ＲＵＮＲＵＮＲＵＮ♪

Ｈ１０年１０月

第２子の育児休業が明けるのを待たずに、第３子を妊娠した。産むなら立て続けに、とは思っていたが、「欲しい」と思ったときにできたのは今回がはじめてである。
妊娠３ヶ月での職場復帰であったが、つわりが軽かったし復帰の時にはすでにスッキリしていたので仕事にはほとんど影響が出ずにたすかった。（と言っても迷惑はたくさんかけた。）３ヶ月ほど働いたところで、再び産休に。

　どうしても保母の資格がほしかったので、産休に入ったとたんに猛勉強をはじめた。保母試験は夏場なのだが、大きいお腹をかかえて試験会場に向かった。ダンスなどの実技は去年のうちに通っていたのでよかった。こんなおなかでダンスなど、めっそうもない。（試験は無事に合格しました。）

　２番目の時と同じように、やはり前回切っているということで、予定帝王切開となった。今回は日を選ぶ、ということはなく、医師の方からこの日に、と指定された。平成１０年１０月２０日。１０、１０、２０。覚えやすくって気に入った。きっと、これが最後の出産になるんだろうな、と思った。

　３回目ともなると入院にも慣れたもの。両手に荷物を抱えて一人であるいて病院へ向かい、入院。あてがわれた病室も前と同じ。なにがどこにあって、自分にはこれからどんな処置がなされるか分かっていると、こんなにも気楽に手術の日をむかえることができるんだな・・・・・・。余裕があるせいか、今回は誰も付き添いナシでの入院、そして手術だったが、「産むのは結局、自分なんだから。」と何とも思わなかった。

　看護婦さんに連れられて、例のごとく手術室に入る。さっさとすっぽんぽんになり、看護婦さんに脱いだパンツをあずけて手術台に乗り込む。何回乗っても「まな板の上の鯉」になったような気分になる。（実際、よく似たものなのだが。）
　一見、落ちついて手術に臨んでいるようだったかもしれないが、実はめちゃくちゃ落ち着いて「いなかった」のだ。よせばいいのに渡辺淳一の「麻酔」など読んでしまうから、自分も腰椎麻酔で同じように植物人間になってしまうのではないか、などと思いが及んでしまっていた。主人公は子宮の病気で手術を受けるのだが、子宮ってとこが自分と同じじゃん。せめて「先生、麻酔で死ぬこと、ないでしょうねえ？」と聞ければまだ気は楽だったかもしれない。でも、ふつー、そんなこときけないじゃん。

　そんな思いのうちで４回目の腰椎麻酔に臨んだのだが、やっぱり怖くて一回では入らなかった。なにが具合悪かったのか、針が刺さったら右足がビーーン！とひびいて、当然びっくりした私は腰を引いてしまって失敗。二回目もやはり右足がひびいて失敗。三回目でどうにか入った。そして、「脳の方まで麻酔をきかさんでくれー」と祈っていた時。サーを産んだ時と同じように、息が苦しくなり気分も悪くなってきたのだ。

「しんどい・・・。」
と訴えたものの、しばらくなにもされなかった。もう一度
「しんどい」
と訴えたところで医師が体を起こしてくれて、呼吸も整ってきた。
（あとで友人の医師がそのまた友人の医師に聞いてくれたのだが、これは明らかな麻酔の効きすぎというものだそう。しかしながら、帝王切開の麻酔は実際むずかしいらしく、効かなきゃどうしょうもなく痛いし、効かそうと思ったら、ある程度の副作用は仕方がないということだった。）
再度、手術台の上に横たわり手術が始まった。

　残念なことに、手術中のことはあまりよく覚えていない。ちょっと痛かったような気もする。おなかを押さえられてスイカが引っこ抜かれる感覚と、「アー！」という甲高い産声はなんとなく記憶している。医師が、
「元気な男の子。」
とぼそっと言い、私は
「また男の子・・・・・・・」
とつぶやいた。３１１２ｇ、ヒーの誕生である。
　その後の縫合は看護婦さんと話をしているうちにいつのまにか終わってしまっていた。

　でも、３人男の子が続いたことは、あんまりいやではなかった。当時、「だんご３兄弟」が大ブレイクしており、話の種になるなあと、思った。実際、「だんご３兄弟だね」とはよく言われた。私の自慢の３兄弟になった。

　もうこれで最後と思っていた出産。ところが産んだ翌日には、もう次がほしくなってしまったのだ。今回で３回目の帝王切開をやってしまったけれど、４回目を切った、という話はいくらでも聞いたことがある。
　退院の折に医師に恐る恐る聞いてみた。
「もう、あきませんよねえ。」
ところがだ。
「うーーん、体調がよければ、いいんじゃないかな・・・」
なんともこの医者らしい回答。

　ダメとは言われなかったことをいいことに、すでに４人目への意思を固めたのであった。

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