょっと早く言ってもらえたら、やきもきせんですんだのに。
「それから、いつがいいかな・・・・・・。」
と、手術の日を5月27日と30日の2種類提示された。私はかねてから5月生まれの赤ちゃんが欲しいと思っていたのでとてもうれしかった。妊婦のしんどさが極まっていたので、
「早い方でお願いします!」
と、5月27日の方を希望した。
ただ、貧血がキツイので、鉄剤を処方された。(これがまた、便秘になるんだわ。)ほんの少し歩いただけで息があがった。当時、無認可託児所に預けていたターを、すぐそこなのに迎えに歩いて行くのもつらく、旦那にお迎えのために戻ってきてもらっては、会社にとんぼ返りということをしてもらった。
鉄剤は便秘になるだけではなく、胃が不快になり、気持ちが悪くもなった。それは寝込んでしまうほどで、いけないことにもらった鉄剤はほとんど飲まなかった。
そんなことしているからよけいに貧血が進み、鉄剤の注射まで手術前から入院中・退院まで打たれることになった。
それにしても36週をすぎると、ほんとうにつらい。腰やお腹が痛くなり、苦しかったり重かったり。でも、今回は予定帝王切開。あの陣痛をすっとばかすことができる分、わがままや文句をたれてはいけないな。モニターを30分ほどつけた。軽い張りはすでにきているよう。手術当日までに破水などこなければいいが。
手術の前日の午後に入院。診察、問診、剃毛、静脈注射(鉄剤)、血圧測定、モニター、心電図、検尿・・・・・・色々したのちに夕食をきれいに食べる。そのあと、保母試験の参考書を読みながらのんびりと過ごす。ちょっと退屈。手術当日は朝から絶食なので、看護婦さんの指示通りに9時ごろにおやつをたくさん食べた。カフェオレ、バナナクリームパン、まんじゅう、チョコレート・・・・・・空腹の方が手術よりもつらいかもな。
手術当日。やっぱりお腹が空いてつらい。でも、手術中に吐いて喉つまらすのも怖いし。それにどうせ「何か食べたい」と訴えたところで、何ももらえないんだし。
午後1時20分ごろ、手術室へ入った。前と同じ看護婦さんが付き添ってくれた。
「前は緊急だったけど、今度は予定だね。」
「はい。陣痛をサボらせてもらえる上、長男を預ける予定がたって助かります。」
そんな話をしながら。
いよいよ手術開始。前回は陣痛の痛みに散々苦しんで身も心もへろへろになっていたから、半分なんだかわからんうちに手術してもらった、って感じだった。が、今度はまるっきし正気のうちなので、手術室で何が起きているか、医師や看護婦さんが何を話しているんかもしっかり分かるから、かえって怖くなってきた。
腰椎麻酔はこれで3回目なのだが、やっぱり一回で入らなかった。怖がらなければ一回で済むものなのに、怖がるから何度も針で突かれることになる。丸めた体を看護婦さんに押さえつけてもらって逃げられないようにし、なんとか麻酔薬が入った。このときの看護婦さんがとても優しい顔した人だったので嬉しかった。時々すっげー怖くって、すぐに怒る看護婦さんがいるが、この優しい看護婦さんは一回で麻酔が入らなくても怒らなかったのでよかった。
急に気分が悪くなって、息が苦しくなってきた。前回の帝王切開の手術では経験していなかったことだ。
「あれ、・・・・・・気分が悪い・・・・・・。」
と訴えると、年配の看護婦さんが
「深呼吸してください。」
と言った。詰まってしまいそうな感覚の肺で、何回かあえぎながら深呼吸をしたら、だんだんおさまってきた。
「今の・・・・・・なに?」
とたずねると、
「麻酔の影響ですからね。大丈夫ですよ。」
と教えてくれた。大丈夫ということだが、ちょっと怖かった。
かくして始まった手術。麻酔の効きが悪かったらしく、はじめにスパッと縦にメスが入れられた感じがはっきりと分かって、思わず「うおっ!!!!!」と声をあげてしまった。その後も痛くて、何度となく「痛い!」「う~!」などとうめき、「あと少しだから」と何度もなだめられた。
「ちょっと押さえられますよ~。」
と看護婦さんが言うと同時に腹をぐいと押さえつけられて、ずぼっ、とお腹からスイカを引っこ抜かれる感じがしたあと、「うげェ~・・・・・」という弱々しい産声が聞こえた。2912gのサーくん誕生。また男の子。すぐに看護婦さんが抱っこして見せてくれた。第一印象は、
「タマタマが大きいな・・・・・・」
だった。
痛み止めと眠くなる薬でほどなくぼーーーっとしてきて、部屋に運ばれたのもよく覚えていない。
その後は貧血と梅雨の湿気にやられて、頭が痛くてたまらず、何回もボルタレンの座薬を入れた。
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